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#246 『ハンター』の巻
(ビュービュービュ~~~)
突然、
吹雪の勢いが増した。
「アヮアヮアヮアヮアヮ・・・」
「アヮアヮアヮアヮアヮ・・・」
「アヮアヮアヮアヮアヮ・・・」
「アヮアヮアヮアヮアヮ・・・」
4人はまだ尻餅をついたまま汚面の首を指差しながら、言葉にならない声を上げている。
お漏らしの方は既に全部出し切っていた。
そこへ、
「アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ、・・・」
女の笑い声が聞こえて来た。
上空からだ。
4人はそのままの格好で空を見上げた。
すると、
信じられない事に自分達の頭上4~5メートルの空中を女が旋回していた。
女は4人を観察しているようだった。
そのまま4人の頭上4~5メートルの空中に止(とど)まった。
その女は純白の和服に身を包み、抜けるような色白で黒々とした豊かな長髪をしていた。
しかも、胸元からチョッピリはみチチのいい女だった。
パッチリとした艶っぽく濡れた瞳は黒曜石を思わせた。
しかし不気味に輝いている。
その黒曜石を思わせる不気味に輝く濡れた瞳が下目使いに4人を見下ろしていた。
顔に薄ら笑いを浮かべて。
だが、目は笑ってはいない。
4人に冷たい視線を浴びせ掛けている。
氷のように冷たい視線を・・・4人に。
(ペロ~リ)
女は下目使いに4人を見下しながら、意味有り気にユックリと舌先で軽く結んでいた唇と唇の間を舐めた。
その姿はまるで狩を楽しむハンターのようだった。
そぅ。
胸元チョッピリはみチチ・ハンターだ!!
「ヒェッ!?」
「ヒェッ!?」
「ヒェッ!?」
「ヒェッ!?」
4人は尻餅をついたまま後退(あとずさ)りした。
と言ってもホンの僅(わず)かだが。
こんな時、本来ならば4人とも気が動転している筈だ。
だが、人間という生命体はこのように人が空中に止(とど)まり、不気味に輝く瞳で見下ろされると言った未知の現象に直面すると、思考が停止してしまうものらしい。
如何(どう)反応してよいか分からないからだ。
今がそうだった。
今、この4人に出来る事と言ったら、頭上に止まっているチョッピリはみチチの濡れた瞳のエエ女を呆然と見つめる事。
ただ、それだけだった。
勿論、はみチチに反応してモッコリなんかせずに 否 出来ずに。
しかしそんな4人だが、その時一つだけ本能的に理解していた事があった。
それは・・・
自分達は今、ここで、この場所で、このはみチチ・ハンターに、間違いなく殺される・・・
という事だった。
・
・
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・
・
つづく
#247 『ブチッ!!』の巻
(ビュービュービュ~~~)
(ビュービュービュ~~~)
(ビュービュービュ~~~)
「ヒ、ヒェ~~~!? よ、寄るなー!! 寄るな寄るな化け物ー!! 寄るなーーー!! ゥア~~~!!」
(ブチッ!!)
「ゥ、ゥアー!? た、助けてくれー!! 助けてくれー助けてくれー助けてくれー!! ゥア~~~!!」
(ブチッ!!)
「ゥ、ゥアー!? よ、寄るな寄るな寄るなーーー!! ゥア~~~!!」
(ブチッ!!)
「アヮアヮアヮアヮアヮ!? ゥア~~~!!」
(ブチッ!!)
