#41 『不気味な笑い』の巻




(ギギギギギ〜〜〜!!



ナナの頭が・・・


ナナの頭が・・・


ナナの、頭だけがユックリ回転したゾー!?


それも180度だゾー!?


ナナの頭だけがユックリと180度回転したゾー!?


体は全く動いてないゾー!?


こ、こんな事があっていいのかー!?


いい訳ないゾー!?


ナンテこったい!?


その姿はまるで、アメリカのワーナーブラザーズ映画 『エクソシスト』 でハリウッド女優リンダ・ブレア演じる “リーガン・テリーザ・マクニール” が、ベッドの上に座ったままの状態から頭だけ180度回転させたのと全く同じであった。


そして、



(チラッ)



ナナは視線を下げて地面を見た。


だが、


地面には、

特に変わった様子は無かった。


ただ、


強い照明でくっきりと出来たナナの影をトレースするかのように、 “五寸釘の様な物” が十何本か地面に刺さっているだけだった。


そして、


そのうちの何本かをしゃがんで抜き取った外道の姿があった。

視線をナナに向け、ナナの頭部の影の部分に刺さった五寸釘のような物を何本かユックリと抜き取った外道の姿が、そこには有るだけだった。


今、


その地面に刺さった “五寸釘のような物” は、

確かにナナの影をトレースしている。

頭部を除いたナナの全身の影を。


それは、

確かに“ナナの影” を、

トレースしている。


ナナがそれに気付いたかどうかは分からなかった。


だが、


ナナはその体勢のまま、



(スゥー)



目線を外道に向けて、外道の目に向けて、



(ニヤッ)



不気味な笑いを浮かべた。







つづく







#42 『長い沈黙』の巻




(ニヤッ)



顔は笑った。

だがその目は、

だがナナのその目は、



(ゾクッ!!



と、する程冷たい。

まるで氷だ。

“氷の微笑” だ。

その氷のように冷たい目を外道に向け、ユックリとそして無感情にナナが言った。


「ナーニーをーしーたー?」



ン?


ナンだ!?



どこか可笑(おか)しい!?


何かが変だ!?


何かが?



・・・!?



そぅだ、声だ!?


声が違う!?


ナナの声じゃない!?


それは太くて低い男の声だった。


まるでナナが男で、そしてその男がテレビのニュースで良く見るような変声用の “酸素入りヘリウムガス” を吸い込んで喋ってでもいるかのようだった。


その声は続けた。


「オー、マー、エー、はー、だー、れー、だー?」


相変わらずナナの顔に表情は無い。


1秒、2秒、3秒、・・・


ナナと外道は無言で睨(にら)み合った。



(シーン)



その間(あいだ)、辺(あた)りは物音一つ立たない。

風の音も虫の声も車のエンジン音も無い。

完全な静寂。

今の日本では考えられない事だ。

いくら時が深夜でこの場所が都会で無いとは言え。

チャンと生活感の匂う場所なのに。


まったく音が無い!?


長い沈黙。

気の遠くなる程の。


深い静寂。

気も狂わんばかりの。


2人とも何も喋らない。

黙ってジッと見合っている。


しかし、

ただ黙って見合っているのではない。

互いの力量を量(はか)り合っているのだ。

互いの目を通して。

互いの眼力で。



(ビリビリビリビリビリ・・・)



二人の間には激しい空気の振動がある。

互いの気迫のぶつかり合いによる。



(ギンギンギンギンギン・・・)



二人の周りだけ異様に明るい。

互いのエネルギーの発散により。


しかし、


そこに音は・・・











全く無い。







つづく







#43 『俺の名だ』の巻




「破瑠魔。 破瑠魔外道。 ・・・。 俺の名だ」


長〜い沈黙を破って外道が言った。


「はー、るー、まー、げー、どー、うー、ダー?」


「そうだ」


「げー、どー、うー、とー、やー、らー。 ナー、ニー、をー、しー、たー?」


「教えて欲しいか?」


「・・・」


ナナは怪訝(けげん)そうな表情を浮かべ、無言で外道を見ていた。

既(すで)に表情に氷の微笑は無い。


「教えてやろう。 お前の動きを封じたのだ」


「ナー、ニー? うー、ごー、きー、をー、ふー、うー、じー、たー、ダー、トー?」


「そうだ。 動きを封じた」


「フン!! ウィィィィィ〜〜〜!! リィィィィィ〜〜〜!!


