死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #186



「亀谷」


不良が亀谷に呼びかけた。


「はい」


「起こしてくれ」


「エッ!?


「起きるから手を貸してくれ」


「だ、だいじょぶなんっスか?」



(ギロッ!!



不良が亀谷に冷たい一瞥(いちべつ)をくれた。



(ビクッ!!



亀谷はビビった。

不良は別に睨み付けた訳ではなかった。

ただ、スゥ〜っと目を流して亀谷の目を見据えただけだった。

だが、亀谷にしてみれば不良のその目は、大上段から真一文字に自分の身を斬り下すのではないかと思える程鋭かった。

まるで研ぎ澄まされた鋭利な刃物のように・・・


不良が言った。


「俺は手を貸せと言ってるんだ」



(ゾクッ!!



不良のその一言に込められた迫力に今度は全身に悪寒が走った。

そして、


「ハ、ハィ!!


言われるままに手を貸した。

先ず、不良の右に回り点滴を外した。

左に戻り、掛け布団と毛布を剥がし、最後に酸素吸入器。

それから不良が起き上がるのを手助けしようとした。

だが、


「クッ!?


不良が呻(うめ)いた。

全身に激痛が走り、力が入らないのだ。



(グッ!!



不良が歯を食い縛った。


「いきますょー、先生ー!! いっセーのーセっ!!


亀谷が気合を入れた。

そして、



(ガバッ!!



なんとか不良の上体を起こした。



(ズキッ!!



「クッ!?


再び不良の全身に痛みが走る。

歯を食い縛ってそれに耐える不良。


次に亀谷は不良の左脇に右肩を入れ、左手で患者着姿の不良の両足を下から持ち上げ、ユックリと体を回転させ、ベッドから両足を下ろさせた。

そして不良にスリッパを履かせ、再び気合を入れ、


「セーの!! よいしょー!!


なんとか立たせた。


「俺をあの娘(むすめ)の病室まで連れて行け」


「エッ!?


亀谷は一瞬驚いた。

だが、直ぐに言う事を聞いた。

不良には逆らえないという事は既に学習済みだったからだ。

不良に肩を貸し、



(カチャ!! スゥー)



引き戸式のドアを開け、部屋の外に出た。

向かった先は、勿論、雪の病室である。

それも集中治療室。











面会謝絶の・・・







つづく





死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #187



「クッ!? 操縦桿(そうじゅうかん)が!? 操縦桿が利かない!?


上崎は焦った。


上崎は今、緊急停車を強いられた寝台特急・フジヤマに乗っていた日赤血液センターの職員から、小型のジュラルミン製と思われるアタッシュケースに入れられている輸血用の血液を受け取り、ヘリで雪の待つ病院を目指していた。

たった一人で。

亀谷を病院に残したまま。

それは外道達の身にもし万一何かあった時ベストの対処を、という判断からだ。

そして単身吹き荒れる暴風雨の中、無事血液を受け取り、病院に向かう途中だった。


だが、


本土に上陸した台風にその進路を完全に塞がれてしまった。

しかし、その台風を迂回して戻る時間もなければ、燃料もない。

そのため上崎は、台風による暴風雨の中、一か八か強行突破を図った。

その結果がこの状況である。

暴風雨の勢いに抗し切れず、終に操縦不能となってしまったのだ。

そうならないようになるべく低空を飛行していたにも拘(かかわ)らず。


「クッ!?


上崎は必死でヘリを立て直そうとした。

だが、無駄な抵抗だった。

一度、気流に飲まれたら如何(いか)に最新鋭の大型ヘリと言えども、単なる鉄の塊に過ぎなかった。

否、空中にある分、余計質(よけい・たち)が悪い。

しかも時は夜。

真っ暗な中での飛行。

有るのはヘリの照明と人家、街路、街明かりそういった物だけだった。

今の状況からは当然、月の光だの星明りだのは望むべくもない。


ヘリはプロペラを回転させたまま、その本体も回転し始めた。

そして、その状態のまま高度を下げ、山林の上に落下し始めた。

そうなれば翼を持たないヘリは呆気ない物だ。


「アッ!?