「アハハハハハ、アハハハハハ、アハハハハハ、・・・」
(ビュービュービュ~~~)
「アハハハハハ、アハハハハハ、・・・」
(ビュービュービュ~~~)
「アハハハハハ、・・・」
(ビュービュービュ~~~)
(ビュービュービュ~~~)
(ビュービュービュ~~~)
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・
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・
つづく
#248 『ニュース番組』の巻
「こちら現場からの中継です。 一週間前、ここ、ペケペケ県とポコポコ県の県境にあるピコピコ山登山中行方不明になった登山隊5名は、一週間にわたる懸命な捜索にも拘らず依然行方は不明のままです。 県警本部の発表によりますと、現場の様子から5人はここ数日連続して起こった地崩れに巻き込まれたのではないかと見られ、これ以上の捜索はムダとの結論に達し、
つー、まー、りー、・・・
『無駄ーーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
との結論に達し、本日を以って捜索隊は解散と決定した模様です。 又、現場付近は最近季節外れの大雪が降ったという情報も寄せられております。
尚、登山隊5名は同じ高校の同窓生で休みを利用しての登山だったとの事です。
5人の氏名および年齢・職業は以下の通りです。
古館伊痴呆(ふるたち・いちほう)さん 28歳 お笑い芸人。
邪腹総一郎(じゃはら・そういちろう)さん 28歳 ピンク映画男優。
永 雲助(えい・くもすけ)さん 28歳 坊主。
鳥肥糞太郎(とりごえ・ふんたろう)さん 28歳 なんちゃって芸人。
汚面智昭(おづら・ともあき)さん 28歳 アホ。
以上。
現場からの中継でした」
これを受け、テレビ番組 『ワイルド・ビリデス・サゲマント』 メイン・キャスターの小壁蝨 真汚子(こだに・まおこ)さまが言った。
「ハァ!? 真夏に大雪ですか? そんな事って有るんでしょうかねぇ、滓谷(かすや)さん」
コメンテーターの滓谷誠彦(かすや・まさひこ)さまが応えた。
「これもここ数年見られる異常気象ですかねぇ? 地球が温暖化でもしてるんでしょう、きっと。 なにせ政府自民党が危険団子仰山好き(きけん・だんご・ぎょうさん・ずき = 利権談合共産主義)ですから」
これを聞き、横からやはりコメンテーターの吉永みじん子(よしなが・みじんこ)さまが口を挟(はさ)んだ。
「エッ!? 温暖化で大雪? キケンダンゴ? ギョウサン・・・?」
滓谷がみじん子に向かって言った。
「みじん子さん。 本気でコメントしちゃダメダメ。
つー、まー、りー、・・・
『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
どうせテレビのニュースですょ、テ、レ、ビ、の、ニュ、ー、ス。 適当適当。 それで良いんですょ、適当で。 どうせテレビのニュースなんですから。 アハ、アハ、アハハハハハ・・・。 ナダ(灘)だー、ナダナダおらナダだー!!」
ニッコリ笑って小壁蝨が応じた。
「そぅそぅ。 テレビのニュース、テレビのニュース。 いい加減いい加減。 ちぅごくちぅごく、ちぅごくイッチバーン!! アハ、アハ、アハハハハハ・・・」
みじん子も笑顔でほざいた。
「ウムウム。 そうでしたそうでした。 どうせテレビのニュース、テレビのニュース。 罠種痘(みんしゅとう)を守らにゃ、罠種痘を守らにゃ。 孤立するー孤立するー!! アハ、アハ、アハハハハハ・・・」
こ、れ、は、
ある日の仄々(ほのぼの)としたテレビのニュース番組。
時々耳にする内容だ。
出ているメンバーもアレばっかの・・・
当然、このニュースはここ女切刀の里でも放映されていた。
だが、
この時、事の重大性に気付いた者はまだ誰もいなかった。
そぅ、誰も。
これが一年後、自分達の身に降りかかって来る災いの前触れだという事をこの時分かっていた者は、まだ誰もいなかったのである。
この時には・・まだ・・誰も。
さしもの女切刀の里と言えども・・・
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・
・
つづく
#249 『総括 その1』の巻
雪女は聞いた。
汚面智昭さまに。
「ソチか厨子を開けたのは?」
と。
ナゼか?
