死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #136



「あの〜、失礼ですが、貴方が不良先生。 不良孔雀(ぶら・くじゃく)先生ですネ」


慎重170cm程の細身中背の男が、190cmは有ろうかという長身長髪の男に尋ねた。


ここは、日本某所にある超豪邸。

否(いや)、むしろお城と言った方がいいか?

形は大阪城に擬(ぎ)し、ご丁寧に天守閣まで設(しつら)えてある。

その天守閣が応接間だ。

表札には、 『羽柴秀吉(はしば・ひできち)』 と書いてあった。


これはその天守閣。

即ち、応接間での出来事である。


そこでは今、4人の男達が豪華な総革張りの椅子に座り、話をしている。

不良孔雀と呼ばれた男が2人掛け用のソファーに、この屋敷の主の羽柴秀吉が1人掛け用のソファーに、そして3人掛け用のソファーに二人の男達が座っている。

ソファーの配置は、1人掛け用が主席、そしてセンターテーブルを挟んで2人掛け用と3人掛け用が向き合っている。


「お前達は?」


不良が聞き返した。


「はい。 警視庁特命班の上崎左京(うえざき・さきょう)と申します。 で、ここにいるのが同じく特命班の亀谷 魔薫(かめや・まかおる)です」


亀谷がコックリお辞儀をした。

それに一瞥をくれるでもなく、表情一つ変えず不良が上崎に聞いた。


「その特命班とやらが俺に何の用だ?」


「はい。 そちらにおられる羽柴さんにご紹介頂き、お願い致したい事がありやってまいりました」


不良はジッと黙ったまま、上崎の目を見つめていた。

秀吉も如何(いか)にもその通りだと言いた気に、やはり黙ったままコックリコックリ頷いている。

不良が聞いた。


「願いとは?」


「はい。 ある人物の命を救って頂きたいのです」


「ン!? ある人物の命?」


「はい」


「どぅいう事だ? 詳しく話してみろ」


「はい。 実は・・・」


ここで上崎は R とラーの壮絶な戦いの顛末を話し始めた。











R が死人帖に自らの名前を書き込んでから13日目の事である。







つづく








読者の皆タマ・・・今晩ょぅ。。。


おひさ de やんす



やっとこさ Doblog なほったと思ったら


2009530日(土)


!?


サービス終了との事。。。


だからお引越ししなきゃなんなくなっちまっただぁ〜〜〜!!


つーこって・・・ココ・↓


『アリスのお家』 http://hello.ap.teacup.com/pocomaru/


!?


『ポコマル緊急避難所』 http://yaplog.jp/pokomaru/



しか〜〜〜し、


このブログったら両方ともスッゲー使い辛いでアリンス。


時々、直し入れたらその記事消えちゃって、新規投稿扱いになっちゃったりしちゃってサ。



だ〜から〜、


もっと使い易いブログ( Dobolog みたいな)見っけるまでの仮お引越しなのでオジャル。。。


ナイスなの有ったらおせーてネ。。。



!?


jugem にケテ〜〜〜ィ。。。




又、



長のお休み中に前〜〜〜に書いたの読みか屁してみてこう思った de アリンス。


『チョコっと直そう』


って。。。



de !?



以下のように。。。



コマル → 有栖川呑屋コマル


これってホントは、単に有栖川コマルにしたかったんだヶ怒さ。

既に、有栖川 有栖(ありすがわ・ありす)とか言ふオッサンがおるちゅう・お・う・わ・さ・がアンので、紛らわしくなっちゃうから有栖川呑屋コマル。


ヶ怒、


ありすのニャンコその名はポチ


!?


有栖川呑屋コマル


!?


二人合わせちゃう時は


有栖川ポコマル


!?


ヶテ〜〜〜ィ!!!




そ、し、て・・・



『死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ―


!?


#1#136


!?


