Rick's Cafe Tokio (リックス・カフェ・トキオ)』 Deluxe #16




江田三郎(えだ・さんろう)。


そぅ・・・江田三郎。


ご存じ、罠腫党(みんしゅ・とう)の “屑中の屑”、あの江田五月(えだ・ごがつ)の父親である。

この江田三郎の目に留まった直人は誘われる形で江田の立ち上げた、


『ダメ社会民主連合』


に参加する事になった。

そしてこの 『ダメ社会民主連合』 の支持の下、直人は何度か衆議院選挙に立候補するもその度に苦杯を舐め続けた。

だが、これに屈する事なくより一層決意を固め、断固チャレンジし続けた結果、終に1980年の第36回衆院選で初当選を果たしたのである。


それからの直人はトントン拍子。


1978年にダメ社会民主連合副代表就任し、1985年に副書記長と政策委員長とを兼務。

1986年における第38回衆議院議員総選挙では、ダメ社会民主連合4議席獲得の立役者となった。

そして1994年、ダメ社会民主連合を発展的に解散後、新党さきがけに入党し、後に党政策調査会長に就任。

1996年1月11日、第1次橋本内閣で厚生大臣(第74代)として初入閣。

・同年9月28日、鳩山ポッポと罠腫党を結成。 同時にポッポと共に共同代表に就任。

・同年1020日、第41回衆議院議員総選挙に東京18区より罠腫党候補として立候補し当選(6期目)。

1998年4月27日、新罠腫党の代表に就任。

1999年9月、党代表選挙で鳩山ポッポに敗北を喫しはしたが党政策調査会長に就任。

2000年、党幹事長に就任。

・同年6月25日、第42回衆議院議員総選挙で当選(7期目)。

200212月、代表選挙でフランケン岡田を破り党代表に就任。

200311月9日、第43回衆議院議員総選挙でともに旧罠腫党結党時のメンバーだった自民党公認の鳩山オトポッポを破って当選(8期目)。

2004年5月、年金未納が発覚して代表を辞任するも、20054月、法政大学大学院の客員教授に就任、講義を行う(200510月まで)。

2005年9月11日、第44回衆議院議員総選挙において、地方選挙での長年の宿敵であった土屋正忠前武蔵野市長を小選挙区で破り当選(9期目)。

2006年4月7日、党代表代行に就任。

2009年5月17日、党代表代行に再任。

・同年8月30日、第45回衆議院議員総選挙で当選(10期目)。

・同年9月16日、鳩山ポッポ内閣の副総理兼内閣府特命担当大臣に就任。

2010年1月7日、財務大臣に就任。

・同年6月4日、罠腫党第8代代表に就任され、同日、第94代内閣総理大臣指名を受ける。

・同年6月8日、天皇に任命され、内閣総理大臣に就任し、菅内閣が発足する。


とまぁ、輝かしい実績を残して行った。


しか〜〜〜し、


こんな幸運はいつまでも続くはずがない。

そぅ。

続かないのが人生という物だ。

この一見、順風満帆と思われていた直人の人生にも、やがてその風向きが変わる時が訪れた。

それは元々、政治は完璧なまでに藤四朗(とうしろう)の直人。

総理大臣の資質など微塵もない。(頭もパーだし : 作者談)

そのため国家運営は出鱈目の限りを尽くした。

加えて、なんらの経済運営もしないため 否 出来ないため景気は一気に冷え込み、悪化する一方だった。

それも急激に。

そして自身の不適切発言を含む党内のゴタゴタなどから徐々に国民の支持を失い始め、2010711日投開票の第22回参議院議員通常選挙では自身の消費税をめぐる迷走発言などが大きく影響し、金で釣られたゴミマスコミの大バックアップも空しく獲得議席はそれまでの54議席を大きく下回る44議席に留まった。

