#151 『復元』の巻



『人は死して後(のち)何処(いづこ)へ向かうのか?』



筆者は時々これを考える。


実を言うとこのブログを立ち上げた切っ掛けというか?

目的というべきか?


は、


この手の話を真剣 且 真摯(しんし)に話し合える読者との出会いを求めたからだ。

残念ながら現在、まだその所期の目的を果たせてはいないが。


しかし、


幸いこういったブログを運営するという事は普段使用しない頭を使うため、脳味噌のシワを大いに刺激してくれるので当分続けるつもりではいる。



さて、本題に入ろう。


『人は死して後(のち)何処(いづこ)へ向かうのか?』


筆者は時々これを考える。


その参考に資するかと思い幾多の宗教書を散見した事もあった。

幾多の宗教書といっても、今にして思えばその殆(ほと)んどが所謂(いわゆる)新興宗教の教祖本、あるいは奇をてらったその手の解説本だった。

それが相当数に上った。


その結果が如何(どう)だったかといえば、


『結構な金額と時間の無駄をした』


つー、まー、りー、・・・


『無駄ーーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


をしただけだった。


即ち、


『得る物なし』


という結果に終わったのだ。


もっとも、今でも捨てず大事に 否 そこそこ大切に本棚のコヤシにしている物もある。


少し埃を被ってはいるが・・・


よって、


全く無駄だった訳ではない。


殆(ほと)んど無駄だったに過ぎない。



余談はここまでにして結論を述べよう。


『人は死して後(のち)何処(いづこ)へ向かうのか?』


これに対する筆者の考え、


それは・・・


こぅだ!!


『“意識の海” に向かう』


である。


つまり筆者は、地縛霊や浮遊霊といった物の存在を疑問視しているのだ。


しかし全く認めていないという訳ではない。


事実、


『アッ!? コレは先日亡くなったあの人の霊の働きだな、きっと・・・』


と思えるような事を過去何度か経験しているからだ。


だが、巷間(こうかん)よく言われるような、


「アッチに地縛霊」


「コッチに浮遊霊」


等々。


コレを疑問視しているのだ。


確かに、人は死して後一定期間この三次元世界に留まるかも知れない。


だがそれが過ぎれば、やはりその場に留まったりあるいは消滅したりというよりも本来行くべき場所があり、そこへ行くのではないかと思惟(しい)する。


そこを、その場所を筆者は


『意識の海』


と、象徴的な概念で捕らえている。






(ドックン!! ドックン!! ドックン!! ・・・)



女神像にはめ込まれた蛮娘の物であろうと思われる心臓が脈を打っている。

それも驚くほど力強く。



(ゾーーー!!



そのあまりのオドロオドロしさに玄天達はその場で凍て付いていた。

しかしあまりの不気味さ故、却(かえ)ってその光景から目を切る事は出来なかった。


だが、次の瞬間、

全員腰を抜かさんばかりに驚いた。

というのも、それまで皆をにらみ付けるように、



(クヮッ!!



目を見開いていた女神像が、



(パチリ)



1回瞬(まばた)きをしたのだ。


するとみるみるうちに女神像の胸が元通り奇麗に修復されて行くではないか。

それはまるでハリウッド映画 『ターミネーター2』 で新種のターミネーターが、壊れても直ぐに元通り復元するシーンを髣髴(ほうふつ)とさせた。


そして


「アッ!?


という間に元の女神像に戻って仕舞ったのだ。

しかもそれまで全身に付着していた真っ赤な蛮娘の血も、まるで何事もなかったかのように完全に消えてしまっていた。

後(あと)に、その変化を愕然として見つめる玄天達と蛮娘の死体を残して。


コレが 『自霊呪縛の法』 だ。


蛮娘はこのような身の毛もよだつ恐ろしい行為により、絶命する正にその最後の瞬間、自らの全生命エネルギーをこの場に、この三次元世界に留まるという強烈な思い、執念、怨念に変え自らの霊体を女神像に縛り付けたのだ。

そしてそれに見事成功したのだった。


しかし、

我々はまだハッキリと覚えている。

蛮娘が行なった呪術がこれだけではなかった事を。

蛮娘はもう一つ、確かもう一つ呪法を修した筈だ。


そぅ・・・


『魔道主覚醒』 のための 『永眠呪縛返し』 の呪法を。


だがこれは?


これはどうなったのか?

果たしてこれも見事成功させていたのだろうか?

自らの腹に宿した破瑠魔人道の胎児の命と引き換えに行なったあの呪術。


あの呪術?


