死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #131



(ガチャ!!



ドアの閉まる小さな音がした。


『ハッ!?


『ハッ!?


その音でレイもミーシャも我に返った。


レイが立ち上がり振り向いた。

日神尊一郎が立っていた。

両手でジュラルミンケースを持っている。

出掛けと同様それには手錠が掛けられていた。

一方が自らの右手首、もう一方がケースの取っ手に。

日神は息子レイの目を黙ってジッと見詰めている。

真剣な眼差しだ。

レイも又、父、日神尊一郎のその目を見つめ返した。

そして一旦目を切り、左手にはめている腕時計をチラッっと見て時間を確認し、再び日神の目を見据え、顔を強(こわ)ばらせ、それから徐(おもむろ)にこう言った。


「父さん。 悪いが、その死人帖を僕に・・・返してくれ」


それを聞き日神が何とも言えない声を出した。


「レイ・・・」


と一言。


再び、レイが。


「僕は父さんを尊敬している。 その強さ、優しさ、正義感。 父さんのそぅいった物全てをだ。 僕はその父さんから正義を学んだ。 僕が今している事。 そしてこれからする事。 それらは全て父さんから学んだ正義のためなんだ。 だから分かってくれ、父さん。 他に方法がなかったんだ。 こぅするしか・・・他に方法が・・・」


レイはもう一度、時間を確認するため腕時計を見た。

それは今、目の前にいる父、日神尊一郎、そしてその尊一郎と自分の身を案じ、ひたすら無事の帰りを待っている母と妹から大学合格祝いとしてプレゼントされた腕時計だった。

レイは秒針を読み取った。

そして寂しそうに言った。


「ゴメン、父さん。 そろそろ時間だ。 僕にその死人帖を返してくれ」


日神は黙ったままジュラルミンケースの施錠を解いた。

『返してくれ』

というキーワードによる死人帖の命ずるままに。



(カチャッ!! カチャッ!!



2ヶ所に掛かっていた鍵が解けた。

後はケースを開くだけで良かった。



(バッ!!



仁王立ちしたまま、手錠を掛けたまま、日神がケースを開いた。

その瞬間、



(バサッ!!



っと、中から死人帖が落ちる・・・はずだった。


だが、


「ン!?


レイは驚いた。

死人帖がない。

ケースの中は空っぽだったのだ。


うろたえ驚き、信じられないという表情でレイが日神に聞いた。


「こ、これは!? これはどぅいう事だ、父さん?」


日神がそれに答えた。


「あの死人帖は先程消滅した。 理由は分からん」


「消滅した!?


「あぁ、そぅだ。 消滅した。 恐らくあの死神が何かしたのだろう」


『あの死神』 という言葉に



(ピクッ!!



っと反応し、レイが苦虫を噛み潰したような顔をして横を向き、小声で呟(つぶや)いた。


「クッ!? やってくれたな翠旻め。 コッチまで・・・」


そのレイの呟きが聞こえたのか聞こえなかったのかは分からなかったが、日神が寂しそうにレイに言った。


「レイ!! ・・・。 お前を逮捕する!!


「逮捕!? な、何を言ってるんだ、父さん!?


レイは驚いた。

もう一度腕時計を見て時間を確認した。

日神死亡予定時刻はとっくに過ぎている。

しかし日神は死なない。

何が何だか分からず、レイは焦った。


『そ、そんなバカな!? 死なないなんて!?


そして、


『ハッ!?


気付いた。


こぅ。


『に、偽物!? 偽物かこの死人帖は!?


その時、



(タタタタタ・・・)



エントランスのキャットウォーク部分に宇田生、相河、松山の3人が拳銃を構えて飛び出して来た。

それと同時に佐がレイの死角を突いて斜め後方から飛び出し、素早くミーシャの両手を後ろ手にし手錠を掛けた。

日神同様、4人とも生きていた。


レイが叫んだ。


「クッソー!! 偽物だったのかこの死人帖は!!


そして振り返った。



(キッ!!



ミーシャを睨み付けた。


「どぅいう事だ、ミーシャ、これは!? ま、まさかミーシャ、裏切ったのか!?


ミーシャが大声で言い返した。


「裏切る訳ないじゃん!! ミーシャがレイの事裏切る訳ないじゃん!!


「じゃ、ナゼこんな事に・・・!?


「ミーシャも知らないょ!!


その時、


2階階段付近から声がした。

聞き覚えのある声だった。


『ハッ!?


っとしてレイが声のする方を見上げた。

角度の関係か?

レイの目にその姿は見えない。

声だけが聞こえていた。


こぅ。


「余海砂はレイ君を裏切ってはいませんょ」


そしてその声の主がユックリと階段を下り始めた。

階段の安全柵は細い円柱形金属の格子状だった。

だからその階段を下りて来る人物の容姿はハッキリと分かる。

レイの立ち位置と階段の角度の関係から、その声の主の姿は靴も靴下も履いてはいない裸足の下半身から見え始めた。

徐々に膝、腰、猫背の背中、そして・・・顔・・・の順に。

そして終に、その姿を現した。


「アッ!?


