20



「ポチ」


何だいママさん。


「・・・」


な、何だよママさん。

俺様の顔じぃ〜っと見つめて。

て、照れくせぇじゃねぇか。


な、何だよママさん。

何か言いたげじゃねぇか。

な、何が言いてぇんだ、何が?


!?


ま、さ、か、告白?

愛の告白?

この俺様に愛の告白?


だ、ダメだぜママさん。


つー、まー、りー、・・・


駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


だぜママさん。

そればっかりはょ〜。

こ、越えちゃいけねぇ一線だぜ、越えちゃいけねぇ一線。

マ、ママさんの気持ちは嬉しいヶどょ〜。

や、やっぱダメだぜママさん。

そればっかりはょ〜。

倫理上からも宗教上からも。

や、やっぱダメだぜママさん。


「フ〜ン。 ・・・。 妙な猫ね〜」


!?


妙な猫?


何言うかと思ったら、妙な猫。

どういう意味だょ、ママさん。

この俺様に向かって妙な猫たぁ。

聞き捨てなんねぇぞ、その台詞(せりふ)

聞き捨てなんねぇぞ。


まぁ、愛の告白よっかは良いヶどょ。

チョ、チョッとホッとしたぜ。

チョ、チョッとな。


「バカなんだか利巧なんだか」


ガ〜ン!?


ば、バカなんだか〜!?

ど、どう意味だょ、ママさん?

どう意味だ?

美琴にバカって言われんのは慣れってヶどょ。

ママさんに言われっとチョッと堪(こた)えるぜ。

チョッとな。


「フ〜ン。 ・・・。 妙な猫ょね〜。 お前って、ホントに」


・・・。


「バカ猫だょ。 ママ。 ただの、ばー、かー、ねー、こ」


お、美琴!?

いつの間に。


「あら、美琴。 いつの間に」


「ママとポチがお見合いしてる間に」


してねぇょ。


「まぁ、やだ、お見合いだなんて」


「でもね、結構長い事見詰め合ってたょ。 ママ、コレと」


コ、コレとって。


おぅおぅ、美琴。

この俺様を物みてぇに言うんじゃねぇょ。

物みてぇに。


「さっきポチがね、雨降って来た事教えてくれたのょ。 否、教えてくれたみたいなのょ。 『洗濯物、濡れちゃうょ』 って言ってるみたいだったのょねぇ。 それが・・・」


「ママの勘違いだょ、そんなの」


「勘違い?」


「そうだょ」


「そうかな〜?」


「決まってるょ。 そうだょ。 こんなバカ猫、そんな賢い分けないょ」


実は賢い。


「でもね、美琴。 ママ、時々思うんだヶど。 このコ、あたし達の言葉理解してるんじゃないかって」


「ないない、そんな事。 ないない、絶対ない。 ママの考え過ぎだょ」


「そうかしら?」


「そうだょ、ママの考え過ぎ。 ママの」


「・・・」


「もしコイツがそんなに賢かったら、お姉ちゃんが真っ先にそぅ言ぅはずだょ」


「・・・」


「お姉ちゃん、コイツにベッタリじゃない。 今までお姉ちゃん、そんな事言った事ある?」


「いゃ、ないヶど。 でもね美琴、ママね・・・」


「はいはい、そこまでそこまで。 マ、マ、の、考え過ぎ。 ママの」


「・・・」


「おぅおぅ、ポチ」


何だょ。


「ママがな〜」


ママさんが何だょ。


「ママがな〜」


だからママさんが何だょ。


「お前がアタシ達の言葉、理解してるみたいだってょ」


あぁ、理解してるょ。

それがどした。


「ある分きゃねぇょな、そんな事」


あるょ。


「ねぇょな、そんな事。 このスカスカの頭でょ〜」


「ニャ!!」 (いて!?


こ、このアマー!!


いてぇじゃねぇか。

デコピンすんじゃねぇょ、俺様のおデコに。


「ほら、ママ。 やっぱりただのバカ猫だょ、コレ」


悪かったな、バカ猫で。


「じゃぁ、ママ。 アタシ塾行って来るから」


おぅおぅ、行け行け。

そんでもって二度と帰って来んな、二度と。


「あら、もぅ行くの。 まだ3時前ょ。 少し早いんじゃない。 時間まで」


「うん、でも先にチョッと図書館寄ってくから」


「そぅ。 帰り、何時ごろ」


「今日は7時位かな」


だーから〜。

帰ってくんな。


「そう。 じゃ、気をつけてね」


「うん。 じゃ、行って来まーす」


「はい、行ってらっしゃい」


おぅおぅ、美琴。

俺様にはねぇのか、俺様には。

俺様に 『行って来まーす』 はょ〜。

あ〜ぁ、挨拶抜きで行っちまいやがったぜ。


チッ。


ホント、口の減らねぇアマだぜ、つったく。


「ポチ」


!?

何だいママさん。


「・・・」


な、何だよママさん。

俺様の顔じぃ〜っと見つめて。

て、照れくせぇじゃねぇか。


な、何だよママさん。

何か言いたげじゃねぇか。

な、何が言いてぇんだ、何が?


!?


ま、さ、か、告白?

愛の告白?

この俺様に愛の告白?


だ、ダメだぜママさん。


つー、まー、りー、・・・


駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


だぜママさん。

そればっかりはょ〜。

こ、越えちゃいけねぇ一線だぜ、越えちゃいけねぇ一線。

マ、ママさんの気持ちは嬉しいヶどょ〜。

や、やっぱダメだぜママさん。

そればっかりはょ〜。

倫理上からも宗教上からも。

や、やっぱダメだぜママさん。


「フ〜ン。 ・・・。 妙な猫ね〜」


!?




20 完