#16 『教会にて』

 

 

【登場人物】

 

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

死神・苦竜

 

菅直人(かん・ちょくと)

 

海屁田万里(かいへだ・ばんり)

 

 

 

 

 

「ど、どうか直人様!! この万里めをお救い下さい!!

 

海屁田万里(かいへだ・ばんり)が菅直人(かん・ちょくと)に懇願した。

 

「ん? お救い下さい? どういう事だ?」

 

直人が聞いた。

 

「はい。 万里は今朝、死神に出会ったのです。 それも国会議事堂内で。 そしてその時、不意に死神が立ち止まり、この万里めを睨んだのです。 だからです、だからこれから・・・。 これから何としてもわたくしは、昔、自分が洗礼を受けた教会に行きたいのです。 そしてそこで神様におすがりしたいのです」

 

「教会? どこぞの?」

 

「はい。 フグスマのポール・モリヤ教会です」

 

「おぅ、そうか。 そういう事なら行くが良い」

 

と〜〜〜っても慈悲深い直人は万里に暇を与え、フグスマのポール・モリヤ教会に行かせた。

その日の午後、直人も又、国会議事堂内で死神・苦竜と出会った。

 

「ナゼ、今朝、うちんトコの万里を睨んだのかね?」

 

直人が苦竜に聞いた。

 

「睨んだ!? おりゃぁ、ヤツを睨んでなんかいねぇぜ。 驚いちまっただけょ」

 

「驚いた? 何に?」

 

「何にって、・・・。 そりゃ、オメェ。 今朝、ヤツとこんな所で出会っちまったからだ。 国会議事堂なんて、こんな所でな」

 

「ん!? 意味が・・・。 意味が分からん。 僕は原子力には詳しいんだ。 でも、常識はないんだ。 だ、だから・・・さ。 だから分るように言ってくんなきゃ・・・ヤダ!!

 

「なら。 オメェでも分るように言ってやらぁ。 俺は今夜、ヤツの命をもらう事になってるんだ」

 

そう言って苦竜がニヤッと意味あり気に笑った。

それからもう一言、こう付け加えた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フグスマのポール・モリヤ教会でな」

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #16 『教会にて』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #17 『フグスマにて』

 

 

【登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

田原アリス

 

海屁田万里(かいへだ・ばんり)

 

 

 

 

 

ここはフグスマ・・・

 

ポチを連れてアリスが歩いていた。

 

「やっぱアタシ達にはムリだったね。

 

 

つー、まー、りー、・・・

 

 

『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

だったね。 ボランティア」

 

アリスがボソッとポチに言った。

 

「そうだな。 却って足手まといになるだけだもんな、俺様たち・・・」

 

「うん」

 

「ヶどょ〜。 気持ちだけでもいいんじゃねぇか、お手伝いしようっていうその気持ちだけで・・・。 きっと、神様も分ってくれると思うぜ、オメェのその気持ち。 アイツ結構いいヤツだから」

 

「だといいヶど・・・」

 

「ダイジョブだょ。 チャーンと通じてるょ」

 

「うん。 そうだね。 通じてるょね」

 

「あぁ。 俺様が請合う」

 

「うん。 ありがと。 ポチ」

 

「へ。 改まって礼なんか言うんじゃねぇょ。 照れるじゃねぇか」

 

「うん」

 

すると、そこにヒョッコリと海屁田万里が姿を現した。

 

「お、お嬢ちゃん!! きょ、教会はどこだったかね? た、確かこの辺(へん)にあったと思うんだが・・・。 ポ、ポール・モリヤ教会。 この辺(あた)り、久しぶりに来たのと津波の影響ですっかり変わってしまっていてね、右も左も全く分らないんだ」

 

かなり慌てた様子で海屁田万里がアリスに聞いた。

 

「ぽぽーる・もりや協会?」

 

「ち、違う、違う!? ポ、ポール・モリヤ教会だ! ポ、ポール・モリヤ教会!!

 

「だから、ぽぽーる・もりや協会?」

 

「ち、違う、違う、違う!? ポ、ポール・・・。 も、もういい!!

 

万里がイライラして話を打ち切った。

 

「チ、チッキショー!! こ、この辺にあったはずなんだがー!! ど、どこだー! どこにあるんだー!!

 

辺りをキョロキョロ見回しながら万里が喚(わめ)き散らした。

そんな万里に、

 

「ぽぽーる・もりやかどうかは知らないヶど、教会ならここ真っすぐ行ったトコにあるょ」

 

アリスが教会のある方を指差した。

今、ポチと歩いて来た道沿いで見掛けた教会をアリスは教えたのだ。

 

「そ、そうか!? あ、ありがと、お嬢ちゃん」

 

アリスに礼を言うと万里は、

 

「ダーーーーー!!