っという間に、山林の中に突っ込んだ。



(ドッカーーーン!! ビシビシビシ!! メリメリメリ!! バキバキバキ!!



激しい衝突音を上げ、樹木をなぎ倒し、ヘリが山林に突っ込んだ。

しかし、その山林の樹木は常緑樹だった。

それが幸いした。

一年を通して葉っぱを付けている。

そのヘリはかなり重量のある大型だったにも拘らず山林自体がクッションの役目を果し、激突による機体の破損や爆発は起こらなかった。


天は上崎を見捨ててはいなかったのである。


当然、雪をもだ。


上崎のヘリは樹木を数十本なぎ倒して着地した。

しかし、それ程都合良くは行かなかった。

機体がさかさまになって止まっていたからだ。

突っ込んだ拍子に半回転して天地さかさまになってしまったのだ。

世の中とはそんな物だ。

そんなに都合良く行く訳がない。(作者にとっては好都合 da ピョン・・・)

しかも、山林激突のショックで上崎は右腕にかなりのダメージを負った。

痺れて力が入らない。

従って天地がひっくり返った状態で、左手だけで上崎はヘリから脱出しなければならなくなっていた。

それも血液・・・輸血用血液・・・雪の輸血用の血液の入ったケースを持ってだ。

当然、懐中電灯も。

上崎は逆さまの状態から助手席にロープで固定して置いた血液ケースを見た。

ケースを固定して置いたのは季節外れの台風という暴風雨の中の強行突破、それを事前に考慮しての事だ。

上崎が行なった転ばぬ先の杖だった。

それが功を奏した。

血液ケースは無事。

恐らく中味の心配もいらないだろう。

しかし心配な事が他にあった。

ドアだ。

ヘリのドアが折れた樹木にブロックされて開けられなくなっていたのだ。

しかも上崎が自由になるのは左腕一本。


『クッ!?


さしもの冷静沈着、クールな上崎も焦った。

だが、焦っても如何(どう)にもならない事も良く承知していた。

上崎は考えた。


『良し!! 一つずつ順を追って事を進めよう。 先ず、天地さかさまの状態からの脱出。 これから始めねば』


上崎は安全ベルトを外すのではなくユックリとそれを緩めた。

そしてずり落ちるようにヘリの天井部(今はそれが下部になっている)に左手一本で逆立ちするような格好になり全身を支えながら徐々に体を下ろして行き、なんとか四つん這いで天井部にへばり付く事が出来た。

次に、ヘリから外へ出なければならない。

だが、

ドアは開かない。

ガラスを割って出るしか方法はない。

ガラスは勿論、強化ガラスだ、それも “超” と付く程。

叩いて割れるようなチャチな物じゃない。


上崎は胸に装着してある拳銃を抜いた。

フロントガラスに向けた。

両腕でシッカリ固定して撃ってもかなりの反動のある拳銃を左手、それも利き腕ではない方の手だけで撃たなければならない。

下手をすれば骨折の可能性がある。

しかし今はそんな事を考えている余裕はない。



(チラッ!!



助手席の血液ケースを見た。

無意識にそれを確認したのだ。

そして引き金に掛けてある左手人差し指に力を込め、拳銃を発射しようとした。











だが、・・・







つづく






死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #188



(ガクン!!



ヘリの機体が揺れた。

上崎が天井部に移動した事により重心の位置が変わったからだ。

急いで拳銃を元に戻し、上崎は左手でシートの背もたれ部分を掴んだ。

バランスを保つためだ。

機体が若干傾いた。

そのためそれまでブロックしていた樹木が、



(ガキッ!!



ドアから外れた。


『良し!! ドアが開く』


上崎は思った。



(ガタン!!



