深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #46


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「死喪田 歌月はトリックだ!!」

イチが凛々しく言い切った。

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 ・・・

少年を除く全員が驚いた。

「トリックー!? トリックだとー!?」

大声で、尻餅がイチに聞き返した。
殆(ほと)んど喧嘩腰だ。

「そうだ! トリックだ!!」

イチも負けずに言い返した。

「どういう事だ! 言ってみろ!!」

「良っく聞けょ、オッサン。 こういう事だ。 俺達がこの民宿に来る前に、犯人は予め『死喪田 歌月』という偽名を使ってここに宿泊した。 次に、俺達がここに来る前日、ソイツは絶対に部屋に入らないようマスターに指示した後、部屋の壁にあの落書きを残し、密かにこの島を抜け出した」

「抜け出した? どうやって? まさか泳いで渡ったとでも言うのか?」

「ゴムボートを使ったのさ」

「ゴムボート!?」

「エンジン付きのゴムボートなら空気を抜けばあのスーツケースに入るだろ。 そうやって犯人はまんまとこの島を抜け出したんだ。 つまり、俺達がここに来た時には、ヤツは 否 死喪田 歌月は、死喪田 歌月という存在は、もうここにはいなかったのさ」

「じゃ、じゃぁ、あのどでかいスーツケースは・・・ゴムボートを持ち込むための物だったのか!?」

納得したように尻餅が大声を上げた。

「そうだ! その通りだ!! 全ては死喪田 歌月という男をでっち上げるためのトリック、トリックだったんだ。 そうやってこの島を抜け出した犯人は、再び、何食わぬ顔でここを訪れた」

横から美雪が嘴を入れた。

「ィ、イッチャン。 ま、まさか・・・」

イチが凛々し〜く言い切った。

「そうだ! そのまさかだ!! 犯人は・・真犯人は・・今・・この中にいる!!」










って。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #47


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「そうだ! そのまさかだ!! 犯人は・・真犯人は・・今・・この中にいる!!」

イチが凛々し〜くそう言い切った。

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 ・・・

少年を除く全員が驚いた。
信じられないという表情で互いに顔を見合わせている。

「じゃ、じゃぁ、五里絵は? 五里絵はどうやって殺されたんだ? どうやったらあんな真似(まね)が出来るんだ? あんなに都合良くシャンデリアを五里絵の上に・・・。 逃げる暇も与えず真上から直撃させるなんて・・・あれは一体どうやって? あの五里絵の殺され方を説明してくれょ」

横から御布施が早口で聞いて来た。

イチが顔を、


(スゥ〜)


御布施に向けた。

「スゥ〜、フゥ〜」

一度、大きく息を吸って、吐いた。
そしてもったいを付けてこう言った。

「先ず、五里絵の死因、それが問題だ。 だが、それは五里絵の傷跡・・・五里絵の体に残された傷跡がその答えを教えてくれている。 そしてその答えとは・・・」

ここで一旦、イチが言葉を切った。

「・・・」

黙ったまま、しかし、興味津々と言った表情で身を乗り出して御布施が聞いている。
その御布施の目をジッと見つめて、イチが言い切った。

こぅ・・・

「首筋の打撲傷」

と。

「首筋の打撲傷? 何で? 何でそう言える?」

御布施が畳み掛けるように聞いた。
これを受け、尻餅が幽鬼に問題点を振った。

「おぃ、そこのヤブ。 どうだったんだ? え?」

幽鬼は驚いた。

「ャ、ヤブー!?」

「そうだ!! ヤブだ! ヤブ!!」

ここで尻餅がイチを指差した。

「あいつの言ってる事は本当なのか?」

チョッとムッとしながら幽鬼が答えた。

「確かに、被害者の首筋には何かで殴られたような痕が・・・。 しかしあれは転んだ時に付いた物かもしれませんし、仮に殴られたとしてもそれが致命傷になったと言い切るには少し無理が・・・」

