#361 『止まらない』の巻



突然・・・



(ピキピキピキピキピキ・・・)



体が溶け出すと同時に、氷柱(つらら)に変えられ外道の左肩に食い込んでいた雪女の右指にヒビが入り始めた。



(ピキピキピキピキピキ・・・)



それも、食い込んでいる5本の指全部にヒビ割れが。


やがてそれらは、



(パリン、パリン、パリン、パリン、パリン)



外道の左肩に食い込んでいる先っぽのみを残し根元から砕け散った。

しかしまだ、そこから流れ落ちる真っ赤な鮮血は止まらない。


その痛みに耐えながらも、外道は慈救咒を上げ続けている。


「ノウマク サンマンダ バサラダン センダマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン。 ・・・」


必死の形相で痛みを堪(こら)え、慈救咒を止めない外道。


しかし、



(ドクドクドクドクドク・・・)



外道の左肩から流れて出て来る血は、止まる気配を全く見せない。


だが、


止まらないのはそれだけではない。


「キィィィィィー!! リィィィィィー!!


雪女の悲鳴も又・・・











止まらない。







つづく







#362 『4度目』の巻



4度目だった!?


それが起こったのは4度目だった。


声だ!? 例の声だ!?


あの声が今度は外道にこう命じた。

厳(おごそ)かに、厳粛に、重々しく・・・こう。


「金剛秘密主(こんごう・ひみつ・しゅ)・阿尾捨(あびしゃ)の法を修せよ」


と。



エッ!? 阿尾捨の法?


声は阿尾捨の法と言ったのか?


そぅだ、言った!!


声は確かにそぅ言った!!


『金剛秘密主・阿尾捨の法を修せよ』


と。


しかし、外道にはこれが何を意味するのか全く分らなかった。

知らなかったのだ “金剛秘密主・阿尾捨の法” とは何かを・・・外道はその時にはまだ何も。


慈救咒真言は父・内道、母・死頭火が日頃唱えているのを聞き知っていた。


『門前の小僧習わぬ経を読む』


の例え通りに。


だが、


秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法は、今の外道にはまだ全く未知の分野だったのだ。

無理もない、外道はまだホンの幼子。

未(いま)だ、初歩の体術ですら伝授は受けてはいない。

女切刀の戦士達が訓練しているのを遠目から見て、それを見様見真似でチョッとやっていた位だ。

ましてや秘術の伝法など、更々(さらさら)だ。


しかし、声は命じた。

それを修せよと。


声が命じた以上、それを修さねばならない。

感覚で外道はそれを理解した。

それでも全く意味不明に変わりはない。

考えても埒が明かない。

今の外道が考えても何の答えも出てこない。

当然だ、それについて何も知らないのだから。


一瞬、外道は途方に暮れた。


そして、何が何だかわからぬまま咄嗟(とっさ)に叫んでいた。


「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」


「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」


「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」


 ・・・


外道は声変わり前のボーイ・ソプラノの甲高い声で、必死に叫び続けた。

瀕死の重傷、既に虫の息の母・死頭火に向け、必死になって。


「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」


「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」


「かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー?」


 ・・・


と。


軍駆馬の柄(つか)を掴み、

雪女の顔を下から見上げ、



(キッ!!



必死の形相でその眼(め)を睨み付けた・・・











まま。







つづく







#363 『秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法』の巻



“秘術・金剛秘密主・阿尾捨の法” とは何か?



解説しよう。



と、思ったがぁ・・・


めんどぅっちぃので代わりに google 君に解説させよう。


とも、思ったがぁ・・・


google 君も大した事ないザンス。


でも、


まぁこんなもんだよ程度の事は分る物もあるので、以下にアクセスしてチョ。。。



『阿尾捨法』 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E9%98%BF%E5%B0%BE%E6%8D%A8%E6%B3%95&lr=


『阿尾奢法』 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E9%98%BF%E5%B0%BE%E5%A5%A2%E6%B3%95&lr=



