進撃のポチ( Counter-attack of POCUI

 

 

【予定登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

田原アリス・・・ポチの飼い主

 

有栖川呑屋コマル・・・当ブログ管理人

 

死神・苦竜(クリュウ)

 

 

 

 

 

尚、

 

本物語登場人物理解のため、

 

『アリスのニャンコその名は“ポチ”』 (近日うp予定)

 

!?

 

死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule  (近日うp予定)

 

!?

 

軽〜く目を通しとってくんしゃい。。。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・有栖川呑屋コマル

 

 

 

 



#1 『死神の殺し方1』

 

 

【登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

田原アリス・・・ポチの飼い主

 

死神

 

 

 

 

 

ある晩・・・

 

 

アリスは夢を見た。

その夢の中で、アリスは家の表(おもて)にいた。

そこで一人の男と出会った。

男は 『自分は死神である』 と言った。

そしてアリスに懇願した。

 

「今夜は絶対にお宅のポチとかいう、あの人間の言葉を喋(しゃべ)る猫を表(おもて)には出さないで下さい。 お願いします」

 

「何で?」

 

「・・・」

 

男は暫(しば)しその理由を言うのを躊躇(ためら)った。

そんな男にアリスが言った。

 

「理由、分んなきゃ、ダメだょ」

 

これを聞き、

 

「ウム」

 

男が納得したように頷いた。

そして続けた。

 

「実は・・・。 今夜、わたしはあの猫に食い殺されてしまう心配があるからです。 でも、あの猫が表にさえ出なければその心配は無用になります。 だからです」

 

「そっかぁー!! そういう事なら・・・。 うん。 いいょ。 今夜、ポチ、絶対表に出さないょ」

 

意味も分らず、アリスは承知した。

 

「ありがとうございます」

 

男が嬉しそうに礼を言った。

 

『ハッ!?

 

ここでアリスの目が覚めた。

アリスは思った。

 

『フゥ〜。 夢かぁ。 でも、変な夢。 ヶど、約束しちゃったから守んなくっちゃ』

 

って。

そして、アリスの横で一緒に寝ていたポチを起した。

 

「ポチ」

 

その声で、

 

「ファ〜」

 

一発、大あくびかましてポチの目が覚めた。

アリスがもう一度、

 

「ポチ」

 

ポチの名を呼んだ。

 

「ん!? なんだぁ、アリスぅ?」

 

「今夜は絶対、表出ちゃダメだょ」

 

「何でだぁ?」

 

「約束したから」

 

「誰とだぁ?」

 

「知らないおじさん。 死神さん、っていう人」

 

「四二が三三(しにがみさん)・・・?」

 

「そう。 死神さん」

 

「フ〜ン。 四二が三三(しにがみさん)なぁ、四二が三三(しにがみさん)。 フ〜ン。 どこでだぁ?」

 

「うん。 夢ン中で」

 

「チョー!? 『うん。 夢ン中で』 って・・・。 あのなぁ、アリス〜。 オメェーなぁ」

 

「今夜、もしポチが表に出たら、ポチその人の事、食い殺しちゃうんだってさ。 だからダメだょ! 絶対出ちゃダメだょ!! 分ったぁ?」

 

「分かんね」

 

「・・・」

 

「あのなぁ、アリス。 困っちまうだろぅ、俺様〜、表出なきゃ。 ウンチやオシッコどうすんだ?」

 

「お家(うち)のトイレですればいい。 するの手伝ってあげるからさ。 ネ!? お願い」

 

「『ネ!? お願い』 って、言われてもだなぁ・・・。 オメェーにウンチすっとこ見られちまうだろぅ。 それに臭いも嗅がれちまうだろぅ。 照れくせーじゃねぇか」

 

「ダイジョブだょ、ポチ。 ダイジョブだょ。 だからお願い。 ネ!? お願い」

 

「・・・」

 

ポチが黙って考え込んだ。

 