その幽鬼の説明をイチが否定した。

「いいゃ、あの床は平らだった。 しかも五里絵は仰向けに倒れていた。 そして床の上には首筋に殴られたような痕が付くような物は何もなかった。 つまり、五里絵はシャンデリアの直撃を受ける前に何か鈍器のような物で殴られ、仰向けにされた上にシャンデリアを落とされたんだ。 もし、シャンデリアの頭上からの直撃を受けたんなら、あんなに奇麗に仰向けで倒れる訳がない」

ここまで幽鬼に向かって言ってから、イチが尻餅に確認した。

「だろ、オッサン」

「ぁ、あぁ、言われてみりゃ、そん通りかもな。 少なくても膝は曲がってんだろうな」

「おぉ、確かに、確かに!? 頭頂部には、傷跡一つありませんでした。 顔面直撃だったので」

と、即座に幽鬼が同意した。

「な。 だろ」

イチが再度、尻餅に確認した。

「う〜む」

尻餅が顎に手をやり、考え込んだ。
イチの推理の見事さに押されたのだ。

突然、


(ガタッ!!)


御布施が立ち上がった。
顔色が真っ青だ。
興奮してイチに食って掛かった。

「ぉ、おぃ、金田一!? な、なら、犯人は・・・犯人は一体誰何だょー?」

(ガタッ!!)

(ガタッ!!)

(ガタッ!!)

 ・・・

釣られてみんな席から立ち上がろうとした。

「動くな!!」

イチが厳しく言い放った。


(ビクッ!!)

(ビクッ!!)

(ビクッ!!)

 ・・・


イチの迫力に押され、全員がその場にその状態のまま固まった。
それを一わたり見回してイチが、

“キリ!!”

ってしてほざいた。

「みんな座れ! 椅子に座ったままジッと待つんだ!! 時が来ればヤツは・・・犯人は、自分から名乗り出る!!」

って・・・










カッチョ良く。。。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #48


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「なら、金田一」

尻餅が聞いた。

「ん!? なんだ?」

イチが聞き返した。
暫(しば)し、イチと尻餅の会話となる。

「死喪田は、死喪田 歌月は一体、あの時、どこへ行ったんだ? ん!? どこへ、どうやって?」

「それは時が教えてくれる」

「へ!? 時が?」

「あぁ、そうだ。 時だ、時が教えてくれる」

「ど、どういう事だ?」

「まぁ、そう焦らなくてもチャ〜ンと分かるさ、時がくればな。 言ったろ、真犯人は必ず名乗り出るって。 だからさ、オッサン。 アンタはただ待ってりゃいいんだ、犯人が名乗り出るのをな。 ただじっと座って待ってりゃ。 それで全て解決さ」

「ま、待つ? 待つって、いつまでだ?」

「チッ。 気の短いヤッチャなぁ、オッサンはぁ。 いいかぁ、犯人はあの時、自らが生み出した死喪田 歌月という架空の人物の死を演出したんだ。 もっとも、この判断は単なる俺の直観なんだが。 だが、この判断は間違いじゃない、絶対に。 前にも言ったように、俺の直観は外れない!!」

「ケッ。 な〜にが俺の直観は外れないだ。 くそっ」

「そうだ、外れない。 絶対にな。 いいかぁ、オッサン。 死喪田 歌月の死、それはヤツが最後の殺人を完成させるために巧妙に仕掛けたトリックなんだ。 自らのアリバイを完璧にするためのな。 そして俺の推理が正しければ、架空の怪人・死喪田 歌月の仕掛けたワナによって、今、ここで・・この大食堂で・・最後の殺人が行なわれるんだ」

「こ、ここがそんなに危険なトコなら、ば、場所を移動せにゃならん」

「まぁ、落ちつけょ、オッサン。 大丈夫だ。 手は打ってある」

それを聞き、御布施がほざいた。

「ホ、ホントだな金田一? そ、その言葉信じていいんだな?」

美雪も。

「ィ、イッチャ〜ン・・・」

銭湯も。

「き、金田一〜〜〜」

その他も。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 ・・・

みんなが不安に怯えていた。

「あぁ、心配しなくても大丈夫だ。 俺を信じろ」

自信タップリにイチがそう言った。

「ぁ、あぁ。 うん」

と、御布施が。

「うん」

と、美雪が。

「あぁ」

と、銭湯が

「・・・」


「・・・」


「・・・」

 ・・・

と、その他が。

そして緊張のあまり、


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)


