Rick's Cafe Tokio (リックス・カフェ・トキオ)』 Deluxe #21




雲竹斎は自分の目の前にいる真ん中の男の空のグラスに酒を注いでいた。

先ほど同様、ツーフィンガーだ。

注ぎ終えると雲竹斎が言った。


「さぁ、今度は君の番だ。 それを一気にグイッとやりなさい」


「はい」


一言頷き、


「グイッ!!


男は今注がれた雲竹斎の酒を一気に呷(あお)った。

飲み終えるとすぐに、


「フヮ〜ゥ」


この男も又、大欠伸(おお・あくび)をし始めた。

それも一度ならず、連続して何度も。

既に、目はトロ〜ンとしている。

先ほどの直人と全く同じだ。


男がボソッと呟(つぶや)いた。


「あれ〜。 どうしたんだろう、急に眠気が。 もうそんな時間か?」


それからこの男も又、


「チラッ!!


グラスを右手で持ったまま、先ほどの直人と同じように左手に嵌(は)めていた腕時計を見た。


「ま〜だ1115分かぁ」


そう言い終わった時にはもう、すでに両瞼(りょうまぶた)は開いてはいなかった。


一方、


雲竹斎はといえばジッとその男を見つめたまま、


「ブツブツブツブツブツ・・・」


小声で、それも隣りに座って一心不乱に聞き耳を立てていたとしても、何をほざいているのか全く分からないほど小さな声で、何にやらブツブツ言い続けていた。


その雲竹斎のブツブツがまるで子守唄ででもあるかのように、


「スゥ〜」


終に、男が眠りに落ちた。

それはそれは、深〜い深〜い眠りに。

しかも、


「グォー、グォー」


大鼾(おお・いびき)をかいて。

それも一瞬にして。


そして・・・

今、眠りに就いた男・・・

それはその名を・・・



鳩山ポッポといい、年齢は27才だった。











つづく







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Rick's Cafe Tokio (リックス・カフェ・トキオ)』 Deluxe #22




「フヮ〜ゥ」


一発、大欠伸(おお・あくび)こいて鳩山ポッポの目が覚めた。

四肢を大きく伸ばしてからユックリ上体を起こした。

そして驚いた。


『ん!? こ、ここは!? ここはここはここは!? こ、ここは一体、ど、どこだ!?


そう思いながら素早く辺りを見回した。

すると目の前にお地蔵さんの石像があった。

それを見て、


「え!? こ、ここはお地蔵さんっ家(ち)!? ん、じゃなくって地蔵堂・・・か!?


思わずポッポが口走った。


そぅ・・・


そこは古っちゃけた6畳ぐらいの大きさの地蔵堂の中だった。

気が付いたらポッポはその中で、靴を履き、洋服を着たままコンクリート張りの床の上で仰向(あおむ)け大の字になり、お地蔵さんを右に見て眠っていたのだ。

再びポッポは思った。


『お、おかしい!? たった今までリックの店で小磯雲竹斎とかいう超ー、キモ怪しいオッサンと一緒だったはず・・・。 だが、ここは・・・。 ウ〜ム。 どうなっているんだ? なんで俺がこんな所に? ウ〜ム』


などと自分のキモさ加減を棚に上げ、適当こいた。

しかも、通称・アホの菅直人(かん・ちょくと)に比べ、通称・バカの鳩山ポッポ。

ナゼか、目覚めた時の衝撃反応はトロかった。

そして、何が起きているのか全く理解出来ぬまま徐(おもむろ)に立ち上がり、


「ゥウ〜ン」


一回伸びをして、


「スタスタスタ」


3歩でその地蔵堂の扉に近付き、


「ガタッ!!