そのため参議院で過半数を失い、衆参のねじれ状態へと突入する事になってしまったのだ。


その後も党内のゴタゴタは全く収まらず、見るに堪えない権力闘争が続いたが、2010年9月14日の党代表選挙でなんとか、あのチッとも剛腕ではないが傲慢ではある(現在は罠腫党を追い出され、そのため新党の結党を余儀なくされて発足した新政党 『俺様の党』 の党首となっている)汚縄一郎(おなわ・いちろう)に勝利し、党代表に再任され、同年9月17日、菅改造内閣を発足させた。

この代表選で再選されたことにより内閣支持率は一時的に回復したが、代表選期間中に発生した尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件への対応の拙(まず)さなどから支持率は再び低下に転じた。

その状態のまま2011年1月14日、菅第2次改造内閣が発足する運びとなった。

そして政権支持率の低迷が続く中、終に直人の運命を、否、この無策政権の、否、日本の運命を大転換させる大事件が勃発する事になってしまった。



それは・・・











つづく







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3.11、東日本大震災。


あの、2011311日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)である。

そしてそれに付随する形で起こった大津波。

それが原因とみられる福島第一原子力発電所事故。(実は、報道はされなかったが地震発生直後、発電所内でキムチが一匹くたばっていたという噂が流れた。もしこの噂が事実なら、この発電所事故はキムチによる史上稀に見る大規模テロの可能性を否定出来ないのだが・・・)

これを受け、直人は内閣総理大臣として地震災害並びに原子力災害の対策の陣頭指揮に当たった。

だが、

これが素人政治の悲しさか?


「ぼ、僕は原子力には詳しいんだ!?


などと訳の分からない事をほざいてはみたものの全ての対応が後手後手に回り、しかもその対応の拙さ、不備、加えてその不十分さから日本中に甚大な被害をもたらしてしまった。

そのため党内のみならず党支持者、果ては国民から天の声、即ち、 『菅おろし』 の声が上がるという重大な事態を招く結果となった。

しかもその声の大きさたるや、ナ、ナント驚くべき事に・・嘗(かつ)て自民党の第一次安倍政権時代、閣僚の一人がチョッと顔に絆創膏(ばんそうこう)を貼っただけで、日本中が上を下への大騒ぎになったあのレベルで・・という凄まじさだった。

そしてその天の声 『菅おろし』 の大合唱から、同年8月26日。

終に、直人は内閣総理大臣の職を辞任した。

時に直人64才。

ある残暑厳しき、どんよりと曇った日の出来事であった。

そしてそれからという物、放り投げられた石が急斜面を転げ落ちるように直人は一気に転落して行くのである。


果たして20121216日。


46回衆議院議員総選挙において罠腫党は惨敗。

直人も落選。

比例復活を果たすも、如何(いか)にあのアホでマヌケでバカで、加えて傲慢、不遜、鉄面皮の菅直人(かん・ちょくと)といえども周囲の自分を見る冷たい視線に耐え切れず、終に政界引退を余儀(よぎ)なくされたのだった。

そのためそれまで表向き側近と目(もく)されていた者達も一気に手のひらを返し、まるで蜘蛛の子を散らしたかのように直人の下から離れて行った。

そして政治家としての権力、影響力を失うや、それまでの他を顧(かえり)みない独りよがりのバカさ加減から、近所、近隣住民達は疎(おろ)か通りすがりのオバチャン、社会人、学生、果てはあの今にもパンツの見えそうな短〜いスカートの JK (女子高生)にまで侮蔑の眼差(まなざ)しを向けられるようになった。

これは一人、直人のみならず家族も又、同様の扱いを受けた。

つまり、菅直人家全員が第三者から白い目で見られるようになり、まるで針の筵(むしろ)に座らされてでもいるかのような辛い生活を強いられる事になったのだ。

家にいては無言電話に悩まされ、外に出ては後ろ指を指され、その苦痛に耐えきれず家庭は崩壊し、終に一家は離散の憂き目を見るに至ってしまった。

こんな日々の連続では流石に厚顔無恥で鉄面皮、加えてどこまでも無神経なあのアホでマヌケでバカの直人とはいえ、いつまでも神経が持つはずがない。

到頭(とうとう)直人は元々病んでいた精神を更に病み、狂態を演じ始めた。

それまで散々浴びせられ続けて来た軽蔑、軽侮、侮蔑などが原因の被害妄想意識から、終に直人は家族、親戚は固(もと)より、全く無関係な赤の他人に対してまで尋常ではない暴力事件を起こし始めたのだ。

