第4話



「さ、トイレでも行くとするか」


「待ってパパ、アタシが先」


「『アタシが先』 って、なぁー美琴」


「駄目ょ、パパ。 アタシが先」


「パパ、行きたいんだょ」


「大きいほうでしょ?」


「あぁ」


「だったら絶対、アタシが先」


「何で?」


「だって、パパが入った後、10分以上待たないと入れないから。 臭くて」


「『臭くて』 って、換気扇まわしゃいいじゃないか。 そんなの」


「回して10分なの」


「バタン!!


「ちぇっ、先に入られたか〜。 なんてヤツだ親不孝もんめ。 誰に似たんだー? 全く」


「アナタ」


!?


出ました。

田原家お家芸。


「誰に似たんだ?」


「アナタ」


本日も絶好調。

いゃ〜、朝から期待を裏切りませんな〜。

楽しい家族だ。


でもょ、パパさん。

パパさんのトイレ、ホント臭いんだぜ。

幸か不幸かこの俺様もパパさんがトイレから出てきた瞬間に何度か遭遇したが、その臭さといったらアンタ、そりゃぁ、もう・・・。


!?


パパさん顔色悪りーぞ!!

どしたんだ?

何か変だぞ。


「ドンドンドンドンドン・・・」


トイレのドア叩き出したぞ。


「頼む、美琴。 は、早く出てくれ!! パパもお前が着替えてる時ミルク飲んでだなー。 チョッと腹に来てんだ、腹に。 ポチにねだられんの嫌で一気飲みしてだなー」


な、何ぃー!?


そ、そういうヤツだったんか、パパさんは・・・。


苦しめ〜、もっと苦しめ〜。

祟りジャー、ミルクの祟りジャー。


「た、頼む、美琴。 は、早くしてくれー!!


ヤバッ!!


パパさん、顔、青ざめたぞ。

も、もういいだろ美琴、早く出てやれ。

パパさんやばいぞ、かなりやばいぞ。


「た、頼む、美琴〜。 た、頼む〜。 マ、ママからも言ってくれ」


「美琴〜。 早く出てあげなさいー、パパ我慢出来ないって〜」


俺からも言ってやるぞ。

美琴〜、早く出てやれ。

パパさん死ぬぞ。

死んだらオメェが犯人だ。


「ガチャ!!


「あーあー。 トイレもゆっくり入れねーのか〜。 ったく。 ホレ、パパ出たよ」


「どけ、美琴ー!!


「バタン!!


「まぁまぁパパったら。 美琴、突き飛ばして」


「ママー、この家新築するなりリフォームで2階にトイレ作るかして。 でないと毎日これだょ」


「そうねぇ」


俺様としては新築がいいと思うぞ、俺様の遊び場作ってくれんなら。


ところでママさん気付いてたかぁ?

パパさんの顔。

美琴がドア開ける直前。

パパさん “ヘブンなお顔” になってたぞ。

小声で 『ぁ、ぁ〜』 ともって言ってたぞ。

ガンガレ、パパさん!!


「ママ、ちゃんと考えといてね。 行ってきまーす」


「はい、行ってらっしゃい」


おい、美琴!!


俺様に 『行ってきまーす』 はねえのか、俺様に?

あ〜ぁ、行っちまいやがった。

俺様には挨拶なしか、なんてヤツだ。


美琴は知らない。

この朝、究極奥義 『超・親不肛門(おやふこうもん)』 を放った事を。


それにママさんは知っていたのだろうか?

パパさんがトイレから出た後、そっとシャワーを浴びに行った事を。




第4話 完