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「うゎ〜!? 綺麗に食べたねぇ、ポチ〜!? 『ポチ皿』 真っ白」


だ〜からー、アリスぅ。

ポチ皿じゃねーだろ、ポチ皿じゃぁ。

オレ様茶碗、だろ。

“オ・レ・さ・ま・じ・ゃ・わ・ん”

ったく。

な〜にが 『ポチ皿』 だー。


「こっちのミルクのポチ皿もキレーに舐めちゃったね」


だ〜からー、アリスぅ。

こっちのミルクのポチ皿じゃねーんだょ。

こっちのミルクのポチ皿じゃぁ。

『オレ様茶碗ミルク・バージョン』

分かった?

『オレ様茶碗ミルク・バージョン』

だっつーの。


言い忘れていたが、オレ様茶碗は2種類ある。

一つは、ミルク・バージョン。

一つは、猫マンマ・バージョン。

だ。

どっちもドンブリ見たいに大きい茶碗だ。

ミルク・バージョンは文句なく大きい茶碗だ。

だが、猫マンマ・バージョンの方は形はまん丸だが多少平べったい、だから皿と言えなくもない。

チョッと微妙だ。

でも、両方とも底は深くなっている。

我輩が、ピチャピチャ食べても 『外に飛び出さないように』 との配慮があるらしい。

だからやっぱり、

『オレ様茶碗』 だ。

いゃ、

『オレ様茶碗』


!?


はずだ。


しか〜〜〜し、


アリス達は、

『オレ様茶碗』

とは言わない。

前にも言ったように、こう言う。

『ポチ皿』

と。


『ポチ皿』

『ポチ皿』

『ポチ皿』


ウウウウウ。

悲しいぞ。


「洗わなくてもいい位綺麗に舐めちゃったね。ポチ」


あぁ、アリス。

今日の晩飯は格別だったぞ。

ママさん 『サンクス』。

又頼むぜ、今日みたいなヤツ。


「さ、食器洗ってから、お仕事しよっと」


!?


もう9時だぞ、アリス。

これから仕事って。


「いいわょアリス。 浸()けとくだヶで、後でママが洗っとくから」


「いいの?」


「いいわょ、浸けとくだヶで。 どの道、パパと美琴の分も洗わなくちゃならないし。 でも、仕事って?」


「うん。 ほら、アタシ会社入ってまだ半年でしょ。 だから辞めるに当たって引継ぎする事たいしてないの。 だからもうイラスト描き始める事になったんだょ」


「え!? じゃぁ、お姉ちゃんいつまで会社行くの?」


「うん、一応今月いっぱい。 でも、うちの会社25日締めだから、8月25日まで。 でも、これから描くイラスト、今の会社の出版物だから全く問題ないんだょ。 今から描いても。 社員として描くから」


「へ〜。 凄いなアリス。 やっぱホントに独立するんだ。 うん。 なんかパパまだ実感湧かないなぁ。 まぁ、なんにしても、良かった良かった」


「じゃ、そのイラストが独立後の初仕事になる訳ね」


「うぅん、違うよママ。 これはね、社員としての最後のお仕事。 普通、会社辞めんのって1、2ヶ月必要でしょ。 でも、アタシの場合社長の好意で2週間で辞められるのね。 だからアタシから 『社員としてやらせて下さい』 って、お願いしたの。 『ホントに欲のない子だね』 って、社長達に言われっちゃたヶど。 そのほうがね、後でスッキリするもんね。 『立つ鳥跡を濁さず』 かな」


「そぅ。 じゃ、食べた食器は台所のボールの中に浸けといて頂戴。 後でママが洗っとくから」


「はーい、ママ。 さ、お口シャキシャキしてからお仕事しよっと」


「ニャー」 (なら、俺様も付き合うぜ、アリス)


「ポチは来ちゃダメ!!


ガーン!!


な、何でだょ、アリス。

な、何で俺様、行っちゃダメなんだょ。

な、何でだょ。


「近くに誰かいると、気が散って集中出来ないから来ちゃダメだょ。


つー、まー、りー、・・・


『駄目ーーー!! 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


だょ。 ポチ」


そ、そうか。

芸術家って微妙なんだな。

アリス、芸術家だもんな。


『アリスって微妙ね』 ってか?


チッ。


じゃ、しゃーない。

パパさん、たまには俺様と遊ぼうぜ。

たまにはょー。


「さ、風呂入るとするか。 ママ、着替え。 着替えどこにある?」


「後で脱衣籠に出しとくゎ。 (ウフッ) 昼間チャ〜ンと洗った純白の下着をね。 良〜く洗ったヤツ。 しみ一つなく良〜く洗ったヤツ」


「え!? それって、朝の・・・。 あ、あの。 あの下着かな〜〜〜? あ、あの洗濯機ん中入れといたヤツかな〜〜〜?」


「そうょ」


「そ、そうか。 うん。 しみ一つないヤツかな〜〜〜?」


うん。 

そんだぜ、パパさん。

ウンチのしみのないヤツだ。

昼間、ママさん綺麗に洗ってたぜ、パパさん。

パパさんの 『あの』 ウンチのしるし。


「じゃぁ、ママ。 風呂入るから、頼んだょ」


「えぇ、後片付け済んだらね」


あ〜ぁ、パパさん風呂入っちゃった。


じゃ、しゃーない。

ママさ〜ん。

俺様と、俺様と・あ・そ・ぼ。


「チョッとポチ、邪魔ょ。 ママこれから忙しいんだから、後片付けして、パパの下着出して、食器洗って、それからデイ・トレーディング。 又儲けなくっちゃねー。 今日みたいに。 さ。 後片付け後片付け、っと」


マ、ママさ〜ん。


チッ。


ママさんまで。


じゃ、しゃーない。

残るは美琴だけか。

ま、やなヤツだがたまには遊ぶのも良いか、たまにはな。


おぅおぅ、美琴。

お、俺様、オメェと遊んでやっても良いんだぜ。

オメェと遊んでやってもょ。

幸い、俺様、今暇だし。

ま、オメェが遊んでくれってんなら、考えてやんねぇでもねぇんだがな。

考えてやんねぇでもょ。

ま、オメェがどうしってもって言うんならな。

遊んでやっても良いんだぜ、美琴。

遊んでやっても。


「さ、アタシも勉強しなくっちゃ。 オラオラ、ポチ。 邪魔だ邪魔だ」


こ、このアマー!!


い、今。

俺様、足で払ったなー!!

足でー!!


チッキショー!!


く、悔しいぞ。

美琴にまで相手にされなかったぞ。

く、悔しいぞ。

お、俺様、不良になりそうだぞ。

不良に。

く、悔しいぞ。


・・・。


フンフン、いいんだいいんだ。

ど〜せ俺様の事なんて。

ど〜せ。


・・・。


チッキショー!!

大っ嫌いだー! 真っ赤な太陽なんて〜〜〜!!

夕日のバカヤロ〜〜〜!!


グスン。




33 完