そのため逮捕起訴され、裁判の結果、第一級精神疾患患者専用の隔離病棟に強制入院させられる事となった。

そしてその拘置所のような冷たく、暗く、陰気な病室に隔離され、いつの間にか直人の思考はある一点に集中し始めたのだった。



そのある一点とは・・・











つづく







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『じー、 さー、 つー、 がー、 んー、 ぼー、 うー』


そぅ。

直人の心に集中し始めたそのある一点とは・・・


『自殺願望』


だった。

そして一度この妄想に取りつかれるや、こういった類(たぐい)の妄想は、妄想が妄想を生み日々増大して行くのが常(つね)。

直人もその例外ではなかった。

その日々募り行く自殺願望に完璧に支配された時、終に事件は起こった。


ある日・・・


直人は化粧台の鏡を見つめていた。

台の上にはこの第一級精神疾患患者隔離病棟において、そんな物をいつ、どこで、どうやって手に入れたのか全く分からないが、一本のヒゲそり用の直刃カミソリが置かれていた。

その鏡に映った自分の顔を見つめている直人の心は、奇妙に済んでいた。

ただ、それまでの人生が、思い出せる限りの幼少期から順に頭の中をまるで走馬灯のように浮かんでは消え、浮かんでは消えしていた。

しかし、それに対する懐かしさや悔しさ、後悔といった感情は全くなく、過去の色々な出来事がイメージとして浮かんでは消え浮かんでは消えしているだけだった。

だから何を思い出してもそれに囚われる事なく、目の前を通り過ぎては消えて行く過去の思い出という幻影をただぼんやりと眺めているだけだった。

その幻影をただぼんやりと眺めているだけの直人にはもう、思い残す事は何もなかった。

静かに直人は右手を伸ばし、目の前にある台の上に無造作に置かれていたヒゲそり用の直刃カミソリを手に取った。


「ギラン!!


怪しく輝くカミソリの刃。

そのカミソリを持ったままなんら戦慄を覚える事もなければ、なんの恐怖も感じる事なく、直人は自らの首の付け根の頸動脈のあるであろう位置を鏡で確認した。

鏡に映る首の表面を流れている血管は、青く微(かす)かに脈打っているように見えた。

直人は頸動脈が流れているであろう辺りを、今度は左手の人差し指で軽く押してもう一度確認した。

やはり血管は脈打っていた。

それも見た目以上に強く。

今の直人には感情感覚といった物は全く存在してはいなかった。

全て消え去っていた。

何も考える事なく、何も感じる事なく、直人は両手でカミソリを握りしめ、


「スゥ〜」


腕を右肩上方ヘ出来るだけ高く上げ、今手探りで確認したばかりの頸動脈目掛け、


「ウォーーーーー!!!!!


あらん限りの叫び声を上げ、


「ヒューーーーーン!!!!!


一気に振り下ろした。



その瞬間・・・











つづく







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『ハッ!?


直人の目が覚めた。


「え!?


周りの雰囲気が全く違うのに驚いた。


「サッ!!


急いで顔を上げると、目の前に雲竹斎の大顔面があった。


「ピタッ!!


目が合った。


「お!?


一瞬、直人が引いた。


直人は気が動転していた。

今、何が起こっているのか全く訳が分からなかった。

ただ、脈打つ心臓の鼓動の強さ速さが半端ではなく、全身冷や汗でグッショリしているだけだった。

暫(しば)し、その状態のまま固まっていた。

そんな状況が2〜3秒続いた。

だが、すぐ我に返り、


「え!? ェェェェエーーー!? こ、ここは!? ここはここはここは!?