思わずレイが声を上げた。


その人物は誰あろう・・・宇崎だったからだ。


そぅ。


死んだはずのあの宇崎だったのだその人物は。

愕然として言葉も出せず、信じられないという表情でその姿を見つめるレイ。

当然だ。

ホンのチョッと前、自分の見ている前で断末魔の苦しみを味わいながら死んだはずの宇崎が、何事もなかったかのように姿を現したのだから。


その宇崎が階段の途中で立ち止まった。


右手に 『死・人・帖』 と書かれたノートを手にしている。

勿論、いつものように親指と人差し指でそのノートを摘んでいるのは言うまでもない。

今はノートの角っこを摘んでいる。

そしてその死人帖を恰(あたか)もレイに見せ付けるかのようにブラブラさせ、宇崎が続けた。


「コッチが本物の死人帖です」


その姿を下から見上げていたレイが、反射的に口走った。


「う、宇崎〜!?


それに対し勝ち誇るでもなく、かと言っておちょくるようにでもなく、平然として宇崎が言い返した。


「オャ!? どぅしましたレイ君? 不思議そうな顔ですネ」


「ど、どぅしてお前が生きてるんだ? 死んだはずじゃなかったのか?」


レイが取り乱している。


「えぇ。 私は死んではいません。 こぅして生きています。 もっとも長くはありませんが」


「どぅいう事だ、これは!? これは一体どぅいう事なんだ? 宇崎」


「こぅいう事です」


そう言って宇崎は手に持っていた死人帖を広げた。

そこに書き込まれている名前をレイに指し示した。


その書き込まれている文字はこうだった。



 R. Ruleit


 心不全

 23日後の午後4時丁度

 安らかな眠りの内に死亡



「これが私の本当の名前です。 先程レイ君が知りたがっていた」


「エッ!?


レイは驚いた。

それ以上言葉が出なかった。

一瞬、何が何だか理解出来ず呆然としていた。

当然だ。

今、レイの眼前(がんぜん)では誰も・・・勿論レイすら・・・想像だに出来なかった出来事が繰り広げられているのだから。

それまで本物だと信じ切って疑いも掛けなかったミーシャから手渡された死人帖が偽物で、本物は宇崎の手の中にあり、しかも今それがこれ見よがしに自分に突き付けられている。

これすら予想外の事だった上、有ろう事かその本物の死人帖にまさか宇崎本人が自分で自分の名前を書き込んでいたなどという宇崎の想像を絶した、そしてレイの想定の範囲を遥かに越えた出来事が起こっているのだ。

さしものレイも呆気(あっけ)に取られ、鳩に豆鉄砲状態だったのは無理からぬ事だった。



(ピーン!!



その場に緊張感が走った。


それと同時にレイは底知れぬ宇崎の恐ろしさを味わっていた。

勝利のためなら自らの命をも顧(かえり)みないという・・・宇崎の真の恐ろしさを。



(ゾクゾクゾクゾクゾク・・・)



レイの背筋に冷たい物が走った。



(ゴクッ!!



思わず生唾を飲み込んだ。



(ゾヮゾヮゾヮゾヮゾヮ・・・)



鳥肌が立った・・・総身に。



(タラ〜)



冷や汗がにじむ・・・ジットリと・・・全身に。


レイは今、嘗(かつ)て経験した事のない感覚に囚われている。

“恐怖” という名の、嘗て経験した事のない感覚に。


そんなレイを尻目に、再び階段を下りながら宇崎が続けた。


「レイ君にトラップを仕掛けるため、私は “自分の命を諦めました。” そして先に書いた方が優先されるという死人帖の規則を逆手に取って、レイ君からの攻撃をかわしたのです。 最もそのお陰で私は後23日、否、22日と少ししか生きていられなくなってしまいましたが」


やっとの思いで気持ちを整え、なんとかレイが声を絞り出した。


「じ、自分で書いたのか?」


「はい。 自分で書きました。 そしてこれを日神さん見せました。 日神さんは即座に私の覚悟と決心を見て取り、協力を約束してくれました。 でも、日神さんは最後の最後までレイ君の無実を信じていらしたのですょ」


「だが、さっき・・・。 なら、さっきのアレは一体何だったんだ?」


レイは先程、宇崎が床の上で胸を掻(か)き毟(むし)って苦しむ姿を思い出していた。

そして


『ハッ!?


気付いた。


『え、演技か!?


即座に聞いた。


「あ、あれは演技だったのか?」


この時、宇崎は既に階段を下り切り、近くに有ったエントランス備え付けのソファーの上に飛び乗り、丁度お約束のウンコ座りをしたところだった。

レイと宇崎、その距離大凡(おおよそ)5メートル。

その格好のままレイを見つめ平然として宇崎が答えた。


「その通りです。 演技でした。 ワタセが倒れ込んだのを見た瞬間、レイ君が死神を使った事に気付き、 “フリ” をしてみました。 思った通りでした。 レイ君はまんまと私の演技に騙され自分がラーである事を認めてしまったのです。 それだけでは有りません。 あのやり取りは全て監視カメラが捕らえていました。 日神さん達は別室でそれを見ていたのです」


「クッ!?


