#36 『大ジャンプ』の巻




「キィィィィィ〜〜〜ィ!! リィィィィィ〜〜〜ィ!!


突然!?


身を翻し、体勢を東から南向きに変え、耳が劈(つんざ)けん程の、鼓膜が破裂しそうな位の、馬鹿でかく甲高(かんだか)い嬌声(きょうせい)を上げて、ナナが飛んだ。

ベッドから部屋の南側の窓まで一気に飛ぶ大ジャンプだ。

優に10メートルは飛んだだろうか?

それも足場の悪い柔らかいベッドの上からだ。


有り得ない!?


普通では絶対有り得ない事だ。


だが、それは現実に起こった。



(ガッ、シャーーーン!!



窓ガラスが弾(はじ)け飛んだ。

ナナが窓ガラスを蹴破って、そのまま屋敷の外に飛び出し地面まで飛んだのだ!?


ナナの部屋の窓の高さはどう見ても40メートル以上は有る。

そこから地面まで飛んだのだ。


考えられない!?


これ又、普通では絶対考えられない事だ。


だが、ナナはそれをやってのけた。

しかも無傷で。

それどころか着地するや否や、脱兎(だっと)のごとく駆け出していた。

方角は井戸。

井戸の方向だ。

それはナナの部屋から見て東向き、即ち東側に有った。


外道は急いで窓に駆け寄った。

そして見下ろした。

ダッシュするナナ。

その後姿が見える。


『は、速い!!


外道は思った。


アッ!?


と、いう間にナナの姿が小さくなった。

最早、一刻の猶予も無い。


方向をシッカリ定めて、間違えないよう見定めて、外道も窓から飛んだ。

ナナを追って。


瞬間、



(シュッ!!



外道が消えた。


“縮地法” を使ったのだ。







つづく







#37 『頭上1メートル』の巻




「キィィィィィ〜〜〜ィ!! リィィィィィ〜〜〜ィ!!


振り向く外道の頭上1メートルをナナが飛び越えた。

恐るべきジャンプ力だ。

井戸はもう目前。


しかしナゼ、先を走っていた筈のナナが外道を飛び越えたのか?


実は、

外道は縮地法で、ナナの先回りをしてナナの前に出ていたのだ。

井戸に行かせないために。

そしてナナの来る方に振り向いた。

丁度その時、ナナが外道を飛び越えた。

井戸に行くために。


それが今だったのだ。



ナナに飛び越えられた瞬間、外道は・・・?


!?


外道は全く動かない。

否、

動けない。


目が “点” だ。


どうした外道?


様子が変だぞ!?


何があった?



ン?


>外道の頭上1メートルをナナが飛び越えた。


>外道の頭上1メートルをナナが・・・


>外道の頭上1メートルを・・・


>外道の頭上1メートル・・・


 ・・・











アッ!?







つづく







#38 『女性が浴衣を着る時』の巻




『某・テレビ局のワイドショー番組の街頭インタビュー』 にて ―



(レポーター) 「ここ渋谷では、夏場、浴衣姿の若い女性が目に付きます。 今日は女性達に浴衣について聞いてみたいと思います。 あ!? 丁度今、若い女性二人連れがコッチに来ます。 チョッとインタビューしてみますネ」


そう言ってレポーターの女性が、



(ツカツカツカツカツカ・・・)