ただ今・・・タ〜〜〜ップリ・・・お直し中!!! (つ〜まりー、タップリ修正中つーことダス)




更に・↓



新ブログ名 → シンプルに 『アリスのお家』 とだヶ。。。



『我輩はポチである。うん!!』 → 『アリスのニャンコその名は“ポチ”』



『奥村玄龍斎ジャー!? ワハハハハ!? 「文句あるか!!」』 → 『 The 奥村玄龍斎』



『奥様は魔女『タバサU世』』 → 『奥様は魔女っ子』



異常 じゃなくって 以上。。。




これからもどんぞ・ヨ・ロ・ピ・コ


#137


!?


後ほど。。。






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #137



「それで?」


ラー事件の全容を全て聞き終えてから不良が上崎に聞いた。


「はい。 今お話し申し上げたようにこの件は既に我等の手には負えなくなっております。 そのため藁(わら)にも縋(すが)る思いでこちらへご相談に伺(うかが)った次第でございます」


ここで初めて秀吉が口を開いた。


「実は、ワシと警察庁長官・佐伯(すけ・のり)君とは幼馴染(おさななじみ)でしてなぁ。 先日ワシが東京に行った折、偶然この佐君と出会(でお)うたのですゎ。 これも何かの縁ちゅうもんでしょうかのぅ。 で、そん時にこの話が出ましてなぁ。 ちゅうても、掻(か)い摘んでチョッとだけしか言ってはもらえんでしたが。 何せ国家機密ちゅう事で。 『いやぁ、何とかならんかぁ』 ちゅうて相談を受けた訳ですゎ。 で、不良先生の事を、まっ、僭越(せんえつ)ながらお話し致した次第です。 『今、内に来て頂いておる不良先生ちゅう、凄腕の先生がおる』 ちゅうて。 そすたら、この佐君が同郷の好(よしみ)で是非紹介してくれちゅうて聞かんのですゎ。 よっぽど切羽詰っておったんですなぁ。 で、まぁ、すかたなすぬ。 ちゅう訳です」


上崎が身を乗り出した。


「不良先生。 何とか一つお力添え頂けませんでしょうか?」


秀吉も。


「いや、ワシからも一つお願い致します」


無言で亀谷もこれに従った。


「・・・」


何も言わず、ユックリと不良が3人の顔を見た。

上崎、秀吉、亀谷の順だ。

その瞬間、時が止まった。

上崎、亀谷、そして秀吉が身を乗り出したまま、不良の目を見つめたまま、その場で固まっている。

次に不良が何を言うか、期待と緊張で瞬き一つしない。

否、出来ない。


だが、再び時が動き出すのに然(さ)して時間は掛からなかった。

不良が上崎に向かってキッパリとこう言い放ったからだ。


「論外だ」


「エッ!?


上崎は驚いた。


「ヘッ!?


それは秀吉も同じだった。

亀谷は何も言わず、意外だという表情でただ目をパチクリしている。


不良が続けた。


「順番が違う」


「順番・・・? 順番と申しますと?」


上崎が聞き返した。


「先ず、その佐とかいうヤツが頼みに来る。 次がお前達だ。 帰って、佐とやらにそぅ伝えろ」


「・・・」


不良の思わぬ返答に上崎は反応出来ず、何も言えなかった。


「話はそれだけか?」


「・・・」


「失礼する」


不良が立ち上がろうとした。

それを慌てて制して上崎が言った。


「チョ、チョ、チョ、チョッとお待ち下さい。 佐は来たくてもこられない状況に今あるのです」


「ン!? どぅいう事だ?」


一旦は立ち上がり掛けた不良だったが、改めて座り直した。


「はい。 佐は今、日本にはおりません。 今回の事件の事後処理を巡って開かれている ICPO の総会に出席中なのです。 ですから来たくても来られない状況なのです」


「なら、その総会が終わってから来るように言え」


「も、申し訳ございませんが、それでは間に合わないのです。 残り日数は後10日。 たった10日しか残ってはいないのです。 お願いでございます。 ここは何とか私達が佐長官の名代という事でご納得頂けないでしょうか」