ここで佐に後ろ手に手錠を掛けられているミーシャが横から嘴を突っ込んで来た。

レイの持つ偽の死人帖を顎で示して。


「でも、アタシが書き込んだ犯罪者達は皆(みんな)死んだゎ。 それが偽物だったらどぅして・・・」



(クルッ!!



宇崎がミーシャの方に体の向きを変え、それに答えた。


「はい。 アナタを開放した直後から新たなラーの裁きが始まりました。 わたしは直ぐにアナタの犯行だと確信しました。 だから日神さん達に悟られないよう、密かにワタセに命じてアナタの部屋に監視カメラを設置させてもらいました。 それが5日前、アナタが仕事で殆(ほと)んど一日部屋を空けた日の事です。 それでこの死人帖の隠し場所が分かりました。 後は模造品を作ればいいだけです。 幸い、もぅ1冊ここに死人帖がありましたから、それを参考にカメラに移ったアナタの死人帖の特徴を真似ればそれですむ事です。 そぅして作った死人帖を、再びアナタの留守中ワタセが部屋に入り、中に書かれてある文字を真似て本物そっくりに仕立て上げ、取り替えて置きました。 それが昨日の事です。 そしてアナタは自分の持つ死人帖が偽物である事に気付く暇がありませんでした。 と言うのも、アナタは今日はまだ死人帖を使ってはいないからです。 否、使えなかったからです、スケジュールの都合で。 そぅです。 アナタは昨日の午後から今日・・・先程まで部屋に戻らなかったのですから。 だからコッチが本物、レイ君が持っているのが偽物。 お分かりになりましたか?」


「・・・」


その説明で納得したのだろう、ミーシャは言葉を出せずに黙っていた。

宇崎が続けた。


「アナタのスケジュールは調べさせてもらいました。 そして今日という日を選んだのです。 第一のラー。 そして第二のラーの正体を暴く日を200?年■月■日の今日と」


と、ここまでミーシャに言ってから、再び宇崎はレイを見た。



(スゥ〜)



右手をユックリとユックリと上げ始めた。

人差し指を伸ばした。

その右手人差し指でレイを指差した。

そして自信と確信に満ちた声で、一言一言ハッキリと、レイの目を見据えてキッパリと、こう言い切った。


「レイ君。 否、日神太陽。 アナタが・・・ラー・・・です」



(シーン)



宇崎のこの言葉でその場が水を打ったように静まり返った。

しばらく沈黙が続いた。

日神がそれを破った。


「レイ。 まさか、まさか、こんな事になろうとは・・・。 だがなレイ。 お前のやろうとして来た事は正義なんかじゃない。 断固、正義なんかじゃない。 父さんはお前にそんな正義を教えた覚えはない。 ・・・。 レイ!! お前をラー容疑で逮捕する!!


だが、











その時、・・・







つづく






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #131の補足



【補足】


部屋の監視カメラに死人帖が映し出され、余海砂が今のラーだとハッキリしたにも拘らず、ナゼ宇崎は直ぐに余海砂を拘束せず、暫らく殺人を許したのであろうか?


それは今回の主犯である第一のラー、即ち日神太陽を挙げなければこの事件は解決しないからだ。

そのために出る多少の犠牲は仕方がない。

宇崎はそう考えたのだ。

しかもその犠牲者の中に、自分自身も入る覚悟を既に決めていた。

だから尚更、多少の犠牲には目を瞑れたのである。


これは以下の考え方に少なからず通ずる。


米ハーバート大学のマーク・ハウザー教授(心理学)が好んで示すある種のジレンマ。(多少アレンジ : 作者)


即ち、


(問い1)

 本線上を暴走するトロッコが接近して来る。 本線と支線の線路の切り替えスイッチはアナタが握っている。 もし、アナタが何もしなければ本線上にいる5人の人間が死に、支線に切り替えれば支線上にいる1人が犠牲になる。 暴走トロッコは既に目前。


 さぁ、如何(どう)する?



【参考】


(問い1) の回答としては 「1人を犠牲にする」 を選択する学生が多いそうだ。


恐らくこれには、


『多数を救うための少数の犠牲已(や)む無し』


という心理が働いているものと思われる。



 アナタの回答は?



次に、やはり (問い1) 同様、5人を救うための1人の犠牲に関する問いを考えて頂きたい。(これらの出所もマーク・ハウザー教授によるが、多少アレンジ :作者)



(問い2)

 上記 (問い1) に於いて、更なる選択肢を追加する。

 6人の内の1人を線路に突き飛ばし、トロッコを止めるというのは如何か? (勿論、突き飛ばし役はアナタ)


更に、


(問い3)

 『“献血に来た” 1人の青年の臓器を勝手に摘出し、移植を待つ5人の患者を救う』


 これは?



 アナタの回答は?



(問い2)、(問い3) は (問い1) 同様、1人を犠牲にして5人を救う点では同等だが果して・・・?