夫々(それぞれ)の心臓が高鳴っている。


(チッ、チッ、チッ、・・・)


各自の持っている腕時計も秒針を刻む。


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)

(チッ、チッ、チッ、・・・)


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)

(チッ、チッ、チッ、・・・)


(ドックン、ドックン、ドックン、・・・)

(チッ、チッ、チッ、・・・)


その時、


(ボーン、・・・)


柱時計が鳴り始めた。

そぅ・・・

7回鳴るための1回目が。
つまり午前7時を告げたのだ。

突然、


(ガタッ!!)


素早く、有森が立ち上がった。


(ドサッ!!)


凄い勢いで、床に倒れこんだ。

「ゴ、ゴ、ゴ、ゴキ〜〜〜!?」

と、悲鳴にも似た声を張り上げた。

「ど、どうしたんだ、有森いきなり?」

亀谷が驚いて有森に近付き、引き起こそうと手を差し出した。

「し、心配ない。 ゴ、ゴキだゴキ!! ゴキブリが今俺の足元を・・・」

床にしゃがみ込んだまま、有森がそう言った。
有森はテーブルの下を覗き込んで何かを探しているようだった。
その有森の足元に近付き、イチが毅然として言い放った。

「終に、正体を現したな・・・。 死喪田 歌月」

イチの突然のこの言葉に、

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

その場のみんなが驚いた。
そして席を立ち、口々に、

「い、今、なんってった?」

「し、死喪田 歌月だって?」

「有森がか?」

 ・・・

等とほざきながら有森に近付き、取り巻いた。
その有森は、全く合点が行かないという表情をしてイチを見上げている。
そして、有森とイチの会話が始まった。

「へ!? 死喪田 歌月? 死喪田 歌月だって、この俺が?」

「あぁ、そうだ。 お前がファントム・死喪田 歌月だ」

「な、なにを言い出すかと思えば、おっかしな事を・・・」

「とぼけても無駄だ、有森。 お前の正体は分かっている」

「と、とぼけるも何も・・・。 とぼけてんのはお前の方だ、金田一」

「いいゃ、有森。 お前は自分で証明してしまったんだょ、自分が真犯人だとな!! 死喪田 歌月は自分だとな!!」

「じ、自分で証明?」

「そうさ。 自分で証明したんだ」

「ふ、ふざけた事言うな!!」

「じゃ、ナゼ、7時の時報と共に床に転がったんだ? ナゼ?」

「そ、それはゴキが俺の足元に・・・」

「違う!! お前は自分の仕掛けたワナから逃げたんだ」

「ワ、ワナ?」

「そうだ、ワナだ!!」

「な、何を言ってるんだ金田一。 お前さっきから変だぞ。 頭に蛆虫湧(うじむし・わ)いてんじゃねぇのか? それともファントムの恐怖で可笑しくなったんじゃ・・・」

「・・・」

イチは黙った。
腕を組んだ。
そしてまだ立ち上がらず床に両膝着いている有森を、上から下目使いで見下(みお)ろし見下(みくだ)し、

“キリ!!”

ってしてほざいた。

「安心しろ有森、ボーガンの矢はまだ飛んでは来ない!!」

「え!? ボーガンの矢?」

「あぁ、そうだ! ボーガンの矢だ!! お前がどこかに仕込んだな。 ある程度の予想はしていたが正確な所までは分からなかった発射予定時刻・・もっともたった今、俺が予想していた通り7時キッカリだと分かった所ではあるが・・それをお前が身を以って教えてくれたんだからな。 しかし、時はまだ7時になってはいない。 さっき、お前が床に身を伏せたあの時、あの柱時計は6時40分を告げたんだ」

「?」

ここでイチが徐(おもむろ)に柱時計を指差した。
針は7時5分を差している。
イチが物知り顔で言った。

「あの時計は20分進めてある。 美雪にそうするようマスターに頼んでもらったんだ」

「・・・」

有森は黙っていた。
床に座ったままジッとイチの眼(め)を見つめている。
その有森にイチが言った。

キッパリと・・・

こぅ・・・

「俺の勝ちだな、有森」

ここで一旦、イチが言葉を切った。
そして、


(スゥ〜)


徐(おもむろ)に右腕を上げた。


(ピッ!!)