あ、れ、は・・・


あれは一体・・・











如何(どう)なったのであろうか?







つづく







#152 『深淵の縁から』の巻



「フフフフフ・・・」


笑い声が、

何かをせせら笑う声が、

何かを楽しんで、せせら笑う声が・・・・・・する。


真っ暗闇の中から・・・


深淵の縁(しんえん・の・ふち)から・・・


その何かを楽しんで、せせら笑う声は・・・・・・した。


そして、


「フフフフフ・・・」


もう一度。


真っ暗闇の中から・・・


深淵の縁から・・・


その何かを楽しんで、せせら笑う声はしたのだ・・・・・・間違いなく。


突然、



(ギラッ!!



真っ暗闇の深淵の縁で何かが光った。

何かが二つ。


そぅ・・・


真っ暗闇の深淵の縁で静かに何かが二つ開き、それが開ききった瞬間、何かが二つ光った。


獰猛な野獣の・・・

冷酷な人間の・・・

目のような何かが、



(ギラッ!!



光ったのだ。











不気味に・・・







つづく







#153 『シモベ』の巻



「・・・」


声?


声が聞こえる。


真っ暗闇の中から・・・


深淵の縁から・・・


男の声とも女の声ともつかぬ声が。

笑い声と共に。


「フフフフフ・・・。 妖の女・蛮娘・・・か? フン。 面白い。 面白いぞ。 妖の女・蛮娘。 フフフフフ・・・」


再び同じ無感情、平板な声が聞こえた。

笑い声と共に。


「フフフフフ・・・。 蛮娘ょ。 我がシモベ蛮娘ょ。 良くやった。 良くやったぞ。 それで良い。 見ょ。 我が覚醒を。 ワレの覚醒を。 だが、まだ不足だ。 これではまだ不足だ。 我が復活にはこれではまだ不足だ。 こんなチッポケな寄り代(よ・り・しろ)では我が復活にはまだまだ不足だ。 だが、覚醒は出来た。 お前のお陰でな。 それで良い。 充分だ。 今はこれで充分だ。 蛮娘ょ。 我がシモベ蛮娘ょ。 覚えておけ。 お前のお陰でワレはこうして覚醒した。 しかし寄り代がチッポケだ。 チッポケ過ぎる。 強大なワレの力を取り戻すにはまだまだ時間が掛かる。 ・・・。 千年、千年だ。 千年必要だ。 ワレが元通りの力を取り戻すまでには。 よって千年待て。 千年待つのだ我が復活を。 その女神像に取り付いてな。 我が復活の時までその女神像に取り付き乗っ取るのだその女神像を。 そして千年後、お前は復活した我が力により生まれ変わるのだ。 人間に。 人間の女にな。 そしてお前は冬に生まれ、15の春を詠(うた)い、15の夏を謳歌(おうか)し、15の秋を楽しむ。 そして15の秋を楽しんだその次の冬。 お前が正に16になったその日。 ワレはお前の霊体を喰らってお前と同化しお前の体を使って復活する。 お前としてな。 フフフフフ・・・。 蛮娘ょ。 我がシモベ蛮娘ょ。 良くやった。 良くやったぞ。 お前の願いは聞き入れた。 確かに聞き入れたぞ。 願い通り、破瑠魔を討ってやろう。 願い通りに、お前の願い通りにな。 フフフフフ・・・。 蛮娘ょ。 我がシモベ蛮娘ょ。 良くやった。 良くやったぞ。 フフフフフ・・・」


こ、この声は!? この声は一体・・・?


『ハッ!?


も、もしや!?


こ、これは!? この声は・・・!?


という事は、


つ、終に魔道主、冥府魔道主(めいふ・まどうしゅ)。


終にあの冥府魔道主覚醒・・・











か?







つづく







#154 『取り戻した記憶』の巻



大道は取り戻していた。

忘れ去っていたここ数週間から今に至るまでの記憶、その全てを。

確かに大道は忘れ去っていたここ数週間から今に至るまでの記憶、その全てを取り戻していたのだ。


あの女切刀の里出陣前、父、覚道の明かした破瑠魔の流れ。


即ち、

破瑠魔一族第一祖、破瑠魔天道の話。


次に、

これ以後、破瑠魔の跡取りの妻は破瑠魔一族から娶(めと)らねばならぬという仕来(しきた)りを捨てる切っ掛けとなった大事件、千年前に起こったあの破瑠魔人道と妖の女・蛮娘の物語。