さて、


ここで新たな設問を用意した。

チョッと考えてみて欲しい。



【設問】


(前提) アナタは今 『死人帖』 の世界にいる。


そして、


名前を書き込まれた人間は必ず死ぬと分かっているノートに余海砂が “ A ” の名前を書き込んでいる。

その現場を捕らえている監視カメラの映像を宇崎が見ている。

そして名前を書かれた人間達が次々に死んで行くのが確認されている。

しかし宇崎は何もしない。

それが数日間続く。


 もし、アナタが宇崎の背後からこの状況を見ていたと仮定して、一体アナタは宇崎を如何(どう)思うだろうか?


 又、


 もし、アナタが宇崎だったら如何するか?


以下のケースで考えて頂きたい。(その他の設定は無し)


(ケース1)

 “ A ” が全てアナタの全く知らない人の場合。


(ケース2)

 “ A ” が全て平凡な普通の人と分かっている場合。 


(ケース3)

 “ A ” が全てお笑い芸人(吉本芸人系)の場合。


(ケース4)

 “ A ” が全てアホ・バカ・マヌケ・勘違い・芸無しお笑い芸人(古舘伊知郎、鳥越俊太郎、・・・系)の場合。


(ケース5)

 “ A ” が全て軽犯罪者の場合。


(ケース6)

 “ A ” が全て凶悪犯罪者及び凶悪犯罪の(ほぼそれに間違いない)容疑者の場合。


(ケース7)

 “ A ” が全て民主党の小沢一郎や自称コラムニストでハナクソの勝谷誠彦といった売国奴、国賊の類(たぐい)の場合。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 今、アナタが直面しているのはケース6の場合である。


 さぁ、アナタは宇崎を如何(どう)思う?


 あるいは、アナタなら如何する?



因みに、


デスノ実写版では、この時点で弥 海砂(あまね・みさ)の使ったデスノートは第一日目のみ本物で、それ以降はすり替えられた偽物という設定になっている。

そして、名前を書き込まれた犯罪者達が皆死んだというニセの報道をする事によって、弥 海砂にノートのすり替えを悟られなかったとしている。


これをそのまんまパクっても良かったのだが、これを文章にすると些か無理が生じてしまう。


例えば、収監されている犯罪者なら嘘の発表も出来よう。(もっとも、これすら国を挙げての大嘘をつくという事になるので果して・・・)

しかし、犯罪容疑者の場合、その所在がつかめている者なら兎も角(当然これも無理なのだが)、不明の場合、死んでもいない人間を死んだという嘘の発表は先ず無理である。 本人もしくは関係筋から嘘がバレル可能性が極めて高いからだ。 そして、もしそうなったら大問題となり、それは同時に余海砂に悟られる結果を生じるのは火を見るよりも明らかだろう。 従って、宇崎のキャラクター設定上、この部分の実写版のパクリは見送った。


それともう一つ、


苦竜ならその死人帖が偽物である事に直ぐに気付いてしまう可能性があり、それをミーシャに告げるという事も起こりうる。(もっともこの時点ではまだ、宇崎は苦竜の存在は知らないのだが・・・)


等と・・・考え出すと他にもまだまだ色々出て来る。



以上のように、実写ならサラっとやれてしまう事でも、イザ文章にするとなると少なからず問題が生じるものだ。

そしてその辺をいい加減に処理する事は残念ながら出来ない。

なんとなれば、これまで辛抱強くこのブログにアクセスされておられる読者は恐らく確固たる “マンガ脳” 持っている諸氏に相違ない。(と!? 勝手にそぅ想像している : 作者)

もしそうなら、その鋭い眼力を誤魔化すのは凡そ不可能であろうと察せられる。(チョッとお世辞・・・かなかな???)

理屈が通らないからだ。

又、

いい機会なのでついでにこれも言っておこう。

このブログは “マンガ脳” を持っていない人間には面白くも何ともない、全く読む気が起こらない単なる駄文に過ぎないに違いない。

実際、明らかにマンガ脳を持っていない知人にキッパリとこぅ言われた事がある。


「読む気がしない」


と。。。


って!?


チョッとエッラそうに言ってみるテスト。。。



しか〜〜〜し、



これまでに何ヶ所か 『これってチョッと苦しいかなぁ』 ナ〜ンて思いながら適当にスルーしちゃったトコあったんだヶど・・・気付いてた???




・・・・・・・・・・だってぇ、メンドっちかったんだょーーー!!! 誤魔化すの〜〜〜!!!




そ、 れ、 に、

この#131も結構、突っ込み所 万歳 じゃなくって 満載なの分かってる? (ヶど、突っ込んじゃダメょ : 作者)




・・・・・・・・・・ホ〜〜〜ンと、メンドっちぃんだょーーー!!! 辻褄あわすの〜〜〜!!!




ま、いっか!?


