#316 『含み笑う声』の巻



「その通りだ!!


背後から声がした。

雪女の背後から。



(クルッ!!



雪女が素早く振り返った。

だが、

内道の姿は見当たらなかった。


「クッ!? 何処(どこ)じゃ内道!? 何処におる!?


雪女が声を荒げた。


「フフフフフフ・・・」


笑い声がした、内道の。

それも含み笑う声だけが。

だが、

内道の姿は何処(どこ)にもナイドー。


雪女は素早く辺りを見回した。

しかし、辺りに内道の姿は見当たらなかった。


「クッ!? 何処じゃ内道!? 何処におる!?


再び雪女が声を荒げた。


しかし、


「フフフフフフ・・・」


あるのは内道の含み笑う声だけった。











そして・・・







つづく







#317 『見えない内道』の巻



「さっきお前は地べたがどうこう言っていたな。 ならば聞こう。 今お前は何処にいる?」


見えない内道が雪女に問い掛けた。


「クッ!?


一瞬、雪女は一言唸っただけで何も言えなかった。


しかし、直ぐさま気分を切り替えた。

ここが雪女の凄さだ。

雪女は言った。


「あぁ、確かにソチの言う通りじゃ。 じゃが、宙に舞えば前と同じじゃ」


そして、再び飛び上がった。

上空5メートルの位置に止(とど)まった。

そのまま下を見下ろして言った。


「愚か者め」


だが、


「愚か者はお前だ。 雪女!!


見えない内道がすかさず言い返した。











その瞬間・・・







つづく






外道外伝 “妖女(あやしめ)” 第四部 「戦略編」 #318 『何かが』の巻



(ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、ビヒューン、・・・)



何かが、雪女目掛けて飛んだ。

黒っぽい何かが、数多く。

雪女の背後から。

だが、雪女がそれに気付いた様子は全くなかった。


そして、



(ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、・・・)



それらはそのまま一気に雪女の背後から、正確に雪女の背中を捉(とら)えた。

鈍い衝撃音と共に。


「グハッ!?


何が何だかわからぬまま、一声呻(うめ)いて雪女が吹っ飛んだ。


追い討ちを掛けるように、更に数多い何かが雪女目掛けて飛んで来た。



(ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、ドコッ、・・・)



再びそれらが雪女の体にヒットした。

今度は正面からだった。


「グハッ!?


雪女が呻いて吹っ飛んだ。


そして、



(ヒューーー!! ドサッ!!



背中から地上に落下した。


これは堪(こた)えた。

あの最強の妖怪・雪女と言えども、これにはかなりのダメージを受けている。


雪女は、何とか仰向(あおむ)けから体勢を入れ替え四つんばいになった。

だが、起き上がれない。

否、それどころか顔も上げられない。

俯(うつむ)いたままだ。

全身に力が入らないのだ。

さしもの雪女も顔を歪め、苦悶の表情を浮かべ、痛みを堪(こら)えている。


「ゥググッ!?


雪女が苦しそうに唸った。


そして、顔はそのままで目だけを動かして周りを見回した。











すると・・・







つづく







#319 『転がっている物』の巻



『ハッ!?


雪女は、自分が倒れ込んでいる辺りに転がっている物を見て驚いた。

思わず言葉が口をついて出た。


「ヌッ!? こ、これは・・・。 このような物でワラワを・・・」


そこには・・雪女の周りには・・小さい岩と言うべきか?

或いはチョッと大き目の石と言うべきか?

大は握り拳(こぶし)大から、小は小指の先ぐらいの大きさの様々なサイズの石と言うか岩と言うか、そういった物が転がっていたのだ。

それも数(かず)少なからず。

その時雪女の周りには、様々な大きさの石、或いは岩といった物が数少なからず転がっていたのである。


あたかも大きな岩が砕け散ったかのように。


そぅ・・・


あたかも大きな岩が、大小様々な大きさに砕け散ったかのように。











そこへ・・・







つづく







#320 『まるでプレデターのように』の巻



突然、



(スゥー)



雪女の前方5メートル付近に人間の、それも男のシルエットが浮かび上がって来た。

初めは薄ボンヤリと。

それが徐々に人の形となり、終にはチャンとした男の姿に変わった。


その男の姿・・・それは内道だった。


その変化の仕方は、まるでハリウッド映画 『プレデター』 に於いて光の屈折のプロテクターで姿を消していたプレデターが、それを解除して徐々に姿を現すシーンを思い起こさせた。


しかし、ナゼそれまで内道の姿が見えなかったのだろうか?


その理由は簡単だ。


内道は “現身隠(うつしみ・がく)しの呪符” を使っていたのだ。


だが、知っての通り念法は同時に二法は使えない。

従って内道が別の技を使った時点で、この “現身隠しの呪符” はその効果を失ってしまう。

もっとも、地べたをガサゴソとチョッと動かす程度なら内道にしてみれば大した事ではないのでその心配はない。

しかし強力な念力技ともなれば話は違う。

そして今、内道は別の強力な念力技を使ったのだった。

現身隠しの呪符を無効とするほどの。



(ヒラヒラヒラヒラヒラ・・・)



一枚の紙切れが宙に舞う。

何か記号か文字のような物が書かれた紙切れが・・・一枚。

それは・・呪符・・現身隠しの呪符だった。

内道がたった今、手放したばかりの。


その内道が雪女を見下ろして言った。


「そぅだ、その通りだ!!



(キッ!!



雪女が顔を上げ、内道を睨み付けた。


「クッ!? 小癪(こしゃく)な真似をー!!


雪女はまだ四つんばいのままだ。

予想以上のダメージを負っている。


「見たか雪女。 我が秘技を」


「ヌッ!? 我が秘技じゃとぉ・・・?」


「そうだ雪女。 これが我が秘技・・・」


そぅ・・・


この時内道は秘技を使っていたのだ。

大地の戦士にしか使えない秘技を。











現身隠しの呪符を無効とするほどの秘技を・・・







つづく