以下は、 2007/02/14〜2007/02/19 にかけてあ栖川呑屋コマルが今は無き Doblog にうpしちゃったヤツですょ〜〜〜ん。 チョッピリ手くわえてっヶど・・・
内容よっか、リズムで読んでちょ。
(第三話) 『朝の恋人 −その1−』
(ガラガラガッシャン!! パ〜〜〜ン!!)
「フゥ〜、間に合ったぁ」
JR山手線外回り、高田馬場駅午前8時20分発の電車内でのハプニング。
俺、加藤健一 (かとうけんいち)。
25歳。
一応、しがないサラリーマン。
住まいは、東京は新宿の高田馬場。
会社の所在は池袋。
自宅から会社まで、JR山手線高田馬場駅〜目白駅〜池袋駅間の約4分を加えて、ドア・トゥー・ドアで30分。
朝は決まってJR山手線外回り、高田馬場駅午前8時20分発の電車を使う。
それは二ヶ月前の事だった。
その日はチョッと朝寝坊。
家から電車のドアまで走りに走って飛び乗った。
危うくセーフでいつもの電車。
チラッと眺めた腕時計。
8時20分を告げていた。
周りの人に息を掻けないように、
「スゥー、ハー。 スゥー、ハー。 ・・・」
下を向いて深呼吸。
目白駅に着いた頃には治まった。
降りる客が多いので、そこから先はチョッと空く。
顔を上げたら車内刷り、癖になってるいつものチェック。
あちこち眺め回して目線を下げた。
事件が起きたのはその時だ。
(ドキッ!!)
「オットー!?」
おっでれーた。。。
3m先に素敵な女性が立っている。
窓から外の流れる景色を眺めてた。
その横顔が美しい。
『綺麗な女性(ひと)だなぁ』
チョッとため息吐いちゃって、そのまま静かに見とれていると、いつの間にやら池袋。
仕方がないので降りました。
次の日、余裕でいつもの電車。
その日も彼女は乗っていた。
さりげな〜く車内を見回して、誰にも見られてないのを確認し、
『チェック完了!!』
ナンゾとそう思い。
ユックリ見惚(みと)れる事にした。
その次の日も同様で、
その次も又同じ。
・・・
そんなある日の事でした。
いつものように彼女に見惚れていると、
(ピッ、コーーーン!!)
閃(ひらめ)いた。
『ナンテ名前かな?』
って・・・
当然、俺には分からない。
だから、適当なのを付けてみた。
いろんな名前を試してみたが、中々いいのが浮かばない。
なんかないかと考えた。
ケイコ、 ユキエ、 ミキ、 ヒロミ、 ・・・。
『ウ〜ム』
結局いいのが浮かばない。
池袋に着いちゃったので諦めた。
ドアが閉まったその瞬間、
(ピッ、コーーーン!!)
もう一回、閃いた。
『菊乃 (きくの)!?』
ナゼか分からないが、そう閃いた。
そしてコイツが気に入った。
『そうだ、菊乃。 うん、菊乃。 コレがいい。 良〜し、決めた。 菊乃だ、菊乃』
その瞬間、
彼女は俺の朝の恋人 『菊乃』 になった。
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つづく
(第三話) 『朝の恋人 −その2−』
「おはようー。 菊乃。 今日も元気かい?」
なんて又、
彼女の横顔に心の中でそう告げる。
いつもの朝のご挨拶。
もちろん、菊乃は聞いてない。
声なき声の片道切符。
見ているだけで幸せな。
いつもの朝のセレモニー。
JR山手線外回り、高田馬場駅午前8時20分発の電車。
高田馬場〜池袋。
月曜日〜金曜日。
4分間の物語。
コイツが俺の日課になった。
全く飽きる事がない。
そんなある日。
いつもの電車に飛び乗った。
今日も彼女は乗っていた。
「やぁ、菊乃。 俺のベイビーはハッピーかい?」
心の中でいつものようにそう告げる。
ところがどっこい、その瞬間。
突然、彼女がコッチを向いた。
(ドキッ!?)
『う!? ヤバ!? 目が合っちまった』
そのまま俺は固まった。
そして彼女は少しだけ。
ほんの少しだけ俺を見て、
(スゥ〜)
っと、視線を窓の外。
駄菓子菓子(だがしかし)、
彼女の横顔は間違いなくコッチ向き。
目じゃない目が俺を見る。
(バギューン!!)
