『進撃のコマル( Attack on DIABLO )』 #5 (最終回)




『あ!?


コマルは何か閃(ひらめ)いた。

そしてオッサンに聞いた。


「あの〜。 もう一つ伺(うかが)ってもいいですか?」


「ん!? 何かね?」


「はい。 こんな事は今までにもあったんですか? 人をイヌに変えてしまったというような事が」


「あぁ。 そりゃもう、数え切れない位。 コイツは今まで何十、否、恐らくは何百人と・・・」


「でも、事件にはなっていませんよね。 全然」


「ウム」


「ナゼ? ナゼ事件にならなかったんでしょうか?」


ここでオッサンは、


「クィッ!!


三度(みたび)顎をしゃくって蛇魔子を指示(さししめ)した。


「それも又、コイツの妖術の所為(せい)じゃ」


「・・・」


「コイツの妖力は凄まじく、人が何人行方不明になっても、全くコイツには嫌疑が掛からんのじゃよ」


「え!? 全く嫌疑が掛からない?」


「あぁ、そうじゃ。 全く掛からんのじゃ。 コイツの妖力の所為(せい)で」


「フ〜ン。 そうですかぁ。 ホントにそんな事ってあるんですね。 こんな事件に遭遇しなければ全く信じられない話しです」


「ウム。 その通りじゃ。 普通の人間には全く理解出来ん事じゃがな。 では、ワシらはこれで失礼するとするか。 オィ! 蛇魔子!! 行くぞ」


そう言ってオッサンが蛇魔子の鎖を引っ張った。

そしてもう一度、コマルに話し掛けた。


「有栖川呑屋コマル君とやら」


「はい」


「縁があったら、又会おう」


そう言って、


「クルッ!!


オッサンがコマルに背を向け掛けた。


だが、


「あ!? あの〜。 チョ、チョッといいですか〜?」


今度はコマルがオッサンに話し掛けた。


「クルッ!!


オッサンが振り返った。


「ん!? 何じゃね? まだ何か?」


「はい。 そのイヌの事なんですヶど、どうされるおつもりなんですか?」


「さぁな。 それはこれから考える」


「そ、そうですかぁ・・・」


「ウム」


一言頷いてオッサンが立ち去ろうとした。


しかし、


コマルにはまだ聞きたい事があった。


「あ!? それと最後にもう一つ・・・」


「ん!? 何じゃな?」


「はい。 貴方は? 貴方のお名前はなんと?」


「ワシの名前か?」


「はい。 もし良かったら教えては頂けませんでしょうか? さぞや名のあるお方かと・・・」


「否。 名乗る程の者ではない。 と言うより、道術を志す者には人前で名乗るような名はないのじゃ。 既に己(おのれ)を捨てておるんじゃからな」


「そ、そこをなんとか・・・」


気の弱いコマルにしては珍しくチョッと食い下がった。

その言葉を聞き、


「・・・」


オッサンは何も言わずコマルの目を見つめた。


「・・・」


コマルも同様にオッサンの目を見つめ返した。


「・・・」


「・・・」


二人の間に暫(しばし)しの沈黙があった。

二人は瞬き一つしないで見つめ合っていた。


「・・・」


「・・・」


どのくらい経ってからだろうか?

何か感ずる所があったのだろう、徐(おもむろ)にオッサンが、


「ウム」


一言頷き、


「いいじゃろう。 名乗るとしよう」


腹を決めた。


「ホ、ホントですか!? 名乗って頂けるんですか?」


「あぁ。 本当じゃ」


「そ、それは・・・。 ど、どうも・・・。 きょ、恐縮です」


「いいかね、コマル君?」


「は、はい」


「ワシの名は・・・」


「ゴクッ!!


マルが息を飲んだ。

しかしオッサンはすぐには名乗らず、


「・・・」


ここでチョッと間を取った。

それからもったいをタ〜ップリ付けてから名乗った。


こう・・・


「ワシの名は・・・。 小磯雲竹斎(こいそ・うんちくさい)じゃ」


と。


「え!? コ、コイソウンチクサイさん?」


「うむ。 そうじゃ、小磯雲竹斎じゃ」


「コイソウンチクサイさん、コイソウンチクサイさん、コイソウンチクサイさん」


コマルが三度、雲竹斎の名前を復唱した。

その三度目を聞き終わった時、雲竹斎がコマルに別れを告げた。


「では、さらばじゃ、有栖川呑屋コマル君。 達者でな」


そう言って、


「クルッ!!


今度は本当に雲竹斎がコマルに背を向けた。


その瞬間、


「スゥー」


雲竹斎と蛇魔子の姿が消えた。


「え!?


一瞬、コマルには何が起きたのか理解出来なかった。

暫し呆然としてその場に佇(たたず)み、雲竹斎が消えた空間を見つめていた。

それから、


『ハッ!?


我に返り、


「タタ!!


大慌てで二歩駆け寄り、


「スゥ〜、スゥ〜、スゥ〜、スゥ〜、スゥ〜、・・・」


雲竹斎達の消えた空間を手でこね回すように何度も何度も探りながら、


『こ、こんな事が!? こんな事がこんな事がこんな事が・・・。 こ、こんな事が、ホ、ホントにあるなんて・・・』


そう思った。

そして手を止め、一言呟いた。


「ウ〜ム。 小磯雲竹斎か〜。 ・・・。 ナント恐ろしい・・・」


それからこう思った。


『道術の修行・・・か。 断んなきゃ良かったかな・・・』


って。


そぅ。


今となっては後の祭り。

雲竹斎の申し出を断った事を、チョッピリ後悔していた有栖川呑屋コマルであった。

それからクルリと雲竹斎達の消えた空間に背を向け、コマルも又その場から立ち去った。

イヌに変わった三娘蛇魔子とそれを伴ったままその場から忽然(こつぜん)と消え去ったナゾのオッサン、小磯雲竹斎に思いをはせながら・・・



時に平成2410月。

ある肌寒い日の朝の出来事であった。



又・・・



蛇魔子と共に消えたナゾのオッサン・・・


その名は・・・


小磯雲竹斎。。。


それは・・・


あの・・・


奥村玄龍斎・・・


!?


ライバル・・・


!?


小磯雲竹斎・・・


あの小磯雲竹斎兼持(こいそ・うんちくさい・かねもち)・・・


その人・・・


なのであった・・・


のであった。。。 (小磯雲竹斎に関しては 『奥様は魔女っ子 http://comarude.ojaru.jp/majokko/majokko.htm 』 を参照して下さい)











おわり







『進撃のコマル( Attack on DIABLO )』 #5 (最終回) お・す・ま・ひ






この作品を書いた意図・・・



小磯雲竹斎を引っ張り出す” 


それが作者の意図でした。


それでは引き続き、


“『 Rick's Cafe Tokio 』 Deluxe ” (その内、うpの予定)


でお会い致しましょう。