それは・・・
それより遡(さかのぼ)る事500年前・・・
刺客、破瑠魔大道から逃れた妖の姫御子・雪は、魔王明神本殿に飛んだ。
飛行夜叉の術で。
その時大道は知っていた。
その夜、子(ね)の刻、妖の姫御子・雪に何者かが乗り移るという事を、それもかつてない程恐ろしい何者かが。
それを妖 玄丞(あやし・げんじょう)の言(げん)で知っていた。
だが、同時に雪もまたそれを直感していた。
言葉で明確に理解していた訳ではなかった。
しかし、その恐るべき直観力でそれを感じ取っていたのだ、何者かが自分を必要としているという事を。
故に、まるで吸い込まれるかのように魔王明神本殿に飛んだのだった。
本殿に入るや否や、雪は即座に女神像と入れ替わり萬奴羅(ばんどら)の箱を手に持ち、変わり身の術を用いその女神像に化けた。
それは来るべき子の刻に備えるのと同時に、いずれ大道が後を追って来るに違いないという読みも有ったからだった。
しかし、雪はナゼそんな手の込んだ真似をしたのだろうか?
大道を圧倒する呪力を持つ雪が?
その理由は簡単だ。
雪は冥府魔道主(めいふ・まどうしゅ)、即ち、あの魔界の女王(じょおう) “悪苦鎖魔輪鎖萬鎖(おく・さまわ・さまんさ = オーク・サマーワ・サーマンサー)” の魔力によってこの世に生を受けた。
そしてその魔道主にとって、雪は純粋な性質(たち)でなければならなかった。
その肉体を支配するためには。
そぅ・・・
魔道主が乗り移る、あるいは取って代わるという事は、その精神を魔道主が操る事を意味する。
そのためその対象物となる者の人格は素直でなければならず、我執が強くてはダメなのだ。
つー、まー、りー、・・・
『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
なのだ。
従って雪に与えられた人格は天真爛漫で純粋、生きて行く上での必要最小限の欲望を有するのみだった。
皮肉な事にヒトと戦ったり、況(ま)してや傷つけたり殺したりといった事の出来るような感性は、雪には全く与えられていなかったのだ。
だが、その代わりに特別に与えられていた物があった。
それは魔道主の受け皿となるのに相応(ふさわ)しいエネルギーだった。
このため雪は何ら訓練を受ける事もなく、いとも簡単に変わり身の術を使う事が出来たのだ。
否それどころか、生まれながらにして伝説の大技・飛行夜叉の術さえ身に付けていたのだった。
つまり、あの時大道は妖の姫御子・雪を・・・
斬ってはいなかったのである。
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つづく
#250 『総括 その2』の巻
ならば、
大道が女神像の胸を軍駆馬で刺し貫(つらぬ)いた時、確かに血飛沫(ちしぶき)が上がったが、それはナゼか?
その訳は・・・
それより遡(さかのぼ)る事一千年前、妖の女・蛮娘(ばんじょう)が自らの命と引き換えに行なった恐るべき呪術により、女神像の体内で蛮娘の心臓が生き続けていたからに他ならない。
又、大道が胸を刺し貫く前に女神像が瞬(まばた)きしたのも同じ理由からだ。
これらに大道は幻惑され、間違いなく妖の姫御子・雪を討ったものと勘違いした。
もし、もう少し大道に余裕があれば、女神像の首を刎ねた時におかしいと気付いた筈だ。
だが、あの時大道には全くその余裕がなかった。
神殿の状況が大道にその余裕を与えなかったのだ。
そして本殿からの大道脱出の直後、即座に雪は “変わり身の術” を解き厨子の扉を閉めた。
それは驚くべき呪術を行なうためだった。
それまで雪は、呪者としての訓練を何も受けてはいなかった。
しかし、生まれつき身に備わっていた天稟(てんぴん)の才(ざえ)により何らの指導も受けてはいなかったにも拘(かかわ)らず、あの時雪は驚くべき呪術を瞬間的にやってのけてしまったのである。
その驚くべき呪術とは・・・
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つづく