思った通りだった。

ドアが開いた。

急いで助手席のロープを緩め、血液ケースを取り外した。

ヘリの外は真っ暗。

しかも暴風雨のはず・・・だった。


しかし、


なんと言う幸運。

風もなければ雨もない。

凪(なぎ)状態だ。


でもナゼ?


それは台風の目。


そぅ。


上崎は今、不幸中の幸い、不運中の幸運。

ヘリは墜落したが、丁度その時、絵に描いたように 都合良く 運良く台風の目の中に入ったのだ。(これがふぃくしょんの良さでアリンス・・・ アッ!? 分かってくれてると思ふヶど、この物語はふぃくしょんダス。。。 分かってくれてると思ふヶど・・・)

当然、月明かりが射している。

上崎は着ていたスーツの内ポケットの中から左手で携帯電話を取り出し、



(ピ、ポ、パ、・・・)



何処かに掛けた。


直ぐに相手が出た。

上崎が電話の相手に現在の状況を説明し始めた。

以下がそのやり取りの一部である。


「・・・。 はい、そぅです。 ここは丁度○○県と○○県の県境付近と思われます。 恐らく国道○○号辺りではないかと・・・。 はい。 何とか国道に出る手立てを講じます。 はい。 では長官。 後の手配、宜しくお願い致します」


電話の相手は佐伯長官だった。



(カチャ!!



上崎は携帯を切った。

それを内ポケットにしまい、ヘリのサイドボードの中から懐中電灯を取り出した。

一旦、懐中電灯を天井(今は床になっている)に置き、上崎はズボンのベルトを緩め、その先を血液ケースの取っ手の部分に通し、再び締めた。

ケースを腰にぶら下げたのだ。

それは右腕が使えないからだった。

ここまでの動作を上崎は、左手1本で行なった。

それから懐中電灯を拾い上げ、足場を確認しながらヘリの外へ出た。

そしてユックリと国道があると思われる方へ樹林の中、時々山肌を手で探りながら歩き始めた。


手で持つのと違い、腰にベルトだけでぶら下げたジュラルミン製の血液ケースは思った以上に重かった。

しかし利き腕の右手を負傷している今、これが上崎に取ってベストの方法だった。

一足毎(ひとあしごと)に血液ケースが動いて歩き辛い。

だが、そんな事を気にしている状況ではない。

上崎は左腕だけで道なき山林を国道目指して這い上がり始めた。


当て所(ど)もなく何処(どこ)までも。


ただ、上空から見下ろしていた時の記憶だけを・・・











頼りに。







つづく





死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #189



「ここは部外者立ち入り禁止です」


鶴見区 辰吾(つるみく・しんご)が言った。

雪の担当医だ。

ここは集中治療室。

雪の寝ている部屋。

そこに亀谷に肩を借りた不良が、ブラっと入って来たのだった。

当然、鶴見区は二人を外に出そうとする。

それが今だ。

その鶴見区の目を身長1メートル90の不良が、上から見下ろし見据えてこう言った。


「俺の血液を使え」


「エッ!?


鶴見区は驚いた。

亀谷が、


『ハッ!?


として顔を上げ、不良の顔を見た。

不良が続けた。


「俺の血液型は AB Rh− だ」


「エッ!?


鶴見区は再び驚いた。

亀谷も驚いて不良に聞いた。


「ホ、ホントっスか?」


「ウソをついてどぅする」


「し、しっかし不良先生。 この体で・・・。 先生だって病人なんっスょ」」



(ギロ!!



不良が亀谷を睨み付けた。



(ゾクッ!!



その目の恐ろしさに亀谷は震え上がった。

その亀谷から視線を鶴見区に移した。


「俺は使えと言ったんだ」


今度は鶴見区が不良に言った。


「し、しかし、そ、その体では・・・」


「構わん!!


