深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #56


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「ところで、オメェ、さっき言ってたな。 死喪田 歌月が男であるという印象をより一層強くするためとか何とか、ありゃ、どういう意味だ?」

尻餅が少年に聞いた。
これを切っ掛けに、尻餅と少年の会話が始まった。

「それはね。 それは、後での説明です。 その前にエンジン付きゴムボートです」

「おぅ、そうか。 ゴムボートじゃなきゃ、何だ? ん? 何使ったんだ」

「はい。 なんにも使ってません。 ボートみたいなヤツは」

「へ!? なんにも」

「はい」

「するってーと、何か? 死喪田は泳いで渡ったとでも言うんか、オメェは? あ〜ん?」

「その通りです。 泳いで渡ったんです」

「バ〜カかオメェは、こんな大嵐の中、どうやってヤツは・・・」

「殺された日高さん達、ここ来た時、まだ天候は良好でした」

「やっぱ、オメェはバカだ」

「え?」

「そん時はたまたま晴れてたってだけじゃねぇか。 こんな用意周到な犯人が、昨日やオトツイみてぇな暴風雨時の事、考えてねぇ分(わ)きゃねぇだろ。 ここを泳いで渡るなんて事、計画するはずねぇじゃねぇか」

「フッ」

少年がほくそ笑んだ。
笑顔が眩しかった。
そして言った。

「アクアラングです。 アクアラングがあれば暴風雨の時でもオヶです」

「アクアラング?」

「はい、そうです。 アクアラングです。 きっとお洋服の上から防水のドライスーツかなんか着て、そしてアクアラングして。 つまり犯人は潜って海を渡ったんです。 アクアラング位ならエンジン付きゴムボートよりズッと軽いから、仮に犯人が女性でもダイジョブです。 運べちゃいます。 それにここから本土までそんな遠くないし、本土までの海には所々、デッカイ岩が海面の上に飛び出してるから、泳ぎの上手なダイバーならチョッと深めに潜れば多少危険でも、岩を頼りに渡れちゃいます。 だからあ〜んなおっきなトランク、たった2泊3日のお泊(とま)りにもかかわらず持って来たんです。 長期なら分るけど、たった3日位の旅行に女の人があんなの持って来ないでしょ、よっぽど特殊な事情がない限り。 わたしもわたしのお友達も、3日位であ〜んなおっきいの使いませんょ、絶対。 あれ見ただけでもトランク持ってる人、男の人、って思い込んじゃいますょ、大抵。 だって、男の人のカッコしてるし。 それにあれならアクアラングの他にも、今回の殺人に必要な小道具入れられちゃうし。 一挙両得です」

「な、な〜る(程)」

これにはその場の全員が納得した。
尻餅がほざいた。

「う〜む。 おい、小娘。 オメェやるじゃねぇか。 ん。 チョッピリ見直しちまったぜ、オッチャン」

って。
一方、イチはチョビっち冷や汗もんだった。

『コ、コヤツ・・・一体、何にもん?』










って。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #57


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「日高さん殺した殺し方は、金田一さんの推理通りだと思ってます。 きっと犯人は、日高さん一人だけ上手に舞台に呼び出して、撲殺しちゃってからシャンデリア切って落としたんだと思ってます。 もち(勿論)、日高さんの上に。 だから異論は有りません。 でも、桐生さんの殺害方法は・・・」

ここで少年は口ごもった。
尻餅が、そんな少年の尻を叩いた。

「おい、どうした、娘っ子。 な〜に黙ってんだ、この〜。 早く続きを言え」

って。

「うん。 でも〜、あの〜。 金田一さんの〜、・・・。 あの〜、さっきの金田一さんの推理〜、・・・。 否定しちゃう事になるんでぇ・・・」

これを聞き、尻餅があたかも鬼の首でも取ったかのような、上を下への大喜びこいた。
それも、オモイッキシ力強く右手人差し指でイチを“ピッ”って指差し、そんでもって、まるで動物霊に憑依されたオサーンが阿波踊りこいてるみたく、万歳した両手を頭上で激しく振り回しちゃったりなんかしたかと思ったら、今度は、応援団の正拳突きっぽい仕種まで交えちゃって・・・だ。

こんな具合に・・・

「な、な、な、な〜にーーー!? コ、コ、コ、コイツのコイツのコイツの推理、否定しちゃうだとー!! んな事、んな事、んな事、・・・。 いいぞー、やれーやれー、ドンドンやれー。 ガンガン行けーーー!!」

って。

これには、それまで散々恥をかかされて来た御布施も一緒んなって大喜びだ。
最早、応援団長の域だ。

「ヨッシャー!! 許す!! 俺が許す!! ドンドンだーーー!! ドンドン行けー!! 行け行けドンドンだーーー!! フレ〜〜〜、フレ〜〜〜、す! く! ね!! フレ〜〜〜、フレ〜〜〜、す! く! ね!! ホレッ!! フレッ、フレッ、すくね!! フレッ、フレッ、すくね!!」