右手人差し指で有森の鼻っ面(つら)を指差した。
カッチョ良〜〜〜く、決め台詞を言うために。

こんな感じのヤツを・・・










「お前はもう・・・こけている」











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #49


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「お前のボーガンと、この民宿のカウンターの上にあった置時計がなくなったと聞いた時、俺は直観した」

イチが謎解きを始めた。

「ボーガンと置時計、この二つを組み合わせると何が作れるかを。 それはボーガンの時限発射装置だ。 その仕組みは簡単だ。 先ず、誰にも見られない時を狙って、それがどこかはまだ分からないが、この大食堂のどっか目立たない場所にボーガン本体をセットする。 お前に狙いを定めてな。 否、たったの今までお前が座っていた場所に座っている者目掛けてな。 次に、矢の発射装置を糸で縛り、矢を固定する。 最後に、盗んだ秒針のないアンティーク時計の時針(じしん)にカミソリの歯を取り付ける。 あるいは角度によっては、分針と時針の上下を逆にして分針の上に時針が来るように改良し、その時針にカミソリの歯を取り付け、その糸の下に置く。 そして時が来ると・・それはさっきも言ったように午前7時丁度だったが・・時針に取り付けられた歯が矢の発射装置を固定してある糸を切る。 当然、その矢は発射される。 これも又、俺の直観なんだが、その矢には恐らく毒が塗られてある。 かすっただけでも殺せるようにな」

ここでイチはチョッと間を取った。
そして呼吸を整えて、謎解きの続きを始めた。
その場にいた者達みんな、息を殺してイチの謎解きに耳を傾けている。

「有森。 お前は小道具なんか作るの得意だったな。 その程度の仕掛け作んのなんか簡単だょな。 ボーガンはそのために持って来たんだろ・・・な。 そしてこの民宿の朝食は7時。 座る席順も毎回同じ。 そして7時前にはみんな既に席に着いている。 だからここは・・この大食堂は・・お前の手の込んだ計画で早乙女先輩を殺すにはおあつらえ向きの場所って事だ。 だが、食事が始まってからでは遅過ぎる、食べ物を口に入れる時に若干前屈(じゃっかん・まえかが)みになるため、外れる可能性が高くなるからな。 それでお前が選んだ発射予定時刻はジャスト7時。 しかし、有森。 今朝、お前が座った席は本来、早乙女先輩が座るはずの席だった。 だが、今日に限って席順が変わっていた。 俺がそうするように美雪に言って、マスターに頼んでおいたからだ。 そのため、やむなくお前は早乙女先輩の席に座らざるを得なくなった。 だから発射予定時間の7時になった時、お前は転んでその場から離れたんだ、ボーガンの矢をかわすために。 それはイコールお前が真犯人だという事の証明となってしまったって訳だ。 つまり、お前の仕組んだトリックを見破った俺が、逆にお前にトリックを仕掛けたって訳さ」

「・・・」

有森は無言で聞いている。
そんな有森にイチが続けた。

「美雪に命じて、お前以外の宿泊者全員を早めにここに来させ、席に着かせた。 そして、な〜んも知らないお前が部屋を出るのを確認して、わざと廊下に飛び出してお前にぶつかった。 あれはわざとだったんだ」

「わざと?」

「あぁ、わざとだ。 何のためだと思う? ん?」

そう言ってイチは右ポケットに手を入れ、何かをつかんで取り出した。
その手を有森の目の前で、


(パッ!!)


