#326 『究極奥儀』の巻



総仕上げは・・・天井だった。



(ゴゴゴゴゴォーーー!! ガッシャーーーン!!



最後に天井が閉じた。

雪女を取り囲んでいる岩盤の壁の上に。


今、正に、突如出現した雪女を取り囲んでいる岩盤の壁の上に天井が張られた所だ。

厚さ1メートル・・幅、大凡(おおよそ)10メートル・・その高さは50メートル以上は優にある・・矩形(くけい)をした雪女の四方を取り囲んでいる頑強な岩盤の壁の上に、それと同じボリュームを持つ天井が。


そんなゴツくて分厚い岩で出来た壁と天井を持つ構造物が、突如出現したのだ。

素早く、一気に。

まるで大地から、ニョキニョキ生(は)え出たかのように。

それも一瞬にして。


その姿は、まるで巨大な岩盤で造られた超高層マンションを思わせた。



(ゴクッ!!


(ゴクッ!!


(ゴクッ!!


 ・・・


静かにジッと戦況を見守っている13人の戦士達が生唾(なまつば)を飲み込んだ。


こう思いながら、


『だ、大岩盤城結界(だいがんばんじょう・けっかい)だ!?


『大岩盤・・・。 大岩盤城結界だ!?


『内道様の大岩盤上結界だ!?


 ・・・


と。


そぅ・・・


これは・・この構造物こそは・・地輪の戦士・破瑠魔内道の究極の必殺技であり・・この必殺技・・それは・・その名を・・


『女切刀呪禁道究極奥儀・大岩盤城結界(だい・がんばんじょう・けっかい)』


と言った。


ここを以って、終に・・・


内道が勝負に出たのである。











究極の必殺技を用いて。







つづく







#327 『中で何が?』の巻



「クッ!?


雪女が唸った。


突如として四方を囲まれ、天を抑えられたからだ。

しかも体の自由が利かない。

まだ受けたダメージから完全に回復してはいないのだ。

加えて、周りは真っ暗。

全くの闇。


すると・・・


その闇の中から声がした。


「どうやら俺の勝ちのようだな、雪女。 最後に何か言い残す事はあるか?」


声の主は、内道だった。


「ソチの勝ち? ソチの勝ちじゃと?」


雪女が聞き返した。


「あぁ。 俺の勝ちだ」


「フン。 このような子供だましの術で、本気でこのワラワを倒せる思ぅておるのか?」


「あぁ。 思っている」


「相変わらず愚かなヤツじゃ」


「フッ。 聞いておこう」


これがその構造物内における内道と雪女の最後の会話だった。


その頃、13人の戦士達は心配していた。

内道の大岩盤城結界を見つめ、


『中で・・・一体?』


『一体、何が?』


『中で何が起こっているんだ?』


 ・・・


と、思いながら。











すると・・・







つづく







#328 『壁をすり抜けるように』の巻



突然、


中から・・城の中から・・扉のない大岩盤城結界の壁の中から、



(スゥー)



その壁をすり抜けるように人影が現れた。

その人影はユックリと、しかし確かな足取りで一歩、又、一歩と歩(あゆ)み出て来た。


それは、内道だった。


『内道様だ!?


『内道様だ!?


『内道様だ!?


 ・・・


13人の顔が一斉に上気した。

本当は躍り上がって喜びたい所だった。

しかし、状況が状況なだけにそれは慎んでいた。


そのままジッと内道を見ていた。


だが、


『ハッ!? と、いう事は・・・』


『も、もしや内道様はアレを・・・』


『そ、そうだ!? アレを・・・』


 ・・・


13人全員に一気に緊張が走った。

一斉に、固唾(かたず)を飲んだ。

そして一点をジッと見つめた。

その視線の先は、勿論内道。


その視線の先にいる内道が立ち止まり、ユックリと振り返った。

そのまま暫らく、黙って城を見つめていた。











そして・・・







つづく







#329 『大地震に・・・』の巻



(サッ!!



内道が印を結んだ。

再び、如来拳印を。


「スゥー、フゥー」


大きく深呼吸を始めた。


「スゥー、フゥー」


「スゥー、フゥー」


トータル3回繰り返した。 

目を半眼にして。


そして、


「ウ〜ム」


念を込めた。


すると・・・



(ギギギギギ・・・)



城が・・大岩盤城が・・大岩盤城結界の城が激しい音を立て始めた。

鋭い軋(きし)み音だ。


「ウ〜ム」


内道が更に念を込めた。


すると・・・



(グラグラグラグラグラ・・・)



今度は城が揺れ始めた。



(グラグラグラグラグラ・・・)



揺れは次第に大きさを増して行く。



(グラグラグラグラグラ・・・)



終にその揺れは、大地震に遭(あ)っているのではないかと思われるほどにまで達した。











そして・・・







つづく






#330 『結界・・・』の巻



(クヮッ!!



突然、内道が大きく目を見開いた。


更に、



(ギュッ!!



結んだ印に力を込めた。


そのまま一度(ひとたび)唸って一気に叫んだ。


「ウ〜ム。 結界崩し!! キエィ!!











瞬間・・・







つづく