って。

一方、イチはと言えばムスッとしているだけであった。
それを受け、少年が自分の推理を語り始めた。

「金田一さんのあの推理には、幾つか無理があるような気がしてます」

「例えば?」

イチが聞いた。
暫(しば)し、少年とイチの会話となる。

「はい。 先ず、桐生さんがお部屋の中で殺されたという点です」

「どうして? 部屋のカギはシッカリ掛けられてたんだぜ、チェーンまでシッカリと」

「でも、もし、桐生さんのお知り合いの人がお部屋に尋ねて来たら?」

「ん!? どういう事かな?」

「はい。 こうです。 わたしの考え、最初からお話しちゃいますね。 仮に犯人を“キラ”って、呼んでみたいヶど、いいですか?」

「あぁ、いいょ。 オヶ」

「はい。 じゃ、これから犯人の事、キラって呼んじゃいますね。 で!? もし、金田一さんの推理が正しければ、桐生さんの首、ロープの痕(あと)二つ付いちゃいます。 イッコ目は窓の所で、ニコ目は木に吊った時にです。 どんなに上手にイッコに見せ掛けようとしても、ムリポだと思います」

『ハッ!?』

イチがショックを受けた。
なるほど、その通りだったからだ。

これにはイチ同様、

「フムフム、なるほどなるほど」

「フムフム、なるほどなるほど」

「フムフム、なるほどなるほど」

 ・・・

尻餅以下、みんなも納得して聞いていた。

一呼吸入れてから少年が続けた。

「でも、付いてたロープの痕は一つだけ。 ですょね、先生?」

幽鬼が答えた。

「うん、そうだねぇ。 いい所に気が付いたね」

って。

「と、すれば、桐生さんの首吊った場所はたったの一ヶ所。 それは木の下。 絶対、木の下です。 それ以外、考えられません」

ここで美雪が割り込んで来た。

「それだとすると、さっきイッチャンが言ったように部屋のカギはどうなるの?」

「はい。 それもわたしがさっき言ったみたく、キラと桐生さんが顔見知りならば全然問題なしです。 だって、もし、キラと桐生さんが顔見知りだったら、その顔見知りが部屋に来たんだから、当然、桐生さん、カギ開けちゃうでしょ。 そうなれば、後は簡単です。 後は、キラが言葉巧みに桐生さん、部屋から外、連れ出しちゃって、地面に靴跡付かないようなトコ・・・チョッと遠回りすればそんなトコ結構あるし、あの木の近くには。 どうしても付いちゃった靴後は、跡で消せばいいし。 靴跡、上から足でギュってしちゃえば、後は雨がやってくれるし。 だから、なるべく靴跡付き難いトコ選んで歩いて、あの木の下まで来て、不意打ち食らわせて、首吊っちゃったと考えたらどうですか?」

「フムフム。 なるほどなるほど」

少年の謎解きに納得頻(しき)りの・・・










尻餅達であった。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #58


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「桐生さんがお部屋出る時、カギ掛けていようがいまいがキラにしてみれば、犯行後桐生さんのお部屋入るの簡単です。 掛けてなければそのまんま、掛けてても殺された桐生さんがカギ持ってるからです。 殺してから奪っちゃえばいいからです」

少年の推理は続いていた。

「フムフム。 なるほどなるほど」

みんな納得して聞いている。
ここで、久しぶりに尻餅登場。

「だが、害者のあの時のあの格好・・・あれは? ん? アレはどう説明すんだ? あのマンスジクッキリの、あの格好」

御布施も登場。

「そうそう、それそれ。 あのマンスジクッキリの・・・」

きっと、既に心の準備が出来ていたのだろう、女の子の少年がこの手の言葉に対して全く恥ずかしさを出さず、真正面から受けて立った。

「目を逸らしちゃうためにです」

「え?」

「え?」

「え?」

 ・・・

みんなが『意味分らん』つー、お顔をした。
少年が続けた。

「あのカッコにしておけば金田一さん同様、誰しもが室内での殺人だと思うからです。 あのカッコの時殺されて木の下まで運ばれた、そう思うからです。 決して刑事さんへのサービスなんかじゃありません」

「フムフム。 なるほどなるほど」

「フムフム。 なるほどなるほど」

「フムフム。 なるほどなるほど」

 ・・・

今度はみんな納得した。

「そうしておいて、キラは桐生さんの靴脱がして、それ持って、さっきの金田一さんの推理みたく桐生さんのお洋服使ったり、芝の上や水溜り、あるいは土の固いトコなんかをかなり大回りして、足跡残さないように注意して、自分のお部屋戻って、体綺麗にして。 それから、もう1回108号室、つまり桐生さんのお部屋入って、カギとチェーン掛けて、持って帰ったヤツかそれとも別のかは分かんないヶど、桐生さんの靴履いて、窓から出て、木の下まで来ちゃって。 後は金田一さんの推理の通り・・・になっちゃう筈なんだヶど。 でも、・・・」

