死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #66



「オィ!! カメラカメラ!! 折角の死体がー!! 誰か急いで予備のカメラ持って来い!! なけりゃ他のスタジオのでも構わネェ!! 急げ!!


出歯亀が怒鳴った。

ここはさくらんテレビ 『産時のアナだ!』 のモニタールームである。

突然のハプニングにハンディカメラの手配。

そのためそこは半ばパニック状態だった。

中でも出歯亀の取り乱し方が酷かった。

日神にカメラを壊されたため折角の、高視聴率が期待出来る “生(なま)” 殺人シーンを放映出来なくなっちゃったからだ。

相変わらず出歯亀が大声で喚き散らしている。


「チッ!! なんなんだ、さっきのあのオッサンは? チッきしょうー!! カメラカメラ、カメラはまだかぁー!?


その時、



(ガチャ!!



モニタールームのドアが開いた。

番組に全く無関係のオッサンが入って来た。

日神だった。

半ばパニック状態だったためそれに気付いた者は誰一人いなかった。



一人いた。

女だった。

その女はこんな状況でもパニックにはならず、ジッと成り行きを見つめていた。

名前は高田馬場清美(たかたのばば・きよみ)。

レポーターだ。

この 『産時のアナだ!』 は月曜日から金曜日の毎日3時から3時55分までの1時間番組だった。

そして3時開始と同時に15分間ラー特集を放映し続けて来た。

毎日である。

高田馬場はそのレポーターだったのだ。

つまり高田馬場は毎日15分間ラー特集の情報担当者だった。

そしてこの番組のメインキャスター上原錯乱の後輩でもあった。

だが、今日に限ってその担当を外されていたのだ。

放映内容が内容だけに今回のこの第二のラー・テープのシリーズだけはこの番組の顔、人気キャスターの上原錯乱が担当する事になったのだ。


高田馬場は不愉快だった。

自負があったからだ。

第二のラーを名乗る者が他所の番組ではなく 『産時のアナだ!』 にメッセージテープを送って来たのは、他ならぬ自分がこれまでラーを追い続けて来たからであり、その実績をラーが買ったのだという。

それに毎日毎日ラー特集を続けている番組は他にはなく、この番組のみであり、そして高田馬場の放映スタンスがどちらかといえばラー寄りだったという事も第二のラーが評価したに違いないと確信していた。


事実、今日この番組開始直前自分が外され上原が担当する事に決まった時、チーフ・ディレクターの出歯亀と言い合いさえしていたのだった。


こんな風に、


「ナゼ? ナゼですか? 今日に限ってわたしが担当を外されるのは?」


「外したんじゃネェょ。 内容が内容だろ。 やっぱ今日は錯乱じゃネェのかぁ、オメーより。 こんな視聴率稼げるブツやるんだからな。 ま、悪く思うな。 こん回のシリーズ終わったら又オメー使ってやっから」


「でも、このテープはわたしが今までラーを・・・。 だから第二のラーが・・・」


「まーだ言ってんのかぁ、そんな事。 いい加減にしネェとホントに番組外しちまうぞ。 どけどけ、邪魔だ邪魔だ。 オーィ、錯乱!! 今日は締まって行けょー!! みんなー、気ー抜くんじゃネェゾー!!











って。







つづく






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #67



(ツカツカツカ・・・)



日神が背後から出歯亀に近付いた。

しかし興奮状態の出歯亀は全くそれに気付かなかった。

日神が言った。


「お前かぁ? テープを流した張本人は?」


その声に反応し出歯亀が振り返った。


「何だオメーは? 誰に断わって入って来た? 出ろ出ろ、ここは部外者立ち入り禁止だ!! 出ろ出ろ!!


そう言って両手で日神の胸を突こうとした瞬間、出歯亀の顔が引き攣った。

日神は娘、雅裕の頭に被せるため上着を脱いでいた。

そのため胸に装着されたピストルが露になっていた。

それが出歯亀の目に入ったのだ。


「け、警察?」


「そぅだ!! 今すぐ放送を中止しろ!!