どぅせ・パ・ク・リ・だし。。。



よって・・・











この辺チョッと拘(こだわ)ってみちゃいますた。 補足書くために。。。(エヘヘ)







#131の補足 お・す・ま・ひ





死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #132



「フフフフフフフフ。 アハハハハハハハハ。 アーッハッハッハッハッハハ。 アッハッハッハッハッハッハ。 ・・・」


突然、レイが狂ったように笑い始めた。

その笑いは15秒近くも続いた。

意表を突かれ何も出来ず、皆黙ったままその狂ったように笑うレイを見詰めていた。

そして一頻(ひとしき)り笑ってからレイが言った。


「あぁ、そぅさ。 そぅだょ宇崎、否 R 、否 R. Ruleit だったな、確か。 その通りだ。 僕がラーだ!! そして・・・」


レイはぐるりと全員の顔を見回した。

それからキッパリとこう言い切った。


「新世界の神だ!!


更に続けた。


「最早、世界は “法(ほう)” では救えない。 否、救えなくなってしまっているんだ。 大掃除が必要なんだ。 それが必要な所まで来てしまっているんだ。 誰かがやらなきゃならないんだ。 誰かが・・・それを。 それが僕だったのさ。 僕だったんだょ、他の誰でもなく。 そぅさ、この僕だったんだょ、大掃除をする人間は。 ・・・。 初めて死人帖を手にした時ハッキリと分かったんだ、これは天からの贈り物だって」


ここでレイは宇崎の持つ死人帖を指差した。


「その死人帖は世の中を変えるための天からの贈り物だって、僕は気付いたんだ。 そしてそれを使って、今のこの腐った世の中を・・・政治を・・・司法を・・・教育を・・・。 全てを正していかなきゃならない。 そぅ僕は気付いたのさ。 あぁ、そぅさ、そぅ気付いたんだ、その死人帖を手にした時、僕は・・・。 間違いなく悪事を働いていながら、法の目を巧みに掻(か)い潜(くぐ)り、そのため法では裁けなくなった犯罪者達を裁く。 当然裁きを受けなきゃならないはずなのに、上手く逃げ通したため捕まる事なく裁かれない悪人達を裁く。 そんな奴等が野放しになったら益々世の中は悪くなるからネ。 だから裁いたんだょ。 法が裁けないなら僕が裁く。 正義のために僕が裁く。 そぅさ。 それが正義なんだ。 僕が正義なんだ。 僕はその死人帖を使って正義の裁きを加えて来たんだ。 分かったか? R ・・・ R. Ruleit 。 僕が正義なんだ。 正義は僕の方なんだ」


宇崎が反論した。


「いいぇ、それは違います」


「ン!?


「レイ君は・・・。 レイ君はただの・・・。 ただの人殺しです。 それも史上最も凶悪な無差別大量殺人犯です」


「・・・」


「そしてこの死人帖は・・・この殺人ノートは・・・史上最悪の殺人兵器です」


ここで宇崎とレイが睨み合った。

その状態が数秒間続いた。

先に口を開いたのはレイだった。


「どぅやらこれ以上言ってもムダのようだな」


と。


だが、レイは目を切らなかった。

相変わらず宇崎の目を睨み続けている。


しかしその時レイは、誰にも悟られないようにそっと右手を左手首に掛けていたのだ。

勿論、腕時計の分針用のイボを連続4回引くために。

その腕時計の中に仕込んである死人帖の切れ端を使うために。



(カチッ!! カチッ!! カチッ!! カチッ!!



終にレイが分針を引いた。

それも4度。



(カチャ!!



底板が飛び出して来た。

素早くレイがその中の針を取り出し、左手小指を少し血が出る程度に軽く突き刺し、仕込んである死人帖の切れ端に宇崎とミーシャ以外のそこにいる者達全員の名前を書き込もうとした。


だが、


その瞬間、



(ドギュン!!



一発の銃声がエントランス中に響き渡った。

硝煙が上がっている。

硝煙が・・・アンチャン松山の手元から・・・。


そぅ。


あのダメポ刑事のアンチャン松山が素早く拳銃を抜きレイの腕時計を打ち抜いたのだ。

それも完璧に腕時計に命中させていた。


「僕は射撃の腕はあるんです」


先程のアンチャンの言葉だ。

そしてその通り見事な腕前だった。


モントリオール・オリンピック、クレー射撃部門日本代表・麻生タロちゃん級だ!! (この時タロちゃん41位)

21回メキシコ国際射撃大会では、見事個人優勝を果したタロちゃん級だ!! (これが国を売る事しか頭にない小沢と我等が風流人タロちゃんとの決定的な違いだ)


撃たれたレイは傷一つ負ってはいなかった。


しかし、



(カラン!! カラン!! カラン!! ・・・)



打ち抜かれたレイの腕時計の一部が床の上を小さな音を立てて転がっている。

レイは、飛び散った腕時計と一緒に床に落ちている死人帖の切れ端に走り寄ろうとした。


だがその時、



(ドギュン!!