上崎は必死の形相で不良の目を見つめた。

一瞬、その目を見た不良は思った。


『ン!? コイツ・・・』


しばし二人は見つめ合った。

不良は上崎の目を通して何かを・・・ビジョン・・・幻・・・幻影を見て取っていたのだ。

あの右が茶、左が黒のヘテロクロミア【アニメで言う金銀妖瞳の事。 医学用語では虹彩異色症(こうさいいしょくしょう=オッド・アイ)という】の目で。

二人の間はセンターテーブルを挟んで大凡(おおよそ)1.5メートル。

その状態のままどの位時間が経過してからだろうか、


「フッ」


不意に不良が笑った。

そして言った。


「成る程な。 そぅいう事だったか」


「・・・」


上崎は黙っていた。

不良のこの言葉の意味が分からなかったのだ。



(スゥ〜)



不良が右腕を上げた。

右手人差し指を伸ばしている。

その指で上崎の鼻っ面を指差した。


「ウッ!?


一瞬、上崎の体が硬直した。

恐るべき不良の威圧感に押されて。

その上崎の目を見据えて不良が言った。


「いいだろう。 お前に免じて、否、お前のためにだ。 佐などどぅでも良い。 お前のためにこの話、乗ってやろう。 但し、この事はその佐とかいうヤツ以外、誰にも言うな。 それと俺の事もだ。 俺の存在をやたらと知られたくない」


上崎の表情が一気にパッと明るくなった。


「あ、有難うございます。 はい、決して誰にも」


釣られるように、このやり取りがどうなる事かとそれまで固唾を飲んで見守っていた亀谷もこれに倣(なら)った。


「あ、有難うございます。 自分も誰にもっス、はい」


「いやぁ、良かった良かった。 ワシからも御礼(おんれい)申し上げます」


秀吉も相好(そうごう)をくずした。


だが、


「勘違いするな。 俺は話に乗ってやると言っただけだ。 この、否、その R とかいうヤツを助けられるかどぅかは別問題だ」


そう釘をさしてから不良は目を瞑り腕組みをして考え込んだ。


1分、2分、3分、・・・。


その状態のまま実に30分近く不良は微動だにせず、考え込んだ。

上崎、亀谷、秀吉も又、動く事が全く出来なかった。

と言うより、そうする事が許されなかったと言った方が正しい。

それ程の緊張感があったのだ、その場は。

息をするのも憚(はばか)られる程だった。

不良の作り出した緊張感である。

そしてその果てしない緊張感を破ったのは、やはり不良だった。



(クヮッ!!



不意に不良が目を見開いた。

ナゼか上崎をスルーして亀谷を見た。

そして聞いた。


「オィ、亀谷とやら」


「は、はい」


「一つ聞く」


「な、何っスか?」


「お前はその死人帖とやらに触ったのか?」


「い、いぇ。 自分は触ってないっス。 見た事もないっス」


「なら、死神も見てないのか?」


「は、はい」


R には?」


「あ、会った事もないっス」


「お前達はいつからコンビを組んでいる?」


「エェーっと、確かアレは10日、否、そのチョッと前だったかな・・・自分、特命班に回されたのが。 だから・・・エェーっと、確か12日前からっス」


「理由は?」


「エッ!?


不良が上崎を顎で指し示していった。


「お前がコイツとコンビを組む事になった理由だ」


「アッ!? そ、そぅいう事っスか。 はい。 自慢じゃないっスヶど、自分、人よっかチョッと勘が働くもんっスから・・・。 そぅいう事の全くダメな左京さ・・・ 否 上崎のフォローにって、上から」


ここで亀谷は、



(チラッ!!



っと上崎を見た。

そして続けた。


「ホ〜ンと頭脳は超一級、警察庁随一なんっすヶどネ、この人。 天才って言われてるんっスヶどネ。 しかしそぅいう事は全く・・・。 だからっス。 はい。 それが何か?」