「な、何言ってんだょ、アンタ。 そんな事したら俺等(おれら)全員第二のラーに殺されちまうじゃネェか」


「そんな事はどぅでもいい!! 早く放送を中止しろ!!


「ど、どぅでも良くネェょ。 そ、そんな事したら俺・・ら・・・」



(サッ!!



日神がピストルを抜いた。

それで出歯亀の眉間をグリグリしちゃった。


「おーまーえーのーせいでー(お前の所為(せい)で)既に警察官がー3人ー死んでぇーるんだーーー!! 早く中止しろーーー!!


「ヒッ!? わ、分かったょ。 押さえて押さえて。 オィ!! 放送中止、中止。 何でもいい、別の何かに切り替えろ。 そぅだ!! CM だ、 CM CM 。 CM に切り替えろ!!


画面が CM に切り代わった。


その CM は、可愛いんだヶど変な女・愛撫紗季(あいぶ・さき)が両手をパタパタしながらニカッてして、


『そぅでオジャル』


ってほざくヤツだった。



「こ、これでいいんだろ、これで?」


「あぁ、そぅだ、それでいい」


「アンタどぅかしちゃってるょ。 目がいっちゃってるょ・・・」


これを聞き、



(ギン!!



日神が出歯亀に一発、ガンをくれた。


『ヒッ!!


出歯亀はビビッタ。

その出歯亀に日神が畳み掛けた。


「それとテープだ。 テープを出せ」


「エッ!? テープ?」


「そぅだ、テープだ。 それに第二のラーが送ってきた物、全部。 今すぐ出せ」


「ウッ!?


一瞬、出歯亀が躊躇った。

日神が再びピストルで眉間をグリグリしちゃった。


「撃たれたいのかぁ? ン!? 早く出せー!!


「ヒッ!? だ、出します出します。 オィ!! テープだテープ。 それに封筒」


AD (アシスタント・ディレクター)が送られて来た封筒、中に入っていたメッセージの書かれた B5 のレポート用紙2枚、ビデオテープ4本を急いで持って来た。


「こ、これで全部です」


「ダビングしたテープ」


「エッ!?


「ダビングしたテープがあるだろ。 それも出せ」


「そ、そんな物は・・・」


「ない分けないだろぅ。 四の五の言わず、早く出せー!!


「い、いえ。 だ、だからそんな物は・・・」


「この期に及んでないなどとー、ふ、ざ、け、た、事をー、言うなーーー!!


も1回ピストルでグリグリしちゃったのだった。


「ヒッ!? わ、分かりました分かりました。 オィ!! ダビングしたテープ」


先ほどの AD がダビングしたテープを日神に手渡した。


「これで全部だな?」


「は、はい。 全部です、全部」


そしてピストルを指さして言った。


「お、お、お、お願い。 こ、こ、こ、これおろしてょ、これ」


「良し!!


それらを受け取ると直ぐ日神はモニタールームを出た。

そして携帯を取り出した。

回りを見回した。

誰も側にいなかった。

それを確認してから日神が番号ボタンを押し始めた。

日神は送信番号を見られたくなかったのだ。

勿論、今掛けた番号を予め登録して置く事も出来た。

しかし、もし万一その携帯を紛失した場合を考えて登録してはいなかったのだ。



(プルルルル、プルルルル、プルルルル、・・・)



「宇崎。 日神さんからです」


ワタセが携帯電話を宇崎に手渡した。

ここはラー対策本部ビル23階司令室である。


「わたしです、日神さん。 ・・・。 やはり護送車は日神さんでしたか。 ・・・。 はい。 そぅですか、全て押収。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 それはご苦労さまでした」


宇崎が携帯を切ろうとした。

その前にレイが宇崎の側に歩み寄っていた。

そして言った。


「宇崎。 貸してくれ」


宇崎が携帯を切らずにレイに手渡した。


「僕だ、父さん。 雅裕は雅裕は? ・・・。 そぅ、無事。 それは良かった。 ・・・。 ン!? あぁ、なら僕も直ぐそっちへ行くょ。 ・・・。 ゥン。 分かった父さん、直ぐ行くょ」


