#6 『女切刀呪禁道(めぎと・じゅごんどう)』の巻



「最近、日本全国で連続して起こっている、首もぎ取り猟奇殺人事件の続報です。 本日午前8時ピコピコ県ポコポコ郡ペケペケ村山間部の山小屋で又、首から上がもぎ取られた惨殺死体(ざんさつ・したい)が発見されました。 事件は、遺体の状況から昨夜9時から今朝(こんちょう)3時の間に起こったものと見られ・・・」


テレビのニュースを見終えた後、中道が改めて里人全員を大広間に集め緊急集会を開いた。

樵親子殺害事件がニュースで報じられた一週間後の事だ。


中道の家は・・・


チョッと古いヶど、テレビアニメ 『最強の弟子ケンイチ』 に出て来る “梁山泊”。 あるいは、 『風のスティグマ』 の “神凪綾乃(かんなぎ・あやの)のお家” のようだった。

(一々説明スンのメンド〜〜〜ッちいので、上記をご参照の上適当にご想像下さい。 最近テレビあんま見ないからあたらすいの知らんし・・・ワシ。 アハハハハ・・・ つーこって、高床式風・純和風建築のオッキィィィお家どぇーーーす : 作者)



「皆も知っておろう、ここ数日のあの猟奇殺人事件は妖女(ようじょ)・雪女の仕業と思われる。 ついては今後どうするか。 皆の意見が聞きたい」


中道が切り出した。


品井山 孟是を筆頭に里人達が口々にその考えを言い始めた。


「この事件の解決は、警察には無理かと思われる・・・」


「元来、妖怪はいかなる武力を以ってしても倒せるものではありません。 呪力を持ってのみ・・・」


「そうです。 妖怪退治は我等、女切刀の里に住む者にしか無理かと・・・」


1400年続いた女切刀の里に住む我等のみが出来る・・・」


「女切刀呪禁道1400年の歴史にかけて、我等が倒すべきと・・・」


 ・・・


等々。











様々な意見が飛び交った。







つづく







#7 『破瑠魔内道』の巻



瞬間、


それまで夫々の思いを語り合う声でざわついていた大広間が、



(シ〜〜〜ン)



水を打ったように静まり返った。

里人の一人が言った次の一言で。


「しかし相手は妖女・雪女。 果たして我等に勝ち目はあるのだろうか?」


それを聞き、



(クヮッ!!



それまで目を瞑(つむ)り黙って皆の意見に耳を傾けていた中道が大きく目を明け、口を開いた。


「その通りじゃ。 思い返せば3年前。 当時、女切刀呪禁道1400年、随一の技の使い手と思われていた我が破瑠魔家嫡男、破瑠魔内道(はるま・ないどう)を以ってしても打ち破れなかった相手。 果たして我等全員で掛かっても敵(かな)うかどうか・・・」


「ウ〜ム」


「ウ〜ム」


「ウ〜ム」


 ・・・


再びその場は静まり返った。

居合わせた者達全員が3年前の出来事を思い出していたからだ。

3年前の壮絶な出来事を。


そぅ・・・











3年前の凄絶な “雪女 vs 破瑠魔内道の戦い” を。







つづく







#8 『雪女 vs 内道』の巻



「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、・・・」


満身創痍(まんしんそうい)の内道が肩で息をしている。

猛吹雪の中で。


妖女(ようじょ)・雪女。 

その圧倒的強さの前に女切刀呪禁道1400年、随一の技の使い手と誰もが認めた破瑠魔内道が全身傷だらけだ。

両目は雪女の激しい攻撃により潰され、受けた無数の傷口からは鮮血が滴り落ちている。

無尽蔵のエネルギーを持つ雪女に対し、如何(いか)に達人とはいえ生身の体の破瑠魔内道。

勝負の鍵は時間だった。

雪女を倒すには短期決戦、それしかなかった。

つまり、

戦う時間が長引けば長引くほど内道にとって不利だったのだ。

達人、破瑠魔内道。

中肉中背、年齢30前後、引き締まった体形、整った顔立ちで美男。

だが、

その内道、既に立っているだけでやっと。

残すは気力のみ。


時は・・・昭和のある年7月、土用の丑の日、丑の刻。

場所は・・・女切刀の里。

戦いは・・・既に30分超。

始めは互角以上、若干内道有利の展開を見ていたが徐々に内道が押され始め、事ここに至っている。

しかも内道の立ち位置が悪い。

一歩後ろは断崖絶壁。

文字通り “崖っぷち” に立たされている。

勝負は既に見えていた。

最早、内道に打つ手なし。

それは誰の目にも明らかだった。



(ニヤッ)



その内道を見下(みお)ろし見下(みくだ)し含み笑いを浮かべて雪女が言った。


「破瑠魔内道とやら、ワラワを相手に良くぞココまで戦(たたこ)ぅた。 褒めて遣(つか)わす。 だが、それもこれで仕舞いじゃ」


そう言うが早いか雪女は、五指を鋭い氷柱(つらら)に変えた右手を左肩まで振り上げ、一気に、



(スパー!!



