27



!?


何か臭うぞ。


「クンクンクン」


ガ〜ン!!


カ、カレーだ。

カレーの臭いだ。

こ、この臭いは。


ママさんどこだ。

ママさんママさん。


!?


台所だ、台所にいるぞ。

お玉で鍋かき回してるぞ。

カレー鍋だ。

小皿に注いで舐めたぞ。

味見だ。

『うんうん』 頷いてるぞ。

美味いのか、ママさん。


でもょ〜、ママさん。

いくら美味くっても、

俺様、カレーは食えねんだぜ。

辛くって。

シチューなら食えるんだヶどょ〜。

シチューなら。

うん、ミルクた〜っぷり入りのシチューならな。


!?


ママさん俺様に気付いたぞ。


「あら、ポチ。 お帰り」


「ニャー」 (うん。 ただいま)


「お、ポチ。 浮かない顔してるな。 さては、メリーちゃんに会えなかったな」


ど、どして分かるんだ、どして。


「どうだ、ポチ。 図星だろ」


うん。

図星だ。

で、でも、どして分かるんだ、どして。


「ホ〜ント、お前は分かりやすい猫だ」


そ、そうかぁ。

俺様、そんなに分かりやすいかぁ。


「ポチ。 今日は・・・」


「ただいまー」


!?


アリスだ!?

アリスの声だ、あの声は。


「ニャー」 (アリスお帰りー)


「ポチー。 お迎えに来てくれたんだー」


「ニャー」 (うん)


「ポチーポチーポチー。 ウリウリウリー。 ウリウリウリー」


「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (う。 そ、その 「ウリウリウリー」 って言いながら俺様の額にオメェのおでこグリグリすんの止めてくれ!! た、頼むから、止めてくれ)


「ほれ、ポチー。 高い高い高〜い。 高い高い高〜い」


「ニャーニャーニャー。 ニャーニャーニャー」 (あ、赤ん坊じゃねぇんだから、その 「高い高い高〜い」 つーのも止めてくれ!! 俺様の “アソコ” がオメェの目の前なっちまうだろ。 は、恥ずかしいじゃねぇか)


「あら、アリス。 今日は早いのねぇ。 まだ6時半ょ」


「うん、ママ。 丁度ね、仕事の区切り良くってね。 だから早く帰れたんだ。 (クンクン) ママ、今夜はカレーだね。 い〜匂い。美味しそう」


「美味しいわょー、ママが腕によりをかけて作ったんだから」


「うん。 早く食べたい。 もう、お腹ペコペコ」


「でも、先にお風呂入ってらっしゃい。 お湯沸いてるから。 チョッと汗臭うわょ」


「え!? ホント!?


「ホント。 チョッとだヶどね」


「うん。 じゃ、先お風呂入って来るね。 ポチ、おいでー。 一緒にお風呂入ろ」


「ニャーニャーニャー」 (うんうんうん。 入ろ入ろ)


「あ、それからねぇ、ママ。 あたしパパとママに相談があるんだ」


「何? 相談って」


「うん。 お風呂出てからゆっくり話すね」


「そう。 じゃ、早く出てらっしゃい」


「うん。 ・・・。 あ!? でも、ポチと一緒に入るから長くなっちゃいそう。 だから先言っとくね、内容だけ」


「そう。 何?」


「あたしねぇ。 ママ。 会社辞めようと思うんだ」


「え!?


!?




27 完