「いゃ、聞いてみただけだ」


「そ、そぅっスか」


それを聞き、今度は上崎を見た。


「その死人帖と死神・苦竜とやらは今どぅなっている」


「はい。 実はこの件に関しましては、国家第一級機密に属す事ですので本来明かす事が出来ないのですが、事情が事情ですのでお話申し上げます」


「ウム」


「死人帖は今、処分の手立てが見つかるまで秘密裏に R の建てたラー対策本部ビル内に於(お)いて厳重に監視されております。 これにはそのビルに常住しております R が。 そしてそのフォローに先程お話し致しましたラー事件に拘(かかわ)った日神局長、それに宇田生、相河、佐、松山以上4名の刑事が。 この合計6名が交代で当たっております。 又、死神・苦竜は結果的に死人帖の所有権が松山刑事となったため、常に彼と一緒です」


「今日お前達がここに来た事をその苦竜とやらは知っているのか?」


「いいぇ」


「なら、俺の存在を知っているのは?」


「はい。 ここにおられます羽柴さんとこちらの執事の大河内さん達を除けば、我等2名の他は佐伯(すけ・のり)長官のみです」


「良し。 では、これから俺が言う事を肝に銘じておけ、いいな」


「はい」


「ウム。 先ず、何が有ろうと、どんな事が起ころうと、俺の存在を決してその死神に悟られないようにしろ。 お前達と佐とかいうヤツ以外、口外無用だ。 それと今日以後残りの10日間。 その松山とやらを死人帖に近づけるな、絶対にだ。 出来ればどっか海外にでも飛ばしておけ。 死人帖と死神を引き離しておく必要がある。 それから上崎、亀谷」


「はい」


「は、はい」


「たった今からお前達二人は絶対に死神と接触するな。 それから俺を知っている以上その佐とやらにもさせるな。 くどいようだが俺の存在をその死神に知られたくない。 いいな」


「はい。 承知致しました」


上崎が答えた。

亀谷は納得した様子で


「ウンウン」


と、黙って何度も首を縦に振っている。


「ウム。 では、今日はこれで帰れ。 後日連絡する。 お前達の連絡先を教えておけ。 あぁ、それと一応、佐とやらの連絡先もだ。 こちらへの連絡はコイツを通せ」











そう言って不良は秀吉を指差した。







つづく





死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #138



「いゃー。 しっかし、聞きしに優る高ビーっスネ。 あの不良って言う人は」


帰りしな、亀谷が上崎に言った。

二人は今、帰路、最寄駅行きのバス停に向かう途中。

歩きながらの会話である。


「そぅですネェ」


「佐長官を言うに事欠いて 『佐とかいうヤツ』 呼ばわりした上、あの羽柴さん指差して 『コイツ』 っスもんネ」


「そぅでしたネェ」


「しっかし、どぅなっちゃうんスかネ。 なんとかなるんスかネ」


「なるんでしょうネェ」


「エッ!? なんとかなるんスか?」


「えぇ、たぶん」


「ど、どして!? どしてそぅ言えるんスか?」


「はい。 不良先生、考え込みましたネェ」


「あぁぁぁぁ、ウン。 はいはい。 考え込んでたっスネ、確かに。 いゃー、あん時ゃ、緊張しましたぁ。 あの人のあの集中力に。 ホ〜ント圧倒されまっしたもんネ」


「そぅでしたネェ。 で、その後どぅされましたっけ?」


「えぇーっと、俺っちに死人帖に触ったかって聞いてからぁ。 えぇっと・・・」


「死神に不良先生の存在を知られないようにと」


「そぅそぅ、それそれ。 しつこく言ってましたっスネ。 あんなにしつこく」


「そこなんですょネェ。 不良先生のあのしつこさ。 気になりませんか?」


「気に? 別に。 全然。 なんか意味有ったんスか、あれって?」


「大有りのようですネェ」


「大有りって?」


「はい。 我々に R を助けられる方法がもし有ったとしたら、それは何ですかネェ、亀谷君」


R を助ける方法ですかぁ?」


「はい」


「そぅっスネ。 まぁ、キャンセルっスかネ、死人帖の。 あるいは・・・そぅっスネ。 まぁ、死神でも殺す以外・・・」


ここで亀谷は


『ハッ!?