内道に向け振り下ろした。

氷柱に変わった指は雪女の手から抜け、



(ビュー!!



吹き矢の矢のように素早く内道目掛けて飛んで行く。

狙いは内道の胸。

心臓の位置。

それは正確に飛んで来る。


『ダ、ダメだ!! 避け切れん!!


それまで固唾(かたず)を飲んで見守っていた、この戦いのために内道に付き従った女切刀の里選り抜きの戦士13人全員が顔を背けた。

最早、内道の負けは誰の目にも明らか。

残るは決着の瞬間を待つのみ。

皆、それを見るに忍びなかったのだ。


そして、

雪女のこの五指氷柱(ごし・ひょうちゅう)が内道の胸を捉(とら)える・・・











そう思われた次の瞬間。







つづく







#9 『神剣』の巻



(ギラン!!



内道が手にしていた大太刀を抜いた。

既に満身創痍で瀕死状態、両目は潰され気力のみで立っている内道が手にしていた大太刀を抜いたのだ。

長さ凡(およ)そ1メートル、重さ約5キロの大太刀を。


内道が抜いた大太刀。

それは、

その名を “神剣・軍駆馬(しんけん・いくさかりば)” といった。

(これは、 『・・・いくさ・かりば』 と読んじゃいます。 『・・・いく・さかりば』 とは切らんで下され : 作者)



そして、内道が信じられない行動に出た。



(クヮッ!!



それまで瞑(つむっ)っていた両目を、雪女に潰されまだ血が滴り落ちている両目を 『クヮッ!!』 っと見開き、飛んで来る氷柱を睨み付けた。

最早見えない筈の両目で氷柱を睨み付けたのだ。


そして、



(ブヮーン)



素早く抜いたばかりの神剣・軍駆馬(いくさ・かりば)を振るい、



(カンカンカンカンカン)



飛んで来た五指氷柱を全て跳ね返すと直ぐさま軍駆馬を持ち替えた。

素早く刃を上に向けその中央部近くを下から掴み、残った気力を振り絞り、


「キェーイ!!


気合一閃(きあいいっせん)軍駆馬を雪女目掛けて槍投げの槍のように投げ付けた。



(ビヒュ〜〜〜ン!!



軍駆馬が飛ぶ、妖女・雪女(ようじょ・ゆきおんな)目掛けて。

それは一直線に雪女の胸目掛けて飛ぶ。

一方、雪女も五指氷柱を投げ付けた直後。

まだ体勢が整っていない。


そこへ、



(ビヒューン!!



軍駆馬が一直線に信じられない速さで飛んで来た。

まるで太刀その物が意思を持ち、その意思が自分自身が飛ぶ事を意図したかの如く。


『クッ!? 速い!! か、かわせぬ!!


雪女は思った。


次の瞬間、



(ドスッ!!



胸に突き刺さった。

雪女の胸に。


「ヒグァーーーーー!!!!!


雪女が悲鳴を上げた。

そのまま悲鳴を上げながら雪女がのた打ち回る。

乳(チチ)をプルンプルン揺すりながら、いや、ブルンブルン振り乱しながら雪女がのた打ち回っている。

着ている白衣(しらごろも)から右乳がハミチチだ。 先っぽまで見えてるぞーーー!!



          ノ´⌒`ヽ 

      γ⌒´      \

     .// ""´ ⌒\  )

     .i /  \  /  i )    

      i   (・ )` ´( ・) i,/    

     l    (___)  |      

     \    `ー'  /       

.      /^ .", ̄ ̄〆⌒ニつ   ピンクだ!? (キリッ!!

      |  ___゛___rヾイソ⊃   

     |          `l ̄        奇麗な・・・  

.      |         |         



妖女・雪女。

傷口からは一滴の血も流れない。

だからエロい、このシチュエーションは。

そのハミチチを激しくブルンブルン振り乱して雪女がのた打ち回っているのだ。

雪女がブルンブルンと激しくハミチチを振り乱してのた打ち回っているのだ。


雪女は必死に軍駆馬を抜こうとした。

だが、

相手は神剣。

普通の剣とは違う。

例え雪女と言えども簡単に扱えるような代物(しろもの)ではない。

加えて雪女の右手の指は抜けたまま、まだ完全に復元されてはいなかった。

だから、

抜こうにも抜けない。


「キィィィィィーーーーー!!!!! リィィィィィーーーーー!!!!!


