#31 『さらばだ』の巻

 

 

“必殺技に手加減なし!!

 

これが小磯流妙術の神髄だ。

同時に小磯雲竹斎兼持(こいそ・うんちくさい・かねもち)のモットーでもあった。

 

雲竹斎はショックを受けていた。

 

代々の雲竹斎達その全てが、放(はな)とうとした必殺技を途中で止めた事はかつて一度としてなかった。

普通の技では既に対処できない状況下にあり、最早これまでというその最後の最後に繰り出し、一撃必殺なるが故に必殺技なのである。

 

“誇り高き戦士” 小磯雲竹斎兼持にとって繰り出そうとした必殺技を途中で止めるという事はその技が破られたことを意味し、いかなる理由があろうとも許される事ではなかった。

プライドが許さなかったのだ。

しかし今、いかに偶然とはいえその許されざる事が起こってしまった。

雲竹斎にとってこの事実は 『敗北』 を意味した。

 

 

(ガクッ!!

 

 

うな垂れ、地に膝を付く小磯雲竹斎兼持。

 

玄龍斎は何も言えなかった。

良きライバルであり最良の友である雲竹斎の今の心境が、痛い程分かっていたからだ。

 

心配そうに全員が見つめる中、社門家沙が静かに雲竹斎に歩み寄った。

 

「雲竹斎殿」

 

そう言って手を差し伸べた。

家沙の申し出を断るように軽く首を横に振って、雲竹斎が自力でユックリ立ち上がった。

それから、

 

「俺もまだまだだな・・・」

 

玄龍斎にそう言って、

 

 

(チラッ!!

 

 

タバサに一瞥をくれた。

そして、

 

「フッ」

 

苦笑いを浮かべた。

再び、目線を玄龍斎に移した。

 

「その女の事は、うぬに任せる事にしよう。 見れば中々いい女だ。 色は白いし、太ももムッチリだし、形のいいデカチチだし、エロっぺーし。 アソコもキュって感じだし。 ちと剛毛っポイ気もするが密林じゃないし。 羨ましい限りだ。 上手くやったな玄龍斎。 ・・・。 (チョッと考えて) 式には俺も呼べょ。 チャ〜ンとな。 ワハハハハ。 さらばだ。 (家沙に一礼して) お世話になりました。 (自分の門弟達に向かって) さぁ、帰ろう。 ここに長居は無用のようだ」

 

 

(クルッ!!

 

 

背を向けて歩き出した。

門弟達も皆、玄龍斎達に一礼して後を追った。

その後姿に玄龍斎が呼びかけた。

 

「雲竹斎!!

 

雲竹斎が一瞬立ち止まった。

が、振り返らなかった。

そして又、歩き出した。

親指を立てた右手を高々と真上に差し上げて。 

それを見て、

 

『キザな真似を。 らしくもない』

 

玄龍斎は思った。

同時に、

 

「フッ」

 

笑っていた。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

#32 『君の名は?』の巻き

 

 

「君の名は?」

 

玄龍斎がタバサに聞いた。

二人は立ったまま見詰め合っていた。

 

「タバサ・・・。 タバサじゃ」

 

「タバサ!?

 

玄龍斎はチョッと驚いた。

 

「タバサとは、あの魔女タバサか? ・・・。 あのロビン・バッドフェローの娘といわれている、あのタバサか?」

 

「あぁ、そうじゃ。 ワラワは魔界の支配者大魔王ロビン・バッドフェローの娘タバサじゃ」

 

「・・・。 そうかぁ。 只者ではないとは思っていたが、まさかあのタバサとは・・・」

 

玄龍斎はチョッピリ、リアクションに困った。

ぎこちない間(ま)が出来た。

それをタバサが破った。

 

「嫌(いや)か?」

 

「否(いや)。 嫌ではない。 少し驚いたがな。 少しも嫌ではないぞ、少しもな。 (気分を変えるようにニッコリ笑って) 俺の名は・・・」

 

「知っておる。 『オーク・ムー・ラー・ゲンリュウサイン』 じゃ」

 

「否。 それは先祖の名だ。 俺の名ではない。 俺の名は 『奥村玄龍斎影虎』 だ」

 

「オクムラゲンリュウサイカゲトラ・・・か?」

 

「あぁ、そうだ。 どうだ、いい名だろ」

 

「あぁ、良(よ)い名じゃ」

 

「・・・」

 

ここで玄龍斎は少し考えた。

それから徐(おもむろ)に聞いた。

 

「さぁ〜てと、魔女タバサょ。 俺はお前をどうすればいい?」

 

即座にタバサが答えた。

 

「妻にすれば良い」

 

「つ、妻かぁ」

 

「そうじゃ。 妻じゃ。 ワラワをそちの妻にするのじゃ」

 

「・・・」

 

「何をためろぅておる、玄龍斎。 ワラワを妻にするのじゃ」

 

そしてエロっぽく腰をクネクネさせながら、両乳(りょうちち)をこれ見よがしに両手で下から揉み上げた。 

 

「さすれば、ホレッ!! そちの大好き〜なワラワのボインボインもそちの思いのままじゃ。 ホレッ!! このチチを好きなだけムニュムニュ出来るのじゃ。 ホレッ!! パフハフしたって良いのじゃ。 ホレホレホレッ!!

 

で、出たー!!

 

タバサの “ホレホレホレッ!!” 攻撃だー!!

 

耐えられるか玄龍斎?

 

耐えられるのかー?

