#141 『永眠呪縛返し』の巻



「ゥグッ!! ゥオオオオオーーー!! ・・・ グハッ!!


終に蛮娘が吐血(とけつ)した。


蛮娘は今、盗み出した女神像を前に世にもおぞましい、恐るべき呪術を行っている。


『魔道主覚醒(まどうしゅ・かくせい)』 


という名の戦慄し、背筋も凍るような呪術を・・・


それは遥か昔、奥村玄龍斉矢刃影(おくむら・げんりゅうさい・やはえい)によって掛けられた秘術・永眠呪縛の法により霊体と霊魂を分離され、永遠の眠りに付いている冥府魔道主、即ち魔界の女王(じょおう) “悪苦鎖魔輪鎖萬鎖(おく・さまわ・さまんさ = オーク・サマーワ・サーマンサー)” の霊魂をこの世に覚醒させると言う 『永眠呪縛返し(えいみんじゅばくがえ・し)』 の秘法である。


冥府魔道主である魔界の女王 “悪苦鎖魔輪鎖萬鎖(おく・さまわ・さまんさ = オーク・サマーワ・サーマンサー)” の霊体は既に消去され完全に消え去っている。

つまり、冥府魔道主は仮に目覚めたとしてもそのままでは復活する事が出来ない。

これを復活させるためにはその依り代(よ・り・しろ)となるべきエネルギー体が必要だった。


そのため蛮娘は今、自らの体内の胎児をその依り代とすべく小太刀で己(おのれ)の腹を真横に、横一文字に、掻(か)っ捌(さば)いているのだ。

その姿はまるで、江戸時代の武士の切腹を思わせた。


あの呻き声はその余りの痛さから発していたのだ。


そして蛮娘は、

終に、己の腹を掻っ切るや、



(ズボッ!!



自らの腹の中に両手を突っ込み、腹の中を探った。

既に胎児のためにある羊水(ようすい)は出尽くしている。


「ゥグァー!!


余りの苦痛のため悲鳴を上げながらも、


「ハァハァハァ・・・」


蛮娘は止めようとはしない。


「ゥグァー!!


喘ぎ、絶叫しながらも腹の中を探る蛮娘。


「ハァハァハァ・・・」


恐るべき執念だ。


愛するに足(た)る男と出会い、互いに愛を誓い合い、一度は結ばれ、そして捨てられたオンナの執念だ。


「ゥグァー!!


三度目の悲鳴を上げた直後、


終に、



(ピクピクピク・・・)



まだ完全には人間の形を成してはいない、しかし確実に生命を持ち動いている胎児をつかみ出すと、そのために予め開けて置いた女神像が手に持つ萬奴羅(ばんどら)の箱の中にそれを放り込み、蓋を閉じた。


「ハァハァハァ・・・」


腹を掻っ捌いている間に出していた呻(うめ)き声が、掻っ切った腹の中を探っている時に上げた叫び声が、今は喘(あえ)ぎ声に変わっている。


次に蛮娘は、

羊水は出尽くし大出血している今掻(か)っ切ったばかりの腹に、着ている服の上から強くサラシを巻いて止血し、


『自霊呪縛(じれい・じゅばく)』


の呪法に入った。


「ハァハァハァ・・・」


その喘ぎ声は一層大きくなっていた。


だが、

決して止めようとはしない。


蛮娘、今や半死半生。

白目を剥(む)き、口を大きく開け、激しく荒い息をしている。

見るからに苦しそうだ。

口から涎(よだれ)も垂(た)れている。

まるでハリウッド映画の有名キャラクター 『エイリアン』 のように。


蛮娘、既に力尽き、まだ生きているのが不思議な程だ。

最早、意識もあるのかないのか分からない。


あるとハッキリ断言出切るのは、


唯一つ。


執念のみ・・・











か?