っとした。


「ま、まさか・・・」


上崎が含み笑いを浮かべた。


「フッ」


って。

そして続けた。


「そぅです、亀谷君。 そのまさかです。 今、不良先生が考えておられる事は」


「し、し、死神殺し!? っスかぁ?」


「恐らく・・・。 あるいは死人帖のキャンセルか。 そのどちらかでしょうネェ、きっと」


「・・・」


亀谷は黙った。

そして、



(ゴクッ!!



生唾を飲み込んだ。

その亀谷に上崎が聞いた。


「死人帖に憑く死神が死んだらその死人帖は一体どぅなるのでしょう。 あの死神・翠旻の死人帖は消滅してしまいましたが、みんなそぅなるのでしょうかネェ。 あるいは死人帖を直接キャンセルするにはどぅするればいいのでしょう」


「そ、そんな事、出来るんっスかぁ?」


「我々にはムリでしょうネェ」


「そぅっスょ、ネ。 そぅそぅ。 ムリムリ、絶対ムリ」


「でも、不良先生なら・・・」


「ム、ム、ムリでしょう、いっくらなんでも。 出来っこないっスょ、そんな事。 出来っこないに決まってんじゃないっスかぁ。 ムリですょ。 ムリムリ」



(ピタッ!!



突然、上崎は立ち止まった。



(クルッ!!



亀谷に正対した。

ジッと亀谷の両目を見つめた。

そして言った。


「不良先生はそれをやる気だと思いますょ。 わたしは」


「エッ!?



(ゴクッ!!



再び、亀谷は生唾を飲み込んだ。

そして聞き返した。


「し、し、死神殺し・・・っスかぁ?」


それに対し、上崎がキッパリとこう答えた。


「そぅです。 死神殺しです」


と。




不良孔雀ょ。


お前は今、一体何を考えている?


本気か?


本気で考えているのか?


『死神殺し!!











・・・を。







つづく





死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #139



「上崎か? 俺だ。 話がある。 直ぐに来い」


そう言って不良が電話を切った。

ここは羽柴秀吉の屋敷。

R に残された時間、後3日に迫った日の朝の事である。


その日の午後。



(コンコン)



ドアをノックして執事の大河内順三郎が、羽柴秀吉の屋敷の最上階天守閣、即ち応接間に入って来た。


「上崎様、亀谷様、御両名をお連れ致しました」


秀吉が言った。


「ウム。 ご苦労」


上崎と亀谷が中に入って来た。

上崎が挨拶した。


「お話を伺いに参りました」


不良が言った。


「まぁ、そぅ、格式張るな。 掛けろ」


「では、遠慮なく」


そう言って上崎がソファーに腰掛けた。

続いて亀谷も。

秀吉と不良は既に腰掛けている。

配置は前回同様だ。

ただし前回と違い今回は、執事の大河内も室内に留まった。

ドアの側にだ。


不良に上崎が聞いた。


「お話とは?」


「それを話す前に確認して置く。 先達(せんだっ)ても言ったが、死神とコンタクトは取ってないな、二人とも?」


「はい。 全く」


「じ、自分もっす、全く。 はい」


「ウム。 今、死神は何処にいる?」


「はい。 申し上げました通り、松山と終始一緒。 よって松山には今、グァムへ」


「そぅか。 ウム。 良し。 なら、上崎」


「はい」


ここで不良が上崎の目を見据えた。



(ギラッ!!



一瞬、不良の瞳が鋭く光った。

その眼光の鋭さは、まるで獲物を追う獰猛な野獣の目を思わせた。

その余りの恐ろしさに、



(ブルッ!!



思わず上崎は身震いした。

その上崎の目を見据えたまま不良が聞いた。


R の命を救うにはどぅすればいい?」


これを聞き、横でこのやり取りを見ていた亀谷は思った。


『や、やっぱ。 こ、この人・・・死神を・・・』


上崎がやっとの思いで声を絞り出した。


「死人帖のキャンセル・・・」


しかしこれ以上は言葉にならなかった。

不良が一息入れた。

上崎の緊張をほぐす意図でだ。

上崎の表情に多少余裕が出た。

それを見て改めて不良が聞いた。


「そぅだ。 なら、どぅすればそれが出来る?」


「世の中に絶対という言葉はないと思っておりましたが、この件に関してばかりは私共(わたくしども)にそんな事は絶対に出来ません」


「その通りだ。 俺にも出来ない」


「エッ!?


