#61 『呆気(あっけ)なく』』の巻



勝負は呆気(あっけ)なく付いた。


「ガォーーー!!


一声激しく吼え猛(ほ・え・たけ)り、白虎が雪女に飛び掛った。


その時雪女は、死頭火に止めを刺すため既に右手五指を氷柱(つらら)に変えてあった。


そして雪女はその氷柱に変えた五指を、

まるでハリウッド映画 『プレデター』 がそのリストに装着している “鉤爪(かぎづめ)” のように、

あるいは、漫画 『筋肉マン』 に登場したキャラクターの一人、ウォーズマンの “ベアークロー” のように、

恐ろしい勢いで襲い掛かって来る白虎に突き刺した。


「ガォーーー!!


凄まじい咆哮を上げ雪女を噛み殺さんばかりに大きく口を開け襲い掛かって来た白虎のその大口の中に、

鉤爪のように、

ベアークローのように、

五指を氷柱に変えた右手を突っ込み白虎の口から後頭部に掛けて刺し貫いたのだ。


だが、












それが失敗だった。







つづく







#62 『始末した・・・』の巻



(ズボッ!!



雪女は、

残忍に吼(ほ)え猛(たけ)りながら大口を開けて襲い掛かって来た白虎を、逆にその口の中に右手を突っ込んで始末した。


・・・・・・筈だった。


だが、


その瞬間、

雪女がその右手を突っ込んだ正にその瞬間、



(ガブッ!!



白虎が口を閉じたのだ。


残念ながら、

その牙で雪女の腕を食い千切るまでには至らなかったが。


だが、

それで充分だった。

充分だったのだ、それで。

雪女が白虎の口から腕を引き抜く事が出来ない状態になったのだから。


もっとも、

それはホンの一瞬に過ぎなかったのだが。

白虎が消滅する迄の・・・ホンの一瞬に。


しかし、

それでもそれで充分だったのだ。












死頭火には・・・







つづく







#63 『背後から』の巻



突然、



(シュッ!!



何かが飛んで来た。

雪女に向かって何かが。

白虎の背後から雪女の正面に向かって・・何かが・・確かに・・飛んで来た。


死頭火だった。

それは白虎の影に隠れていた死頭火だった。


死頭火は雪女に気付かれないよう白虎の背後に身を隠し、白虎の動きに合わせながら雪女に近付いていた。

そして、

白虎が雪女の腕を銜(くわ)えた直後、軍駆馬を大上段に振りかぶり、白虎の背後から一気に飛び出し、そのまま雪女に斬り掛かったのだ。

この時死頭火は、それまで着ていた羽織袴を脱いでいたため、その豊かな胸を固定するために胸に巻かれた純白の晒(さら)しと頭に巻かれた黒い鉢巻以外、何も身に着けてはいなかった。



クッ!?


こ、これはエロい!?


Hだ!?


瑞々(みずみず)しく色白で美形の死頭火。

いまだ白髪(しらが)一つない豊かな黒髪は、時代劇に良く登場するヤンチャな姫が若武者に化ける時に結うような髪型。

その上に黒い鉢巻。

胸には真っ白な晒し。

それ以外で身に付けている物といったら両手に持つ軍駆馬のみ。

これは刺激的だ。


全裸じゃないからなおさらだ。


例えば、


全裸に手袋、あるいはスカーフ。


といった、


スッポンポンより

全裸にチョッと。


クッ!?


ククククク・・・


コ、コレ!?


コレですよコレ。


コレが最高!!



又、


腋毛はキチンと処理されていた。


だが・・・


だが・・・


だが・・・


エヘヘヘヘ。


残る・・・


イヒヒヒヒ。


残るは・・・


ウフフフフ。


・・・・・・ア・ソ・コ・の・ケ!?


ケケケケケ!!



『スズメの子 そこのケそこのケ お馬が通る』



ジャンジャ、ジャーーーン!!


み、見たい!!


こ、これは見たい!!


これは ツウ 好みだ!!


アタシ好きょ。 こういうの・・・


イャーーー、いいっすネェ。 ホンマ〜。


イャーーー、いいな〜。 このシチュエイション。


マァ!! なんて美味しい。。。




雪女は身構えようとした。

しかし、身動きが取れなかった。

白虎に腕を銜(くわ)えられたままだからだ。

そしてその白虎消滅までには、まだ僅かに時間が必要だった。


『ぬ、抜けぬ!?











雪女がもがいた。







つづく






#64 『雪女の左腕』の巻



「キェーーーィ!!


鋭く甲高(かんだか)い気合一閃、雪女の頭上高くジャンプして来た死頭火が雪女目掛け空中から軍駆馬を振り下ろした。



(ブヮーーーン!!



激しい唸りを上げながら軍駆馬が雪女を襲う。


しかし、

白虎に右腕を銜えられ雪女は動けない。



(ブヮーーーン!!



その動けない雪女の頭上目掛けて軍駆馬が来る。


終に、雪女真っ二つか!?


だが、

軍駆馬が雪女を真っ二つに断ち切ろうとしたその瞬間。

雪女が驚くべき行動に出た。



(スゥ〜〜〜)



自由に動く左手を頭上に上げ、振り下ろされた軍駆馬を左上腕で受け止め、頭をガードしたのだ。

しかし、唯ガードしたのではない。

雪女はその左腕の肩から指先までを氷に変えていたのだ。



(ブヮーーーン!!



軍駆馬が雪女の腕を捕らえた。


死頭火の腕を持ってすれば、本来ならそのまま一気に腕ごと雪女を真っ二つに出来たであろう。


だが、

今の死頭火は既に満身創痍。

残念ながら普段の力を発揮するまでには至らなかった。



(ガキ!!



軍駆馬は雪女の氷の左上腕に食い込んだ所で止まってしまった。

それは雪女の左上腕を叩き割り、体を脳天から真っ二つにするまでには至らなかった。



(ズサッ!!



軍駆馬の柄を握ったまま死頭火が着地した。

雪女の右腕に食い付いている白虎の脇にだ。


しかし、

その軍駆馬の刀身は雪女の氷に変わった左上腕に食い込んでいる。


雪女は雪女で左腕はその状態。

右腕は死頭火の白虎に銜(くわ)えられたまま。


お互い身動きが取れない。


雪女と死頭火。

死頭火と雪女。


二人は睨(にら)み合った。

互いの息が掛かる距離で。












そして・・・







つづく






#65 『逆立つ髪』の巻



(バババババ、バーーー!!



再び雪女の長髪が逆立った。


そのまま勢い良く顎を上げ頭を大きく後ろに倒した。

髪を後ろへ大きく振りかぶったのだ。



(バシッ!!



豊かな黒々とした長髪の先が雪女の背後の地面に積もった雪を打った。


次の瞬間、

雪女は架空の目の前の人間に頭突きを食らわすように頭を振り下ろした。



(ブヮーーーン!!



恐ろしい唸り音を発して死頭火目掛け雪女の髪が回転して来た。

狙いは死頭火の背中。


危うし死頭火!?


さぁ、どうする!?











だが・・・







つづく