そして、

同じ先祖を持ちながら、また同じく呪術の家系でありながら敵味方に分かれた破瑠魔と妖の因縁談。


しかも、

大道から見て500年前からその存在が闇の中に消えた妖。


如何(いか)に御門(みかど)に、朝廷に、仕えているとはいえその間に二重三重に人を介し、その存在を伏せ、歴史の裏舞台で暗躍してきた破瑠魔。


それら全てを今、大道は思い出していた。


加えて、


ナゼ自分は今ここに、この場所にいなければならないのかを。

それも一人自分のみならず、既に失った精鋭二十九人がナゼ、共にこの場所に来ていたのかを。

加えて女切刀にいる筈の父、覚道達がナゼ今、この場所にいるのかを。

又、

男のみならず女までもが女切刀(めぎと)の戦闘服、即ち羽織袴装束を身に纏(まと)っているのかを。

もっとも、出で立ちは皆同じだが服の色は大道が赤、覚道が青、他は皆白ではあったが。


それらの事全てを大道は今、思い出していた。


ここは重磐外裏(えばんげり)の里から二山(ふたやま)越した山林の中。


そして何よりも重大な記憶。

即ち、覚道が言った魔王権現の神託。

それに関する父、覚道との会話。



  ★   ★   ★



「・・・。 実は十日ほど前、魔王権現様のご神託があったのじゃ。 そしてそのご神託により今現在妖が何処(どこ)におるのかが明らかとなった。 終に明らかとなったのじゃ」


「して、彼奴等(きゃつら)は今、何処(どこ)に?」


「あぁ。 今・・・。 彼奴等は、妖一族は、中東(なかあずま)の国は湯田山脈(ゆだ・さんみゃく)の重磐外裏(えばんげり)の里に隠れておる」


「中東の国? 湯田山脈? 重磐外裏の里?」


「そうじゃ。 中東(なかあずま)の国は湯田山脈(ゆだ・さんみゃく)の重磐外裏(えばんげり)の里じゃ。 既に、ワシが密かに飛ばした式神(しきがみ)がその所在は確認済みじゃ。 あの稀代の烈女、妖の女・蛮娘を生み出した妖一族の子孫はそこに今、隠れ住んでおる。 盗み出した女神像と共にな」


「して、魔王権現の信託は・・・? 神託は何と?」


「ウム。 魔王権現の信託、それは・・・。 『妖を討て』 じゃ」



  ★   ★   ★



という神託に関する記憶全てを・・・大道は今、取り戻していたのだ。


そして、 「・・・。 『妖を討て』 じゃ」 といった直後に父、覚道が加えた驚くべき一言も。


そぅ・・・


その一言とは・・・











「・・・。 『妖を討て』 じゃ。 妖の姫御子(ひめみこ)と共に、女神像の手に持つ箱と共に」







つづく







#155 『敵総大将』の巻



「敵の総勢三十。 我が方も又、ワシを含めて総勢三十。 全くの五分と五分。 真に恐るべき相手であった」


大道が皆に向かって話し始めた。


ここは重磐外裏(えばんげり)の里から二山(ふたやま)越した山林の中。


横から覚道が口をはさんだ。


「あの精鋭二十九(にじゅうく)名がそう安々と倒されるとは・・・」


覚道の方に向き直り大道が答えた。


「否、父上。 個々の力は我が方が上でござった」


他の者達がこの二人のやり取りを黙って聞いている中、再び覚道が。


「然(しか)らばナゼ? ナゼ皆討ち死に致したか?」


「敵方にただ一人、恐るべき秘術を心得た者がおったからでござる」


「秘術? 詳しく申してみょ」


「ハッ!! 父上。 始めは我が方が圧倒的に有利。 終始押し気味に戦(たたこ)ぅており申した。 一人が二人三人を倒すという具合に。 これならば某(それがし)の出る幕はなさそうだ。 そう思い安堵(あんど)致しており申した。 ところが、ある時。 ある時を境に形勢が一気に逆転する事と相成ったのでござる」


「そのある時とは?」


「先程申した秘術を使う者が現れた時」


「その秘術を使う者とは一体誰(たれ)じゃ」


「その者の名は妖 玄丞(あやし・げんじょう)」


「妖 玄丞?」


「然様(さよう)。 妖 玄丞。 敵方の総大将でござる」


「して? 其奴(そやつ)の見せたその秘術とやらは一体如何(いったい・いか)なるものか?」


ここで大道は、


「スゥ〜〜〜。 ハァ〜〜〜」


一度大きく深呼吸をした。


そして、


「それは・・・」 











と続けた。







つづく