#6 『タバサの計画』の巻

 

 

魔女タバサが言った。

 

「パパ。 この蜃気楼のような体ではイマイチ不便よね。 アタシ人間の体が欲しいゎ。 それも女の」

 

それを聞いたダミアンが。

 

「オレ様はこのまんまがいいぜ。 コレがいい。 簡単だしな、壁抜けも」

 

再びタバサが。

 

「パパは? パパはどう? どっち」

 

「わしか? そうじゃなぁ・・・。 ウム。 わしもこのままの方がエエ」

 

「じゃぁ、アタシだけね、体が欲しいのは・・・。 でもいいゎ、それならそれで・・・。 ところでパパ。 人間の体を手に入れるにはどうしたらいいの?」

 

「我が娘タバサょ。 何で人間の体なんぞを欲しがる? このままのほうがエエじゃろ、目立たんで」

 

「うん。 でもね、パパ。 アタシはどうしてもラー・ゲンリュウサインのヤツに復讐したいのょ」

 

「復讐かぁ? ・・・。 ウ〜ム。 しかし、復讐ならこのままでも出来るぞ、このままでも。 それに奴は手ごわい。 なにせ、あの200年前の 『ナツマケドン(玄魔対戦)』 の時、一時は天界をも支配した質、量とも圧倒的な最強の我が軍を、ほんのわずかな手勢で打ち破ったんじゃからな」

 

「分かってるゎ、それ位。 でも、アタシにいい考えが有るの」

 

「いい考え?」

 

「えぇ、とっても」

 

「どんなじゃ?」

 

「パパ。 それにダミアン兄さん。 いいぃ? チョッと耳を貸して。 あのね・・・」

 

3人は何やら怪しいひそひそ話を始めた。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

#7 『奥村玄龍斎の弱点』の巻

 

 

その頃・・・

 

奥村玄龍斎ことオーク・ムー・ラー・ゲンリュウサインは、考え込んでいた。

動かされてしまった大岩を前にして。

そして一言、こう言った。

 

「マズイ、実にマズイ」

 

そぅ。

 

この時、奥村玄龍斎は来るべき悪夢。

あの、悪夢の 『ナツマケドン(玄魔対戦)』 が再び始まる事を予期していたのである。

そして素早くその準備に取り掛かった。

 

一方、

 

こちらは魔女タバサ達。

 

「ねぇ、分かった? パパ、ダミアン兄さん? そういう事」

 

「しっかし、ホントに (ピー) がラー・ゲンリュウサインの弱点なんじゃろうか?」

 

と、大魔王ロビン・バッドフェロー。

 

「ウ〜ム。 オレ様も疑問だ。 (ピー) が弱点とは」

 

と、悪魔ダミアン。

 

「心配ないゎ、二人とも。 間違いないゎ、 (ピー) が弱点なのは。 この200年間、岩に閉じ込められながらもアタシは代々のラー・ゲンリュウサイン達を観察してきたゎ。 そして確信したの (ピー) がラー・ゲンリュウサインの弱点だって」

 

ロビン・バッドフェローは、娘タバサの目をジッと見つめながらしばし考えた。

そして言った。

 

「よし。 我が娘タバサょ。 お前を信じよう。 (ピー) がヤツの弱点ならこっちにも勝機はある。 十分にな」

 

「そうかいそうかい。 なら、オレ様もタバサを信じる事にするぜ。 そして、あのラー・ゲンリュウサインの野郎に200年前の恨みを晴らしてやる。 タップリとな」

 

「二人とも分かってくれたんなら話は早いゎ。 ねぇ、パパ。 どう? どうすれば人間の女の体を手に入れる事が出来るの?」

 

「そ、それなんじゃがなぁ。 事はそう簡単にはいかんのじゃ」

 

「どういう事?」

 

「実はな・・・」

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

#8 『魔界の掟』の巻

 

 

「わが娘タバサょ。 良〜く聞くのじゃ。 魔界には魔界の掟というものがある。 この掟は何人(なんぴと)足りと言えども冒(おか)す事は出来ぬ。 たとえそれが神であろうと魔界の支配者、大魔王のこのわしであろうともじゃ。 ま、当然ちっちゃぁ当然なんじゃがな。 そしてその掟とは・・・

 

 

−魔界の掟−

 

(くどいようですがこの物語はふぃくしょんです。 登場する団体、人物等は架空のものであり、実在のものとは一切関係ありませヌ。 分かってくれてるとは思ふヶど : 作者)

 

悪魔が一度失った肉体を手に入れるためには、

 

『超極大魔奥儀・悪魔蘇生法』 を修さねばならない。

 

その作法は・・・

 

先ず正確に、そして一言一句ハッキリと 『蘇生呪文』 を唱えなければならない。

 

次に、静かに待たねばならない。

一丁目の角を一番初めに曲がって来る 『生き物』 を。

 

ただし、その生き物を悪魔が選ぶ事は出来ない。

 

そして、その一丁目の角を一番初めに曲がって来た生き物の肉体を支配する事になる。

 

又、その生き物が人間とは限らない。

 

人間の時は問題なく悪魔は飽(あ)くまでも悪魔のままでいられる。

 

しかし、その生き物がもし人間以外の生き物であった時。

 

その場合、それまで持っていた記憶全てを失う。

 

そして、そのまま3年経過すると悪魔は天使へと昇華する。

 

ナゼか?

