第8話



「ここは公園である。 名前はまだない」



って、ダサいフレーズで出ちまったぜ。

明治時代なら良かったんだろうけどな、こんなんでも。

今じゃチョッとな、うん、今じゃチョッとだ。

ま、どうでもいい事なんだヶどもょ。


!?


いう訳で、我輩が今いる場所は田原家の道を挟んで真ん前にある公園だ。

初めにも言ったようにこの公園に名前はない。

仮にあっても、


『東京都なんとか市なんとか町なんとか番地公園』


だ。

ちなみに我が田原家は東京都下にある。

だが、この公園 『・・・なんとか番地公園』 では面白くないので、我輩はこう呼んでいる。


『オレ様山公園』


名前の由来はパパさんだ。

パパさん、時々 『西郷山公園』 (東京都目黒区にある) に行くらしい。

仕事で近くに行く事があって、たまに立ち寄るそうだ。

パパさんお気に入りの公園だそうだ。

よくママさん達にその話をする。

我輩も横で聞いている。

だからチョッとアレンジさせて貰った。


『オレ様山公園』


うん、中々いい響きだ。


『オレ様山公園』


うん、中々。



全く関係ないが東京都新宿区には、


『おとめ山公園』


というマイナーな公園もある。


「メジャーだ!!


地元の人達はそうほざく。

だが、マイナーだ。

誰も知らない。

そう、誰も。


さて、この公園から見た我が田原家だが、まぁまぁの造りだ。

決して豪邸ではない。

が、

この辺りはそこそこの人達が住んで居る。

だから割りとリッチな造りの家が多い。

その中にあって見劣りはしない。


白いお家だ。

25年以上の中古らしいが、詳しい事は知らない。

6年前、パパさんが儲けた金で買ったらしい、バイアグラで儲けた金だ。

我輩が来る3年前の話だそうだ。


この家だが、アリスはとても気に入っている。

でも、ママさんと美琴は好きではないらしい。

というより、この場所が気に入らないようだ。

ホントは二人とも、それこそ西郷山公園の有る目黒区青葉台や港区白金台辺りに住みたいらしい。


白金台といゃー 『シロガネーゼ』 で有名だ。

シロガネーゼか。

うん、ママさんや美琴にはシロガネーゼという言葉がピッタリだ。

二人とも超美人だし、上品だし、スタイル良いし。


だが、一番ピッタリ来るのはアリスだ。

確かに、ママさんや美琴と比べるとアリスは背が低い。

スタイルという点ではこの二人に見劣りする。

でも、アリスはこの二人をはるかに凌ぐ物を持っている。

それは “気品” だ。

天性の “気品” だ。

それに、なんといってもアリスは可愛い。

前にも言ったが、守ってやりたくなるような女の子だ。

しかし、恋人は出来ない。


不思議だ?


本人も欲しがっている様子はない。


ナゼだ?


だからチョッと心配だ。

いつまでも女の子じゃないんだぜアリス。

ダイジョブか?

俺様、チョッと不安だぜ。


オットー!?


もう一人大事な人を忘れていたぜ。

パパさんだ。

パパさんはこのお家が超お気に入りだ。


「駅から20分、スーパーまで10分。 不便だー、不便だー、不便だ〜〜〜!!


って、ママさんや美琴にブーブー言われてもお構いなし。


「田原さんちの白いお城。 ナンチャッテ、ナンチャッテ、ナンチャッテ」


ナンゾとうそぶいてる。


「なーなー、ポチ。 田原さんちの白いお城。 お茶目でいい名前だよな、お茶目で」


お、俺様に振るんじゃねーょ、俺様に。

第一どこがお茶目だ?

ん?

どこが?


いつもこれだ。

こんな調子だ。


家の名前より、そんな言い方するパパさんの方がよっぽどお茶目だ。

というより幼稚だ。

大丈夫なんかパパさん、いい歳こいてそんなに幼稚で。


「はいはい。 田原さんちの白いお城、田原さんちの白いお城」


ママさんの投げやりな反応だ。


「パパちゃんの白いお城って言ったら。 パパちゃんの・シ・ロ・イ・オ・シ・ロ」


美琴はもっとだ。


二人とももうチッと愛着持った方がいいんじゃねぇか。

住めば都って言うじゃねぇか、住めば都って。

確かに、不便は不便なんだけどもょ。

ま、猫の俺様には関係ねぇか。


だが、ママさんも美琴もパパさんがいない時はそうは言わない。


こうだ!!


『バイアグラ・ハウス』


バイアグラ・ハウスか〜。

そんな名前で呼んじゃ、家が可哀そうだぜ、家が。


家に関していうなら、パパさんの味方はアリスだヶだ。

もっともそのアリスも、田原さんちの白いお城とは言わない。


夢見る夢子の夢見るアリスは、夢見る夢子の夢見るアリスらしい名前を付けている。


そう、その名も、


『アリスのお家』


だ。




8話 完