扉をあの “出目金のようなキモく飛び出たゲス丸出しの下品な目ん玉こいた超ー、不細工” な顔が表に出る分だけ開けて、


「スゥ〜」


チョッとだけ、あの “出目金のようなキモく飛び出たゲス丸出しの下品な目ん玉こいた超ー、不細工” な顔を外に突き出し、


「ギロリ」


あの “出目金のようなキモく飛び出たゲス丸出しの下品な目ん玉” で辺りを見回した。

するとそこはだだっ広(ぴろ)い野っぱらで、あの “出目金のようなキモく飛び出たゲス丸出しの下品な目ん玉” の届く範囲に人家は全く見られなかった。


「ん!? 田舎!? ここは? ここは一体、どこなんだ?」


ポッポがそう呟いた。

そこで鳩山ポッポ、初めて周りが明るい事に気が付いた。

それまでは全く気付かなかった。

通称・バカだから。

そして、


『ん!? 時間!? 今何時だ?』


そう思って腕時計を見た。

1115分だった。


1115分かぁ。 明るい所を見ると多分朝の1115分で、夜の1115分じゃねぇな」


通称・バカがそうほざいた。











つづく







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Rick's Cafe Tokio (リックス・カフェ・トキオ)』 Deluxe #23




日頃、夫婦揃って太陽パクパクなどという訳の解らん超怪しい宗教にかぶれているため、真っ当な信心など全くないポッポだったが、


『これもきっと何かの縁』


そう思い地蔵堂を出る前にお地蔵様に両手を合わせ、


「お地蔵さん。 俺はこれまで随分と一所懸命、特亜(特定アジアの事 = 中国、韓国、北朝鮮の3国)のために働いて来ました。 でも結果は御覧の通り。 金はなくなり、選挙は公認を得られず引退。 唯一、頼みの母親は俺の誕生日に死んじゃうし。 人からは国賊、あるいは売国奴呼ばわりされた上に通称・バカなどと揶揄(やゆ)され、最早、生きる気力が湧きません。 だからこれからは楽隠居し、遊んで暮らしたいと思っております。 お願いです。 どこか全く働く必要がなく、それでいて毎日毎日旨いもんをたらふく食って遊んでいられる、あの生ポ(=生活保護)生活者のような暮らしのできる所があればそこへ導いて下さい」


そう願掛けた。


す、る、と、・・・


突然、ポッポは眠くなり、


「バタッ!!


コンクリートの床に倒れ込むと、


「スゥ〜」


一瞬にして深い眠りに落ちてしまった。

それも、


「グォー。 グォー。 グォー。 ・・・」


などと大鼾(おおいびき)を掻いて。

そして、眠るとすぐにポッポは夢を見た。

お地蔵様の夢だった。

お地蔵様が夢に現れポッポに語り掛けたのだ。


「ポッポ、記憶せょ。 これからただちに大急ぎで東に向かって行くが良い。 さすれば必ず、その方の望みの所へ行けるであろう。 忘れるな。 これからただちに大急ぎでだぞ」



お地蔵様のこの言葉を聞いたその瞬間・・・











つづく







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Rick's Cafe Tokio (リックス・カフェ・トキオ)』 Deluxe #24



『ハッ!?


ポッポの目が覚めた。

そして、


「ゆ、夢!? 又、夢か〜。 ま〜たく、今日は一体どうなってんだー!? ホ〜ント訳分からん!?


などとブツブツ言いながら上体を起こし、


「ウ〜ム」


暫(しば)しポッポは考えた。

それからユックリ起き上がり、


「ウム。 奇妙な夢だったが、一丁乗ってみっか」


そう言って、


「スタスタスタ」


3歩で引き戸に近付き、


「ガタン!!


先ほどあの下品な顔一つ分開けていた引き戸を乱暴に引き開けるゃ、そのまま一気に、


「ダァーーーーー!!!!!