 

脱兎(だっと)のごとく教会を目指した。

その慌てふためいた後ろ姿を、半分吃驚(はんぶん・びっくり)したような様子でアリスとポチが見送った。

すると、その二人 否 一人と一匹の背後から声がした。

 

「お!? 誰かと思えばアリスとポチじゃねぇか」

 

って。

 

アリスとポチが同時に振り返った。

苦竜が立っていた。

 

「あ!?

 

アリスが驚いた。

 

「お!?

 

ポチもだ。

その驚いているアリスとポチに苦竜が聞いた。

 

「何にやってんだ? こんなトコで?」

 

「うん。 ボランティア。 復興のお手伝いしよっかなって、そう思ってポチと一緒に来たんだょ」

 

アリスが答えた。

 

「あぁ。 俺様はアリスのお供だ」

 

ポチがそれに同意した。

 

「ホゥ〜、復興の手伝いとはそりゃ又、感心感心」

 

「ヶど、わたし達がいると却って邪魔になるだけだから、遠慮しちゃった。 で。 折角だからこの辺りブラブラしてたトコ、少しだヶどまだ時間に余裕あるから。 ね。 ポチ」

 

アリスがポチに話を振った。

 

「おぅ。 帰りの電車の時間までにぁ、チョッとバッカな」

 

それを聞き、

 

「おぅ、そうか」

 

苦竜が納得した。

 

「で? オメェは何しに・・・」

 

逆に、今度はポチが苦竜に聞いた。

 

「俺か? 俺は仕事だ」

 

「仕事?」

 

「あぁ。 仕事だ。 本業のな」

 

「人殺しか?」

 

「ひ、人殺し・・・って。 こらこら人聞きの悪い事言うんじゃねぇょ」

 

「でも、人殺しだょな」

 

「・・・」

 

「人殺しだょな」

 

ポチがしつこく念を押した。

 

「あぁ、そうだ。 人殺しだ」

 

渋々、苦竜がそれを認めた。

 

「なら、俺様たちはここでお別れすらぁ。 人殺しな〜んかと一緒んトコ誰かに見られたくねぇからな。 もっともオメェの姿は、俺様たちやオメェに殺されなきゃなんねぇようなスッゲェ悪(わり)ぃヤツら以外にゃ、だ〜れにも見えねぇんだヶどもょ。 んじゃ、な。 苦竜。 又な。 シッカリやれょ、人殺し」

 

ポチが苦竜に別れを告げた。

 

「おぅ、オメェもな」

 

「じゃ、ね。 苦竜。 今度はお家で会おうね」

 

アリスも別れを告げた。

 

「おぅ、アリス。 そのうちな」

 

苦竜と別れ、アリスとポチが駅を目指した。

帰りの新幹線に乗るのだ。

その後ろ姿を見送りながら苦竜は思った。

 

『人殺しかぁ。 ま。 そう言われても仕方ねぇか』

 

そしてこうも思った。

 

『ヶどょ・・・。 本音を言ゃぁ、ゴミ処理って言って欲しかったぜ、今回ばかりはな。 何せ、始末するヤツが始末するヤツだけに・・・な』

 

って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケケケケケ!!

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #17 『フグスマにて』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #18 『催眠術』

 

 

【登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

田原アリス・・・ポチの飼い主

 

死神・苦竜(クリュウ)

 

有栖川呑屋コマル・・・当ブログ管理人

 

 

 

 

 

ここはアリスのお家。

 

「おぅ。 み〜んな良く集まってくれた」

 

ポチがその場にいたアリス、苦竜、コマルに言った。

この3人はポチが急遽(きゅうきょ)呼んだのだった。

 

「な〜にぃ、ポチ。 用って?」

 

アリスが聞いた。

 

「急に呼び付けやがって。 ったく、暇じゃねぇんだぞ、俺は」

 

苦竜がぶうたれた。

 

「オイラは暇だから来てやった」

 

これはコマルだ。

 

「ま!? そんな事言うんじゃねぇょ」

 

ポチが言った。

そして続けた。

 

「今日集まってもらったのは、なんだぁ。 他でもねぇ。 オメェらに一つ、俺様が最近覚えた秘術を見せてやろうと思ってだなぁ。 だから呼んだんだ」

 

「秘術!?

 

「秘術!?

 

「秘術!?

 

「そうだ! 秘術だ!! 催眠術だ!!

 

「催眠術!?

 

「催眠術!?

 

「催眠術!?

 

「そうだ! 催眠術だ!!