「・・・」

 

アリスも黙って、そのポチの目を見つめた。

その視線を受け、

 

「ゥンじゃまぁ、しゃねぇ、オメェーの頼みじゃ、仕方ねぇ。 でも、今夜だけだぞ。 今夜一晩だけだぞ。 いいな?」

 

ポチが渋々承諾した。

 

「うん。 いいょ、今夜一晩だけで」

 

「なら、分かったょ。 今夜は表出ねぇょ」

 

「ありがと、ポチ」

 

そしてポチは眠った。

アリスと一緒に。

アリスの腕枕の中で。

 

暫(しばら)くして・・・

 

再びアリスは夢を見た。

自分が家の表にいた。

アリスの足元には死神と名乗った男が、全身血塗れになって倒れていた。

その全身血塗れになった男の姿をアリスが黙って見下ろしている。

アリスがしゃがんだ。

そして繁々と男の顔を覗き込み、

 

「おじちゃん、ダイジョブ? 誰にやられたの?」

 

って、聞いた。

 

弱々しく男が顔を上げ、恨めしそうにアリスの目をジッと見つめた。

そして息も絶え絶えにこう言った。

 

「アンタんトコのポチだ。 アンタんトコのポチにやられたんだ。 あれほど頼んだじゃないか、今夜は絶対、あの猫を表には出さないで下さいって・・・」

 

そこで男は事切れた。

そして跡形もなく崩れ落ち、砂になった。

この死に方から見て、その男が死神であるのはどうやら間違いなさそうだった。

呆然とその死神の残骸を見つめるアリス。

その時、

 

『ハッ!?

 

アリスの目が覚めた。

素早く周りを見回した。

ポチが自分の右腕の中で気持ち良さそうにスヤスヤと眠っている。

だが、

ポチもアリスの動く気配を感じ、

 

『ん!?

 

目を覚ました。

 

「どしたぁ、アリスぅ? 何かあったんかぁ?」

 

「うん。 又、夢見ちゃった」

 

「『又、夢見ちゃった』 って、どんな夢だぁ」

 

「うん。 さっき、夢の中に出て来た男の人が死んじゃった夢。 ポチに噛み殺されて、血塗れんなって・・・」

 

「フ〜ン。 俺様がなぁ・・・。 フ〜ン。 俺様がなぁ・・・。 噛み殺したんか、ソイツを・・・?」

 

ここまで言って、ポチがある事に気が付いた。

 

「あ!? そう言ゃぁ、俺様も夢見てたぜ」

 

「どんなぁ?」

 

「死神を噛み殺した夢」

 

「死神さんを?」

 

「あぁ、死神のヤツを・・・」

 

「フ〜ン」

 

「表で死神のヤツを噛み殺してやったのさ・・・」

 

ここでポチは言葉を切った。

それから目を瞑り、アリスの腕の中でゴソゴソっと丸くなってスヤスヤと眠った。

最後にもう一言、こう付け加えて・・・

 

「オメェーを殺そうとしてたからな。 ムニャムニャムニャ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って。

 

 

 

 

 

 

#1 『死神の殺し方1』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

 

#2 『死神の殺し方2』

 

 

【登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

田原アリス・・・ポチの飼い主

 

死神・苦竜(クリュウ)

 

 

 

 

 

今・・・

 

 

ここに一匹の死神がいる。

その名を 『苦竜』 という。

 

その横に一人の少女がいる。

その名を 『田原アリス』 という。

 

その少女の足元に一匹の猫が寝ている。

その名を 『ポチ』 という。

 

死神・苦竜とアリスは恋人ではないが、とても中の良いお友達だった。

勿論、ポチもだ。

ポチも苦竜とは仲が良かった。

 

ここは死神界。

そこにある 『死神の池』 での出来事。

そこへアリスとポチが苦竜に連れられてやって来ていた。

 

だが、ナゼか?

