#106 『この一撃』の巻




「フン。 下らん。 詰(つ)まらん見世物(みせもの)に時間のムダをした。


つー、まー、りー、・・・


『無駄ーーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


をした。 お前にはガッカリだ、外道。 もう良い。 もう、こんな茶番(ちゃばん)は終わりにしてくれようぞ」


そう言うと、



(ニュ〜〜〜)



再び、大蝦蟇は大蝦蟇口を開け、

長〜〜〜いベロを巻きつけた大鎌を吐き出した。


そして、



(グルングルングルングルングルン・・・・・・)



その大鎌を頭上で回転させ始めた。



(ギロッ)



大蝦蟇が外道に一瞥(いちべつ)をくれた。

見たのは・・・首だ!?


大蝦蟇が外道の首を見た。

狙いを戻したのだ。

外道の首に。


本気だ!?


大蝦蟇はこの一撃で決着を付ける心算(つもり)だ。

それが眼(め)に、

大蝦蟇の眼に出ている。


『この一撃。 この一撃でお前の首を飛ばしてやる』


ハッキリと “そう” 大蝦蟇の眼は告げていた。

しかも、


『この一撃で決着を付けてやる』


大蝦蟇の眼はハッキリと “そうも” 告げていた。


だが、











その時・・・







つづく







#107 『切絵生動』の巻




「ウ〜ム!! 切絵生動(きりえ・せいどう)!! 哈(ハ)ーーー!!」 


大蝦蟇が大鎌を投げ付けようとした正にその時。

一瞬早く、外道が仕掛けた。




解説しよう。



切絵生動とは?


切った紙絵に外道の念を込める事によりその2次元の切絵を3次元の立体に変え、

且(かつ)、

それに生命を与える。


これが・・・切絵生動である。


影留めの五寸釘のチッチャイ外道同様、切絵を外道の “分身化” する技だ。


但し、

分身化すると言っても、姿形(すがたかたち)は外道とはならず “切った物” その物になる。

そこがチッチャイ外道とは違う。

技の原理は同様なのだが。





(ビヒュ〜〜〜ン!!



切絵の蛇が、

外道の分身の蛇が、

A4版の白い紙に切った白蛇(はくじゃ)が、

切った時には巻いていたトグロを解いて外道の手から離れて飛んで行く。

大蝦蟇目掛(おおがま・めが)けて飛んで行く。


A4サイズの紙に切った蛇とはいえ、

トグロを解くとその長さは1メートル程になった。


しかし、大蝦蟇は座った状態で3メートル。


勝負は見えていた。

誰の目にも・・・明らかに。


本来、

“蛇 対 蛙”

の戦いなら、圧倒的に蛇有利。


だが、

これだけサイズが違えば、

いくら蛇とはいえ蛙には勝てない。


勝負は見えていたのだ・・・











初めから。






つづく







#108 『逆剋』の巻




『逆剋』 と言う言葉がある。



解説しよう。



方術家(ほうじゅつか)は言う。


「世(ヨ)ニ “五行(ゴギョウ)” ト言フ概念アリ」 と。


即ち、


“木・火・土・金・水(もく・か・ど・ごん・すい)” 是(これ)なり。



又、言う。


「相生(ソウショウ)、相剋(ソウコク) ナル考ヘアリ」 と。


即ち、


『木は火を、火は土を、土は金を、金は水を、水は木を・・・夫々(それぞれ)生じる』


これを相生(そうしょう)といい、


『木は土を、土は水を、水は火を、火は金を、金は木を・・・夫々(それぞれ)剋(こく)す』


これを相剋(そうこく)という。



以上が相生・相剋の一般的概念だ。


今回。

相生は捨て、

相剋のみを見る。


剋の関係は、

剋す側の力量が剋される側と比較した時に同等もしくはそれ以上。

あるいは、

仮に劣ったとしても多少と看做(みな)せる場合に於(お)いて成立する。


だが、

剋す側が本来剋される側よりも圧倒的に劣っている。

即ち、

剋される側の力量が剋す側を遥かに上回る。

というケースも存在する。


この場合、


『本来、剋す筈の物が剋され、剋される筈の物が剋す』


という事になる。


これを・・・











逆剋と言う。







つづく







#109 『一刀両断』の巻




(シュルシュルシュル・・・!! ビヒューン!!



切絵の蛇が、

外道の蛇が、

外道の分身の白蛇(はくじゃ)が飛んで行く。

素早く身をくねらせながら大蝦蟇に向かって飛んで行く。


「シャー!!


それは、

鋭い威嚇音を上げ、

宙を飛び、

大蝦蟇目掛けて突進する。


しかし、


「シャー!!


今、

正に、

外道の蛇が大口を開け大蝦蟇に襲い掛かろうと牙をむいたその瞬間。



(スパー!!



一瞬にして一刀両断だ。

大蝦蟇の大鎌で、

大蝦蟇が口から吐き出した大鎌で、

一瞬にして一刀両断だ。



(パカッ!!



蛇は真っ二つ。

上半身は勢い余って大きく宙を舞い、

下半身は、



(ドサッ!!



地に落ちた。

外道の足元近くに。


それは、

呆気(あっけ)なく片が付いた。

余りにも呆気なく。


これぞ正に逆剋である。


大蝦蟇は、

再び大鎌を飲み込んだ。


そして笑いながら言った。

その重低音の声で辺りを震撼させながら。


「フッ、フ、フフフフフフ。 ウッ、ハ、ハハハハハハ。 ウ、ヮハハハハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ。 笑止(しょうし)!! 外道ょ これは一体何の冗談だ。 ン? その切絵ナンタラとは、こんな茶番だったのか? 大仰(おおぎょう)な名前の割には何とせこい技ょのぅ。 フッ、フ、フフフフフフ。 ウッ、ハ、ハハハハハハ。 ウ、ヮハハハハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワハハハ。 ワッ、ハ、ハ、ハ、ハ」


一渡(ひとわた)り笑い終えてから、



(ギロッ!!



大蝦蟇が外道を睨み付けた。

そして大蝦蟇のその眼(め)には、


『外道ょ。 愈々引導(いよいよ・いんどう)を渡してくれようぞ』


ハッキリとそう出ていた。











だが・・・







つづく







#110 『答えよ、外道!!』の巻




『ヌッ!?


大蝦蟇はチョッと驚いた。

外道の姿に。

そして聞いた。


「それは何だ?」


「・・・」


だが、外道は答えない。


もう一度大蝦蟇が聞いた。


「それは何かと聞いておる」


「・・・」


やはり外道は答えない。


痺(しびれ)れを切らせて大蝦蟇が怒鳴った。


「それは何の真似(まね)かと聞いておる!! 答えょ、外道!!



(ビシビシビシビシビシ・・・)



その声量の凄まじさにその辺り一面が振動した。

まるで一寸した地震だ。


だが、


「・・・」


相変わらず外道は答えようとはしない。







つづく