#46 『勿体無(もったいな)い!!』の巻




外道は急いで “チッチャイ外道達” を地面から引き抜いた。

全部だ。


そして、

ナナの影の肩の部分に残っていた、最後の一本(一匹?)を引き抜いたその瞬間、



(ガクッ!!



ナナの体が崩れ落ちた。



(サッ!!



地面に体が打ち付けられる寸前、外道がナナの体を抱き止めた。

ナナは気を失っている。

そして、

その時のナナの姿は、


は、み、チ、チ、


そぅ。


はみチチだ!?


それも、もうチョッとで先っぽだ!?


だが、屋敷からココまで走って来たためか?

それとも、

外道を飛び越えた時の弾(はず)みの所為(せい)か?

浴衣の前が肌蹴(はだけ)ている。

だらしなく。


そして、

そのだらしなさのためか?


折角のはみチチが残念ながらいやらしくナイ。


折角のはみチチなのに、

先っぽもうチョイのはみチチなのに、

あんまり、


“い・や・ら・し・く・ナ・イ”。


勿体無(もったいな)い!?







つづく







#47 『見張りの男』の巻




(ムクッ!!



井戸の見張り役二人のうちの一人が、ユックリと起き上がった。


つい今し方迄、秀吉たち同様グォーグォー状態だった二人のうちの一方が。

その男は身長が2メートル近くある屈強な大男だった。



(ギラッ!!



目が異様に光っている。

如何(いか)にも悪いヤツっぽく。


その大男はユックリと、そして確かな足取りで歩き出した。

外道達のいる方へと。



(ズシ、ズシ、ズシ、ズシ、ズシ、・・・)



シーンと静まり返った中をその男の足音だけが響く。



(ズシ、ズシ、ズシ、ズシ、ズシ、・・・)



段々足音が大きくなる。


だが、その大男の狙いは・・・一体?



(スゥ〜)



外道が立ち上がった。

近付いて来る大男の目を見据(みす)えて。


傍らにはナナが寝ている。

キチンと浴衣を着ている。

もう前は肌蹴(はだけ)てはいない。

外道が直した。


だが、

ナナの豊かな胸の膨らみはチョッピリ “はみ” 出ている。

いい感じで。


それに、

浴衣の前を直す時、


『ウム。 ナナのヘアーは綺麗な逆三角形だ。 だが、チョッピリ剛毛だ』


等と、

チャーンとチェックは怠(おこた)ってはいなかった。

例え如何(いか)なる状況下に置かれていようとも、外道というヤツは決して自分の楽しみは忘れないヤツなのだ。

だから、

こんな時でもチャッカリと・・・


その時、



(ピタッ)



足音が止(や)んだ。

男が止(と)まった。

外道の間合(まあ)いに入る直前で。


もう一歩、

あともう一歩で、

外道の間合いだった。

だが、

そこで男は止まった。



(ギロッ!!



外道を、

外道の目を見据えている。

不気味に光る目で。

見下すように。


外道も大男も互いに目を逸(そ)らさない。

逸らそうとはしない。


瞬間、


『出来る!?


外道はそう直感した。







つづく







#48 『男の正体』の巻




「その女を渡してもらおう」


男が言った。


それは先程のナナと全く同じ、太くて低い男の声だった。

あのテレビのニュースで良く見るような変声用の “酸素入りヘリウムガス” を吸い込んで喋ってでもいるかのような。


「嫌だと言ったら?」


外道が聞いた。


「力ずくでも」


男が答えた。


「お前は誰だ? ナゼこの女を?」


再び外道が聞いた。


「お前には関係ない。 いいから女を渡せ」


「断る!! 理由を言え」


「・・・」


「・・・」


外道と男は無言で睨(にら)み合った。



(シーン)



辺りは完全に静まり返っている。

聞こえる音と言ったら、



(ピュ〜〜〜)