注 : “阿尾捨” は “阿尾奢” と書いても間違いではありまっしぇ〜ん。 当て字だからだピョン。。。



又・・・


この阿尾捨法には作者のチョッとしたオモスロイ経験もあるので・・といっても作者にとってオモスロイだけではアリンスが・・チャンスがあればいつの日にか一稿を上梓したいと存じておる次第ではありまする・・・ウン。。。




だが、


一応言うべき事は言っておかなければならない。


そぅ。


阿尾捨法を一言(いちげん)以って言うならば、


そ、れ、は、


即ち、


『神降ろし(かみ・おろし)の法』


である。











・・・・・・ by コ・マ・ル







つづく







#364 『真の使い手』の巻



『ヌッ!? 金剛秘密主・阿尾捨の法とな?』


中道は思った。


加えて、こうも・・・


『ウ〜ム。 どうも妙じゃ。 先ほどから外道の様子が変じゃ・・・』


13人の戦士達も又、訝(いぶか)っていた。


『外道様の様子がおかしい・・・』


『一体どうされたんだ、外道様は・・・』


『外道様に、今、何が起こっているんだ・・・』


 ・・・


そして、


中道と13人が同時に気付いた。


『ハッ!? も、もしや外道は・・・!?


『ハッ!? も、もしや外道様は・・・!?


『ハッ!? も、もしや外道様は・・・!?


『ハッ!? も、もしや外道様は・・・!?


 ・・・


『軍駆馬の声を聞いておるのでは・・・?』


『外道様は軍駆馬の声を・・・?』


『声を聞いておられるのか・・・?』


『軍駆馬の声を外道様が・・・?』


 ・・・


そぅだ!? そぅだったのだ!?


あの声は・・・

あの声こそは・・・

4度外道に語り掛けたあの声こそは・・・

正に、神剣・軍駆馬がその真の使い手と認めた者にのみ語り掛ける声だったのだ。


それは破瑠魔天道以下、内道に至るまで、かつて名だたる如何(いか)なる達人といえども決して聞く事の出来なかった軍駆馬の声だった。

間違いなく、軍駆馬の声だった。


だが今、


それを・・その声を・・軍駆馬の声を・・外道が聞いている。

幼子とはいえ、今、確かに外道がその声を聞いている。


そぅ・・・


あの神剣・軍駆馬は終に、その真の使い手を見つけ出したのである。


破瑠魔外道という名の真の使い手を・・・


今・・・











ここに。







つづく







#365 『奇跡なんてない』の巻



『奇跡なんてない』


かつて作者は言葉は古いがネットサーフィン、あるいはブログサーフィン中にこの言葉に出会った事がある。


その時、


『そのとーりぃ!!


そぅ、思った。


残念ながら作者はまだ奇跡を体験、あるいは経験した事がないからだ。

勿論、見聞きした事も・・・


もっとも、俗に言う “超自然現象” っぽいヤツならば結構経験しておる de アリンスが・・・



しか〜〜〜し、


『奇跡なんてない』


確かにその通りだ。





だが・・・


奇跡は起こった。


「ゥ、ゥ〜ン」


死頭火が静かに目を開けた。

意識が戻ったのだ。

瀕死の重傷で、既に虫の息だったあの破瑠魔死頭火の意識が・・・今。


その死頭火の耳には、耳の奥には、この言葉が木霊していた。


「かー様!! かー様!! かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? かー様!! かー様!! かー様!! ・・・ 」


変声期前の甲高(かんだか)いボーイ・ソプラノで必死に叫び続ける我が子外道の声が。


『げ、外道ー!? 外道が!! 外道が!! 外道が!! ・・・』


死頭火は思った。


しかし、



(ズキズキズキズキズキ・・・)



全身に激痛が走る。


『クッ!?


体が全く動かない。

全然、力が入らない。


その間も、


「かー様!! かー様!! かー様!! 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? 金剛秘密主・阿尾捨の法って何ー? かー様!! かー様!! かー様!! ・・・ 」


外道が叫び続けている。


『クッ!? げ、外道ー!!


死頭火は体を動かそうと踏ん張った。

外道のために必死で踏ん張った。











我が子を思う母の一念で・・・







つづく