再び鈍い銃声がした。

やはり硝煙は松山の手元からだった。


しかし今度は、


「ウヮアァアァアァアァアァアァアァアァ・・・」


レイが悲鳴を上げた。

レイは足を・・・右足太ももを打ち抜かれていたのだ。


宇崎がソファーから飛び降り、飛び散ったレイの腕時計から外れ飛んだ紙切れに歩み寄り拾い上げた。

それは四つ折だった。

それを広げながら宇崎が言った。


「恐らくこれは死人帖の切れ端。 そして高田馬場清美もこぅやって殺した。 私達全員があの時死神・翠旻に気を取られている隙に。 そぅですネ、レイ君?」


たった今、松山に拳銃で撃たれ、血が噴出している右足を引きずりながらレイはエントランスの壁に体を預けていた。

そして痛みに耐えながらレイがそれを認めた。


「あぁ、そぅだ」


宇崎が言った。


「これで全ての疑問が晴れました」


ここでチョッと間(ま)を取った。

そして続けた。


「ここまでです、レイ君。 ゲームオーバーです」


それまでジッと黙って成り行きを見つめていた日神が悲しそうな表情を浮かべて、レイに言った。


「レイ。 もぅこれ以上無駄な抵抗は止めろ」


だが、


「フフフフフ・・・」


不意にレイが含み笑った。

不敵な笑いだった。

そして言った。


「それは無理だネ、父さん」


「いい加減にしろ、レイ!! 往生際が悪いゾ」


「あぁ、そぅかもしれない。 だけどネ、父さん。 僕にはまだ秘密兵器があるのさ。 強力なネ」


「秘密兵器?」


「あぁ、そうさ、秘密兵器さ。 今見せてやるょ」


そう言うとレイは顔を上げ、宙を見詰め、叫んだ。


「苦竜!! 苦竜どこだ!! 出て来い、苦竜!!


「アィョ〜」


苦竜が姿を現した。

エントランスの吹き抜け部分で空中浮遊し、レイ達を見下ろしている。


下から苦竜を見上げて宇崎が言った。


「これがこの死人帖に憑く死神・・・か!?


そして日神達に念を押すような調子で聞いた。


「皆さん、見えますネ。 この死神が」


日神が無言で頷いた。


宇田生が言った。


「あぁ。 見えるゾ。 さっきそのノートに触ったからなぁ」


相河も。


「あぁ。 見える」


松山も。


「僕にも見えてるゾ」


佐も。


「わたしにも見えるゎ」


全員が苦竜を見ている。


その時、撃ち抜かれた右足太ももの痛みのため呼吸の荒くなっているレイが苦竜に命じた。


「ハァハァハァ。 苦竜!! 今すぐコイツ等全員殺せ!! 殺すんだ!!


苦竜が聞き返した。


「何でだ?」


「ハァハァハァ。 新世界を作るためにだ。 もっと面白い世界を苦竜に見せるためにだょ。 ハァハァハァ・・・」


「な〜る(成る程)」


「だから早く書け!! ソイツの持ってる死人帖に早く書き込むんだ!! 早く!! 早くしろ、早く!! ハァハァハァ・・・」 


「あぁ。 書きゃいんだな、書きゃ。 アィョ」


苦竜が素早く宙を舞った。

そして


アッ!?


という間に宇崎の手から死人帖を奪い取った。

空中浮遊したままでミーシャの方を向いてミーシャに聞いた。


「オィ、ミーシャ。 このノートの所有権返してもらってもいいか?」


「・・・」


ミーシャは黙っていた。

突然の事に如何(どう)していいか分からなかったのだ。


レイが叫んだ。


「ミーシャ、苦竜の言う通りにしろ!! ハァハァハァ・・・」


それを聞き、ミーシャも叫んだ。


「所有権!! 返すゎ、苦竜!!


苦竜が無言で頷いた。

そして手にした死人帖に何かを書き込もうとし始めた。

それを見て、松山、宇田生、相河が銃を構えて叫んだ。


「止めろー!!


「止めろー!!


「止めろー!!


そして、



(ドギュン!! ドギュン!! ドギュン!! ドギュン!! ドギュン!! ・・・)



苦竜目掛けて一斉に発砲した。


だが、


銃弾は空しく苦竜の体を通り抜けて行くだけだった。

全く、手傷を負わせる事なく。


「ウヮッ、ハハハハハハハ・・・。 ハァハァハァ・・・。 アハハハハハハ・・・」


レイの笑い声だ。

レイが気が狂ったように笑っている。

苦痛と快楽の入り雑じった声で。

レイ、最早半狂乱。


「アッ、ハ、ハハハハハ・・・。 ハァハァハァ・・・」


一頻(ひとしき)り笑ってから、レイは宇田生達を見回し、嘲(あざけ)るように言った。


「ムダだ!! ムダムダ!! そんなモンで苦竜は殺せやしないんだょ。 ハァハァハァ・・・」


そして苦竜に聞いた。


「書いたか、苦竜? ハァハァハァ・・・」


「あぁ」


「じゃ、見せてみろ。 ハァハァハァ・・・」


「見たいのか?」


「あぁ。 見たい。 ハァハァハァ・・・」


「アィョ。 なら、ホレッ。 自分で見てみな」


そう言って、



(バサッ!!