二人連れの “女A”、 “女B” に近付いた。


(レポーター) 「すみませ〜ん。 チョッといいかなぁ?」


(A) 「ナンですかぁ?」


(レポーター) 「浴衣について聞きたいんだヶど。 いい?」


(A) 「(Bに向かって) 全然いいょねぇ?」


(B) 「ウン。 全然いい、全然いい」


(A) 「(レポーターに向かって) 全然いいですょ」


(レポーター) 「あのさぁ。 二人とも夏場浴衣って着る?」


(A) 「ウン。 着る着る。 (Bに向かって) 着るょねー」


(B) 「ウン。 着る着る」


(レポーター) 「じゃ、さぁ。 質問なんだヶど・・・。 浴衣ん時ってさぁ。 ブラとかどうしてる? 着(つ)ける? 着けない? どっちィ?」


(A) 「キャ!? ヤダー!? そんな事言うんですかぁ?」


(レポーター) 「ウン。 言ってぇ」


レポーターの意外な質問にチョッと面食らった女Aは、自信なさ気に女Bに同意を求めた。


(A) 「着けない、よ、ね、・・・?」


するとそれに対して、女Bはキッパリと答えた。


(B) 「ウン。 着けない着けない」


女Bの同意を得た女Aは、すかさず元のキャピに戻って女Bと一緒に声を揃えてこう言った。


(A、B一緒に) 「着けませ〜ん」


(レポーター) 「じゃ、パンツは? パンツ穿(は)く? 穿かない?」


(A) 「ヤダー!? そんな事〜。 アハハハハハ・・・。 アタシ穿かな〜い!! アハハハハハ・・・」


(B) 「アタシもー!! アタシも穿かな〜い!! アハハハハハ・・・」


(A、Bお互い同士を突っ突き合いながら) 「アハハハハハ・・・」


(レポーター) 「そう。 どうも有り難うー」


(A、Bは笑いながら去って行く) 「アハハハハハ・・・」


(レポーター) 「エ〜。 今聞いて頂いたように、女性は浴衣を着る時下着を着けない人が多いようです。 それではスタジオのみのさ〜ん!! みの・もんちっちさ〜ん!! マイクお返ししま〜す」


(みの・もんちっち) 「ハ〜ィ!! 有難うー!! (改まって) レポーターは滝川クリキントンさんでした。 滝川さんが下着を着けるか着けないかも聞きたかったなぁ、オジサンとしては・・・。 エヘヘヘへ。 ・・・。 はい。 ただ今ご覧頂いた様に女性の多くは浴衣を着る時、パンツを穿いていない事が分かりました。 エヘ、エヘ、エヘエヘエヘエヘ。 全国の良いこの皆さ〜ん!! 浴衣姿の女性は、・・・ エヘ、エヘ、エヘエヘエヘエヘ。 (ニヤニヤしながらテレビカメラの前に身を乗り出し、両手で口を覆ってささやくように) ノー、ォー、パー、ンー。 エヘ、エヘ、エヘエヘエヘエヘ」







つづく







#39 『普通なら』の巻




(ニマ〜)



外道は脂下(やにさ)がっていた。

浴衣のナナに跨(またが)れて。


ダッシュしてたから浴衣の前ナンかも当然、


はーだーけーてー!! (肌蹴て)



(エヘッ!!



しかも、


ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサユッサ、・・・。


揺(ゆ)れチチだー!


揺(ゆ)れチチだーー!!


揺(ゆ)れチチだーーー!!!



ククク、クッソ〜〜〜!!!!!!!!!!


げげげ、外道めー、いい思いしやがってーーー!!!!!!!!!!


チッッッッッキショー〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!


癇癪(かんしゃく)起こる2ダ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!




さて、


話は戻って・・・



(タン!!



着地するが早いか、


「ダァーーーーー!!!!!


再びナナが走り始めた。

ジャンプする直前の速さと全く変わらぬ速さで。

普通ではコレも有り得ない。

だが、今のナナには “普通なら” は全く意味をなさない。


「ダァーーーーー!!!!!


凄い勢いでナナは井戸に向かっている。

井戸はもう目と鼻の先。


最早打つ手無し。



さぁ、外道ょ!?


何時(いつ)まで脂下がってる気だ?


次はどうする?


また縮地法か?


縮地法で間に合うのか?


どうなんだ外道ょ?



すると、











その時・・・







つづく







#40 『一瞬の静寂』の巻




(ガクン!!



突然!?


ナナが止まった。


不自然な姿勢で。

走っている途中で。

走り掛けの姿勢の “まま” で。


ナナは止まった。


まるで、ゆっさゆっさ乳(チチ)を揺らしながら前がチョィ肌蹴(はだけ)掛かった浴衣姿の女性が走っているビデオを、再生中に一時停止したかのように。 


「ウィィィィィ〜〜〜!! リィィィィィ〜〜〜!!


訳の分からない、でかくて甲高(かんだか)い嬌声(きょうせい)を上げてナナが体を動かそうともがいた。

だが、

体は全く動かない。

ただ、

頭だけが上下している。


「ウィィィィィ〜〜〜!! リィィィィィ〜〜〜!!


「ウィィィィィ〜〜〜!! リィィィィィ〜〜〜!!


「ウィィィィィ〜〜〜!! リィィィィィ〜〜〜!!


 ・・・


更に、何度かもがいた。

しかし状況は全く変わらない。



(ピタッ!!



諦(あきら)めたのか?

ナナの頭の動きが止まった。



(シ〜〜〜ン)



一瞬の静寂。


しかし、


次に我々は・・・











信じられない光景を目(ま)の当たりにする事になる。







つづく