レイは携帯を切り宇崎に返した。

そして言った。


「様子を見に行く。 ドアとエレベーターのロックを解除してくれ。 それから警官に止められず、僕があの中に入れるよう手配してくれ」


宇田生がレイに聞いた。


「今行くのは危険じゃ?」


「いや、その心配はいりません。 雅裕も父さんも無事です。 だから僕が行っても大丈夫だと思います」


そして再び宇崎に言った。


「じゃぁ、宇崎頼む」


宇崎が部屋のオートロックを解除した。

レイがドアに近付いた。

振り返った。

宇崎と目が合った。


「行って来る」


そう言い残してレイが部屋を出た。

その後ろ姿を宇崎がジッと見詰めている。

怪訝そうな表情だ。

その時宇崎は、思い出していたのだ。

盛んに第一のラーに会いたがっていた第二のラーを名乗る者の・・・先ほどのメッセージを。


『ラー!! わたしはアナタに会いたい。 是非会いに来て下さい』











と言う。







つづく






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #68



本部ビルを出るまで、レイは一言も口を利かなかった。

盗聴される危険があったからだ。

だが、本部ビルを出ると直ぐ、独り言をほざき始めた。

まるで側(かたわら)に見えない誰かがいるかのように。


こぅ。


「苦竜!! いるんだろ、苦竜!!


「アイョ」


「人間界に持ち込まれた死人帖は全部で何冊なんだ?」


「さぁネェ?」


「知らないのか?」


「あぁ」


「なら、第三、第四のラーが現れる可能性はあるんだ」


「あぁ、なくはないな」


『そぅか。 何冊あるか分からないのか』


歩きながらレイは考え込んだ。

そんなレイに苦竜が言った。


「だが、3冊も4冊もない・・・と、思う」


「エッ!? ナゼ?」


「死神が持つ死人帖は原則1冊だからだ」


「じゃぁ、死神は何人、否、どの位いるんだ?」


「数えた事はないが、そぅだな。 今お前が思っている程多くもなければ少なくもないってトコかな」


「なら、3冊以上あっても・・・」


「いや、その心配はない」


「ナゼ言える?」


「簡単だ。 さっきも言ったな。 俺達死神の持つ死人帖は原則1冊だからだ。 そして死人帖を死神が人間界に持ち込むのには勇気のいる事だからだ」


「勇気のいる事?」


「そぅだ。 死人帖を人間界に持ち込むには勇気がなくちゃぁ出来ない。 ナンせ虎の子の1冊を人間に渡すんだからなぁ。 俺達の命綱を。 だから余程の事がない限り死神はその所有している死人帖を人間界には持ち込まない」


「しかし苦竜は持ち込んだ」


「あぁ、そぅだ」


「ナゼ?」


「退屈だったからだ。 死神界が。 いや、生きてる事が・・・」


「死神が生きてる事に退屈かぁ。 アハハ。 コリャいい。 アハハハハ・・・」


「可笑しいか?」


「あぁ、可笑しいょ、凄くネ。 凄く可笑しいょ、苦竜。 そして苦竜みたいに死神界に退屈した死神が他にもいた」


「いいゃ、いない」


「いない?」


「あぁ、いない。 かつてはいたようだがな。 だが・・・今現在、俺以外に自分の死人帖を人間に渡すような、そんな真似をするヤツを俺は知らない。 見た事もなければ聞いた事もない。 俺だけだ、そんな酔狂な真似をするのは。 死神界広しと言えどもこの苦竜様だけだ、そんな真似をするのはな。 だから安心しろ第三のラーはいない」


