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「ほ〜ら、ポチー。 ご飯だょ〜」


「ニャー」 (はーい、ママさん。 今行くぜー)


今日の昼飯は “何・か・な・?” っと。

俺様の大好きなミルクか? 


そ、れ、と、も、・・・。


ガーン!!


ね、猫マンマだ!?

ご、ご飯に味噌汁かけただけの!?


「さぁ、ポチ、お食べ」


食えるかょ、こんなもん。


「ほ〜ら、煮干しも入ってるょ」


頭付いてんじゃねーか、頭。

俺様、嫌いなんだょ、煮干しの頭。


「どしたの、ポチ? お腹減ってんでしょ」


あぁ、減ってるょ。


「早くお食べ。 冷えたらまずいょ」


暖かくってもまずいょ。

あ〜ぁ、また猫マンマかょ〜。


ママさんはご飯に味噌汁かけるだヶで、アリスもみたいにカチャカチャかき混ぜるような真似はしない。

だからカチャカチャかき混ぜるアリスの猫マンマとは一味違う。

元は同じなのに。

煮干しも原型留めているし。


しか〜〜〜し、


マー、ズー、イー!!


どっちもマズイ。


やっぱ食わなきゃなんねーのかぁ、この猫マンマ。

あ〜ぁ、今日は厄日だぜ、ったく。

ママさ〜ん、たまにはタイとかマグロで出汁(だし)取ってくれょー。

煮干しじゃなくってさぁ。

アンコウ何てどうだ。

良いんじゃねーかぁ、リッチで。


「ポチ、どしたの? 早く食べなさい」


はいはい、食べますょ。

食べりゃいいんでしょ、食べりゃ。

はいはい。


う、マズ。


しかし、所詮猫の悲しさ・・・。

というより動物の悲しさか?

腹が減ってるとまずくっても結構食っちまう。

気が付いたら、茶碗をペロペロ舐めている始末だ。

つまり全部食っちまったという事だ。

勿論、煮干しの頭は残したが。


「まぁまぁ。 また頭残したのね」


しょーがねーだろ、嫌いなんだから。

ママさんなんか、頭どころか煮干しその物だって食わねーじゃねーか。

チャンと見てんだぞ、チャ〜ンと。

味噌汁注ぐ時、シッカリ煮干し外してんの。


「全く、しょーがないコねぇ、このコは・・・」


とか何とかブツブツ言いながらも、ママさんは我輩の食器を洗ってくれる。

やっぱママさんは、良いヤツだ。


ところで我輩の食器だが、我輩の食器には名前が付いている。

というより我輩が付けたのだが。

その名も、


『オレ様茶碗』


だ。

うん、中々良いネーミングだ。

我輩は気に入っている。

しかし、アリス達はオレ様茶碗とは言わない。


こうだ!!


『ポチ皿』


・・・!?


センスねーょなぁ、センス。

ネーミングの、セ、ン、ス。

ポチ皿だってょ〜、ポ、チ、ざ、ら。


ウウウウウ。


何か悲しくなって来るぞ。

第一、茶碗だろー、茶碗。

皿じゃなくって。


ちゃー、わー、んー。


ま、言ってもしょうがない事なんだけどょ。

それにしても、なぁ。


『ポチ皿』


『ポチ皿』


『ポチ皿』


ウウウウウ。


悲しいぞ。


田原家は全てがこんな調子だ。

だから周りからはおよそ芸術とは無縁のファミリーに見られている。

無理もない事だ。


ところが、田原家には思いもよらない才能が・・・。




11 完