「だが」


「ハィ!?


「ある男の力を借りれば出来るかも知れない」


「ホ、ホントですか!?


「しかし成功する保障はない」


「そ、そぅですか」


「だが可能性はある」


「エッ!?


「しかしやってみなければ分からない」


「ぶ、不良先生。 も、もし・・・もし成功する可能性があるのなら、例えそれがどれ程僅かであったとしてもやって頂けないでしょうか?」


「・・・」


黙って不良は上崎の目を見つめた。

その不良の目の持つ底知れぬ奥深さに、



(ブルッ!!



再び上崎は身震いした。

その中に吸い込まれるのではないかとさえ錯覚した。

だが、目を切る事は許されなかった。

その迫力に圧倒され、蛇に睨まれたカエル状態になっていたのだ。


不良が言った。


「失敗したらお前達二人は死ぬかもしれない。 否、間違いなく死ぬ。 殺されてだ」


そう言って、



(チラッ!!



不良は亀谷を見た。


「その覚悟があるか?」


『ウッ!?


突然の事に亀谷は言葉が出せなかった。


「はい。 有ります」


横から即座に上崎がそう言い切った。

釣られて亀谷も。


「は、はい。 あ、有ります」


「良し!! なら、これから俺の言う事を肝に銘じておけ。 失敗は絶対に許されないからだ。 分かったか」


「はい」


「は、はい」


「ウム。 先ず、上崎」


「はい」


「死人帖の監視をしているヤツらの中で、一番信用出来るヤツは誰だ?」


上崎が即座に答えた。


「日神局長かと」


「即座に答えた所を見るとそいつは信用出来そうだ」


「はい。 間違いのない方です」


「なら、今日よりに3日後、即ち R とやらの最後の日。 この日の死人帖の監視はそいつにやらせろ」


「と、申されますと」


「黙って俺の話を聞け。 何(いず)れ分かる」


「は、はい。 し、失礼致しました」


「ウム。 そして R 最後の日。 お前達はある化け物の怒りを買え」


「エッ!?


「ば、化け物っスか?」


「そぅだ、化け物だ。 究極の化け物と言ってもいい」


亀谷の口から言葉が飛び出た。


「きゅ、究極の・・・」


「そぅだ。 究極の化け物だ。 そしてそいつは、その名を・・・」


ここで不良は一旦言葉を切った。

先ず、亀谷の目を見つめた。

ユックリと目線を上崎に移した。


そして・・・











こう続けた。







つづく





死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #140



「破瑠魔外道という」


上崎と亀谷が意味が分からぬまま今不良の言った言葉を復唱した。


「ハ・ル・マ・ゲ・ド・ウ」


「ハ・ル・マ・ゲ・ド・ウ」


「そぅだ。 破瑠魔外道だ」


亀谷が聞いた。


「な、なんスかそれ?」


「化け物だ。 もっとも、一応所属は人間だがな。 だが、トンデモナイ化け物だ」


次に、上崎が聞いた。


「ナゼ、その破瑠魔外道という人の怒りを買わなければならないのでしょうか?」


「破瑠魔は念力技の達人だからだ」


「念力技?」


「そぅだ。 ヤツの念力技はメガトン級だ。 そしてこれからお前達に話す計画にはそのメガトン級がなくてはならないからだ」


これを聞き上崎は黙ったままだった。

しかし、横から亀谷が嘴(くちばし)を入れた。


「計画? 一体どんなっスかぁ?」


「これから話す。 黙って聞け」


「は、はい。 し、失礼しました」


不良が計画を話し始めた。

それは、


「お前達はある娘(むすめ)を拉致する」


から始まった。


「・・・」


「・・・」


上崎も亀谷も真剣な表情でジッと押し黙り聞き入っている。

不良が続けた。


「雪という名の女子高生だ。 破瑠魔のフィアンセでもある」


亀谷がそれを聞き、思った。


『じょ、女子高生のフィアンセ。 ウラヤマシス・・・』


って。

不良は話し続けている。


「この雪という名の娘を破瑠魔の目の前で拉致しろ」


上崎も亀谷も最後まで黙って聞いているつもりだった。

だが二度も出た、この 『拉致』 という言葉につい反応して仕舞った。


「ハィ?」


「ら、拉致!?


