#331 『完了』の巻



それは・・・天井から始まった。


結界崩しという名の壮大なドラマが・・今・・天井から。



(ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、・・・)



天井から・・大岩盤城の天井から・・大岩盤城結界の天井から・・激しい崩壊音が上がり始めた。



(ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、・・・)



崩壊音が更に激しくなる。

天井が落下し始めたのだ。

大岩盤城結界の天井が。



(ゴゴゴゴゴォーー!!



崩壊音が加速し始める。



(ゴゴゴゴゴォーーー!!!



更に勢いを増して行く。


そして、



(ゴゴゴゴゴォーーーーー!!!!!



終にそれは・・・



(ゴゴゴゴゴォーーーーーーーーーー!!!!!!!!!! ズッ、シーン!!



落下音に変わる。


天井が落ちたのだ。

大岩盤城結界の天井が・・・地面に。

激しい落下音を上げて。


だが、それはこのドラマの序章に過ぎなかった。



(ピキピキピキピキピキ・・・)



今度は壁が・・・壁にヒビが入り始めた。



(ピシピシピシピシピシ・・・)



それがヒビ割れに代わる。


そのまま一気に、



(ピキピキピキピキピキ・・・)



ヒビ割れが走る・・・四方の壁に。



(ピキピキピキピキピキ・・・)



更に、城全体に・・・大岩盤城全体に。



(ビシビシビシビシビシ・・・)



終にそれは亀裂となって大岩盤城全体に走る。



(ビシビシビシビシビシ・・・)



亀裂が砕く・・・城の壁を。



(ビシビシビシビシビシ・・・)



最後に壁が、



(ビシビシビシビシビシ・・・!! ドッ、カーン!!



崩れ落ちた。

凄まじい崩壊音と共に。


そして、



(パラパラパラパラパラ・・・)



辺りに数個の小石が転がり、



(シーン)



一瞬の静寂が訪れた。


念法・結界崩し・・・











完了。







つづく







#332 『勝った』の巻



雪が・・吹雪が・・止んだ。


否、止んでいた。

何時(いつ)の間(ま)にか。


内道はそれに気付くと同時に思った。


『ン!? 吹雪が止んでいる。 雪女の引き起こす吹雪が。 と、いう事は・・・。 勝ったのか!?


戦況を固唾を飲んで見守ってきた13人の戦士達も皆同様に、何時の間にか吹雪が止んでいる事に気が付いた。


『ン!? 吹雪が・・・』


『ン!? 雪女の引き起こす吹雪が・・・』


『ン!? 何時の間にか吹雪が・・・』


 ・・・


『と、いう事は・・・勝ったんだ!? 内道様が勝ったんだ!!


『勝った勝った!! 内道様の勝ちだ!!


『そぅだそぅだ。 内道様が勝ったんだ!!


 ・・・


そして、皆が一斉に立ち上がろうとした。


正に・・・











その瞬間・・・







つづく







#333 『何処(どこ)からともなく』の巻



突然、


「フフフフフ・・・」


笑い声が・・女の含み笑う声が・・そんな内道達を嘲笑(あざわら)うかのような女の含み笑う声が・・聞こえて来た。


その笑い声は、初めは何処(どこ)からともなく聞こえていた。

皆、体を硬直させ一斉に聞き耳を立てた。

出所を探った。


「フフフフフ・・・」


暫らくジッと聞いていた。

そして分った。


「フフフフフ・・・」


その笑い声は、内道の背後からだった。



(クルッ!!



反射的に内道が振り返った。











その時・・・







つづく







#334 『小さな・・・』の巻



(バババババ・・・)



何かが飛んで来た。

内道目掛けて何かが。

内道の顔目掛けて何かが。


素早く内道が両腕を上げ、ガードした。


だが、



(ブスッ、ブスッ、ブスッ、ブスッ、ブスッ、・・・)



一瞬遅かった。


「グハッ!?


内道が呻(うめ)いた。

そしてガードを下げた。

内道の顔が現れた。


その顔中、小さな針のような物が刺さっている。

氷で出来た小さな針のような物が・・・その顔中に。


!?


氷で出来た針のような物!?


も、もしやそれは・・氷針・・か?


そぅだ!? 氷針だ!?


紛(まぎ)れもなく、それは氷針だ!?


という事は氷針息吹か?


そぅだ!? 氷針息吹だ!?


雪女の氷針息吹だ!?


じゃ、じゃぁ。 雪女はまだ・・・!?


その通り。

まだ死んではいない。


そして今、内道は顔中血だらけになっている。

深々と刺さっている無数の氷針にやられて。


だが、


事は・・・











それだけでは済まなかった。







つづく







#335 『真の恐ろしさ』の巻



目だ!?



(タラ〜)



目から・・両目から・・内道の両目から・・液体が・・垂れた。


内道の両目から液体が垂れてるぞー!?


無色透明の液体がー!?


真っ赤な鮮血と共に・・・


「クッ!? し、しまった」


内道が呻きながら口走った。


その時内道の両目には、その瞳の中心を抉(えぐ)るように氷針が深々と刺さっていたのだった。

雪女の口から鋭く吐き出された氷針が。


そして振り返った内道の3メートル先の空間に、雪女の頭だけが不気味に漂っていた。

否、浮いていた。


気が付けば何時(いつ)しか再び、



(ビュービュービュービュービュー・・・)



吹雪き始めてもいた。

それも前よりも一層強く。


13人の戦士達は呆然としてその状況を見つめていた。

全く信じられないと言う表情だ。

当然だ。

たったの今、内道の勝利を確信した筈なのに、次の瞬間には一転して内道が窮地に陥っている。

それを目(ま)の当たりにしたのだから。



(ゾクッ!!


(ゾクッ!!


(ゾクッ!!


 ・・・


13人全員に悪寒が走った。

雪女の恐ろしさを今更ながら思い知らされていた。

自分達の眼前で女切刀呪禁道1400年最強の戦士が、今戦っている、その相手の恐ろしさを今更ながら思い知らされていた。

全員愕然(がくぜん)としている。


だが、


この13人は更に、雪女の真の恐ろしさの生き証人となるのだ。











この直後に・・・







つづく