 

その理由は、悪魔は元々 “神に最も近い 『天使』 だった” から。

 

・・・と言う事じゃ。 分かったか? ドゥ・ユー・アンダースタン?」

 

「分かったゎ、パパ。 じゃ、アタシが人間に成れるか成れないか。 成れても、女か男か。 そして希望通りの容姿か否か。 全てアタシの運次第って事?」

 

「ビンゴ!! その通りじゃ。 わが娘タバサょ。 お前は賢い」

 

その時、それ迄黙ってジッと聞いていたダミヤンが言った。

 

「しっかし、一丁目の角を一番最初って・・・。 この物語が始まった頃のスケールと比べると話が随分セコクなってねぇか、随分セコク? ん? 親父(おやじ)さんょ〜」

 

「う!? ・・・。 そ、それはじゃなぁ。 ・・・。 そ、それは〜。 ・・・。 そ、その〜。 何ちゅーか? ・・・。 さ、作者じゃー!!

 

「え!? 作者?」

 

「そ、そうじゃ、作者じゃ作者。 作者の都合じゃ。 うんうん。 そうじゃそうじゃ、作者じゃ作者。 作者の都合じゃ」 (ス、スマソ : 作者)

 

ここでタバサが間に入った。

 

「いいじゃん、ダミアン兄さん。 そんな細かい事。 一々突っ込まないの」

 

と、ダミアンに。

そしてバッドフェローに。

 

「いいゎ、パパ。 じゃぁ、その 『蘇生呪文』 ての教えて」

 

「エエのか、わが娘タバサょ。 ホントにエエのか?」

 

「いいゎ、パパ。 早く呪文とやらを教えて」

 

「良し、分かった。 一度しか言わん。 それで覚えるんじゃぞ、いいな? それも掟じゃ」

 

「分かったゎ」

 

「ダミアン。 お前も覚えておけ」

 

「あぁ。 覚えておくょ、親父さん」

 

「よし。 では言うぞ。 聞き逃さぬようにな。 『蘇生呪文』 は、 『オン キリキリ マイマイ ウン ハッタ ソワカ。 オン キリキリ マイマイ ウン ハッタ ソワカ。 オン キリキリ マイマイ ウン ハッタ ソワカ〜〜〜。 クモルヤー!!』 じゃ」

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

#9 『小磯雲竹斎(こいそ・うんちくさい)登場!!』の巻

 

 

「若。 小磯雲竹斎兼持(こいそ・うんちくさい・かねもち)殿をお連れ致しました」

 

奥村家の執事・社門家沙(しゃかど・いえすな)が雲竹斎の来訪を玄龍斎に告げた。

 

「そうか。 ご苦労」

 

玄龍斎が労(ろう)を労(ねぎら)った。

というのも、家沙は玄龍斎の命を受け、遥々(はるばる)小磯雲竹斎兼持の館を訪ね、今回の事情を全く語る事なく、唯、玄龍斎が会いたがっている旨のみを告げ、たった今、共に戻って来たところだったからだ。

玄龍斎は自分の口から直接、事情を説明したかったのだ。

 

 

ここで簡単に玄龍斎、雲竹斎、家沙の人となりを紹介しておこう。

 

●第9999代目奥村家当主 奥村玄龍斎影虎 (おくむら・げんりゅうさい・かげとら)

身長 180cm

体重 75キロ

年齢 不詳(見たところ30歳前後と思われる。 が!? 実際は40歳位か?)

職業 不詳(陰陽師という噂だ)

趣味 詩吟・尺八・酒・女

容姿 レオナルド・ディカプリオをこの身長この体重にした感じ

 

●小磯雲竹斎兼持 (こいそ・うんちくさい・かねもち)

身長 165cm

体重 0.15トン

年齢 玄龍斎と同級生という噂だが、見たぶり50歳位である

職業 不詳(亀頭 否 祈祷師とも占い師とも言われている)

趣味 お茶・お花・お琴・“風俗”

容姿 美来斗利偉・拉麺男(ビクトリー・ラーメンマン)をこの身長この体重にした感じ

 

●社門家沙 (しゃかど・いえすな)

身長 不詳

体重 不詳

年齢 不詳

職業 不詳

趣味 不詳

容姿 ある時は、白髪白髭(はくはつ・しらひげ)の翁。 又ある時は、睾丸 否 紅顔の美少年。

時に、婦女子にまで姿を変える

備考 稀代(きだい)の方術家であり呪術の達人。

故に、全く実態がつかめず上記の様な結果となる

 

一説には、200年前のナツマケドン(玄魔対戦)の時、大魔王ロビン・バッドフェローがこの男の力量を見誤ったのがその敗因であると言われている

 

とすると・・・

 

この男の年齢は・・・?