ダッシュで東を目指し、


「ドタドタドタドタドタ・・・」


猛然と走り始めた。


す、る、と、


ポッポの足の速い事速い事。


『お、俺って・・・。 こ、こんなに速く・・・』


その速さたるや、自分でも信じられない速さで、ウサイン・ボルト以上。

まるで何かに取り付かれてでもいるかのようで、完璧なまでに疲れ知らず。

そのまま行けば空さえ飛べるんじゃないかと思えるほどだった。

そして、


「ビューーーーーン!!!!!


トップスピードに入った時のその心地良さたるや筆舌に尽くしがたく、元気溌剌(げんき・はつらつ)、夢見心地で、


「ィヤッ、ホーーーーー!!!!!


ポッポは一気に野を突っ切り、


「トォ!!


川をジャンプし、


「タァ!!


山を越え、


「ダァーーーーー!!!!!


東へ東へと突き進んだ。

そして終に行き止まった。

そぅ。

海に出たのだ。

そこで立ち止まり、遥か大海を見渡しながらポッポは思った。


『ん!? 行き止まり!? 行き止まりじゃねぇかぁ。 フン。 なんでぇー。 チッ。 さっきのあれはやっぱりただの夢だったのかぁ』


チョッとガッカリこいたポッポであった。

そして帰ろうと踵(きびす)を返し、振り返った瞬間、近くに立っていた一件の小汚(こきたな)い掘立小屋が目に入った。

理由はハッキリしないが、ナゼかポッポはその小汚い掘立小屋が凄〜く気になった。


『ん!? あの掘立小屋。 なんか、チョッと気になる。 折角だ。 中を覗(のぞ)いてみんベぇ』


そう思い、


「ツカツカツカツカツカ・・・」


その掘立小屋に歩み寄ってガタガタの引き戸を、


「ドン!!、ドン!!、ドン!!


と激しく、


「ガンガン」


叩き、


「誰か〜? 誰かいるか〜?」


えっらそうに大声を張り上げた。

すると、


「誰じゃ〜ぃ? そげな大声出してぇ?」


そう言って一匹の婆(ばあ)が、あの基地外女の鳩山辛(はとやま・からし)そっくりの超ーキンモイ婆が顔を出した。

ポッポはその婆を一目た瞬間、ナゼか愛情にも似た強い親近感を抱き、小屋の中に入れてもらい(半ば強引に小屋の中に入り込み)、出された茶(無理矢理出させた茶)など飲みながら先ほどの夢の話をした。

婆は無言でポッポの話を聞いていた。



そして全てを聞き終えると・・・











つづく







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Rick's Cafe Tokio (リックス・カフェ・トキオ)』 Deluxe #25




「あぁ、それかぁ。 それならのぅ」


そう言って鳩山辛(はとやま・からし)似の超ーキンモイ婆(ばあ)が、


「ガタッ!!


ガタガタの戸を開け、


「チョッと外に出てみょ」


ポッポを強引に外に押し出し、


「それならあれじゃ。 きっと、あっこに見えるあの島の事じゃろ」


遠くに微(かす)かに見える島らしい物を指差した。


「え!? あの島!?


「あぁ、そうじゃ。 多分な」


ポッポが婆が指差している、遠くに小さくボンヤリ見える恐らく島と思われる物を見つめながら、


「あの島かぁ。 しかしどうやって行ったら・・・」


ボソッと呟いた。

それを聞き、婆が言った。


「あぁ。 そげな心配はな〜んもいらん」


「え!?


ポッポが振り返って婆を見た。


「波打ち際からあの島に向こうて、手を三つ打って、節を付けて大声でこう言えばえぇんじゃ。 お〜ぃ、船形さ〜ん。 船形さ〜んょー。 とな」


ぶっきら棒にそう言い残して、


「ガタッ!!


辛似婆(からし・に・ばあ)は戸を閉めて奥に引っ込んだ。

ポッポは半信半疑ながら波打ち際まで歩いて行き、言われた通りに3回手を打ち、節を付けて大声で叫んだ。


「お〜ぃ、船形さ〜ん。 船形さ〜んょー」



す、る、と、・・・











つづく







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