不良が厳しく遮(さえぎ)った。

そして続けた。


「もし今、この娘(むすめ)が死ぬような事にでもなったら・・・」


ここで不良は一瞬、言葉に詰まった。

それから半ば自分に言い聞かせてでもいるかのように鶴見区に言った。


「俺は破瑠魔に一生顔向け出来ん。 それにこの娘は俺の、否、俺達の命の恩人だ。 だから遠慮なく俺の血液を使え。 全部使っても構わん」


不良の気迫に押され、亀谷のみならず鶴見区も震え上がっていた。


「よ、よ、宜しいんですネ。 ほ、ほ、本当に宜しいんですネ」


鶴見区が不良に念を押した。


「構わん!! 何度も言わせるな!!


鶴見区は、



(チラッ!!



不安感丸出しにして亀谷を見た。

別に同意が欲しくてそうした訳ではなかった。

ただ、恐ろしい不良の視線を無意識で一瞬かわしたのだ。

それに亀谷が反応した。


「ウンウンウンウンウン・・・」


って。


無言で首を縦に振り続けた。

それは不良の言う通りにしろというサインだった。


「で、で、では。 お、お、お言葉通りに・・・」


鶴見区はおっかなびっくりだ。


斯(か)くして雪の輸血の準備がキューピッチで開始される事になった。

その血液の提供者は勿論・・・たった今、意識を回復したばかりの不良孔雀である。


だが、


当然、不良は・・・











衰弱しきっている。







つづく





死人帖(しびと・ちょう) ― the Last 'R'ule ― #190



『ハッ!?


っとして、大河内が飛び起きた。

辺りをキョロキョロ見回して呟(つぶや)いた。


「こ、ここは?」


「あぁ、お目覚めですか?」


大河内に気付いて女性看護士が振り返って話し掛けた。

ここは外道達と同じ病院の一室。

大河内はそれまで着ていた燕尾服のままベッドに寝ていた。


「わ、わたくしは・・・? わたくしは一体・・・? このような所で・・・? 何を・・・?」


「覚えてないんですかぁ? 亀谷さんとかいう刑事さんに負(お)ぶって来られてココ来たの。 で、点滴打ったらそのままお休みになられたの」


「おぅおぅ、そぅでした、そぅでした。 思い出しました、思い出しました」


「随分お疲れだったんですネ。 グッスリお休みでしたょ」


「いゃぁ、お恥ずかしい。 よる年波には・・・。 ァハァハ、ァハハハハ・・・」


大河内が照れ笑いをした。


だが、


次の瞬間。


「アッ!? は、は、は、破瑠魔様!! ぶ、ぶ、ぶ、不良様!! ゆ、ゆ、ゆ、雪様!! そ、そ、そ、そぅじゃったそぅじゃった。 看護婦さん看護婦さん、あのお三方はあのお三方は?」


それまで普通に喋っていたその女性看護士の表情が急に曇った。


「・・・」


「・・・」


一瞬、ぎこちない間(ま)が出来た。

看護士のその表情を読み取り、不安になった大河内がグッと気持ちを押さえ、立て直し、再び聞いた。


「破瑠魔様、不良様、雪様は如何(いかが)なされておいでですか?」


「それがですネェ。 それがその〜」


「ハッキリと申して下され」


「えぇ、それがですネェ。 あんまり芳(かんば)しくはないようなんです」


「と、申されますと」


「えぇ、わたしは担当じゃないので詳しい事は分からないんですヶどネ。 さっきナースセンターで聞いた話によると、破瑠魔さんは未だに意識が戻らず衰弱しきったまんま。 脈、呼吸、心音、全部弱り切っているみたいで。 それにあの娘さんは輸血用の血液がまだ届かずで。 ま、幸い不良先生の血液型が同型なので、今、その不良先生の血液を輸血中だそうです」


「そ、そぅですか。 不良様の・・・」


「でも、その不良先生も側腹部(そくふくぶ)にある打身(うちみ)のような凄く大きな生々しい傷の所為(せい)でしょうかネ? 衰弱が酷くって、本来なら輸血などとても耐えられる体じゃないんだそぅです。 だって、そぅでしょ。 それまで面会謝絶だった患者さんなんですから」