つづく







#142 『心臓部分』の巻



(ガリガリガリ・・・)



蛮娘(ばんじょう)はフラフラしながらも立ち上がり、盗み出した女神像の目を先程自らの腹を掻(か)っ捌(さば)いた小太刀で刳(く)り貫(ぬ)き始めた。


先ず左目。

次に右目。

この順に。


蛮娘の血塗(ちまみ)れの手が触れたため、奇麗に白一色で染め上げられた女神像の所々に真っ赤な血が付着している。


そぅ・・・


蛮娘の血が。


目を刳(く)り貫(ぬ)き終えると、今度は女神像の胸を、丁度その心臓部分を、同じように刳り貫き始めた。



な、何をする気だ蛮娘!?


一体何を!?



「ハァハァハァ・・・」


相変わらず激しい息遣(いきづか)いだ。


だが、決して止めようとはしない。


その目は白目を剥(む)き出し。

歯を食い縛った唇からは八重歯がはみ出している。

それがまるで牙のようだ。


体はフラフラ状態。

立っているのがやっと。

その体を支えるために、女神像に体を預け、左腕を女神像の右肩に掛け、右手でその心臓部分を刳(く)り貫(ぬ)いている。



(ボタッボタッボタッボタッボタッ・・・)



サラシを巻いた腹部から出血した血がしとどに滴(したた)り落ちる。

その血が、ベットリと女神像に移り、それが台座を通じて床に垂れる。


その光景は、見るも無惨でおぞましい。


だが、


「ハァハァハァ・・・」


蛮娘は止めない。



(ガリガリガリ・・・)



体に力を入れる事も出来ずにいるのに、意識も飛んでしまっているのに、ただ執念のみで女神像の心臓部分を刳り貫き続けている。



(ガリガリガリ・・・)



蛮娘は止めない。



(ガリガリガリ・・・)



蛮娘は・・それを・・止めない。


否、止めようとはしない。











決して・・・







つづく







#143 『目を』の巻



(ガリガリガリ・・・ピタッ!!



終に、女神像の心臓部分に握りこぶし二個分大(にこぶん・だい)の大きな丸い穴が開いた。


「ハァハァハァ・・・」


蛮娘は喘ぎ声を上げながらもまだ、左腕を女神像の右肩に掛けた状態で体を預けたままだ。

そして女神像に穴を開けるため右手で握っていた小太刀を、



(ドスッ!!



今開けたばかりの心臓部分の穴に突き刺した。


次に、

蛮娘は血塗れの左手を広げ、



(カッ!!



両目を見開き、



(ジィーーー)



その広げた左手の指先を見つめ、親指、人差し指、中指、薬指、小指の順に目を動かした。

そして丁度何かをその五指で摘(つま)むように、指をつぼめた。

それからそのつぼめた五指先をユックリと顔に近付け、カッと見開いたままの左目に当てた。


な、何をする気だ蛮娘!?


ま、まさか!?


まさかその指で・・・











その指で自分の左目を・・・!?







つづく







#144 『あとまだ一つ』の巻



(ズボッ!!



蛮娘がその左手五指先を自分の左目に突き刺した。


「ヒグァーーー!!


激痛に悲鳴を上げる蛮娘。


そして、



(ブチッ!!



左目を抉(えぐり)り取った。


「ハァハァハァ・・・」


喘ぎながら蛮娘は今抉り取った自らの左目を、



(グチョ!!



予めくりぬいていた女神像の左目の穴に瞳が表になるように押し込んだ。


更に蛮娘は、今と同じように右手五指の指先を自らの右目にあてがった。



こ、今度は右目か? 蛮娘!?



(ズボッ!!



蛮娘がその右手五指先を自分の右目に突き刺した。


「ヒグァーーー!!


再び激痛に悲鳴を上げる蛮娘。


そして、



(ブチッ!!



