10



あ〜ぁ。


もうお昼だ。

とうとうメリーちゃん来なかったなぁ。


どしたんだ?

何かあったんか?


やっぱ、下痢か?

そうだ、下痢だ!!

うん、下痢だ下痢だ。

下痢に違いない。


なら心配ない、午後には来る。

あー、良かった。

って安心したら腹減って来たぞ。

一旦、家帰って飯にしよう。

うん、飯だ飯だ、飯にしよう。


オレ様山公園の花壇から田原家まで猫の足で3秒だ。

道路を一跨ぎすれば良いだけだからな。


!?


庭に洗濯物が。


!?


パパさんのシャツとパンツが。

チャンと真っ白になってるぞ。

パジャマもあるぞ。

こっちも綺麗だ。

ママさん洗濯したのか。

愛してるんだな、パパさんの事。


しっかし不思議だ!?


確かにパパさんは背が高い。

だから押し出しは立派だ。

そこそこ金だって稼いで来る。

だが、幼稚なヤツだ。

ウンチ漏らすヤツだ。

このママさんなら他に幾らでもいい話があったろうに。

何であんなパパさんと?


小指と小指が赤い糸?


そんな美しい話か〜!?

あんなパパさんとこのママさんが。


ちがーう!! ちがーう!! ゼタ〜ィ、ちがーう!!


こりゃ、前世の因縁だわな。

そう、因縁。


ぜ・ん・せ・の・イ・ン・ネ・ン・!!


『天は今世(こんせ)でママさんに、パパさんという “試練” を与えた』 ってか!?


そうだそうだ、そうに相違ない。

で、なきゃぁ、あのパパさんにこのママさんが・・・。


有得ん!! 有得ん!! ゼタ〜ィ、有得ん!!


「あら、ポチ!! 帰ってたの?」


うん。


「お。 元気ないぞー」


そんな事ねーょ。


「さてはメリーちゃんに会えなかったなぁ」


!?


な、何で分かっちまうんだ? 何で?


「どうだポチ、図星だろー。 ン?」


うん、図星だ。


ママさんは勘がいい。

それも異常な程だ。

時々ドキッとさせられる。

否、しょっちゅうドキッとだ。


「全くオマエってヤツは、ホント分かり易い猫だ」


!?


そ、そうかぁ?

お、俺様そんなに分かり易いかぁ?


「ほれ、ポチー。 ウリウリウリー、ウリウリウリー」


「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (う!? そ、その 「ウリウリウリー」 って言いながら俺様の額にママさんのおでこグリグリすんの止めてくれ)


「高い高い高〜い。 高い高い高〜い」


「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (そ、その 「高い高い高〜い」 つぅーのも止めてくれ。 お、俺様の “アソコ” がママさんの目の前なっちまうだろー。 は、恥ずかしいじゃねぇーか)


ア、アリスと同じ事すんじゃねーょ、ママさ〜ん。

い、いっくら若く見えるからって、ママさん歳なんだぜー、と、し。

こ、子供っぽい真似すんじゃねーょ、子供っぽい真似ー。

コイツらやっぱ親子だぜ。

全く同(おんな)じ事しやがる。


!?


ママさんはアリス以上だ。

その後、我輩を軽く投げ上げたり、頬擦りしたり。

我輩の両手を取り、二本足で立たせ、フォークダンスの真似事させたりと軽く10分はいじくり回す。


“ママさん流猫の可愛がり方”


らしい。


!?


非常に迷惑だ!!


冗談じゃねーぜ、ママさん。

俺様は玩具じゃねーんだからょ、俺様使って遊ぼうとすんじゃねーょ。

ママさん直ぐ俺様投げ上げんじゃねーか、あれって一瞬スゲー緊張すんだぜ。

ママさんは楽しいかも知んねえけどょ〜。

命懸けなんだぜ、こっちゎー。

命懸け。

分かる? 


い・の・ち・が・け・!!


「おいで、ポチ。 ご飯だよ。 お腹空いてんだろ?」


「にゃー」(うん)


ママさんは異常に勘が良い。



10話 完