 

この頃アリスは、もしかすると死神・苦竜は不死ではないかも知れないと思い始めるようになっていた。

それを思い始めた瞬間から、アリスは苦竜が心配で心配で眠れなくなっていた。

そのためアリスは、いいチャンスとばかりに苦竜に聞いた。

 

「死神さんはホントに死なないの?」

 

このアリスの問い掛けに、

 

「あぁ、そうだ、アリス。 俺達、死神は決して死なねぇ」

 

苦竜が答えた。

更に、苦竜はアリスを安心させようと思ったのだろう、こう続けた。

 

「俺達死神はぜってぇー、死なねぇ。 死ぬ事はねぇ。 だが、たったの一つ。 そう、たったの一つだけ俺達死神を殺す方法がある」

 

「え!?

 

アリスは驚いた。

不死の死神、それを殺す方法がある事に。

そんなアリスに苦竜が続けた。

 

「そして死神を殺すその方法。 それはオメェら人間共には完璧なまでに思いも付かねぇ方法だ。 そうだ!! オメェら人間共には完璧なまでに思いも付かねぇ方法でのみ俺達死神は死ぬ。 これは俺達死神以外の者にはぜってぇー、明かしちゃなんねぇ秘密なんだが・・・。 ま、いっか、オメェなら・・・。 そうだな、オメェならいいだろう。 これ以上心配しなくて済むように、オメェにだけその方法を教えてやる。 いいか、アリス。 誰にも言うんじゃねぇぞ」

 

「うん」

 

「良し!? この池の中を良〜く見るんだ」

 

苦竜が死神の池の中を指差した。

言われてアリスが池の中を覗きこんだ。

 

「いいか、アリス。 あそこに一鉢の盆栽が見えるだろ」

 

苦竜が指差した先には盆栽があった。

たったの一鉢だったが。

 

「あ!? ホントだ!? 池の中に盆栽がある!?

 

アリスは驚いた。

本当に池の中に盆栽があったのだ。

こんな事は人間界では考えられないのだが、それはそれ、ここは死神界である。

 

!?

 

言ふより・・・

この物語は “ふぃくしょん” なのでこんな設定も・・おk・・なのだ。

 

苦竜が続けた。

 

「あの盆栽の木の枝を良〜く見てみろ。 実が一つなってるだろ」

 

「うん」

 

「何の実だと思う?」

 

アリスが目を凝らしてその実を良〜く見た。

 

「分んない。 小さ過ぎて・・・」

 

その盆栽は池の底深くにあったため、なるほど付けている実は確かに見える事は見えるのだが、余りに小さ過ぎてアリスにはそれが何の実かまでは分らなかった。

そんなアリスに苦竜が言った。

 

「あれはリンゴの実だ」

 

「え!?

 

ここでアリスがもう一度、その実をジーっと見つめた。

 

「あ!? ホントだホントだ!? リンゴだリンゴだ!? リンゴの実だ!?

 

「そうだ、リンゴの実だ。 もし、あのリンゴの実を誰かが食っちまったら最後、俺達死神は・・・」

 

ここまで言って、もったいを付けるように苦竜がアリスのお顔を超アップで見つめた。

と〜っても、不気味なお顔だった。

それからニヤリと意味あり気に笑った。

これ又、ちょ〜う不気味なお顔で。

そして続けた。

 

「死ぬ!?

