#96 『まるで木偶(でく)』の巻




「フン。 哀れな姿よのぅ。 外道」


「ブツブツ、ブツブツ、ブツブツ・・・」


外道は応えない。

相変わらず俯(うつむ)いて何か訳の分からない事を小声でブツブツ言っているだけだ。


「敗北を認めたという訳か。 さっきまでが嘘のようだ。 ホレッ、こっちを向いて何か言ってみろ」


「ブツブツ、ブツブツ、ブツブツ・・・」


外道は全く反応しない。


「まるで木偶(でく)だな」


「ブツブツ、ブツブツ、ブツブツ・・・」


外道の様子は変わらない。


「フン。 つまらん!! いつまでも木偶を相手にする訳にもゆかん」


「ブツブツ、ブツブツ、ブツブツ・・・」



(ギョロ!!



無気力な外道に不気味な一瞥(いちべつ)をくれて、

蝦蟇法師が言った。


「外道ょ。 今こそ引導を渡してくれようぞ。 ・・・。 これで!!


と。


そして、

次に大蝦蟇は・・・











驚くべき行動に出た。







つづく







#97 『大鎌』の巻




「蝦蟇鼬(がまいたち)ー!!


大蝦蟇の声が響き渡った。

重低音のあの声が。



(ビシビシビシビシビシ・・・)



それは辺(あた)りを震撼(しんかん)させる。


突然、



(スゥ〜!!



外道の腹部に大鎌(おおがま)が出現した。

西洋画等で良く見る 『死神』 が手にしているような大鎌が。

その刃(やいば)の長さだけでも1メートルはありそうな大鎌が。


次の瞬間、



(スパー!!



それが外道の腹を横一文字に切り裂いた。

そして一拍置いてから、



(パシュー!!



外道の腹から血が飛び散った。

まるで噴水のように。


「グハッ!!


外道の呻(うめ)き声だ。


ど、どっから現れたんだ、この大鎌はー!?


イキナリ現れたぞー!?


まるで瞬間移動でもされて現れたかのようにだー!?


この大鎌の突然の現れ方。

それはまるで、

アニメ 『宇宙戦艦ヤマト Part1』 の “七色星団の戦い” に於(お)いて、

ガミラス帝国の名将、あの宇宙の狼・ドメル将軍が初めて使った、 “瞬間物質移送器” によって転送でもされたかのようだった。




解説しよう。


七色星団の戦いに於ける瞬間物質移送器とは?


宇宙の狼・ドメル将軍率いるドメル艦隊旗艦(ドメルかんたい・きかん) “ドメル艦” から発射された “ワープビーム” により、

密集隊形のガミラス軍戦闘機を宇宙戦艦ヤマトの周囲にいきなりワープさせた “奇襲攻撃用兵器” である。


この兵器使用による利点は、その出所(でどころ)が相手に全く分からぬため圧倒的優位に立てる所にあった。







つづく







#98 『幸運のメタポッコリ』の巻




『クッ!? ど、どっから!?


外道は焦った。

突然目の前に大鎌が現れたと思ったら、瞬時に自分の腹を切り裂いたからだ。

しかも、

その大鎌を操(あやつ)る者の姿は無く、

その大鎌それ自体がまるで意思を持ってそうしたかのように、外道の腹を切ったのだから。


幸い、

出血したとは言え “メタポッコリの外道腹(げどう・ばら)” のお蔭で傷口はさほど深くはなかった。

そしてこれが幸いした。


この攻撃を受け、

外道の目が覚めた。

そう、

外道の眼(め)に生気が戻ったのだ。


だが、


誰が?


ドコから?


こんな大鎌を?


しかも、


出所が腹部?



!?



腹部?


腹部?


腹部?



も、もしや・・・







つづく







#99 『真の蝦蟇鼬(がまいたち)』の巻




解説しよう。


知っての通り、

外道の腹部にはまだ蝦蟇法師のアストラル体の一部が付着していた。

蝦蟇法師が自由に操(あやつ)れるあのエネルギー体が。

蝦蟇法師にしか自由に操(あやつ)れないあのエネルギー体が。

蝦蟇法師はそれを使ったのだ。

即ち、

外道の腹部に付着している蝦蟇法師のアストラル体を実体化させたのだ・・・大鎌に。


という事は、


こ、れ、は、


“大蝦蟇(おおがま)” の “大鎌(おおがま)” だ!?


否、


大鎌の大蝦蟇?


ン?


大蝦蟇の大鎌?


ン?


ドッチだー!?


??????


ウーーーン、分かんないょ〜〜〜!!



さて、


これが真の “蝦蟇鼬(がまいたち)” だった。



ならば、

前回の蝦蟇鼬は一体・・・?