相変わらず悲鳴を上げながらハミチチをブルンブルン振り乱してのた打ち回る雪女。



ウ〜ム。 エ〜〜〜乳や。


雪女と言えば “抜けるような色白、黒々とした長髪、スラッとして美形、そして経を書いていない純白の経帷子(きょうかたびら)の似合ういい女” と相場が決まっている。


加えて “チチプリン”。


しかも “さきっぽハミチチ”。


それを “ブルンブルン”。


クッ!? タ、タマラン!!



だが、

残念ながら内道は、こんな美味しいシチュエイションを見る事はなかった。


なんとなれば、

太刀を・・・神剣・軍駆馬を投げた弾みで足を滑らせ、



(ズルッ!!



「ゥアーーーーー!!


そのまま崖から真っ逆様(さかさま)・・・











渓谷の奥へ奥へと落ちてしまったからだ。







つづく







#10 『内道の遺体がないどー』の巻



雪女は消えた。


地面には内道によって投げられ雪女の胸を刺し貫いた、神剣・軍駆馬(しんけん・いくさかりば)が転がっているだけだった。

あの猛吹雪もいつしか完全に収まっていた。

当然だ。

季節は夏真っ盛り、真夏の夜の出来事だったのだから。


時は午前3時丁度。

丑の刻から寅の刻への境目。

辺りはまだ暗い。


崖から落ちた破瑠魔内道の遺体が見当たらない。

落ちた先は深い渓谷。


「内道様ー!!


「内道様ー!!


「内道様ー!!


 ・・・


内道に随従した女切刀の戦士達が必死になって探している。

だが、見つからない。

暗い上に足場が悪い。

しかし、諦めるものは誰一人いない。

全員が内道の無事を祈る気持ちで探し続けた。


「内道様ー!!


「内道様ー!!


「内道様ー!!


 ・・・


午前5時を回ったのか?

徐々に夜が開け始めて来た。

空が白々し始めた。


そこへ、この戦いのために避難していた里人達を破瑠魔中道が引き連れて戻って来た。

中道達は、使いとして走り、そして一足先に再びこの場所に戻った13人の戦士の内の一人から一言『終わりました』とだけ告げられていた。

従って、まだ詳しい状況は把握出来てはいなかった。

使いの戦士が何も語らなかったのは、結果が曖昧で現場を見なければ理解し難(にく)かったからだった。


そして、一人ここに残り番をしていた戦士に中道が聞いた。


「勝ったのか?」


「はい。 恐らく」


「恐らく? 恐らくとはどういう事じゃ?」


「はい。 雪女は内道様の軍駆馬に胸を突き抜かれ七転八倒の苦しみを味わった後消滅いたしました」


「ならば勝ったのではないのか?」


「それが少々腑(ふ)に落ちない点が」


「腑に落ちない点?」


番をしていた戦士が、軍駆馬が転がっている辺りの地面を指差して言った。


「はい。 いかに妖女(ようじょ)とはいえ、その死に際して何らかの痕跡を残す筈。 しかしアレ。 アレをご覧下さい。 雪女はなんら痕跡を残す事なく消滅致しました。 それが少々不自然に思われまして・・・。 ですから、勝利の狼煙(のろし)も上げられず又、軍駆馬も中道様に見て頂くまではとそのままにしてあります」


「じゃが、雪女の引き起こす吹雪は収まっておるではないか?」


横から品井山 孟是が聞いた。


「はい。 確かに吹雪は雪女消滅と同時に・・・」


中道が辺りを見回した。


「内道は? 内道はどこにおる?」


「はい。 ・・・」


戦士は口ごもった。

表情が暗い。

それを見て中道は状況を察した。


「そ、そうか・・・」


「い、いや。 まだハッキリ死んだとは・・・。 今、我等残りの者皆で全力で探しております」


「済まぬのぅ。 頼む」


中道はガックリと肩を落とした。

そしてユックリと軍駆馬に近づき拾い上げ、慎重にその周辺を見て回った。

辺りには戦士の言ったように雪女の痕跡は全くなかった。

一渡(ひとわた)り調べた後で、

恐らく内道が軍駆馬を抜いた時そうしたのであろう、崖っぷちの地面に刺さっている鞘を引き抜きそれに軍駆馬を収めた。







つづく