(第二話) 『ホワイト・クリスマス』

 

 

業務連絡、業務連絡

 

 

読者の皆さんへ

 

 

今日は

嬉しい

『クリスマス・イブ』

 

だから

 

日頃の

ご愛読に

感謝して

 

『コマル』

から

 

ささやかな

『クリスマス・プレゼント』

 

チョコット

ですが

心を

温めて

下さい。

 

フトコロは

ムリですヶど。

 

つー、まー、りー、・・・

 

「無理ーーー!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

ですヶど。

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

コ・レ・で・↓・(今夜、新宿に雪が降っちゃいますように エイメン)

 

 

 

 

 

 (第二話) 『ホワイト・クリスマス』

 

 

私は知っていたのです。

次の列車だと、新宿アルタ前に着くのが9時になってしまうのを。

私は確かに・・・

知っていたのです。

 

私の名前は朝霧麻美(あさぎり・あさみ)。

25歳。

OLです。

社命で、 “半年だけ” という条件で地方支社に出張して来ました。

女性の手が必要だったため、男性ではなく女性の私が行く事になったのです。

 

そして今日。

1224日。

クリスマス・イブが出張最後の日でした。

夜6時に新宿アルタ前に着けるように列車の手配は済んでいました。

 

私には恋人がいます。

加藤健一(かとう・けんいち)君と言います。

私は 「健ちゃん」 って呼んでいます。

同い年で幼馴染(おさななじみ)。

そして小、中、高と通して同じクラス。

それに大学まで同じ。

更に、同じ会社に一緒に入社。

嘘のようなホントの話です。

 

健ちゃんはいい人です。

でも、

何の取り柄もありません。

見た目は平凡。

チョッと大柄で、短足胴長。

動きも鈍くって、スポーツは全然ダメ。

 

つー、まー、りー、・・・

 

「駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

 

頭もそんなに良くはありません。

一言で言うなら。

“ドンくさいヤツ”

そんな感じです。

 

そんな健ちゃんですが、たった一つだけ “いい所” があります。

そしてそのたった一つのいい所。

それこそが決定的ないい所なのです。

それは “心の温かさ”。

そうです。

健ちゃんは優しくて、思いやりがあって、親切。

そして、誰よりも心の温かい人なのです。

 

健ちゃんは携帯電話を持っていません。

必要ないからです。

仕事も事務職なので、特に持っていなくても差障(さしさわ)りありません。

その健ちゃんと、今夜6時。

新宿アルタ前でデートする約束をしていました。

半年前、駅に私を見送りに来てくれた時に決めていたのです。

この半年間、連絡を取り合った事は一度もありませんでした。

普通の恋人同士ならあり得ない事だと思います。

でも私達にはそれが普通でした。

きっと、付き合いの長さがそうさせているのかも知れません。

 

振り返ってみて、この半年間。

色んな事がありました。

慣れない環境。

初めての長期出張に馴染めない仕事。

等など。

悪戦苦闘の毎日でした。

でも、一つだけ。

そぅ、一つだけいい事がありました。

 

支店長との出会いです。

支店長といってもまだ32歳で独身。

長身でハンサム。

成績優秀でスポーツ万能。

エリートでジェントルマン。

話題豊富で話し上手。

全てにおいて健ちゃんとは正反対です。

女性なら誰もが、こう思うような人です。

 

『素敵な人だなぁ』

 

当然、私もそう思いました。

 

その支店長に、私はプロポーズされたのです。

それも今日。

 

「結婚を前提に付き合って欲しい」

 

そう言われました、ついさっき。

私のために開いてくれた送別会が終わり、私を駅まで送ってくれる途中での話です。

駅までもう目と鼻の先、という所でタクシーを止め、喫茶店に誘われ、そこで。

 

私の心は揺れました。

 

だって・・・

 

だって、そうでしょ。

歳は少し離れてるヶど、将来有望なエリート紳士が。

私に、この私に、恋しているのだから。

私だって大学では一応ミスキャンパスでした。

だから健ちゃんと一緒にいると、みんなにこう言われたものです。

 

「“美女と野獣” ならぬ “美女とカッペ” だね」

 

もし、支店長と一緒ならきっとこうでしょう。

 

「『お似合い』 だね」

 

だから、

 

「チョッと考えさせて下さい」

 

と、即答を避けたもののとても楽しい一時(ひととき)でした。

そして、時が過ぎるのを忘れてしまいました。

そうです。

健ちゃんの存在を忘れてしまっていたのです。

 

『ハッ!?

