24



パニックだ〜〜〜!!


パニックだ、パニックだ、パニックだ。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。


公園行くか留守番か?

留守番するか公園か?


どうしよう、どうしよう、どうしよう。

パニックだ、パニックだ、パニックだ。


パニックだ〜〜〜!!


「ピキッ!!


!?


今、ピキッって来たぞ。


!?


目まいがするぞ、目まいが。

気が遠く、遠〜くなって、目の前真っ暗になって・・・。


・・・。


「ドッコイショっと」


「ドサッ!!


「ふ〜。 今日は買い物いっぱいしちゃったなー。 ん!? あら、やだ、ポチったら。 こんなトコで大の字なって寝ちゃって。 猫なのに」


!?


なんか遠く、遠〜くの方から声が・・・。


「こら、ポチ!! そんなカッコで寝てるとオチンチン丸見えだぞ」


声が聞こえる、声が。

ママさんの声に似て・・・。


「いいのかぁ、ポチ。 写真撮っちゃうぞー」


!?


な、なんか凄く恥ずかしいような・・・。


「ジーーー!!」」


!?


な、なんか見られてるような・・・。


「ポチー!! なんて可愛んだ、お前ってヤツゎー!! ウリウリウリー。 ウリウリウリー」


何だ何だ!?

何の騒ぎだ!?

何が起こった!?

何だ!?


!?


ママさんが、ママさんが、ママさんがー!?


「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (や、止めてくれ!! その 「ウリウリウリー」 って言いながら俺様の額にママさんのおでこグリグリすんの。 や、止めてくれー。 お願いだー)


「高い、高い、高〜い。 高い、高い、高〜い」


「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (そ、その 「高い高い高〜い」 つぅーのも止めてくれぇー。 俺様の “アソコ” がママさんの目の前なっちまうだろー。 は、恥ずかしいじゃねぇか)


「ホレホレホレー。 ホレホレホレー」


「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (りょ、両手つかんで俺様にフォークダンスさせねーでくれ〜〜〜)


た、頼むぜママさん。

俺様、玩具にしねぇでくれ。

た、頼むぜママさん。


ママさんは激情家だ。

だから突然人格が変わる。

時々、意表をつかれて何がなんだか分からない事がある。

今のがそれだ。


「ほ〜ら、ポチ。 いっぱい買って来たからねー。 晩御飯楽しみにしてるんだょー」


うん。

分かったょ、ママさん。

楽しみにしてるょ。


「ルンルンルン」


!?


ママさん、何かあったのか。

良い事あったのか。

ルンルンだぞ。


便秘治ったのか。

愛人でも見つけたか。

ルンルンだぞ。


って、今日なんかあったっけ?


ウ〜ム。

分からん。

何も思いだせん。

でも、何かあったような気がするぞ。

それも凄〜く大事な何かだ。

う〜んと、なんだっけ?

う〜んと。

全然、思い出せないぞ。

この頃、記憶力弱くなったような。

困ったぞ。

俺様まだ3歳なのに。

困ったぞ。


前にも言ったが、我輩が田原家に拾われて来たのが3年位前だ。

本当は2年半チョイ位だが、面倒なので3年と言っている。

前にパパさんがそんな事を言っていた。

多分、事実だ。

拾われて来た時、我輩はまだ産まれたばかりだった。

だから、我輩も3歳と思う事にしている。

人間の年齢に当てはめると156歳といったところか。

良く分からないが。

まぁ、そんなトコかなって、自分では思っている。

つまり、

『年の頃なら156歳の紅顔の美少年』

って訳だ。

オ・レ・さ・ま・は。


!?


その紅顔の美少年の記憶力が弱くなってしまった。

ナゼか。


も、もしかして

俺様・・・・・・・・・・アルツ君?

つ、つまり・・・・・・・・・・ボ、ケ、か?

こ、この歳で・・・。


ガーン!!


そ、そう言えば思い当たる節があるぞ。


あれは確かぁ・・・。

一週間位前の話だ。

田原家の晩飯が牛肉のすき焼きだった。

それも高級和牛の。

アリスが担当した本の著者からのもらい物だ。

詳しくは知らないが、アリスのお陰でナイスな本が出来てそのお礼にと。

それが高級和牛だった。

それを使ったすき焼きだ。


あぁ、そぅそぅ。

念のためにもう一度言っておくぞ、忘れちゃってる読者のためにな。

アリスは今、出版社に勤めている。

そこで本の編集をやっているらしい。

これ、一応、念のため。


当然、この我輩もそのすき焼きは食べた。

お裾分けに預かっちゃったって訳だ。


もしかすると、

あん時食った牛肉。

ア、アレに当たったかぁ!?


つー、まー、りー、牛肉食ってアルツ君。


うん、

十分考えられるぞ。

あの時の、あのすき焼きの、あの牛肉に当たっちまった。


ガーン!!


こ、この若さでアルツ君かぃ、俺様。

なんてっこたい!!


つー事は、

俺様、その内・・・。

ウンチ床に塗り手繰(たぐ)ったり、歩行困難になったり、道分かんなくなったりするんか?

挙句の果てに、 『ボケ猫』 なんて呼ばれたりするんか?


『ボケ猫』


ウウウウウ。

なんか悲しくなって来るぞ。


『ボケ猫』


『ボケ猫』


『ボケ猫』


ウウウウウ。

悲しいぞ。


以上総合するとこういう結論になる。

我輩に新しい名前が付く。

ミドルネームだ。

そぅ。

その名も・・・。


ジャンジャ、ジャーン!!


『田原 アルツハイマー ポチ』


ウウウウウ。

悲しいぞ。


『田原 アルツハイマー ポチ』




24 完