苦竜が死人帖をレイの足元に放り投げた。

それを拾って、



(パラパラパラ・・・)



レイがページを繰った。

そして今苦竜が書き込んだであろうと思われるページを開いた。

その瞬間、


『ウッ!?


レイが絶句した。


ナゼか?


理由は簡単だ。


そこにはハッキリとこう書かれていたからである。


『日神太陽』


と。


苦竜の字で・・・











たった今。。。







つづく






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #133



「お前の負けだな、レイ」


レイの目を見据え冷たく苦竜が言った。


「な、何でだょー、苦竜? な、何で? ハァハァハァ・・・」


「始めて会った時、俺はお前にこぅ言ったはずだ。 『安心しろ、今は殺さん。 ・・・。 だがいずれ。 俺がお前の名前をその死人帖に書く事になる。 普通はな。 そしてその時、お前の寿命は尽きる』。 覚えているか?」


「あ、あぁ。 ハァハァハァ・・・」


「今がその時だ。 ここをどぅ切り抜けるか、チョィと期待して見ていたんだが・・・な。 ま、俺様に頼るようじゃぁ、お前も終わりって事だ」


「も、もっと。 もっと面白いモンが、もっとズッと面白いモンが見られたんだょう、苦竜。 だのナゼ・・・? ハァハァハァ・・・」


「あぁ。 もぅ充分面白かったさ。 まぁ、そぅいぅ事だ、レイ。 悪く思うな」


「ホ、ホントに死ぬのか? ホントに僕は死ぬのか? ハァハァハァ・・・」


「あぁ、そぅだ。 今までお前が殺してきたようにな。 今度はお前だ。 お前が・・・」


ここで苦竜は、レイをあの不気味なゴツゴツした人差し指で指差した。

そして言った。


一言。


こぅ。


「死ぬ!!


更に続けた。


「心臓麻痺でな。 皮肉なもんだなぁ、レイ。 ククククク。 あぁ、そぅいえば一つ言い忘れていた。 最後にもぅ一つだけ教えて置いてやろう。 よく聞け、レイ。 あのなぁ〜、一度でも死人帖を使った人間はなぁ〜、天国へも・・・地獄へも・・・行、 け、 な、 い。 ソイツを待っているのは・・・無・・・だ。 ククククク」


次の瞬間、



(ドキュン!!



レイの心臓が大きく一度脈打った。

そして、



(バサッ!!



手にしていた死人帖を放り投げ、


「クッ!? ゥゥゥゥゥ・・・」


右手で左胸、心臓付近を押さえて苦しみ始めた。


「レイ!!


日神がレイの名を叫んでレイに駆け寄った。

そして抱き起こした。


「シ、シッカリしろレイ!! シッカリするんだ!!


レイが日神にしがみ付いた。

弱々しい声で言った。


「と、父さん。 ぼ、僕は間違っちゃいない。 間違ってなんかないんだ。 正義は僕なんだ。 僕・・・が・・・せ・・・い・・・ぎ・・・」



(ガクッ)



レイは死んだ。

日神の腕の中で。

日神に抱かれたまま。

日神が頬擦りしながら力を込め、レイの遺体を抱き締めた。

声を絞り出した。


「レイ!!


頬を伝わる涙が痛い。


宇田生、相河、松山、そして後ろ手に手錠を掛けられたミーシャを連れた佐が集まって来た。

宇崎は先程のソファーに戻り、ウンコ座りしてその様子を黙って見ている。

皆無言で、頬に涙をこぼし、声を噛み殺して泣きながらレイの遺体を抱き締めている日神を見つめていた。

アンチャン松山が無意識に床に落ちている死人帖を、ソッと手を伸ばして拾い上げた。


一瞬、



(シーン)



辺りは水を打ったように静まり返った。

誰も声を出そうとする者はいなかった。

唯、ジッとレイの遺体とそれを抱き締めている日神を見つめていた。


そして、


その静まり返ったエントランスには、所有権を放棄したため既に死人帖に関する記憶を全て失い、ただレイに対する強い思いのみが残ったミーシャの、佐に抱き抱えられたまま泣き叫び続けている声だけが響き渡っていた。


「レイーーー!!


「レイーーー!!


「レイーーー!!


 ・・・

と。


繰り返し何度も、何度も・・・











空しく。







つづく






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #134



「皆さん。 これでラー事件は解決です。 本部は解散します。 これまでのご協力、感謝します。 有難うございました」


それまでウンコ座りしていたソファーから立ち上がって宇崎が言った。


レイの遺体を床にそっと置き、涙を拭って日神が宇崎に近付いた。

宇田生、相河、松山、佐も日神に従った。

勿論、ミーシャも一緒に連れて。

日神が宇崎に言った。


「宇崎。 否、 R なんと言っていいか。 わたしが死人帖の検証を拒んだばかりに・・・」


「いいぇ。 日神さんは当然の事をしたまでです。 むしろわたしの方こそレイ君を救う事が出来ず・・・申し訳ありませんでした」


「否、アナタは立派に戦った。 そして勝った。 ここにいるみんなが証人です」


4人が黙って頷いた。

日神が続けた。


R 。 我々は、アナタと共に戦えた事を誇りに思います」


と、ここまで言って言葉が途切れた。


「クッ!? ・・・」


最早、日神はこれ以上言葉を続ける事が出来なかった。

この時日神は、


『自分が親としての情に負けず刑事としての職分を全うし、死人帖の検証をしたいという宇崎の申し出を素直に呑んでさえいれば宇崎が死人帖に自らの名を記す事はなかった』


という慙愧(ざんき)の念に駆られていたのだ。


もう、それ以上何も言えぬまま日神は宇崎に一礼し、



(クルッ!!