広げ、つかんでいる物を見せた。
イチの手の平の上には有森の腕時計が乗っていた。

「そ、それは俺の・・・」

「そうだ。 お前の腕時計だ。 あの時・・・お前にわざとぶつかったあの時、俺はお前のこの腕時計を掏(す)ったんだ。 今回のこの時間トリックを成功させるためにな。 俺が手先が器用なのはお前も知ってるょな。 だから俺にとってこんな腕時計掏る位、朝飯前だ。 そうやって俺はお前に時間トリックを仕掛け、お前を席に着けさせたのさ、早乙女先輩の席にな」

みんな黙って聞いている。


(シーン) 


誰一人、声を出そうとする者はいなかった。

だが、










その時・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #50


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





突然、

「フフフフフ・・・。 ハハハハハ・・・。 アッ、ハハハハハ・・・」

有森が笑い始めた。
まるで『宇宙戦艦ヤマト』の主要キャラのデスラー総統みたく。

『その通りだ! ヤマトの諸君!!』

とでも、言わんばかりに。

「ハハハハハ・・・。 フゥ〜」

一わたり笑い終え、息を整え、有森が頭を掻(か)き掻き立ち上がりながら言った。
照れ笑いっぽいお顔を作って。

「じょ、冗談だろ、金田一。 椅子からコケタだけで真犯人だなんて。 そんな事で犯人扱いされたらたまったもんじゃねぇーぜ、ったく。 第一、冬美ん時はどうなるんだょ? えー? あのぬかるみには冬美の“足跡”しかなかったじゃないか? あれはどう説明するんだ? ん? どう? お前の事だ、まさか俺が催眠術でも使ってそうするように仕向けたとか言うんじゃないだろうな? えー?」

「アハハハハ・・・」

今度はイチが笑った。
じっつに、わざとっぽく。

「催眠術なんて必要ない。 アレは簡単なトリックだ。 それに今、お前は“足跡”と言ったな。 だが、それは間違いだ」

「間違い?」

「あぁ、そうだ。 あれは、足跡じゃなく、“靴跡”だ」

「ん!? どういう意味だ?」

「ま、それは俺の話を最後まで聞けば自然と分かる。 だからこれから言う俺の話を良く聞け。 先ず、冬美は部屋で殺された。 首を絞められたんだ」

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 ・・・

みんなが驚きの声を上げた。
解(げ)せぬというお顔をして幽鬼がイチに言った。

「それはおかしい。 わたしが検死した時、彼女の首に手で絞められたような痕はなかった。 あったのはロープの痕だけ。 あの木に吊るされていた時のロープの痕だけだ。 それに他に死因となりそうな外傷も体のどこにも見られなかった。 だから部屋で首を絞められたという君の説には無理がある」

「いいゃ、無理なんてどこにもないさ。 窓だ!!」

「窓?」

幽鬼が聞き返した。

「あぁ、そうだ。 窓だ、窓を使ったんだょ、有森は」

「どういう事かね?」

「こういう事さ」

ここまで幽鬼に言ってから、イチは一渉(ひとわた)り、周りを見回した。
そして続けた。

「みんな、この建物の南側には一本の大きな木があるのは知ってるな」

「大きな木? そういゃ、そんなのあったな」

と、御布施。

「言われてみりゃ、あるある・・・」

と、銭湯

「あぁ、そういゃ、あったな・・・」

と、亀谷。

 ・・・

皆、口々にそう言った。

「あの木を使えばこの建物の屋根に登る位、簡単な事だょな」

「うんうん」

「うんうん」

「うんうん」

 ・・・

みんながイチの言うことを認めた。

「有森はアレを使って屋根に登り、あのロープで窓を囲む位大きな輪を作った。 部屋の中からそのロープが見えないようにな。 そして自分の携帯から冬美の携帯に電話したんだ。 『窓の外を見るように』って。 この建物の窓は特殊な造りで、ガラス窓を下から上に押し上げて開けるという変則的な造りだ。 なにせ建っている場所が場所だけに、それだけ頑丈な造りになっている。 もっとも、映画なんか見てるとそんな造りは欧米ではポピュラーのようではあるが・・・。 それを犯人は 否 有森は利用したんだ。 そして窓から冬美が顔を出した。 その瞬間、一気にロープを引いた。 当然、ロープは冬美の首に喰い込む。 そうやって有森は冬美を殺したんだ。 これ即ち『パンジャブの輪』なり、って訳だ」 (この『パンジャブの輪』というのは劇中、怪人エリックがウバルド・ピアンジを殺す時に、そして最後の最後、殺しはしないがラウル・ド・シャニー子爵を脅すシーンで出て来る物です : 作者)