時折吹き渡る風の音だけだ。


そして、

その静寂を破ったのは男の方だった。


「(フッ) 小僧!! なかなかいい目をしておる。 いいだろう。 冥土の土産に教えてやろう。 俺の名は 蝦蟇法師(がまほうし) 『千年蝦蟇法師』 だ」


「千年蝦蟇法師?」


「そぅだ。 千年蝦蟇法師だ」


「千年蝦蟇法師とな? 聞いた事が無いが」


「当然だ。 ・・・。 俺はな、この俺様はな、元々は蝦蟇蛙(がまがえる)ょ。 千年前に生まれたな」


「蝦蟇蛙? 千年前に生まれた?」


「あぁ、そうだ。 俺様は千年の昼と千年の夜をあの井戸の中で生き、あの井戸の中で過ごした蝦蟇蛙ょ。 お前は知らんだろうが、千年生きた蝦蟇は “通力” を持つ。 そして俺はその千年を生きた。 あの井戸の中でな。 そしてその千年目が丁度今日。 啓蟄(けいちつ)の日の今日と言う訳だ」 (あの〜。 分かってくれてるとは思ふヶど、この物語はふぃくしょん DEATH 。 分かってくれてるとは思ふヶど・・・)




解説しよう。



啓蟄(けいちつ)とは?


親切な暦(こよみ)を良く見ると、

“立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨・立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑・立秋・処暑・白露・秋分・寒露・霜降・立冬・小雪・大雪・冬至・小寒・大寒”

等と書かれてあるのを目にする事がある。

これを二十四節気(にじゅうしせっき)という。

啓蟄はこの二十四節気の一つであり、毎年3月5日頃である。

『啓』 は “閉じた物を開ける” を、

『蟄』 は “土中で冬ごもりしている虫” を、

夫々(それぞれ)意味する。

つまり、

『啓蟄』 とは、

文字通り地中で冬ごもりしていた虫が草木が芽吹く春の到来を感じ、地上に這(は)い出して来るという事を意味している。

この時期、

北国では “福寿草” が、

関東では “モンシロチョウ” が、

見られるそうである。



解説・お・す・ま・ひ




「だからどうした?」


外道が言い返した。


「『だからどうした?』? ン? 『だからどうした?』 だと!? フッ、フ、フ、フ、フ、フ。 フッ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ。 ウヮ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ。 ワハハハハハ。 ワハハハハハ。 ワハハハハハ。 ワ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ。 決まっておる。 だから蘇(よみがえ)るのょ。 その女の肉体を使ってな。 人間としてな。 ワハハハハハ。 ワハハハハハ。 ワハハハハハ・・・」


外道を小ばかにしたように、見下したように、せせら笑いながら蝦蟇法師がそう答えた。







つづく







#49 『合体』の巻




「つまりこの女の体を乗っ取るというのか?」


外道が聞いた。


「あぁ。 その通りだ」


蝦蟇法師が答えた。


「どうやって?」


「フン!! 知れた事。 その女の肉体とこの俺様の体を合体させるに決まっておる」


「合体!? どうやって?」


「その女の腹を食い破って中に入るのょ。 それから我が通力を持って傷口を塞(ふさ)ぐ。 ただそれだけの事」


「また随分と手の込んだ事を。 なら、わざわざ井戸に引きずり込まずにお前がノコノコ屋敷まで出向けば済んだものを」


「それが出来たらとっくにやっておるゎ」


「ナゼだ? ナゼ出来ぬ?」


「さっきも言ったように俺は千年生きた。 あの井戸の中でな。 あの狭い井戸の中でな」


「あぁ。 聞いた」


「だから俺の肉体は今正に老いに朽ち果てようとしておる。 最早動く事も儘(まま)ならぬ。 だからその女を井戸の中に引きずり込まねばならん。 そのためにその女の信仰心に付け込んだのょ。 熱心な観音信者のその女の信仰心にな。 我が通力を持って観音菩薩の幻影を見せ、あの井戸に引きずり込むつもりだったのょ、俺の肉体が朽ち果てる前に。 あと何日持つか分からぬこの俺の肉体が朽ち果てる前にな。 ・・・。 奇跡だった。 千年は。 良くぞ千年生き永らえたものょ。 我ながら驚いておる。 ・・・。 あの井戸が、あの井戸の水が、奇蹟の水 『岩清水』 でなかったら。 もし、“ナンとか還元水” だったらとっくに朽ち果てていた身ょ」 (“ナンとか還元水”って覚えてる???)