瞬間、俺は悟ってた。
確かに確かに悟ってた。
『愛の世界』 に踏み込んじまっていた事を。
『男と女の愛の世界』。
もう後戻りなんか許されない。
そんな事など出来っこない。
『男と女の愛の世界』。
確かに俺は踏み込んだ。
それまでは・・・
窓の外、流れる景色を見ている彼女の横顔を、ただ見ているだけで満足だった。
だから、
俺の視線に彼女が気付いた事など無頓着。
考えた事すら一度もない。
でも、現実は・・・
そぅ、現実は・・・
もっとも、その日はそこまでだった。
が、
不安定な気持ちで池袋。
先を急ぐ乗客達に、押されるように降りました。
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・
・
・
つづく
(第三話) 『朝の恋人 −その3−』
次の日。
いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗っていた。
しかし、今日は声なき声は出なかった。
それが、いつもと違ってた。
彼女の視線は俺の頭上の中刷り広告。
しか〜し、
目以外の目は、俺だった。
確かにコッチに向いている。
『間違いない。 やっぱり菊乃は俺を・・・間違いなく意識してる』
俺のチキンな “はぁと” はドキドキで、まともに彼女を見られない。
だけど情けない事に、見たくて見たくて仕様がない。
だからチラッ、チラッとさり気なく。
そう、チラッ、チラッとさり気なく・・・
駄菓子菓子(だがしかし)、
彼女の目線は変わらない。
当然、心の目線も変わっていない。
目白で乗客が乗り降りしても、その状況に変化なし。
とうとう着いちまったぜ、池袋。
再び気分は複雑だった。
そして、
次の日。
ナゼかその日は木曜日。
いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗っていた。
そして、今日も俺は無言で乗った。
彼女も昨日と同(おんな)じだった。
けれども、昨日と一つ違ってた。
心のつぶやきではなく、言葉に出そう。
そう俺は決めていた。
「やぁ、おはよう」
ってな事を、言ってみようと覚悟を決めて、
人ごみを掻(か)き分け掻き分け近付いた。
なんとか彼女の前に出た。
『来る!?』
彼女も察知したようだった。
『いよいよだ』
そう思って、大きく息を吸った・・・その時だった。
彼女がサッと体を翻(ひるがえ)し、近寄る俺から逃げちゃった。
逃げたといっても、まぁ、別に。
走って逃げた訳じゃない。
背中をコッチに向けただけなのだが。
駄菓子菓子(だがしかし)、
ホンの一瞬の出来事だったが、彼女の気持ちが伝わった。
『怖い!!』
その気持ちが伝わった。
もっとも、
出鼻をくじかれちまったとはいえこの俺も、
「フゥ〜」
チョッピリ安心したのも・・・間違いない。
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つづく
(第三話) 『朝の恋人 −その4−』
今日は嬉しいハナ金だ。
いつもの時間のいつもの電車。
いつものように彼女は乗ってはいたが、
またまた、いつもと違ってた。
彼女がいたのはドアの側(そば)。
いつもは奥のはずなのになのに。
そして俺を見つめてる。
彼女の覚悟が目に出てた。
『ヨッシャー!! 行くぞー!!』
ナンゾと思ってはみたが、
中々彼女に近付けない。
客が邪魔で近付けない。
彼女は彼女で頑張ってる。
俺と引き離されないよう頑張ってる。
その必死さ、ひた向きさが伝わった。
俺は俺で、その日に限って上手くない。
4人組の学生達が、
やったら邪魔で動けない。
挙句の果てに目白駅。
ヤツ等と一緒に降ろされた。
慌てて乗ってはみたものの、
彼女はズ〜っと奥にいた。
と言うより、いなきゃならない状況だった。
そんな彼女にナンの気なしに。
否(いや)、
“反射的に”
と言うべきか?
チョッピリ照れくさそうに、首をかしげて肩をすくめる、やれやれポーズを取ってみた。
つーよっか、今流行の “クリオネ” ポーズとでも言うべきか?