「そぅだ、拉致だ。 破瑠魔の見ている目の前でこの娘(むすめ)を拉致しろ。 それにはヘリを使え。 そして破瑠魔に追い付かれないように、しかし見失われないよう注意してある場所に連れて来い。 俺が待っている場所にだ。 つまり娘は囮で破瑠魔をそこに誘(おび)き寄せるのが狙いだ。 そしてその娘を無事に、且、破瑠魔に追い付かれる事なく俺に引き渡せ、後で俺が指定する時間にだ。 それが済んだらお前達二人は即座にその場所を離れろ、さもなくばお前達の命は保障できん。 以上だ。 何か質問は?」


上崎も亀谷も不良の今言った言葉が、余りにも簡略過ぎていたため全く理解できなかった。

仕方なしに上崎が聞いた。


「はい。 先ず、その雪という名の女子高生の住所とフルネームを教えて頂けませんでしょうか」


「それは俺にも分からん。 分かっているのは破瑠魔のフィアンセで女子高生と言う事だけだ」


「そ、それではあまりにも情報が少な過ぎ・・・」


「心配するな。 破瑠魔とこの娘の行きつけの場所はそこの執事が知っている」


大河内に向かって不良が言った。


「こいつ等に後であのナンとかいう公園の場所を教えてやってくれ」


ドアの横に立ったまま、ズッとこのやり取りを見ていた大河内が返事をした。


「はい。 女木戸(めぎど)の丘公園でございますネ。 ブルー・シャンティのある。 後ほど御二方(おふたかた)をご案内致します」


「ウム」


不良が頷いた。


上崎が再び聞いた。


「何のための拉致でしょうか? その目的は?」


「破瑠魔に念力技を使わせるためだ」


「ヘリを使うのは?」


「ヘリならヤツがお前達を見失い難い。 それに短時間で渋滞にも巻き込まれる事なく俺のいるところへ来れる。 だが、覚えておけ!! ヤツは・・・破瑠魔は、空間を瞬時に移動する術を心得ている」


「空間を、瞬時に!?


「そぅだ。 だが、その技はこの執事が封じる事になっている。 詳しい事は後で話す」


不良が大河内を顎で指し示しながら言った。


「そぅですか。 では、お連れする場所はどちらに」


「ウム」


一度大きく頷き、不良が脇に置いてあった地図を取り出してセンターテーブルに広げた。

そしてある地点を指差してこう言った。


「その場所はここだ」


上崎、亀谷、そして秀吉の3人が身を乗り出し、その地図を覗き込んだ。

不良の指差している所を見ながら上崎が誰に聞くともなくポツリと言った。


「えぇーっと、ここは? ●●県の山の中ようですが・・・」


その言葉に不良が反応した。


「今はな。 だが地元の人間はそぅは言わない」


「ハィ? 地元では何と?」


「重磐外裏(えばんげり)だ」


「重磐外裏?」


「そぅだ。 重磐外裏だ。 地元の人間達は未だにここをそぅ呼んでいる」


「変わった呼称ですね。 余り日本的とは・・・。 何か由来でも?」


「知らん。 確かに何かありそうだが、俺は関知していない」


「そ、そぅですか。 失礼致しました。 しかしナゼここに」


「それはお前達に言っても分からん。 お前達は言われた通りここに娘を連れてくればいい」


「は、はい、畏(かしこ)まりました。 では、念のため復唱させて頂きます。 先ず、今から3日後、 R 死亡予定日。 わたくし達は 『女木戸(めぎど)の丘公園』 という所で破瑠魔外道という人の見ている前で雪という娘さんを拉致し、破瑠魔さんに追い付かれず、且、見失われる事なくこの重磐外裏という場所にその雪さんを連れて行く。 その目的は破瑠魔さんを重磐外裏に誘き寄せるため。 これには車ではなくヘリを使用。 そして後程教えて頂く予定時刻に、そこでお待ちになられている不良先生にその娘さんを手渡すと同時に我々は即座にその場所から離れる。 以上で宜しいでしょうか?」