 

って。

 

更に言った。

 

「だが・・・。 この秘密は俺達死神以外、誰も知らねぇ。 だ〜れもだ。 そして、誰にも分りっこねぇ、だ〜れにもだ。 だからオメェはな〜んも心配する必要はねぇんだょ。 な〜んもな」

 

苦竜のこの話を聞き、

 

「そっかぁー」

 

アリスは安心した。

 

『今夜からユックリ眠れるなぁ』

 

とも思った。

 

だが、この秘密を知ったのはアリスだけではなかった。

アリスの横で眠っていた悪戯(いたずら)好きのポチも、うつらうつらしながらもこの会話を聞いていたのだ・・・シッカリと。

 

次の日・・・

 

死神界から死神の姿が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全部消えた。

 

 

 

 

 

 

#2 『死神の殺し方2』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

 

#3 『死神がリンゴを食べると・・・』

 

 

【登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

田原アリス・・・ポチの飼い主

 

死神・苦竜(クリュウ)

 

 

 

 

 

 

「死神さん達はウンチしないの?」

 

アリスが死神・苦竜に聞いた。

苦竜が答えた。

 

「あぁ。 俺達死神は飲み食いしねぇからな」

 

「フ〜ン」

 

「だが、例外が一つだけある」

 

「例外が?」

 

「あぁ、そうだ。 例外が一つだけな」

 

「どんな?」

 

「それはな・・・」

 

苦竜がチョッとだけ躊躇(ためら)った。

 

「どんな?」

 

もう一度アリスが聞いた。

 

「あぁ。 それはな・・・。 リンゴだぁ」

 

「リンゴ?」

 

「あぁ、リンゴだ」

 

「リンゴがどしたの?」

 

「人間界のリンゴだけは別物なんだ」

 

「別物って?」

 

「それはな・・・」

 

「うん」

 

「人間界のリンゴだけは・・・食える」

 

「食える?」

 

「あぁ、そうだ。 人間界のリンゴだけは俺達死神でも食えるんだ」

 

「フ〜ン。 でも、リンゴだけ何で?」

 

「決まってっだろ!! うめぇからだ!! 人間界のリンゴはうめぇ。 実にうめぇ。 だからだ」

 

「フ〜ン」

 

「でもなぁ、アリス」

 

「な〜にぃ?」

 

「これは内緒なんだヶどな」

 

「うん」

 

「食いなれてねぇもんだから、俺様以外の死神がリンゴを食うとな」

 

「フムフム」

 

「腹(はら)壊しちまうんだ」

 

「え!? 腹壊す?」

 

「あぁ、食いなれてねぇもんだから。 みーんな、げりぴーょ。 食いなれてる俺様だって、一杯食ったらチョッと危ねぇぐれえだからな」

 

「フ〜ン」

 

ここで、

 

「じゃぁな、アリス。 又な・・・」

 

苦竜は帰って行った。

その晩、アリスがその話をポチにした。

 

「へー」

 

ポチが感心してその話を聞き終えた。

 

次の日・・・

 

死神界に魔女の宅急便でリンゴがタップリ届いた。

ポチからだった。

 

その晩、死神界から死神の姿が全て消えた。

み〜んな逃げ出したのだ。

死神界がかつてない悪臭に包まれたからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

げりぴーウンチの・・・

 

 

 

 

 

 

#3 『死神がリンゴを食べると・・・』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

 

#4 『死神が怖がる物』

 

【登場人物】

 

死神・苦竜(クリュウ)

 

有栖川呑屋コマル・・・当ブログ管理人

 

 

 

 

 

「死神にも怖い物って、あるんか?」

 

有栖川呑屋コマルが死神・苦竜に聞いた。

このコマルの問い掛けに、

 

「あぁ。 ある!!

 

苦竜がキッパリとそう答えた。

 

「へー、死神にもねぇ。 死神にも怖いもんがあるんだ」

 

「あぁ」

 

「フ〜ン。 で!? 何が・・・? 何が怖いんだ?」

 

「それはだなぁ、コマル」

 

「うん」

 

「リンゴだ!!

 

「へ!? リンゴ?」

 

「あぁ、そうだ。 リンゴだ! リンゴ!! リンゴがこえぇんだ」

 

「フ〜ン。 妙なもんが怖いんだな」

 

「あぁ、こえぇ」

 

「そんなに怖いんか?」

 

「あぁ、こえぇ。 怖くて怖くて仕方ねぇ」

 

これを聞き、コマルは思った。

 

『ナイス!? いい事を聞いた!!