「奇蹟の水? 岩清水?」 (あの〜。 ココで言う “岩清水” は H な意味の “四十八手『岩清水』” ではありませヌ。 そこんとこヨロピコ : 作者)


「そうょ。 千年前。 俺がこの世に生を受けたその時。 あの場所は池だった。 それもただの池ではなく、悠久(ゆうきゅう)の昔から滾々(こんこん)と尽きる事無く湧き出ていた神泉、 『岩清水八幡大菩薩様』 が御降臨されるそれはそれは有難い聖泉だったのょ。 だが、それが時と共に時代の流れと共に大菩薩様への人々の信仰心は薄れて行った。 それと呼応するかのように徐々に水が引いて行き、終に井戸を掘らねば水が出ないという所まで来てしまったのょ、不思議な事に。 もっとも、今ではただの普通の井戸水になってしまったがな」


「だから何だ?」


「『だから何だ?』? フン!! チョッと愚痴ったまでの事。 あの千年前の、あの聖水のお陰で今のこの俺があるんだからなぁ。 もっとも俺の “エーテル体” はもう殆(ほとん)ど尽き果てようとしておる。 だが・・・。 だが、この俺の・・この俺様の・・この俺様の “アストラル体” は、見ろ。 ピンピンしておるぞ。 これ、この通りピンピンしておるぞ。 それも一昨日(おととい)より昨日(きのう)。 昨日より今日と益々エネルギーは増大しておる。 その証拠に見ろ!! これ、こうやって人間の肉体を乗っ取る事が出来る迄に強まったぞ。 昨日迄の俺にはこんな真似はとてもムリだった。


つー、まー、りー、・・・


『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


だった。 だが、今日の、今のこの俺は、それ、その女の手に結ばれていた鎖さえいとも簡単に断ち切る事が出来る迄なったぞ」


「らしいな」


「あぁ。 だから今日。 お主(ぬし)を除く全ての輩(やから)を “無間の眠り” に引きずり込んでやったゎ。 こんな真似は昨日迄の俺ではとてもムリだった。


つー、まー、りー、・・・


『無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


だった。 出来る事ではなかった。 せいぜい数人眠らせるのがいい所であった。 だが今日は、俺が生まれて丁度千年目の今日は、見ろ。 (もう一人の眠り込んでいる番人を指差して) ほれ、あの通り。 あのようにみ〜んなグースカ眠っておるわ。 我が通力でな。 この俺様の通力でな。 この千年蝦蟇法師様の通力でな。 ワハハハハハ、ワハハハハハ、ワ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ」


「分かった。 そういう事か」


「あぁ。 そういう事だ。 だからその女を渡せ」


「断る!!


「・・・」


「・・・」


「なら。 力ずくで貰(もら)い受ける。 殺すには惜しい小僧だが、いたし方あるまい」


「さぁ。 死ぬのはどっちかな」


「フン。 減らず口を」







つづく







#50 『“エーテル体”と“アストラル体”』の巻




“エーテル体” と “アストラル体”。



解説しよう。


エーテル体” 及び “アストラル体” とは?


『人智学協会(Anthroposophische-Gesellschaft)』 創設者ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner)に代表される 『人智学(= Anthroposophy : アントロポゾフィー)』 は、以下のように主張する。


簡単に纏(まと)めてみよう。

ルドルフ・シュタイナーは 『人間本性の超感覚的構成要素』 を次の4種類に分類する。

即ち、 “物質体”、 “エーテル体”、 “アストラル体”、 “自我(私)”  の4種類だ。


そしてこれらは全て、


●物質体(Physical body)とは、

 読んで字の如く物質的身体、即ち肉体を意味する。


●エーテル体(Etheric body)とは、

 固有の有機体を纏(まと)め上げる生命の力であり、物質体(肉体/物質的身体)と重なり合って存在している。

 全ての生命体はそれ独自のエーテル体を持つ。

 だが、

 エーテル体それ自身が意識を持つ事はない。


●アストラル体(Astral bodyEmotional body)とは、

 別名 “感情体” とも呼ばれ、エーテル体同様物質体(肉体/物質的身体)と重なり合って存在している。

 しかし、

 エーテル体と比べるとより高度の周波数を持っている。

 又、

 感情発現の媒体であり、

 同時に、

 それは意識を保つ力でもある。


●自我(ego / das Ich)とは、 

 “私” という意識。 即ち、自分自身を自分自身として認識する事である。

 又それは、物質体・エーテル体・アストラル体に対して働きかける位置にあり、もはや “体” と呼ぶべきではなく超感覚的、霊的存在なのである。


!?


説明出来るかも知れない。 (間違ってたら、ゴメン)







つづく