レイの方に体を向け、歩き出した。

レイの遺体に近付き、しゃがみ込み、抱き上げた。

そのまま本部ビルの出口の前まで行き、立ち止まり、再び宇崎に向き直った。


宇田生が宇崎に一言だけ言った。


R 。 お見事でした」


そしてやはり一礼して本部ビルの出口まで行き、日神の横で立ち止まり宇崎に向き直った。


次は、相河だった。


「今まで本当にご苦労さまでした。 R


前二人同様、出口の前で宇田生の横に立った。


今度は、ミーシャを伴った佐だった。


R 。 アナタの事は一生忘れません」


そう言って、まだ声もなく涙を流し続けているミーシャを促して相河の横に立った。


最後は、死人帖を胸にシッカリと抱いている松山だった。


R 。 この戦いで、僕はアナタに知恵と勇気、その他多くの事を学ばせて頂きました。 本当に有難うございました」


松山も前に習った。


宇崎 否 R が日神、宇田生、相河、佐、松山の5人と余海砂のいる出口付近に目をやった。

その R の視線を受け、ミーシャを除く5人が姿勢を正した。

そして、



(サッ!! サッ!! サッ!! サッ!!



レイを抱く日神を除いた4人が R に向け一斉に敬礼した。



(コクッ!!



R が軽い会釈でそれに答えた。

それを合図に日神、宇田生、相河、ミーシャを連れた佐、最後に死人帖を持った松山が、クルッっと後ろを向け、そのまま振り返る事なく本部ビルから立ち去って行った。


R は黙ってその後ろ姿を見送った。


ラー事件解決の瞬間である。







そ、 し、 て、、、











デスノのパクリの終わった瞬間でもあった。。。(エヘへへヘ。 ぃや〜、 長かったゼーーー!! ホ〜〜〜ント。。。 ポーッポ―、ポポポポポポポ、ポッ、ポッ、ポポポッポ―、・・・。 パチパチパチパチパチ〜〜〜 : 作者)







つづく






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #135



「これがラー事件の全容です。 今から23日前の事です」


上崎左京が破瑠魔外道に言った。


空かさず外道が返した。


「あぁ。 あの事件の事は俺も気にはなっていた。 しかし、妖気の類は一切感じられなかったので俺の出番はなかったのだが、そんな事があったのか・・・。 死神かぁ。 死神じゃぁ、妖気を感じないのも当たり前だ。 一応、神だからな。 疫病神や貧乏神と一緒で・・・。 だが、それとこの娘(こ)の拉致とどぅいう関係があるんだ?」


外道が顎で雪を指し示した。


「はい。 それが大有りなのです」


「もったいぶらずに言え」


「そこで不良さんの登場となるのです」


「ン!? お前、人をおちょくってるのか? それともシャレのつもりか?」


「いいぇ。 おちょくってもいなければ、シャレてもいません」


「じゃ、何だ?」


「はい。 今、我等が祖国日本は 否 世界はかつてない規模の大転換期に入っています。 それも決して良い方向へではなく」


「と言うと?」


「はい。 リーマン・ブラザーズの破産に見られるように、今、世界経済は大混乱です。 百年に一度の経済危機とさえ言われております。 しかしそれは一人経済に限った事ではありません。 その経済が引き金となり今後世界は深刻な状況を迎えるのは火を見るよりも明らか、犯罪は横行し、人心は荒廃し、社会不安は益々増大し、下手をすればパニックが起こり世界は動乱する事でしょう。 国家破産も相次ぐかもしれません。 又、地域的な紛争が多発する可能性も否定出来ませんし、やがてそれが戦争に。 そして、それがもし核戦争にまで行ってしまえばそれこそ取り返しがつかないのです。 こんな非常時にこの R のような逸材を失うという事は途轍(とてつ)もない損失です。 我々はなんとしてもこの R の命を救いたい。 そのためなら何でもしよう。 その一心でした」


横で聞いている亀谷がコックリと頷いた。

上崎が続けた。


「そんな時、ある筋から不良さんの存在が伝わって来たのです」


「不良の?」


「はい。 心霊ドクター不良孔雀さんの噂です。 いくら科学が進歩したとはいえ、死神が相手では如何(いかん)ともしがたい。 我々では全く手の施しようがございません。 だがしかし、不良さんのような特殊な世界に生きておられる方ならばもしや、そぅ思い至り、先日ご相談に伺った次第なのです」


ここまで話してから、左京が自分達と不良とのやり取りを具体的に話し始めた。











その内容はこうだった。







つづく