 

と、気付いた時には乗るはずだった列車は既に駅を後にしていました。

 

『終わっちゃったのかな、アタシ達』

 

とか。

 

『私の小指に繋がってるのは、健ちゃんじゃなくって支店長?』

 

そんな事を考えながら、支店長に見送られて次の列車に乗りました。

東京駅まで3本列車を乗り換えます。

それもローカル線。

本数が少ないうえに連絡が悪く。

一本の差が何時間にもなります。

まして、休日の夜だから尚更です。

 

私の家は吉祥寺にあります。

だからもう、新宿を素通りして帰るつもりでした。

私の腕時計の針は9時を指しています。

約束は6時。

 

『もう、いないょね』

 

そう思ったからです。

でも、体は気持ちと裏腹でした。

気が付いたら、新宿駅を出てアルタの前にいました。

私がアルタに付いた頃から小雪が降り始めました。

粉雪です。

だから、とっても寒いです。

人込みをかき分けて健ちゃんを探したヶどいませんでした。

 

『そうだょね。 当たり前だょね』

 

そう思って、帰ろうと振り返ったその瞬間。

 

 

(ドシン!!

 

 

誰かとぶつかってしまいました。

すぐに私は。

 

「アッ!? 御免なさい」

 

相手も。

 

「こっちこそ、ゴメンネ」

 

その時お互いの目が合いました。

 

「あ、健ちゃん!?

 

「あ、麻美ちゃん!?

 

お互いを認識したのは、ほとんど同時でした。

 

「な、何でー!? 何で、いるのー!?

 

「『な、何でー!? 何で、いるのー!?』 って、麻美ちゃんと約束したから」

 

「ズ、ズーッと待ってたの!? ズーッと!? 3時間も!?

 

「ウン。 待ってた。 あ、でも麻美ちゃんに会えると思うと嬉しくって2時間前に着いちゃったから、5時間だね。 立ちっぱなしだと寒いから動き回ってたんだ。 (ヴッ、ヘークショーン) 風邪引いちゃったかな? ウー、さぶ」

 

「ウッ!?

 

 

(ポロポロポロポロポロ・・・)

 

 

私は涙が止まりませんでした。

 

「どうしたの麻美ちゃん? 急に泣き出したりして。 雪が本降りになりそうだね。 風邪引くといけないょ。 さ、どっか入ろ」

 

「バカ!!

 

気が付いたら、そう叫んで。

私は健チャンの胸に飛び込んでいました。

 

その時初めて、アルタからでしょうか?

山下達郎の 『クリスマス・イブ』 が聞こえている事に気が付きました。

今夜はクリスマス・イブだったんですね。

 

 

 

 『クリスマス・イブ』

 

 雨は夜更け過ぎに

 雪へと変わるだろう

 Silent night, Holy night

 

 きっと君は来ない

 ひときりのクリスマス・イブ

 Silent night, Holy night

 

 心深く 秘めた想い

 叶えられそうもない

 

 

 

雪が積もり始めて、辺りは段々白くなって行きます。

私は・・・健ちゃんの体に抱きついたまま一言もしゃべれません。

言葉が出てこないのです。

涙は止まらないのに。

健チャンの体は寒さのため冷え切っていました。

手袋をはめていないせいで、まるで氷のように冷たい手をしています。

 

 

 

 

 

 

でも・・・

 

 

 

 

 

 

 必ず今夜なら

 言えそうな気がした

 Silent night, Holy night

 

 まだ消え残る 君への想い

 夜へと降り続く

 

 街角にはクリスマス・ツリー

 銀色のきらめき

 Silent night, Holy night

 

 

 

 

 

 

 A Merry Christmas to you...

 

 

 

 

 

 

ミルキー・ウェイ (第二話) 『ホワイト・クリスマス』 お・す・ま・ひ

 

 

 

 

 

チョッと薀蓄 Part 2

 

 

前回投稿した “ミルキー・ウェイ (第二話) 『ホワイト・クリスマス』” の挿入歌に使った 『クリスマス・イブ』 ですが、実はコレではなく、タイトルと同じ 『ホワイト・クリスマス』 にしようかなって思ってました。

 

 

このホワイト・クリスマスという歌は、映画 『スイング・ホテル』 の中の挿入歌で大ヒットした曲です。

 

「『ホワイト・クリスマス』 って曲、ご存知の方多いですょネ」

 

な〜んてホザイタラ

 

「バカヤロ〜〜〜!?

 

って、言われちゃいそうな位ポピュラーですネ。

そしてとってもいい曲です。

 

「だったらナゼ、コレにしなかったの?」

 

って、思う人もいるかもしれません。

その訳は簡単です。

 

“映画 『スイング・ホテル』 に、チョコッとだけど引っかかるトコがあったから”

 

いい映画でハッピー・エンドなんだヶど、最後の方でビング・クロスビー演じる 『ジム』 がほんのチョッと女々しくて。

 

だ・か・ら・!!

 

でも、競演の清水圭みたいな顔してるフレッド・アステアのタップダンスは、とっても良いですょ。

 

!?

 

勘違いしないでネ。

ビング・クロスビー “演じる” ですよ、ビング・クロスビー “演じる”。

ビング・クロスビーの甘い歌声は、中々のモン。

 

特に、

 

『ホワイト・クリスマス』 を歌ってる時にクリスマスツリーの飾り付けのベルを叩くシーンと口笛は・・・

 

とっても・ス・テ・キ・!!

 

 

以上

 

軽い薀蓄ですた

 

 

!?

 

 

それと、 『スイング・ホテル』 の DVD は、500円で売ってますょ。

 

画質悪いヶど・・・