 

そう言って、徐(おもむろ)にポチが鎖の付いた懐中時計を取り出した。

鎖も時計も金色だった。

そしてテーブルの上に乗り、前口上風にポチが続けた。

 

「ここに取り出だしましたるこの懐中時計。 皆様、良〜くご照覧あれ。 種も仕掛けもな〜んもござらん」

 

「そ〜んな前口上はいいからサッさとおっぱじめろ」

 

苦竜がチョッと焦(じ)れた。

それもそのはず、苦竜はこれから用事があってフグスマのポール・モリヤ教会に行かなければならないのだ。

例の用事だ。(#16#17参照)

だが、今回、その場所は教会。

そして苦竜は死神。

だからチョッとバッカ、教会には入り辛い。

そのため予めどこで殺す事になるのか、その場所を知っておく必要があった。

その下見のためにフグスマのポール・モリヤ教会まで行かなければならなかったのだ。

もっとも、最近の日本のキリスト教系の教会はキリスト教とは名ばかりで、およそ神とは無縁と思われるようなのばかりだから、徒労(とろう)に終わるのは間違いないのだが。(第一、宗教の看板隠れ蓑にして、あんな政治色のつえぇ活動してっトコに本物の神様なんている分きゃねぇし : 作者)

 

「あぁ、分った。 んじゃ、皆(みんな)この時計を良〜く見ろ。 いいか、この時計を良〜くな」

 

鎖に爪を引っ掛け、

 

「だんだん、眠くな〜る。 だんだん、眠くな〜る。 だんだん、眠くな〜る。 ・・・」

 

そう言いながらポチが時計を揺らし始めた。

3人がジッと揺れる時計を見つめた。

徐々に3人の目がトロ〜ンとし始めた。

 

「ほ〜ら、眠くな〜る。 眠くな〜る。 眠くな〜る。 ・・・」

 

終に3人共、催眠術に掛かってしまった。

その3人にポチが命令口調で言った。

 

「オメェらはこれから俺様の言う通りの事をする。 分ったら頷(うなづ)け」

 

3人がコクリと頷いた。

 

「良し!! ぅん、じゃぁ、これから俺様の言う通りの事をしろ」

 

ここまでポチが言った時、スルッと爪から鎖が外れて時計が落ちてしまった。

時計は一旦、テーブルの上で弾み、勢い余って床に落ちた。

その衝撃で文字盤のガラスが割れた。

思わずポチがそれに反応してしまった。

 

「クソッ!?

 

って。

 

す・る・と・・・

 

アリスが、苦竜が、コマルが、目を瞑ったままコクリと頷いた。

そして座っていた椅子から少し腰を浮かし、下腹部に思いっきり力を込めた。

 

次の瞬間、3人の表情が・・・

 

ウットリとなった。

 

「あ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケケケケケ!!

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #18 『催眠術』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #19 『8月31日 水曜日』

 

 

 

【登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

有栖川呑屋コマル・・・当ブログ管理人

 

 

 

 

 

アリスのお家にて・・・

 

 

ある日のポチとコマル。

 

「オィ! コマル!!

 

ポチがコマルに声を掛けた。

 

「なんだぁ?」

 

「今日、8月何日だったっけか?」

 

「ぇーっと〜。 ・・・。 忘れた。 曜日ならわかるんだヶどな、水曜って」

 

するとテーブルの上に置いてあった新聞がコマルの目に入った。

 

「オィ! ポチ!!

 

「ん?」

 

「その新聞見りゃ、分るじゃん」

 

コマルが新聞を指差して言った。

 

「おぅ、そうか。 そうだな」

 

そう言って、ポチがその新聞を繁々と見つめた。

そのまま暫らく新聞を見てから、ガッカリした様子で言った。

 

「ダメだぁ! これじゃ!! これじゃ分らん」

 

「なんでだぁ?」

 

「だってょー、この新聞」

 

「おぅ」

 

「8月30日、火曜日のだからだ」

 

「火曜!? そっかー、昨日の新聞かぁ。 じゃぁ、分かんねぇな」

 

「あぁ。 分かんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケケケケケ!!

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #19 『8月31日 水曜日』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #20 『近所のスーパーにて』

 

 

【登場人物】

 

ポチ・・・アリスのお家の人間の言葉を喋(しゃべ)る超・高ビーな天才ニャンコ

 

ご近所の奥様

 

スーパーの店員

 

 

 

 

 

近所のスーパーにて・・・

 

 

ポチとご近所の奥様がスーパーの店員に同時に味噌を注文した。

 

ポチ 「“田舎味噌” くれー」

 

奥様 「“信州一味噌” 下さ〜い」

 

田舎味噌を手にしたスーパーの店員が二人に聞いた。

 

「えーっと、田舎はどちらですか?」

 

ポチ 「オゥ!! 俺様だぁ」

 

奥様 「信州ょ」

 

店員 「え!?

 

ポチ 「・・・」

 

奥様 「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケケケケケ!!

 

 

 

 

 

 

不思議の国のポチ( POCHI IN WONDERLAND ) #20 『近所のスーパーにて』 お・す・ま・ひ