右目を抉(えぐり)り出した。


「ハァハァハァ・・・」


喘ぎながら蛮娘は今抉り出した自らの右目を摘(つま)んだまま、右手手の平の月丘(げっきゅう)部分で予めくりぬいていた女神像の右目の穴を探り、その場所がハッキリするとそこに左目同様、



(グチョ!!



瞳が表になるように押し込んだ。


「ハァハァハァ・・・」


蛮娘の上げる喘ぎ声がまた一段と大きくなった。


終に蛮娘・・・両目なし。

そこからは血が滴り落ちている。

加えて、

腹は先程掻(か)っ切ったため内臓はグチャグチャ。

当然、大出血。


まだ生きているのが不思議な程だ。


まだ生きているのが・・・


だが、

我々は忘れてはいない。


蛮娘が女神像に開けた穴は全部で三つ。

そのうち二つは既に埋まった。

左目・・と・・右目。


しかし一つ、あと一つ。


そぅ・・・


まだあと一つ残っている事を。


女神像の心臓部分に、握りこぶし二個分大(にこぶん・だい)の穴が・・・











開いている事を。







つづく







#145 『蛮娘の恨み』の巻



妖(あやし)の女・蛮娘(ばんじょう)が女神像の右肩に掛けてあった左手を外した。

フラフラしながらも何とか仁王立ちになった。

右手で着ている着物の襟を掴(つか)み左肩を出した。

今度は左手で同じ事をして右肩を出した。

それまで着ていた着物は両肩の支(つか)えがなくなり、



(バサッ)



垂れ下がった。

それが腹部に巻いたサラシに止められた。

上半身のみ露(あらわ)になった。


当然、チチ 「コンニチハ」 だ。




          ノ´⌒`ヽ 

      γ⌒´      \

     .// ""´ ⌒\  )

     .i /  \  /  i )    

      i   (・ )` ´( ・) i,/    

     l    (___)  |      

     \    `ー'  /       

.      /^ .", ̄ ̄〆⌒ニつ   デカイ!? (キリッ!!

      |  ___゛___rヾイソ⊃   

     |          `l ̄         

.      |         |         




デ、デカイ!!


デカクて形がいい!!


牛チチだー!!


牛チチだー!!


牛チチだー!!


ピンクの乳輪の大きさもいい感じだゾー!!




          ノ´⌒`ヽ 

      γ⌒´      \

     .// ""´ ⌒\  )

     .i /  \  /  i )    

      i   (・ )` ´( ・) i,/    

     l    (___)  |      

     \    `ー'  /       

.      /^ .", ̄ ̄〆⌒ニつ   ピンクだ!? (キリッ!!

      |  ___゛___rヾイソ⊃   

     |          `l ̄        奇麗な・・・  

.      |         |         




乳首も奇麗なピンクだー!!


色白の肌に乳輪と乳首のピンクがベストマッチングだーーー!!




次に蛮娘は・・・


左手で女神像の右肩を押さえ、女神像の心臓部分に刳(く)り貫(ぬ)いた穴に差してあった小太刀を右手で引き抜いた。

それを両手に持ち替えた。

刃を自分に向けて。


そしてユックリと、



(スゥ〜)



刃を自分に、自分の胸に向けたまま小太刀を掴んでいる両手を前方に突き出した。


それから


「スゥ〜〜〜」


一度大きく息を吸い。


「ハァ〜〜〜」


静かに吐いた。


そして、



(クヮッ!!



血だらけでくぼみだけになった両目を大きく見開いた。


次の瞬間・・・


凄まじい形相で、不気味な形相で、蛮娘が叫んだ!!


「おのれおのれおのれーーー!! 破瑠魔人道ーーー!! 覚えておくのじゃーワラハ(ワラワ)の恨みーーー!! この恨みーーー!! 覚えておくのじゃーーー!!


それから


「スゥー、ハァー!! スゥー、ハァー!!


激しく二度息を吸い、吐いた。


最後にもう一度


「スゥー!! ゥップ!!


激しく息を吸いそこで止めた。











そして・・・







つづく