#346 『総括4』の巻



再び、


雪女が・・・復活した。


だが、復活するまでの間、雪女は一体何処で何をしていたのであろうか?


実は、雪女は重磐外裏の里に舞い戻っていたのだった。

そして厨子の中に身を隠していた。

その中で眠っていたのだ。

それは、体を・・傷を・・軍駆馬から受けたダメージを・・癒すためだった。

まるで夜間に動き回り、昼間は日の光を避けると同時に体を休めるために棺桶の中で眠る吸血鬼ドラキュラのように。


そして、


雪女が重磐外裏の里に身を隠してから3年経ったある日、再び雪女は目覚めた。

目覚めた時には既に、軍駆馬から受けた傷は癒えていた。

しかしエネルギーの補充は必要だった。

そのため手当たり次第に相応(ふさわ)しいエネルギーを持つ者達を襲い、首を刎ね、エネルギーを吸収していた。


だが、前回復活の時には死体を隠したのに、今回の復活に際してはナゼ死体を放置したのだろうか?


それは雪女が又しても悪い癖を出し、狩を楽しもうとしたからだ。

もっとも狩を楽しむと言っても、その相手は首を刎ねた人間達ではなく破瑠魔一族、即ち、女切刀の里人全員だった。


雪女は直感していたのだ。


内道亡き後、女切刀に、破瑠魔に、自分に手向かえる者が最早たったの一人もいないという事を。

よって、敢(あ)えて自分の存在をそれとなく分からせ、女切刀の里人全員を恐怖のどん底に突き落とす。

そして自らの天時である冬を待ち、女切刀を襲い、皆殺しにする。

それも気の済むまで、残虐の限りを尽くして。

そのために首を刎ねた死体をわざと放置したのだ。


しかし、それは間違いだった。


雪女は全く知らなかった。

全く知らなかったのだ、自分に立ち向かう事の出来るもう一人を。

そぅ、

内道に負けるとも劣らないもう一人の達人の存在を。


女切刀にいるもう一人の達人・・・











その存在を。







つづく







#347 『総括5』の巻



達人・破瑠魔死頭火・・・


その存在を。


雪女が復活を遂げ、女切刀に念を飛ばして探った時、死頭火は伊賀に、実家のある伊賀の里に外道を連れて一時帰省していた。

そのため、雪女は死頭火の存在を全く感知出来なかった。


そしてその死頭火の焚く “雪女調伏護摩” に感応して再びこの女切刀の里へやって来た。

そこで待ち受けていた死頭火と相対峙し、その存在を始めて知った。


そして雪女は、この “無双のくノ一(くのいち)” 破瑠魔死頭火の次々に繰り出す恐るべき秘術に翻弄(ほんろう)されながらも、激しい死闘の末、漸(ようや)く今、死頭火を打ち倒した所だった。


この時、死頭火は・・・


現身隠(うつしみ・がく)しの呪符でガードはしていたものの、あまりの寒さに耐え切れず不覚にも思わず咳き込み、その存在を雪女に知られてしまった義父中道、そしてその隣にいた我が子外道を守るため、雪女の放った氷柱に変えられた5本の指をまともにその背中に受け、今や瀕死の重傷、虫の息。


そして、雪女がその死頭火の髪を掴み、首を刎ねようと手を振り上げた正にその瞬間。


決然、雪女の前に立ちはだかった者がいた。


その者・・・











その名は・・・







つづく







#348 『総括6』の巻



外道!?


そぅ・・・破瑠魔外道。


それは幼子の外道だった。


外道は母・死頭火との約束を破り、現身隠しの呪符を捨て、雪女の前に自ら進んでその姿を現した。

母・死頭火を守るために。

雪女を倒すために。


外道は死頭火が既に抜いていた神剣・軍駆馬をまるで子猫か子犬を抱くように抱(かか)え持ち、ワンフェイク入れて雪女を欺き、雪を踏みしめるのではなく雪面を滑るように走った。

否、滑った。

そしてそのまま一気に、雪女の懐に飛び込もうとしていた。

軍駆馬で雪女を刺し貫くために。


一方、雪女はその外道に背を向け、不覚にも再び我慢しきれず咳払いをしてしまった中道を探していた。

しかし、現身隠しの呪符を持つ中道は雪女には見えない。

確かにその辺りにいるのは分っているのだが、それが何処(どこ)かは雪女には分らない。


そして、雪女にモタモタしている余裕はなかった。

背後に外道が迫っているのは確かだったからだ。

もっとも、迫っているとは言っても所詮(しょせん)外道は子供、雪女にしてみれば焦ったり心配したりする程の事は全くない筈だった。


だが・・・


「まぁ良い。 何ヤツ(なにやつ)かは知らぬが、ソチの始末は後じゃ」


咳き込んだ相手に話し掛けるというよりも、自分が納得するかのようにボソッと一言そう呟(つぶや)いて、雪女は外道の迫り来る方向に振り返った。


だがその瞬間、


『ヌッ!?


雪女の顔が引き攣(つ)った。

有り得ない事が起きていた。


そぅ、有り得ない事が・・・


まだ遥か先にいる筈の外道が・・まるで子猫か子犬を抱くような覚束(おぼつか)ない手つきで軍駆馬を抱(だ)き抱(かか)えていたはずの外道が・・軍駆馬を槍のように構え、既に目前、後一歩(あと・いっぽ)という所まで迫って来ていたのだ。


それも自分に向かって振り返った雪女の目を “キッ” と・・・











下から見上げ見据えて。







第四部 「戦略編」 完