「あぁ、いい」


今度は亀谷が聞いた。


「あの〜、チョッといいっスか?」


「なんだ?」


「その破瑠魔って人とですネ、雪っていう娘さんが3日後、都合良くその 『なんとかの丘公園』 ってトコにいますかネ。 もしいなかったら、どしたら?」


それを聞き不良が大河内に視線を移した。


「どぅなんだ?」


大河内が答えた。


「はい。 お二人とも殆(ほと)んど毎日、女木戸(めぎど)の丘公園内にあるブルー・シャンティという場所にいらしておられます。 そこにはお二人ととても仲の良いお友達がいらっしゃるようで。 特に3日後の5月1日はゴールデンウィークの中日(なかび)で休日、尚且つ、公園近くの神社の例大祭日に当たっております。 従って、破瑠魔様は恐らく朝からズッとその神社で占いのお仕事をされているかと・・・。 又、この雪という娘さんも遅くとも正午から塾の時間が始まる夕方前までは、間違いなくいらしているかと存じます。 と、申しますのも、この雪という娘さんの料理の腕は玄人裸足(くろうと・はだし)で、土日及び祝日は決まって破瑠魔様とお友達の分の手料理をお作りになり、それを差し入れておられます。 これはもう恒例となっており、少々の雨や雪位では動きません。 そのため恐らく正午過ぎには皆さんお集まりになりお食事会など始まっているかと。 当日、晴れならば外で、雨など降っておればテントの中で」


それを聞き、安心したかのように亀谷が言った。


「そぅっスかぁ。 なら、心配ないっスネ」


その亀谷に不良が冷たく聞いた。


「そぅ思うか?」


「エッ!? なんかあるんっスかぁ?」


「あぁ、大有りだ。 この雪という娘、ただ者ではない。 気を付けねば返り討ちにあうかも知れんゾ」


「か、返り討ち!? 女子高生に?」


「あぁ、そぅだ。 女子高生に返り討ちだ。 だから充分注意しろ。 それと破瑠魔だが、もしコイツに追いつかれたらお前達の命はない物と覚悟しておけ。 ヤツの念力技は半端じゃない」


「じゃ、じゃぁ、どの位の距離を保っていれば?」


「それは俺にも分からん」


「お、俺にも分からんって・・・」


「心配するな。 ヤツに追い付かれずに娘をシッカリと確保しておけば大丈夫だ。 娘がいれば流石のヤツもお前達に手は出せん。 それにこの執事が奴等に俺の用意した毒を盛る。 と言っても微量の痺れ薬をだがな。 即効性のヤツだ」


そして大河内を見て確認した。


「そぅだな」


大河内が答えた。


「はい。 差し入れと称してその中に」


「そ、そぅっスかぁ。 アッ!? 先程の空間を瞬時にってヤツをそれで封じるんっスネ。 チョ、チョッと安心しました」


「だが、その効果は精々(せいぜい)2時間程だ。 それ以上は持たん。 だからお前達に与えられた時間は2時間。 たったの2時間だ。 そぅ思え。 だから2時間で出来るだけ重磐外裏までヤツを引き付けろ」


「2時間っすかぁ?」


「そぅだ」


不良が上崎を見た。


「他に何か聞きたい事は?」


「はい。 今の所はもぅ結構です。 ただ、重磐外裏とブルー・シャンティですか? その下見をしてから伺う事が有るかも知れませんが」


「じ、自分もっス」


それを聞き、


「ウム」


不良が軽く頷いた。

そして言った。


「なら、上崎」


「はい」


「最後に一つ、お前に 否 R にやらせてもらいたい事がある」


「何をでしょうか?」


ここで不良は一息吐(つ)いた。

そして徐(おもむろ)にこう言った。











R に俺の名前を書かせろ。 死人帖とやらに」







つづく