「で、でも。 でもどうやって、有森は冬美の部屋に入ったんだ。 カギ掛かってたんだぞ、シッカリと」

御布施が聞いた。

「簡単な事さ。 屋根から別のロープを下ろしたんだ。 この建物には、玄関に暖炉があるだろ。 あの暖炉の煙突にそのロープを巻き付けて、それを伝って下りればいい、冬美の首を縛ったロープと一緒にな。 そして地面に下りないよう気を付けて、窓から冬美の部屋の中に入った。 あるいはこうも考えられる。 冬美の首に掛けたロープを煙突に引っ掛けて、そのまま下りて来る。 つまり冬美の体重を利用して、それを反対側の錘代わりにしたって事だな。 後は、長過ぎるロープを適当な所で切ればいい。 あの首吊りに使ってあったロープはそんなに長くはなかったからな。 もっとも、あのロープには刃物で切った痕跡はなかったから、コッチはないと思われるが。 ま、そんなやり方も考えられるって事だ」

「な〜る(程)」

御布施が納得した。

「そうやって窓から部屋に入り、冬美の靴を履き、冬美の死体を担いで木の下まで行った。 そうすれば冬美以外の靴跡はどこにも付かない。 つまりはそういう事、足跡なんか残ってやしない、残ってたのは靴後だ。 もっとも、その靴跡は人二人分(ひと・ふたりぶん)にしては些(いささ)か浅い気もしないではないが・・・。 ま!? あんなもんかも知れないしな。 分かったかい先輩。 で、後は知っての通りだ。 別の方のロープは犯行後、片付けりゃいい」

「なら、イッチャン。 屋根にロープのキズ跡残っちゃうでしょ。 確かめてみた」

美雪が聞いた。
ここからイチと美雪の会話となる。

「いいゃ、そんな無意味な事はしちょらんょ」

「む、無意味って・・・」

「だって無意味じゃん。 小道具作んの得意な有森がそんなキズ跡残す訳ないじゃん。 厚い布挟むとか、厚紙かなんかで屋根の傷付きそうな部分のカバー作ってロープをその上で引っ張るとかすりゃ、な〜んも跡は残らん」

「ぁ、そっかぁ」

ここでイチが右手人差し指で、


(ピッ!!)


有森を指差し、

“キリ!!”

ってしてほざいた。

「総括する!! そうやって冬美を木に吊るしたお前は、靴を片っぽだけ冬美に履かせ、もう一方は下に置き、冬美の上着を脱がし、自分は裸足で、ぬかるみには足跡が付かないように冬美の着ていた上着を敷いてその上を歩き、なるべくぬかるんでいない芝や地面の固い部分、あるいは水溜りの中を歩くようにして、それこそ“足”跡を残さないよう注意して建物まで戻り、もう一度、南側の木を伝って屋根に上り、ロープを解き、屋根にキズを付けないための何かを外したんだ。 それから再び、地面に降り立った。 後は、同様に、冬美の上着を使ったり、地面の固い部分や水溜り、あるいは芝の上を足跡を付けないように注意して歩き、予(あらかじ)めカギを掛けずにいた自分の部屋に窓から戻ったのさ」

って。

「うむうむ」

「うむうむ」

「うむうむ」

 ・・・

イチのこの素晴らしい推理をその場にいた者達の全部とは言わないまでも、その殆(ほとん)どが感心しながら聞いていた。

だが、

こんな素晴らしい推理を全く無視いている者もいた。
尻餅だった。
この間、尻餅は、初めはそうではなかったのだが、途中からズ〜〜〜ッと腕を組み、目を閉じ、ジッと押し黙っていた。

まるで・・・










居眠りこいてるみたいに。











つづく