 

って。

 

次の日・・・

 

苦竜がアリスのお家に遊びに来た。

ポチから苦竜が来た事を聞き、後からコマルもやって来た。

コマルは手にリンゴのタップリ入っている袋をぶら下げていた。

コマルがその袋を苦竜にこれ見よがしに見せ付けた。

それから、

 

「ホレッ!? 苦竜。 怖いだろ怖いだろ」

 

そう言いながらコマルが苦竜にリンゴを投げ付けた。

それも全部だ。

 

だが・・・

 

素早くそれらをキャッチして、

 

「あぁ、こえぇ。 あぁ、こえぇ」

 

そう言いながら、苦竜が美味そうにそのリンゴを頬張った。

 

「え!?

 

コマルは驚いた。

同時に叫んでいた。

 

「は、話が違う!? 話が違うだろ、苦竜!? 何食ってやがるんだ」

 

って。

 

すると、最後の一つを美味そうに頬張りながら、

 

「だ〜から言ったろ。 こんな恐ろしいもんはねぇって」

 

苦竜がそう言い返した。

 

「ど〜こが恐ろしいんだ? 食ってんじゃねぇか!?

 

「あぁ、そうだ」

 

「なら、怖くねぇじゃん」

 

「うんにゃ、こえぇ」

 

「アホ!? だったら食うか!?

 

「いいゃ、食う。 だってな、コマル」

 

「うん?」

 

「これ食いだすとな」

 

「あぁ?」

 

「止(や)められない! 止(と)まらない!! そうなっちまうだろ。 だっからからこえぇんだ」

 

「え???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げりぴーの心配があっからな・・・」

 

 

 

 

 

 

#4 『死神が怖がる物』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

 

#5 『ヘチマの大奇跡』

 

【登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

田原アリス・・・ポチの飼い主

 

有栖川呑屋コマル・・・当ブログ管理人

 

 

 

 

 

ここはアリスのお家。

 

アリスがインターネットをやっていた。

そして PC の画面を見ながら、

 

「フ〜ン。 そんなのあったんだ」

 

ボソッと独り言を呟いた。

たまたまアリスの側を通りかかったポチがそれを聞いた。

 

「何だぁ、アリスぅ。 何があったんだぁ?」

 

「うん。 ファチマの大奇跡」

 

「え!? ヘチマの大奇跡」

 

ポチにはファチマがヘチマに聞こえたのだった。

逆に、アリスはポチがヘチマと言った事に気が付かなかった。

 

「うん」

 

「何だそれ?」

 

「良く分んない。 でも、何か凄い奇跡らしいょ。 ホント、大奇跡らしいょ、むか〜しポルトガルで起こった。 聖母マリア様が起したんだって。 10万人の大観衆の前で起こした事もあったんだって」

 

「フ〜ン。 ヘチマなぁ。 ヘチマの大奇跡・・・」

 

そんな事をブツブツほざきながらポチがお家の外に出て行った。

ウンチをしに行ったのだ。

 

次の日・・・

 

コマルがポチに呼ばれ、アリスのお家にやって来た。

アリスはいなかった。

 

「何だぁ、ポチ? 用って・・・」

 

「あぁ、チョッとやって見たい事があってな。 そんでオメェーを呼んだ」

 

「何だぁ? やってみたい事って?」

 

「奇跡だ」

 

「奇跡?」

 

「あぁ、そうだ。 奇跡だ! 奇跡!! 大奇跡だ!! ヘチマのな」

 

「大奇跡? ヘチマの?」

 

「そうだ!! ヘチマの大奇跡だ!! それをやって見たい。 アリスの話しじゃ、何かスッゲェー奇跡らしいぞ。 それを俺様とオメェーでやる」

 

「何でオイラとだ?」

 

「やり方分かんねぇから。 オメェーなら知ってっかな、って思って」

 