「第二のラーがいるのに」


「そぅだ。 もう1冊の死人帖。 何か余程の事があったんだろう」


「ナゼそぅだと言い切れる?」


「直感だ!! 死神のな。 死神の直感だ」


「間違いないかい?」


「あぁ、間違いない。 信用しろ」


「そぅかい。 それを聞いて少し安心したょ、苦竜。 だが、第二のラー。 厄介な事になったょ」


「だな」


「そぅ。 第二のラーは間違いなく目を持っている」


「あぁ」


「それに敵か味方かわからない」


「ン!? 味方なんじゃネェのか? あの内容なら」


「信じられればネ、あれが」


「信じらんネェのか、あれが?」


「あぁ。 まだネ。 会ってみなくちゃ」


「でもょ。 これから会いに行くんだろ、ソイツに? ダイジョブなのか? 敵なら目を持たないお前に勝ち目はネェぜ。 殺されちまうんじゃネェのか?」


「かもネ」


「なら止めた方がいいんじゃネェのか?」


「それは出来ない」


「何でだ?」


「宇崎より先に見つけ出さなきゃなんないからさ、ソイツを。 もしも宇崎に先を越され、死人帖の事が知られたらそれこそ大変だ」


「な〜る(成る程)」


ここまで話しをした時、



(キキキキキ、キー!!



タクシーが止まった。


レイが呼び止めるために上げた右手に・・・











反応して。







つづく






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #69



それは、日神尊一郎がさくらんテレビに乗り込んで来る直前の事だった。


「人殺しー!! 人殺しー!! 人殺しー!! ・・・」


テレビ画面では日神雅裕が悲痛な叫び声を上げ、第二のラーを罵(ののし)り続けている。


今、画面に映るその日神雅裕の姿を椅子に腰掛け、瞬き一つせず食い入るようにジッと見つめている一人の美少女がいた。

ここはさくらんテレビのタレント控え室。

その美少女は手にペンを持っている。

そして膝元にあるテーブルの上には何もなく、ただ A4 判サイズのノートが広げて置いてあるだけだった。

その広げられたページには何人かの人の名前だけが書いてあった。

その内の一つは、 『模木完造』 だった。


その美少女は茶髪で長髪。

背は高からず低からず・・・って、一々説明すんのめんどっちので、 『デスノート』 の弥海砂(あまね・ミサ)をご参照下さい。 デスノしっかりパクッテおりゃすんで。

つーか、そのまんまですんで・・・実写版を。。。


しっかし、こんなにそのまんまだと叱られちゃうかなぁ?


大場先生や小畑先生や日テレさんに・・・


完璧にそのまんまだもんなぁ・・・


!? 洒落ですょ、洒落!! アハハハハ・・・


大場先生、小畑先生、日テレさん、許してチョ。。。


(読者の皆さん・・・告げ口しちゃダメょ)


ヶど、本音言っちゃうと非常に後悔しておるのでアリンス、ワチキ。

人様の作品パクんのってこんなに大変だったかと・・・

オリジナル書くのの多分最低でも3倍の時間掛かっちゃってる。。。

こ〜んなに時間掛かるんだったら全部オリジナルにすりゃ良かったょ〜〜〜ン。

でもここまで書いちゃったからもったいなくって引くに引けないょ〜〜〜ン。


クッ!?


し、失敗したゼ!!!!!!!!!!


ゥゥゥゥ、ウッ!?




それに、赤が勝ったチェック柄のミニスカートに白いシャツ。

その上から真っ黒な皮のベスト。

ミニスカートからは時折パンツがチラチラしている。

そのチラパンの色は黒だった。

如何(どう)やら見せパンらしい。


小畑健先生にはこういうヤツこそウンコ座りさせて欲しいんだよなぁ、もちろん “シロ” で。。。

つー感じのキャラだった。



(ハッ!?



その “シロ” でウンコ座りして欲しいキャラの美少女が、突然驚いたように振り返ってブツブツ独り言を言い始めた。

その姿はまるでそこに見えない誰かがいて、その誰かに不意に話し掛けられたかのようだった。


その見えない誰かはこう言っていたのだ。


「なぁ、お前。 折角その死人帖上げたのに、もっと別の使い方があるんじゃないのか? 自分のためになるような・・・」


美少女が答えた。


「ウゥン。 自分のためになるように使ってるょ、コレ。 アタシはラーがどんな人か知りたいの。 会ってお話したいの。 そのためにワザワザコッチに越して来て一人暮らし始めたんだし、今日だってこんな事してるんじゃん。 それにアタシには分かるんだ。 ラーはきっと来る。 きっと来てくれるょ、アタシに会いに」


「危険な賭けだょ。 分かってるのかい? 殺されるかもょ?」


「ウゥン。 そんな事ないょ。 ダイジョブだょ。 アタシはラーの味方だし、ラーならきっと分かってくれるょ、それを。 もしダメでも、いざとなったら、きっとラーは持っていない “目” を持ってるアタシの方が強いモン」


その美少女の膝元にあるテーブルの上に置いてあるノートは死神からもらった物。

つまり死人帖。

ラーであるレイが第二のラーであるはずがない。

とすれば、この美少女が第二のラー・・・か?