先程、蝦蟇法師の腕がまるでアームストロング・オズマの見えないスイングのように高速回転しているように見えたのは、実は腕その物が高速回転していたのではなく、蝦蟇法師のアストラル体の一部が竜巻のように高速旋回していたからだった。

だが、

その時既に蝦蟇法師のアストラル体はホンの僅(わず)かずつではあったが実体化を始めていた。

それも、

蝦蟇法師自身でさえそれに気付かぬ位僅かずつ。

だから、

本来見えない筈のエネルギー体であるアストラル体が目視可能となり、腕その物が回転しているように見えたのだ。

そして、

その実体化しかけたアストラル体が竜巻のように高速旋回していたため、その一部にチョッと触れただけでもまるで鋭利な刃物にでも切られたかのようになったのだった。


これが、

前回の “蝦蟇鼬(がまいたち)” の正体だったのである。







つづく







#100 『まるでブーメランのように』の巻




外道の腹を切り裂いた大鎌は、

まるでブーメランのように大蝦蟇の元へと飛んで返った。

回転しながら大蝦蟇の頭上2メートルへと。


突然、


大蝦蟇は “ベロ” をにゅーっと伸ばした。

そのベロの色と形が不気味だ。


淡い紫色をした花が醜(みにく)く枯れた時のような、一度見たら二度とは見たくない実に気色(きしょく)の悪い色だ。

形も肉厚の腐ったチューリップと言った感じだ。

それがニューっと伸びたから堪(たま)らない。



(ゾクゾクゾクゾクゾク・・・)



何ともはや、寒気のする光景だった。


次に大蝦蟇は、

飛んで返って来た大鎌の柄の部分をその伸ばした醜いベロの先を巧(たく)みに巻きつけて受け止めた。


そしてそのまま、



(グルングルングルングルングルン・・・)



頭上でベロを何回か旋回させたかと思うと、



(ブヮーーーン!!



外道に向けて大鎌を投げ付けた。

今度の狙いは外道の首だ。

これが当たったら一溜(ひとた)まりもない。

間違いなく首が飛ぶ。

外道の首が。



(ビヒューーーン!!



大鎌は再び、

意思を持ったブーメランのように外道に向かって回転しながら飛んで来る。

外道の首を刎(は)ねようと飛んで来る。



(ブ〜〜〜ン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)



激しく空気を切り裂いて飛んで来る。

その切り裂き音が凄まじい。


『クッ!?


外道は焦った。

大蝦蟇の大鎌は既に目前。

かわしそこねたら首が飛ぶ。

しかし体は動かない。

蝦蟇法師から受けた度重(たびかさ)なるダメージのため、体が上手(うま)く動かない。

思うように動いてくれない。



(シュルーン!!



鋭い切り裂き音を上げ、あと一回転で大鎌が外道の首を刎ねる。


その時、



(スッ!!



外道が首を引いた。

間一髪よけた。

だが、

紙一重(かみひとえ)、紙一重だった。

そぅ、紙一重でかわすのがやっとだったのだ、その時、外道は。



(シュルシュルシュルシュルシュル・・・)



大鎌は又、ブーメランのように大蝦蟇の元へと返って行く。

外道の首を皮一枚分外して。


それを先程同様、

大蝦蟇が巧みにあの気色の悪いベロを使って受け止めた。

そのベロの動きはまるで人間の腕のようだ。

それを頭上で旋回させ、大鎌を外道に向けて投げ付ける。

別にベロを使って振り回さなくても、蝦蟇法師自身のエネルギー体なのだから念力だけでも充分大鎌を飛ばす事は可能だ。

それでもやはり弾みを付けた方が遥かに威力がある。

念で飛ばすよりも遥かに・・・

威力が違う以上、蝦蟇法師は当然そうする。


そして、


今度の狙いは外道の胸だった。

蝦蟇法師は先程の首への攻撃をかわした時の外道の動きを見て、即座に胸に狙いを変えたのだ。

外道の動きを見切っての事だ、首だから避け切れたが胸らなそうは行かない・・・という。


ウ〜ム


蝦蟇法師・・・恐るべし。



(ブ〜〜〜ン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)



再び外道に襲い掛かる大鎌。



(サッ!!



必死の形相で体を引いて、これをかわそうとする外道。

今度も何とか食らわずに済んだ。

外道は外道で先程の大鎌の攻撃をかわした時、既にその速度と軌跡を不完全ながら見切っていたのだ。

大蝦蟇は忘れていたのである、外道が達人である事を。(作者も・・・)


だが、

如何(いか)に外道が達人とはいえ、

大鎌の動きを不完全ながら見切ったとはいえ、

流石にこれまでに受けたダメージは如何(いかん)ともしがたかった。



(スパー!!



今回は僅(わず)かに・・・

僅かにだが外道の胸を掠(かす)っていた。

やはり外道は大鎌の軌跡を完全には見切ってはいなかったのだ。

加えて、思い描いたイメージ通りに体をコントロール出来なかった。

自分が思った通りには体が付いて来なかったのだ。


その切り傷から血が滲(にじ)む。

深手(ふかで)ではなかったが。


そして、

大鎌は大蝦蟇の元へと飛んで返る。


これを何度か繰り返した。

その度に外道の体を掠(かす)って大鎌は大蝦蟇の元へと返った。

しかも、外道の受けた傷口は1回毎に深くなっていた。

大蝦蟇のオフェンスが外道のディフェンスを上回っているのだ。


既に、

外道の体は傷だらけだった。

致命傷とまでは行かなかったが。


そして、

もう一度同じ事が繰り返された。

手順通りに。


先ず、



(ブヮーーーン!!



から始まり、



(ブ〜〜〜ン!! シュルシュルシュルシュルシュル・・・)



と来て・・・外道の体を、



(スパー!!



そのまま、



(シュルシュルシュルシュルシュル・・・)



大鎌が大蝦蟇の元へと返る。

まるでブーメランのように。


これが手順通りに繰り返された。











ところが・・・







つづく