 

 

 

「久しぶりだな、玄龍斎」

 

「良く来てくれた、雲竹斎」

 

「いよいよ、うぬの奥村家と我が小磯家の幾千年、幾万年に渡るライバル関係に決着を付ける時が来たようだ。 して、果し合いの場所はどこだ」

 

「まぁ、待て。 早まるな、雲竹斎。 今日来てもらったのは別の用件だ」

 

「ん!? 別の用件!? どういう事だ?」

 

「まぁ、チョッとこっちに来てくれ」

 

3人は工事現場へと向かった。

件(くだん)の大岩を指差して玄龍斎が言った。

 

「来てもらったのは他でもない。 これだ、これを見てくれ」

 

「こ、これは・・・!?

 

「そうだ、その通りだ」

 

「一体どうして?」

 

「あぁ。 チョッと目を離した隙にな」

 

「何で又?」

 

「い、いや。 そ、その〜、なんだぁ・・・。 そ、その〜、チョ、チョッとな。 うん。 チョッとだ」

 

「しかしマズイ事になったな」

 

「あぁ。 マズイ。 実にマズイ」

 

「言い伝え通りなのか?」

 

「いゃ。 まだ何とも。 だが、もしもの場合と思ってな」

 

「俺を呼んだという訳か」

 

「あぁ。 そういう事だ」

 

「ウ〜ム。 ・・・」

 

雲竹斎は考え込んだ。

そしてボソッと呟(つぶや)いた。

 

「ナツマケドンか・・・!?

 

玄龍斎が応じた。

 

「そうだ。 ナツマケドンだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

#10 『足音』の巻

 

 

「オン キリキリ マイマイ ウン ハッタ ソワカ。 オン キリキリ マイマイ ウン ハッタ ソワカ。 オン キリキリ マイマイ ウン ハッタ ソワカ〜〜〜。 クモルヤーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

タバサの全身全霊を籠(こ)めた 『蘇生呪文』 が響き渡った。

 

終に、超極大魔奥儀・悪魔蘇生法が開始されたのだ。

魔女タバサ復活の儀式である。

 

時は、夕暮れ。

場所は、一丁目の角。

魔女タバサ本人、並びに大魔王ロビン・バッドフェロー、悪魔ダミアンの3人が固唾(かたず)を飲んで見守っている。

一丁目の角を一番最初に曲がって来る “生き物” が果たして何かを。(一丁目の角ならドコの一丁目でも構いませんょ : 作者)

 

 

(コツン、コツン、コツン、コツン、コツン、・・・)

 

 

遠くから足音が聞こえる。

人間の物と思われる足音が。

 

『来た!!

 

タバサは思った。

それはロビン・バッドフェロー、ダミアンも同じだった。

そして目を凝らした。

 

 

(コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、・・・)

 

 

足音が段々大きくなって来る。

 

『早く来い』

 

3人は思った。

 

 

(ピタッ!!

 

 

何かをしているのか?

足音が止まった。

 

と、

 

その時。

 

「ワンワンワンワンワン!!

 

大きな犬の声が。

 

 

(ドキ!!

 

 

『い、犬が来るのか!?

 

タバサ達はたじろいだ。

身を大きく乗り出して、更に目を凝らした。

しかし犬が出てくる気配は感じられなかった。

 

 

(カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、・・・)

 

 

足音だ。

どうやら先ほどの足音の主が又歩き始めたようだ。

 

 

(カツ、カツ、カツ、カツ、カツ、・・・)

 

 

そして足音は益々近付いて来る。

タバサ達の手はジットリと汗ばんでいた。(もぁもぁで実体が無いのに汗ばんでるって、おかしいじゃネェか? つー、突っ込みはなしでオネゲェ致しやす : 作者)

 

と、

 

その時。

 

「ニャー!!

 

 

(ドキ!!

 

 

『ね、猫か!?

 

タバサは息が止まるかと思った。

しかし猫は出て来なかった。

 

 

(カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、カツッ、・・・)

 

 

足音はもうほとんど曲がり角付近から聞こえて来る。

 

『は、早く来い!! 早く!!

 

 

(ドキドキドキドキドキ・・・!!

 

 

3人共、もう息が出来ない位緊張していた。(突っ込みはなしで・・・ : 作者)

 

そして、

 

終に足音の主がその “姿” を現した。

 

その瞬間、3人は一斉に、

 

「オォー!!

 

っと、大声を上げた。

 

果たしてこの3人は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体何を見てしまったのかぁ〜〜〜!?

 

 

 

 

 

 

つづく