 

オォーッと玄龍斎の鼻から、

ツゥーっと出たぞ鼻血がー!!

ツゥーっと!!

 

ドウだ玄龍斎? 耐えられるかー、これにー?

ドウだ?

ドウ・・・?

 

ア〜ァ、ダメか〜。

 

つー、まー、りー、・・・

 

駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

か〜。

 

「そ、そのボインボインをムニュムニュか? そのボインボインをムニュムニュかぁ? そのボインボインをムニュムニュかー? そ、そのチチをパフハフか? そのチチをパフハフかぁ? そのチチをパフハフかー? そ、そのチチをー!? そのチチをー!? そのチチを〜〜〜!? ウォーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

 

(プチッ!!

 

 

た、大変だー!!

玄龍斎が白目をむいて倒れたぞー!!

体がピクピクしているぞー!!

 

オォーっとー!!

 

今度はタバサが玄龍斎を抱き起こしたぞー!!

 

「ど、どうしたのじゃ、玄龍斎!? シ、シッカリするのじゃ!?

 

顔を上げ居合わせた者達を見回した。

 

「何をしておる皆の者。 そち達の主が倒れたのじゃ。 何をボーっと見ておるのじゃ」

 

社門家沙がタバサに歩み寄った。

 

「魔女タバサょ。 案ずる事はない。 若は無事じゃ」

 

「無事!? ドコが無事じゃ。 見ょコレを。 コレ、この通り痙攣しておるぞ。 ピクピクしておるぞ」

 

「否。 心配ない。 見ておれ、魔女タバサょ。 良〜く見ておれ」

 

そう言うと、家沙は門弟達に怪しい目配せをした。

そして、

フ〜っと、大きく息を吸ったかと思うと、こう言った。

それも大声で。

 

「オォー!? あんな所に太ももムッチリのボインボインがー!!

 

すると門弟達が一斉に、

 

「オォー!? あんな所に太ももムッチリのボインボインがー!!

 

突然、玄龍斎が、

 

「ドコだドコだ!? 太ももムッチリのボインボインはー? ドコだドコだ!? ドコにいる〜〜〜!!!

 

すかさずタバサが、両手で両乳を揉み上げた。

 

「ホレッ!! ここじゃ、ここじゃ。 ここにおる」

 

「ホントだホントだ!! 太ももムッチリのボインボインだ!! 確かに太ももムッチリのボインボインだ!!

 

こう言ってから、玄龍斎が家沙を見た。

 

「じい。 決めた、決めたぞ!!

 

「何をでございますか?」

 

「ウム。 俺はこの女を、この魔女タバサを。 妻にする。 いいな。 異存はないな」

 

「ウ〜ム」

 

家沙は躊躇した。

だが、玄龍斎は一度言い出したら聞かない。

それを十分承知していた。

 

「若、分かり申した。 確かにその女は、状況がどうであれ我等が微動だに出来なかったあの雲竹斎殿の 『地球割り』 を見事止めた女。 われらに敵対するのでなければ若に最も相(ふさわ)しいオナゴかと。 (門弟達に向かって) そうじゃな、皆の者」

 

「オォー!!

 

 

(パチパチパチパチパチー)

 

 

これがその時の門弟達の取ったリアクションであった。

 

こうして我等が奥村玄龍斎、そして魔女タバサは、晴れて夫婦の誓いを取り交わしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから10年の歳月が過ぎた。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

#33 最終回 『エピローグ』

 

 

社門家沙でございます。

私め。

今は息子に後を譲り、現在は楽隠居の身でございます。

 

我が主(あるじ)、奥村玄龍斎影虎様と大魔王ロビン・バッドフェローの娘、魔女タバサとの 『最後の聖戦』 からもう、既に10年の歳月が流れました。

アレからもう10年でございます。

 

魔女タバサは乗っ取った体の持ち主 『山本モナミ』 としてわが主、奥村玄龍斎影虎様の妻となりました。

 

不思議な縁でめぐり合ったあの二人も、今では一男一女に恵まれたそれはそれは仲のいい “おしどり夫婦” となっております。

 

長男の 『玄龍斎虎太郎(げんりゅうさい・こたろう)』 様は、大人しく物静かな勉強家。

親孝行で妹思いの紅顔の美少年でございます。

今年で8歳になられました。

 

一方、

妹の 『春日(ハルヒ)』 様は、今年6歳で活発な性格をしており、母・タバサ様そっくりの将来が楽しみな美少女でございます。

ただし、タバサ様譲りなのは容姿だけではございません。

 

実は・・・

 

真に何と申してよいか・・・?

 

その〜・・・

 

はい。

 

箒(ほうき)を見ると直ぐそれに跨(またが)って遊ぼうとするのでございます。

全く、血筋というのは争えない物のようでございます。

 

それでは皆様、又いつの日にかお会い致しましょう。

 

フォッフォッフォッフォッフォッ。

 

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その頃魔界では・・・

 

「おっせーな〜!! タバサのヤツ。 どうしちまってんだ、ったく。 ウンともスンとも言ってこねーで」

 

「我が息子ダミアンょ。 焦るでない。 タバサを信じるのじゃ。 そのうち連絡も有るじゃろぅ。 梃子摺(てこず)っておるのかも知れぬ。 何せ相手が相手じゃからな。 焦らずに待つのじゃ」

 

と。

 

帰らぬタバサを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のであった。

 

 

 

 

 

 

奥様は魔女っ子 お・す・ま・ひ