#311 『反撃』の巻



(ビシビシビシビシビシ・・・)



再び土の壁が出現した。

今度は内道の目の前に。

内道がバリヤを張ったのだ。

壁のバリヤを。

五指氷柱避けの壁のバリヤを。



(ドスドスドスドスドス)



五指氷柱(ごし・ひょうちゅう)がその壁のバリヤに突き刺さった。

ここまでは内道の狙い通りだった。


だが次の瞬間・・・


今度は内道が、


『ハッ!?


となった。


背後に気配を感じたからだった。

何かが飛んで来る気配を。

その気配を感じると同時に体が反応していた。



(クルッ!!



振り返っていた。

すると目前に、



(ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ)



何かが迫っていた。

何かが。


五指氷柱・・・か!?


そぅ、それは五指氷柱だった。

五指氷柱が迫っていたのだ。

そこには雪女の左手五指氷柱が、内道の背後から飛んで来ていた。

雪女は先に投げ付けた五指氷柱がブロックされると分った瞬間、直ぐさま内道の背後の上空に飛び、反撃を開始していたのだ。

そしてそこから、内道の背後から、左手五指氷柱を放っていたのだ。

内道は自らが造った壁が返って邪魔になり、雪女の次の動きが見えなかった。

そこに五指氷柱が飛んで来ていた。

しかも狙いは正確。

一直線で内道の胸。

それも心臓目掛けて。

これが雪女の恐ろしさだなのだ。


『クッ!?


内道は焦った。

最早、新たな壁を造っている余裕など全くない。

五指氷柱の方が早い。


さぁ、どうする内道?


これを避け切れるのか?


さぁ、どうなんだ内道!?


しか〜〜〜し、











次の瞬間・・・







つづく







#312 『念法・・・』の巻



『ハッ!?


再び、雪女は驚いた。

予期せぬ出来事が起こっていた。


突然、



(スゥー)



内道の体が壁の中に吸い込まれるように消えたのだ。


ど、どうした内道!?


何だ何だ!?


何をした!?


何だったんだ、今のは・・・?


そ、れ、は、壁抜け・・・念法・壁抜け。


それは五大力・五輪の内の地輪の使い手、即ち、大地の戦士・破瑠魔内道の最も得意とする技の一つ・・・念法・壁抜けだった。


自在に大地を操る事の出来る内道にとって、その大地から生じた壁を抜ける事などいとも簡単なのだ。

勿論、生身の体のまま抜けたのは言うまでもない。


そこへ、



(ドス、ドス、ドス、ドス、ドス)



五指氷柱が飛んで来た。

そして、全てその壁に突き刺さった。


「クッ!? 猪口才(ちょこざい)な。 じゃが、いくら壁で避けても所詮は地べた。 どうやらソチの得意は地べたの技。 ならば地べたに着かぬワラワを攻むるのはムリ。


つー、まー、りー、・・・


『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


守るのがやっとじゃ。 違うか内道? どうじゃ、何か申してみょ」


雪女が壁越しに大声で内道を挑発した。

雪女は動こうとはしない。

間を取っている。

そうしながら両手の指が復元するのを待っているのだ。


「・・・」


内道は返事をしなかった。


「如何(いかが)致した内道、何か申してみょ」


再び雪女が声を張り上げた。


「・・・」


相変わらず内道からは何の反応もない。


そして・・・


雪女の指が復元した。











それと同時に・・・







つづく







#313 『念法・壁抜け』の巻



とりあえず、ここで解説しておこう。


念法・壁抜けとは・・・


ントー。


どうしよっかなぁ。


いくつか考えついちゃんたんだょなぁ、これがぁ。


ントー。


どれか一個に決めないとなぁ。


ントー。


ど〜れにしよっかなぁ。


ントー。

ントー。

ントー。


ヨッシャーーー!!


これじゃ、これ!?


これに決めー!!


ウン。


知っての通り、内道は五大力地輪の戦士。

地輪の戦士は “大地” を自在に操る。

よって内道は、大地から生み出した物を巧みに扱える。


即ち、


今、内道の眼前には土の壁がある。

これは内道自らが造った物だ。

よって内道はこの壁を自在に操れる。


つまり内道は瞬時にこの壁を割り、そこを抜け、直ぐさま閉じたのだ。


これが念法・壁抜けなのである。


って、

誰でも思い付くような、

ツマンナイ技の解説でオジャリますたのでアリンス。。。(一応、三段論法だピョン)







つづく







#314 『そこに・・・』の巻



(シュッ!!



雪女が壁の反対側上空に飛んだ。

内道がいる筈の壁の反対側上空に。

そして氷柱(つらら)に変えた右手五指を振り上げた。


その瞬間・・・


又しても雪女は、


『ハッ!?


とした。


そこにある筈の内道の姿がない。

いる筈の内道がいない。


雪女は思った。


『ど、どこじゃ!? どこにおる!?


その時、



(ガサッ、ゴソッ)



雪女の背後遠くで音がした。



(サッ!!



反射的に雪女が振り返った。

一言こう言ってから。


「ヌッ!? そんな所におったか」


と。


だが、











そこに・・・







つづく







#315 『雪ダルマ』の巻



そこにも内道の姿はなかった。


しかし、その代わりに降り積もった雪で出来た・・雪女の引き起こしている吹雪により、それまでに降り積もった雪で出来た・・等身大の倒れた雪ダルマのような物がそこにあった。

即座に雪女はそれに気付いた。


突然、



(ガサゴソ・・・)



それが動いた。

僅(わず)かにではあったが。


「ヌッ!? そこか!!


そう言うなり雪女が右手五指氷柱を放った。



(スパー、スパー、スパー、スパー、スパー)



五指氷柱が一直線に飛ぶ。

倒れた雪ダルマに向かって。



(ドス、ドス、ドス、ドス、ドス)



全弾命中!?


それと同時に雪ダルマの動きも止まった。

それを見て雪女がそれまで止(とど)まっていた上空から下りて来た。



(スゥ〜〜〜、 スタッ!!



静かに着地した。



(ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、ズサッ、・・・)



ユックリと雪を踏みしめ雪ダルマに近付いた。

こう言いながら、


「散々手間を取らせおって。 どれ、ザマを見てくれようぞ」


そして雪ダルマの表面の雪の一部を左手で撥(は)ねた。

右手の指はまだ復元してはいなかったからだ。


瞬間、雪女の顔が怒りで引き攣った。


「ヌッ!? こ、これは土じゃ、土の塊じゃ」


それは土の塊だった。

大地の戦士・破瑠魔内道操(あやつ)る所の土の塊だったのだ、それは。

しかし、雪女には先程の雪だるまが土の塊だったなどとは分からなかった。

自分自らが降らせている雪が返って仇となって。


みるみる雪女の顔が上気した。

怒りに燃えて、上気した。

そして叫んだ。


「おのれ、内道ー!! 謀りおったなぁ」


だが、











その時・・・







つづく