驚きの声を上げ素早く首を左右に振って辺りを見回した。

そこはリックのお店だった。

再び、


「ゆっ・・・、夢!? いっ・・・、今のは夢だったのか!?


直人が声を上げた。

そぅ。

直人は夢を見ていたのだ。

そして、


『ハッ!? い、今、何曜の何時だ!?


素早く直人は腕時計を見た。

時計の針は、驚くべき事に “1110分” のままだった。

勿論、 “ Friday ” の。

しかも右手はまだあのグラスを持っていた。


「な、な、な、何ーーーーー!? たっ・・・、たったの1分も経ってない!? と、という事は!? え!? い、一瞬!? え!? い、今のが一瞬!?


又しても、直人が驚きの声を上げた。

直人の夢の時間は瞬間であり、たったの1分間も経ってはいなかったのだ。

しかもアルコールは抜け、酔いは醒め、完璧なまでに素面(しらふ)だった。

それまで結構それなりに飲んでいたはずなのに。


「・・・」


暫(しば)し、直人は茫然自失(ぼうぜん・じしつ)。

何も考える事が出来ぬまま、ただジッと腕時計を見つめているだけだった。

雲竹斎は直人の目が覚めたのと同時に例のブツブツを止めていた。

その雲竹斎が、呆然(ぼうぜん)として正体を失っている直人に声を掛けた。


「どうかね?」


と一言。

その声を聞き、三度(みたび)直人は、


『ハッ!?


として顔を上げ、再び雲竹斎の目を見た。

雲竹斎は温かく慈悲と慈愛のこもった、それでいてどこまでも冷徹な目で直人を見つめていた。

その視線を受け、直人はなんとなく状況が読めて来た。

自分はたったの今。

この三頭身のでぶんちょハゲの超ー、怪しいオッサン、その名も小磯雲竹斎の使ったなんらかの “技” か “術” に掛かり、あの奇妙な夢を見たていたに違いない。

それも一瞬、瞬間、刹那(せつな)の間に。

だとすれば納得が行く。

そう思った。

そして、


「フゥ〜」


大きく溜息を吐き、


「い、今の夢は先生が・・・」


感慨深げにボソッとそう呟(つぶや)いた。

そぅ、


「先生が・・・」


と。

即ち、この時、直人は初めて雲竹斎を、


『先生』


と呼んだのである。


だが、当の雲竹斎は何も答えず、ただニッコリと微笑むだけだった。











つづく







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「人生の良し悪しは、その総括。 つまりどのような死を迎えるかで決まるものなのさ」


静かに雲竹斎が直人にそう言った。

それを聞き、しみじみとそして自分に言って聞かせてでもいるかのように、


「そうですね。 出会い、恋愛、結婚、仕事、成功、出世、転落、家庭崩壊、などなど。 トントン拍子に見えても結局長くは続かず、己の運命に振り回されるだけ。 この因果応報の理。 小には小の悩みがあるように、大にもやはりそれに見合った苦しみが存在する。 今初めてそれを悟りました。 お陰さまで 『身の丈に合った生き様』、 『足るを知る事の大切さ』。 それらが今、漸(ようや)く分かったような気がします」


直人が素直にそう言葉を返した。


「ウム」


それを聞き、満足気(まんぞく・げ)に雲竹斎が頷いた。

それに反応し、直人がホッとした表情で、チョッとスッキリ笑顔で続けた。


「あ〜。 な〜んか、スッキリしたな〜。 肩の荷が下りた感じです」


「ウム」


「なんとなくやる気が出て来たぞー。 明日から生まれ変わった気分で頑張っちゃうぞ〜〜〜」


「ウムウム。 結構結構。 ワハハハ、ワハハハ、ワッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ」


「アハハハハ」


何が起こっているのか全く分からんという困惑した表情の他の二人の前で、楽しげに笑う小磯雲竹斎(こいそ・うんちくさい)と菅直人(かん・ちょくと)であった。











つづく







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