「そ、そぅですか・・・」


「えぇ。 これは言いたくはないんだヶど、ホントならあの3人とも今頃、生死の境を・・・。 否、死んでてもおかしくない位なんだそぅですょ。 それに・・・」


「それに?」


「えぇ。 破瑠魔さんはナゼあんなに衰弱しきってるのか理由が分からないので何とも言えないそぅなんだヶど、ある程度理由の分かっているあの娘さんと不良先生の生命力は半端じゃないって。 普通の人間なら生きていられる訳がない。 疾(と)っくに死んるはずだって。 担当の先生方が驚いてました。 一体何が有ったんですかぁ?」


「いゃぁ、それが私共(わたくしども)にもサッパリで。 分かっているのは一つだけです」


「なんですかぁ、その一つって?」


「はい。 あのお三方とも、人間離れしておるという事だけです」


「えぇ、確かに。 確かにそぅですネェ。 人間離れしてますネェ、3人とも」


ここまで言った所で女性看護士が、


『ハッ!?


っと、何かを思い出したような表情に変わった。


「アッ!? そぅそぅ。 人間離れしてるで、思い出した思い出した」


それを見て大河内が、



(ドキッ!!



として思った。


『な、何か悪い事か?』


と、同時に言葉が口を突いて出ていた。


「な、何をでございますか?」


「えぇ。 あの雪さんという患者さん」


「ゆ、雪様が!?


「はい。 あの患者さんなんですヶどネ。 こちらに運び込まれて暫(しば)らくしてからベッドの上で突然カッと両目を見開いて、手の平パッって開いて、両腕をグゥーって伸ばして 『センセー!!』 って大声で叫んだんだそぅですょ。 一言だけだったそぅなんだヶど、それまで昏睡状態だった患者さんがですょ」


「そ、そんな事が・・・!? それからそれから・・・?」


「否。 ただそれだけだったそうです。 で、直ぐ又、昏睡状態に・・・。 『センセー』 って、言った所を見ると、もしかして不良先生の夢か幻覚でも見たのかも知れませんネ」


これを聞き、大河内は直感した。


『否、破瑠魔様じゃ。 そぅじゃ、破瑠魔様じゃ。 きっと雪様は破瑠魔様の何かを感じ取ったのじゃ。 こちらに戻ってこられた時のあの弱りきった破瑠魔様達のお姿を見れば察しが付く。 そぅじゃそぅじゃ。 雪様は破瑠魔様達の身に何かを感じ取ったのじゃ。 それに間違いない。 だから・・・きっと・・・。 そぅじゃそぅじゃ、それに間違いない。 しっかし、ご自身も昏睡状態じゃというのに。 なんと健気(けなげ)なお方じゃ、あの雪様というお方は・・・』


大河内の直感は正しかった。


そぅ。


雪は昏睡状態だったにも拘らず外道達の帰還を感じ取った。

そして外道を正しく導くため、外道の標識になるため、本能的に外道に念を飛ばしたのだ。

もっともホンの一瞬に過ぎなかったのだが・・・


「・・・」


視線をベッドの自らの足元に移し、急に考え込んだ大河内の姿を見て看護士は黙っていた。

暫しの沈黙があった。

それから大河内がユックリと顔を上げた。

そして看護士の顔を見た。


「もぅ起きても宜しいでしょうか? お三方のお見舞いも致したい事ですし」


「あぁ、まだ、もぅ少し休んだ方が。 どぅせ今行っても、3人とも面会謝絶ですし」


「そぅですか、面会謝絶ですか」


「えぇ。 だからもぅ少し」


「では、もぅ少し」


大河内は看護士の手を借りて再び仰向けでベッドに横たわった。

眠ろうと目を瞑(つむ)った。

眠れる訳はないと分かっていた。

それでも眠って置きたかった。

少しでも体力を回復して置きたかったのだ。











3人の身に何か有った時のために・・・







つづく