「知ってね。 そんなの知ってるわきゃねぇだろ。 初耳だぁ、ヘチマの大奇跡だなんて」

 

「そっかー。 でも、まぁ、なんだ。 折角来たんだ。 チョッと手伝え」

 

「『まぁ、なんだ。 折角来たんだ。 チョッと手伝えって』 お前なぁ。 知ってねぇのにどうやってやんだ?」

 

「分かんね。 ヶど、ヘチマがありゃ、なんとかなんだろ」

 

「無ッ茶苦茶、言うヤツだな。 でも、ま、折角来たんだし、手伝ってやっよ。 で? オイラどうすりゃい?」

 

「ヘチマ買って来てくれ」

 

「へ!? ヘチマねぇんか?」

 

「あぁ、ねぇ」

 

「ショウがねぇな。 じゃ、買って来てやっよ」

 

「あぁ、頼む」

 

コマルが近くの雑貨屋にヘチマを買いに行った。

30分後に戻って来た。

 

「ホレッ、ポチ!? 買って来てやったぜ」

 

「おぅ、サンキュー。 ん、じゃ、始めっとすっか」

 

ポチが買って来たばかりのヘチマの前に座った。

そして、ヘチマを繁々と見つめながらコマルに言った。

 

「オィ、コマル!?

 

「何だ?」

 

「鉢巻締めてくれ」

 

「え!? 鉢巻?」

 

「そうだ! 鉢巻だ!! 俺様の頭に鉢巻締めてくれ。 こんな事すっ時ゃ、鉢巻は必需品だろ。 だからだ」

 

「そうかぁ、必需品かぁ」

 

「あぁ、必需品だ。 で!?

 

ここでポチが両足立ちしてコマルに向け、手の平をパッてした。

 

「な!? ご覧の通り俺様は自分じゃ締めらんねぇからょ〜。 だから頼む」

 

「な〜る(ほど)」

 

コマルが納得した。

そしてポケットの中からハンカチを取り出し、それを鉢巻代わりにしてポチの頭に巻いてやった。

 

すると、ポチが目の前にヘチマを置いて、

 

「ブツブツブツブツブツ・・・」

 

ブツブツという言葉を呟き始めた。

どうやら呪文のつもりらしかった。

それを繰り返し何度もほざいた。

結構長い時間ほざき続けた。

しかし、何ら大奇跡らしい物は起こらなかった。

それでもポチは諦めず、

 

「ブツブツブツブツブツ・・・」

 

ほざき続けた。

そしてポチとコマルは大奇跡を待った。

だが、ない。

何もない。

それでもまだ、ポチは諦めなかった。

 

「ブツブツブツブツブツ・・・」

 

相変わらず、ブツブツ言い続けた。

だが、ない。

やはりない。

 

二人は段々、退屈して来た。

終にポチがコマルに言った。

 

「おい、コマル!?

 

「何だ?」

 

「俺様と変わってくれ」

 

「へ!? 変わる?」

 

「そうだ! 俺様と代われ!!

 

すると、信じられない事にこの一言が奇跡を生んだ。

ヘチマの大奇跡を。

 

その時・・・

 

「ただ今ー!!

 

アリスが帰って来た。

 

「あら、コマル!? 来てたんだ」

 

「・・・」

 

「あたしチョッと汗かいちゃったからシャワーして来るね。 覗いちゃダメだょ」

 

そうコマルに言ってから、

 

「ポチ行こ。 一緒にシャワーしょ」

 

コマルの隣りに座っていたポチをヒョイッと抱き上げ、そのままバスルームに向かった。

 

「さ!? ポチ。 一緒に入ろうね」

 

そう言いながらアリスは裸になり、ポチのお顔を跨(また)いだ。

 

その瞬間・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポチの股間がモッコリした。

 

 

 

 

 

 

#5 『ヘチマの大奇跡』 お・す・ま・ひ