もちろん、相手は彼女だが。
彼女は、にっこり微笑んだ。
『ヤッタゼー!!』
初めて心が通じた瞬間だ。
駄菓子菓子(だがしかし)、
無情にも着いちまったぜ、池袋。
「 Oh! No!! 」
見つめる彼女を見つめながら、後退(あとずさ)りしながら降りました。
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つづく
(第三話) 『朝の恋人 −その5−』
次の日、その次と休日だ。
当然、いつもの電車は来なかった。
早く来い来い月曜日。
もっとも、こっちも予定があった。
土曜は、新宿で親睦会。
ニッチョは、渋谷で懇親会。
一杯機嫌で渋谷で乗って、ほろ酔い加減で馬場に着く。
時計の針は、夜の12時丁度を指している。
浮かれ気分で改札口をチョィ千鳥足で出るはずだった。
が、
その場で俺は凍(い)て付いた。
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目の前にはこの俺の “朝の恋人 『その名は菊乃』” が立っている。
それも一人ではなく、男と一緒。
そいつと腕を組んでいた。
何をした後かは、ピンと来た。
受けたショックはデカかった。
一瞬、彼女と目が合った。
彼女は、
サッと目を伏せた。
スッと色をなくしてた。
ぎこちなくすれ違う。
知らぬは相手の男ばかりなり。
現実なんて、ソンなもん。
ルンルン気分は直ぐに失せ、その日はそのまま不貞寝(ふてね)した。
こんな時、眠れないのが普通だが、直ぐにぐっすり眠れた事に、目が覚めてから驚いた。
きっと酒の力(ちから)に違いない。
その日の朝は、チョィ気まずい。
だから1本早い電車に乗った。
当然彼女は乗ってない。
その次の日もおんなじだ。
その次も。
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ふと、気付いてみれば、菊乃の事は。
もうドウでも良くなっていた。
『チョッとモッタイなかったなぁ』
位になっていた。
その気分の変化に・・・
我ながら驚いた。
いつの間にやら乗る電車。
高田馬場駅8時17分発が普通になった。
そして、それから一ヶ月。
彼女の事は忘れてた。
駄菓子菓〜〜〜子(だがしか〜〜〜し)!!
本日の・・・
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つづく
(第三話) 『朝の恋人 −その6−(最終回)』
朝。
JR山手線、高田馬場駅8時17分発、いつもの電車。
ドアが開いたので乗り込んだ。
スゥーっと、引かれるように俺の首、どういう訳か左に振れた。
自分の首のはずなのに。
そしたらそこに彼女がいた。
2m位先だった。
『エッ!? 何で?』
ジッと俺を見つめてる。
悲しみと期待と不安が入り混じったような目をしてた。
しばらくそのまま見つめ合う。
悲しそうな表情に、チョコットばっかズッキンだ。
そして・・・
俺は目を切った。
『参ったなぁ。 ドウしましょ』
な〜んて思いつつ、窓から外を眺めていたが、視野に入る彼女の視線が痛い。
少し経ったら目白駅。
着いたら当然ドアが開く。
乗り降りする乗客達を、彼女の視線を感じながら眺めてた。
そしたら、
一人の女性が目に入る。
こっちに向かって走ってる。
ドンドンドンドン近付いて来る。
その娘とドアと競争だ。
どっちが早いか競争だ。
ドアかその娘か?
その娘かドアか?
タッチの差で間に合った。
「エィ!!」
っとその娘は飛び乗った。
そしたら直ぐに、
待ってましたとばかりにドアがガチャン。
(ガラガラガッシャン!! パ〜〜〜ン!!)
ハァハァ呼吸を整えて、
照れくさそうに微笑んで、
その娘は俺にこう言った。
「フゥ〜、間に合ったぁ。 オッハヨー!!」
歳は二十歳の女子大生。
笑顔の可愛い女子大生。
俺は、ニッコリ笑ってこう返す。
「おはよう」
そぅ。
その娘が俺の新しい
朝の恋人 『その名は菊乃』。
否(いや)、違う。
朝の恋人 『その名は菊乃』
そんな女は
もういない。
目の前に、今いるその娘は本物の。
俺の恋人 『その名は麻美』。
そう、
『朝霧麻美(あさぎり・あさみ)』
見つけたのは10日(とおか)前。
ゲットしたのは3日前。
出来立てホヤホヤの恋人だ。
「寝坊しっちゃった?」
「うん。 エヘヘ」
しばらくすると池袋。
後ろがチョッと気になるが、
振り返らずにそのまんま東口で降りました。
そして一緒に改札口。
そこで二人は右左(みぎひだり)。
俺は会社で麻美は私鉄。
今夜7時に池袋。
パルコでデートのお約束・・・
「じゃ、今夜ね」
「あぁ。 7時ジャスト。 又、ダッシュで来んのかな? さっきみたいに・・・」
「うぅん。 そんな事ないょ、ダイジョブだょ。 エヘヘ」
「ホント?」
「うん」
「良し!! じゃ、7時!?」
「うん、7時。 じゃ、ね!?」
「あぁ」
(第三話) 『朝の恋人』 お・す・ま・ひ