その時、誰かがその控え室のドアを叩いた。



(コンコン。 ガチャ。 キー)



「ミーシャ。 今日の番組中止んなったゎょ。 あんな事のあった後じゃねぇ。 だから帰るゎょ、仕度して」


その美少女のマネージャーらしきオネェが美少女のいる控え室に顔を突っ込んでそう言った。


「はーい」


中味を見られないよう慌ててノートを閉じ、ミーシャと呼ばれた美少女が返事をした。


そぅ。


その “シロ” でウンコ座りして欲しい美少女キャラの名は、あの芽芽有公園駅行きバスのボディに宣伝広告としてデカデカとペインティングされていたアイドルの・・・











余 海砂(あまり・ミーシャ)だった。







つづく





死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #70



『ビンゴ!!


ミーシャは思った。


『やっぱり来てくれた!!


とも思った。

ここはさくらんテレビ正面玄関ホール。

今、余海砂(あまり・ミーシャ)がマネージャーに付き添われ2階から階段を下りて来ていた。

何気なく、ふと、立ち止まった。

ホールを見下ろした。

局と警察の関係者達が騒がしく行ったり来たりしている。

その中を3人の男女が玄関のドアに向かって歩いていた。


『ン!?


ミーシャがその3人の先頭を行く者に目を留めた。

それは先程テレビカメラの前で臆する事なく第二のラー、即ちミーシャ本人を人殺し呼ばわりした少女だった。

ミーシャが何気なくその場所に立ち止まったのは、実は無意識にこの少女の存在をそこに察知したからだった。

直感とでも言っておこう。

しかし皮肉な事にミーシャにはそれが幸いした。


と言うのも、


次が、ヘルメットを被り護送車で正面玄関に突っ込んで来たオヤジであり、

一番後ろが如何(いか)にも利発そうな顔立ちをしたスラッと背の高いカッチョいい青年だったからだ。

その青年はミーシャを公然と人殺し呼ばわりした少女の兄だった。

そしてヘルメットのオヤジの息子だった。

テレビ画面に映し出されていた二人の安否を気遣い、ここさくらんテレビにタクシーを飛ばしてやって来ていたのだった。

もっとも、その青年がここへやって来た一番の目的は他に有ったのだが。


もし、ミーシャが先程の少女に気付かなかったら、恐らく残りの二人にも気付かなかっただろう。

とすれば当然、この青年の存在を知る事も全くなかった。

それ程、微妙なタイミングですれ違う所だったのだ。


だが、ミーシャは気付いた。


これが “縁(えん)” 否 “運命” というものであろうか?



(ギラン!!



その3人を見つめるミーシャの目が妖しく光った。

その目はその3人の頭の上に・・・3人の頭上の空間に・・・本来なら有り得ない、しかし間違いなく浮かんでいる奇妙な文字を読み取っていた。

ナゼかミーシャだけにしか見えない奇妙な文字を。


そしてその奇妙な文字はミーシャにこう告げていた。


最初の少女は・・・『日神雅裕 20??年○月○日午後○時○分○秒』


次のオヤジは・・・『日神尊一郎 20??年○月○日午前○時○分○秒』


と。


だが、最後の一人だけは少し違っていた。


こうだ!! ・・・『日神太陽』


そぅ。


前の二人には名前の後に西暦の年月日時分秒が読み取れたのに対し、その青年は名前だけしか読み取れなかったのだ。


それを見てミーシャはこう思っていたのだった。


『ビンゴ!!


続いて、


『やっぱり来てくれた!!


それと同時に思わず口走っていた。


「みっけ!!


そして 『日神太陽』 という文字を見ながら考えた。


『ひがみ・・・。 ン!? たいよう・・・?』


と。











小首を傾(かし)げて。







つづく