ナナは、

否、

何者かに憑依されたナナは、小馬鹿にしたように一旦せせら笑ってから再びあの嬌声を上げながらもがいた。

が、

やはり無駄だった。


「ムダだ!!


つー、まー、りー、・・・


『無駄ーーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


!! 止めておけ」


しかし、


「ウィィィィィ〜〜〜!! リィィィィィ〜〜〜!!


もう一度、

もう一度、無駄な努力を繰り返した。


そして、



(ピタッ)



諦めたのか?

動きを止めて再び外道に冷たい視線を向けた。


「だからムダだ!! 言ったろう? 既にお前の動きは封じてあるのょ。 我が念法 『影留め』 でな」


「ねー、んー、ぽー、うー、かー、げー、どー、めー?」


「そうだ。 外道念法影留めだ。 お前はもう動けない」




解説しよう。


外道念法影留めとは?


で、


解説しよう。


と、


思ったが〜。


思ったが〜。


しか〜し、


コレここで解説しちゃうと〜〜〜!?


解説しちゃうと〜〜〜!?



外道シリーズ二部、三部、・・・と続けたいのに〜〜〜、


続けたいのに〜〜〜。


第一部であんまり一杯解説しちゃうと〜〜〜!?


解説しちゃうと〜〜〜!?



ネタが無くなっちゃうしな〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!



どうしよう?


エッと〜〜〜


エッと〜〜〜


エッと〜〜〜



どうしよう?


ント〜〜〜


ント〜〜〜


ント〜〜〜







つづく







#44 『種明かし』の巻




ント〜〜〜


ント〜〜〜


ント〜〜〜



しゃー無い、解説しちゃおう。


外道念法 『影留め』 とは?


この名前で、

きっと読者の皆さんはもう何と無く分かっちゃてるょね?


多分?


その通りー!!



“五寸釘のような物”


つまり、外道お手製の五寸釘状の投げ針。

その針に外道の念(エネルギー)を込める事により、それは外道の分身に変わる。

それは一見、針のように見える。

だが、

それを良〜く見ると、実は、それは針のようで針じゃない。

そ、れ、は、


“チッチャイ外道”


なのだ。

それを直接本体にではなく影に投げ付け、投射された影をそれが投射されている場所(この場合は地面)に留(と)める。

それにより、

間接的にその影の本体の動きを止(と)める。

そういう技だ。


この時、

良〜く観察すると

チッチャイ外道達が、


「ウンコラセ、ウンコラセ、ウンコラセ、・・・」


って、仕事しちゃっておるのだ。

地面に影を縫い込むお仕事を。


但し、このチッチャイ外道を “見る” ためには “眼力” が必要となる。

即ち、眼力の無い者にチッチャイ外道は “見えない”。

ただの “五寸釘のような物” にしか “見えない”。



そぅ・・・


それが影留め。


外道念法 『影留め』。


そして、

知っての通り、この屋敷の庭の照明は昼間のように明るい。

当然、

影もボンヤリとではなくクッキリと出る。

影留めを使うのに充分な程。

だから、

技は掛かった。


しかし、


外道は何故(なぜ)、

直接ナナに技を掛けなかったのか?

例えば、百歩雀拳を。


それは勿論、

無傷でナナの動きを止めるためである。


以上。


種明かしは実にカンタン。


DEATH た。







つづく







#45 『余裕のヨッちゃん』の巻




(ニヤッ!!



ナナが不気味な笑いを浮かべた。


“余裕のヨッちゃん”


こいた笑いを。


強がりかませるような状態では無い筈なのに。

状況は圧倒的に不利なのに。


『ん!?


外道にはその笑いの意味が分からなかった。


『何だ? この余裕は?』


その外道の一瞬の虚を衝いて、

ナナが、

否、

ナナに憑依していると思われる何者かが、


「キィィィィィ〜〜〜!! リィィィィィ〜〜〜!!


再び、あの凄まじい叫び声を上げた。

辺り一面を震撼(しんかん)させ轟(とどろ)き渡る“あの” 凄まじい叫び声を。


『ハッ!?


外道が身構えた。


その瞬間。


ナナの体からか?

あるいは、

背後からか?



(シュッ!!



黒い影のような物が素早く、勢い良く飛び出した。

輪郭が曖昧(あいまい)な人影のような物が。

それは3次元の物質というより2次元の、

そぅ、

平板で奥行きの感じられない、黒い人影のような何かだった。


そして、

それは井戸に向かって飛んで行った。











素早く。







つづく