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「カチャ、キ〜〜〜」 (ドアの開く音)


「おいでー、ポチ〜。 もうお仕事済んだから来ても良いょ。 おいでー、ポチ〜」


ハッ!?


アリスだ。

アリスが呼んでる。

アリスが俺様、呼んでる。


ダァーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!


「ニャーニャーニャーニャーニャー」 (ア、アリスーアリスーアリスー。 お、俺様、寂しかったょー。 アリスー)


「うゎー、凄い勢い!? どしたの、ポチ。 ダッシュで来たね」


「ニャーニャーニャーニャーニャー」 (アリスーアリスーアリスー。 寂しかったよー。 アリスー)


「パパ達、どしたのかな」


「ニャーニャーニャー」 (うん。 パパさん、風呂から出たら 『疲れてるから』 って、直ぐ寝ちゃったし。 ママさん、洗い物済んだら今度はパソで株やってるし。 美琴は、美琴で勉強中だし。 俺様ずーっと独りポッチだったんだぜ、ずーっと)


「ヨッコラショっと。 あれ、ポチ重くなったね」


「ニャーニャーニャー」 (うん。 この頃食い過ぎでチョッと太ったかもな)


「トン、トン、トン、トン、トン、・・・」 (階段下りる音)


「あら、アリス。 どうしたのポチ抱いて、仕事は?」


「うん、一区切り着いたから。 もぅ、今日はお仕舞い。 ママは?」


「ママはまだまだこれからょ」


「株?」


「そ。 明日の朝一の取引に備えて研究中。 儲けなくっちゃね」


「大変だね、ママも。 もぅ11時だょ」


11時? 何の何の、まだまだこれからょ。 これからが勝負ょ」


「頑張って儲けてね」


「えぇ。 ・・・。 あ。 そぅそぅ、アリス。 冷蔵庫にジュース買ってあるから、良かったら飲みなさい」


「うん、ママ。 ドッコイショっと。 あ〜、重かった。 ホ〜ント重くなっちゃって。 ポチ、もっこもこだね」


!?


アリスのヤツ冷蔵庫からジュースを出してグラスに注いでんぞ。

普段ならここでミルクのおねだりすっトコなんだヶどな。

今日は勘弁してやらぁ、今、腹一杯だから。


「ママー、パパは?」


「もぅ寝た」


「美琴は?」


「さぁ、部屋じゃない。 勉強してるんじゃないかしら。 それよりアリス。 ママ、今、大事なトコだからあんまり話し掛けないでね」


「御免なさい。 (ゴクゴクゴク) フゥー、美味しかった。 さ、ポチ、お部屋行くょ。 おいで」


「ニャー」 (うん)


「トン、トン、トン、トン、トン、・・・。 カチャ、キ〜〜〜、パタン!!


「今夜も熱帯夜になりそうだからクーラー弱にして寝ようね、ポチ」


「ニャー」 (あぁ。 この頃、毎日熱帯夜だな。 いくら夏とはいえ、異常気象だな。 何かやな事起きなきゃ良いヶどな。 な、アリス)


「何か、頭冴えて直ぐ眠れそうにないなぁ」


絵の描き過ぎなんじゃねぇのか、アリス?

それとも目の使い過ぎか。


「眠くなる迄、ポチ。 少しお話しよっか。 うん、そうだね。 ね、ポチ。 お話して上げるね」


何の話するんだ?

ん?

何の話だ?

『昔々、ある所に・・・』

なんてヤツか?


「あのね、ポチ。 ポチは何で自分がポチって呼ばれてるか知ってる?」


知らねぇょ。

でも、大体察しは着いてるぜ。

パパさんだろ、パパさん。


『この猫の名前は、猫だから、猫っぽく、 “ポチ”。 ナンチャッテナンチャッテナンチャッテ。 良し。 ポチにケテ〜ィ。 ポチで決ま〜り。 ナンチャッテナンチャッテナンチャッテ』


ナンチャッテ、決まったんだろ。

で、なきゃぁ。

俺様の名前 『ポチ』 なんてなるわきゃねぇょな。

『ポチ』 なんて名前にょ。


「美琴だょ」


!?


「ポチに 『ポチ』 って名前付けたの、美琴だょ」


エ、エェー!?


み、美琴が〜〜〜!?




34 完