第14話
「あ〜、気持ち良かった〜」
お!?
美琴が風呂から出てきたぞ。
何だ、裸じゃねーか。
体にバスタオル巻いてるだヶだぞ。
変なおっさん来たらどうすんだ?
ん?
変なおっさん来たら?
お!?
冷蔵庫からミルク出したぞ。
グラスに注いで飲み始めたぞ。
美味そうじゃねぇか。
「ニャー」 (美琴〜。 俺様にもミルクくれょ)
「オヮ、アー!? あ〜、ビックリした!? 何だ、ポチか」
「ニャー」 (『何だ、ポチか』 じゃねぇょ。 ミルクくれょ、ミルク。 俺様にも)
「おぅおぅ、ポチ。 いきなり何だ? 背後から乙女のアンヨに体こすり付けて。 え〜? このスケベ猫」
「ニャー」 (なぁ、美琴〜。 そんな事言わねぇで、ミルクくれょ、ミルク)
「ミルクか? ん? お前ミルク欲しいんか? ん? うめぇぞ〜。 ホレ、ホレ、ホレ」
「ニャー、ニャー、ニャー」 (お、お、お)
チッキショー、俺様の鼻先でこれ見よがしにミルク見せびらかせやがって!!
「ホレ、ホレ、ホレ」
「ニャー、ニャー、ニャー」 (お、お、お)
チッキショー、又やりやがって!!
「ホレ、ホレ、ホレ。 うめぇぞ〜」
「ニャー、ニャー、ニャー」 (なぁ、そんなじらさないでくれょ、ミルク)
「ホレ、ホレ、ホレ。 って、やんねぇょ。 誰がやるかお前なんかに」
「ニャー、ニャー、ニャー」 (そ、そんな事言わねぇでくれょ、ミルク。 なぁ、くれょ)
「やーだょ。 おとつい来な。 あー、うめっ」
あ!?
こ、これ見よがしにゴクゴクと。
アァ―!?
ぜ、全部飲みやがった。
ゴクゴクと。
チッキショウー、何てヤツだ!!
下痢すんぞ。
パパさんみたいに。
「あ〜、美味かった」
しっかしオメェ、ホ〜〜〜ントやなヤツだな。
オメぇみてぇなヤツは変なおっさんに裸見られちまえ、裸。
チッキショー!!
「お、何だ、ポチ。 その反抗的な目は? ん? ミルクが欲しきゃお姉ちゃんにもらえ、お姉ちゃんに。 お前拾ってきたのお姉ちゃんなんだからな」
あぁ、分かったょ。
アリスにもらうょ、アリスに。
アリスが帰って来たらな。
「しっかし、お前。 ホ〜〜〜ントバカ猫だなぁ。 関心すんぞ、あんまりバカなんで」
バカで悪かったな、バカで。
「覚えてないのか? 今朝も同(おんな)じ事やったの。 ん?」
え!?
そ、そうか?
今朝も同じ事やったんか、今朝も?
覚えてないぞ、全く。
くどい様だが、我輩は猫だ。
猫は記憶力が悪い。
つまり我輩は記憶力が悪い。
“三段論法”
ってヤツだ。
「おらおらおら、邪魔なんだょ〜」
お!?
チ、チキショー!!
ま、跨(また)いだな〜!?
このアマー!!
俺様、跨ぐんじゃねー!!
おい、美琴!!
オメェ、パンツはいてねぇじゃねぇか。
アソコが丸見えだぞ、アソコが。
「あ!? 今お前、アタシのアソコ見たろ」
見たんじゃねぇょ、見えちまったんだょ。
そんな見たくもねぇもん。
「この、どスケベ猫ー!!」
ど、どスケベ猫って!?
オ、オメェが悪いんだろ、オメェが。
俺様、跨ぎやがるから。
コッチが言いてぇぐれぇだぜ。
そんな小汚(こきたね)ぇもん見せんじゃねぇょ、バ〜カ!!
って。
「おらー、ポチー!!」
コ、コラー!!
止めろ、美琴ー!!
何する気だ?
お、俺様、仰向けにして。
俺様の両足つかんで、何する気だ?
コ、コラー!!
お、俺様の股開くんじゃねー。
コ、コラー!!
や、止めろ、美琴ー!!
お、俺様のアソコ見るんじゃねー!!
は、恥ずかしいじゃねぇか。
「良し良し。 何ともなってねぇな」
あったりめぇだろ。
「おぅおぅ、ポチ」
何だよ?
「スケベな想像はしてねぇよーだな」
するわけねぇだろ。
「してなきゃ良い」
し、してなきゃ良いって・・・。
オ、オメェ、あ、頭おかしいんとちゃうか?
どっこの世界に人間の女のアソコ見て、モッコリする猫がいると思ってんだ?
オメェ、ぜってぇ頭おかしいんとちゃうか?
「美琴ー。 ソーメン出来たわょ〜」
「は〜い、ママ〜」
お!?
台所からママさん来たぞ。
「あらやだ、美琴。 なんてカッコしてるの。 裸じゃない。 誰か来たらどーするの。 早く服着てらしゃい」
「だってママ。 コイツがスケベなんだも」
コ、コイツがスケベって。
「コイツったら、今、アタシのアソコ覗(のぞ)いたんだょ」
ア、アタシのアソコ覗いたって。
「まぁ、やだ、ポチったら。 そんな事したの?」
濡れ衣だー濡れ衣だー濡れ衣だー、ママさん!!
濡れ衣だー!!
マ、ママさんまで・・・。
「って、ポチがそんな事する訳ないでしょ。 早く服着てらっしゃい」
ヨッシャー!!
やっぱママさんだ。
良〜、分かっとる。
うん。
「はい、ママ」
「チラッ!!」
お!?
何だ美琴!?
何か言いたそうだな?
ん?
何か?
「おぅおぅ、ポチ。 覚えてろょ」
覚えてぬぇょ。
覚えてるわきゃねぇだろ。
さっき自分が言った事、もう忘れたんか?
何つったって、俺様はバカ猫だかんな。
ばー、かー、ねー、こー。
だから覚えてるわきゃねぇだろ、覚えてるわきゃ。
バ〜カ。
ケケケケケ。
我輩は猫である。
猫は記憶力が悪い。
つまり我輩は記憶力が悪い。
“三段論法”
ってヤツだ。
ケケケケケ。
第14話 完