ここで少年は一旦、言葉を切った。
そして、徐(おもむろ)に言った。

「ここでもし、真犯人が有森さんだとするなら、イッコ問題があります」

それから、視線を尻餅に向けた。

「何だと思いますか?」

「ぅ、うん? 俺にか・・・?」

「はい」

「う〜む。 分からん」

「皆さんはどうですか?」

「う〜む」

「う〜む」

「う〜む」

 ・・・

みんな考え込んだ。
聞かれてる事の意味が良く分からなかったのだ。

「質問の意図が読めないゎ」

素直に美雪が聞いた。

「そっかー、意図読めませんか?」

「うん」

「じゃぁ、あたしが言っちゃいますね。 それはね。 有森さんが桐生さんの靴履くの少し無理があるという事です。 ナゼかと言えばサイズ・・・そう、足のサイズが違い過ぎちゃうような気がするからです。 有森さんが桐生さんの靴履くとするなら、その履き方はたったの一つ。 どうすればいいか? それは靴の踵(かかと)を踏む。 これだけです。 これ以外、有森さんが桐生さんの靴履く方法考えられません、他には足を切る事位しか。 でも、あの靴、踵踏まれた跡なかったです。 でしたょね、刑事さん」

「おぉ。 そうだそうだ、そうだったそうだった。 確かに踵を踏んだ跡は見られなかった。 確かそんな気がする。 良し、後でもう一遍確認してみんべぇ。 県警が来るまで靴や現場はそのまんまだからな。 害者の死体以外は」

「それともうイッコ・・・」

更に、少年が続けた。

「もし、金田一さんの推理通り、犯人が窓で桐生さんの首を吊るそうと計画した場合なんだヶど。 もし失敗したらどうなっちゃうでしょうか。 犯人誰だか直ぐばれちゃいますょね。 それに、例え成功したって、携帯の通話記録から怪しまれちゃう可能性だってあるし。 つまり日高さん殺したのが誰か、疑われちゃう可能性です。 これだけ用意周到な犯人が、失敗したら直ぐ犯人ばれちゃうような真似(まね)、果たしてするでしょうか?」

「フムフム。 なるほどなるほど」

「フムフム。 なるほどなるほど」

「フムフム。 なるほどなるほど」

 ・・・

「これで有森さんがキラであるという金田一さんの根拠、崩れちゃいました。 ですょね、皆さん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

 ・・・

「それからキラがファントムのカッコして名無(美雪)さんのお部屋覗いたのは、金田一さんの推理の通りだとわたしも思ってます」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

 ・・・

「じゃ。 いよいよ、この事件の核心部分・・・。 つまり、キラはどこに消えちゃったかを推理しよっかと思います」

ここで少年は一呼吸置いた。

キラ即ち、死喪田 歌月。

否、

真犯人がどこに消えたかを・・・










語るために。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #59


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「仮面とマントと帽子と靴、窓から捨てただけ、という金田一さんの推理、わたしも支持します。 だから軽〜い帽子は風で飛んじゃったヶど、重た〜い仮面とマントはキラの狙い通り、海の上に落ちて浮いてたんです。 靴は沈んじゃって。 でも、その後が少し違う気がしてます」

少年が言った。
マタ〜リと。

「どう?」

イチが聞いた。

「はい。 ファントムに化けたキラは、仮面なんかを急いで窓から投げ捨てた後、その場には留まんないで、そのまま逃げたんじゃないかなって、思ってます。 着ていたお洋服に浸み込んでいた雨水、用意してたタオルかなんかでササッと一通り拭いて、床に水滴が滴(したた)り落ちないように」

「じゃ、じゃぁ、イッチャンが最初にぶつかった有森君の説明は?」

相変わらずの少年の物言いのマタ〜リさに耐え切れず、反射的に横から美雪が嘴(くちばし)を入れた。

「はい。 金田一さんの推理は、有森さんが廊下に出てた時にだけ当てはまります。 もし、自分のお部屋にいたらどうでしょうか。 キラが有森さんのお部屋の前を通り過ぎた後に有森さんがお部屋出ていたら・・・有森さんのお部屋は104号室です。 あの窓に一番近いお部屋です」

「そ、そうなんだょ!? よ、良くぞ!! 良くぞ、それに気付いてくれた!! 良くぞ、それに・・・。 あの時、誰かが俺の部屋のドアをノックしたんだ。 丁度その時、たまたま俺はドアの近くにいたんで、割と直ぐドアを開けたんだ。 そしたらやけに騒がしかったんで、部屋を出て音の聞こえる方に早足で歩いていたら、突然目の前に金田一、お前が現れたんだ」

「そ、そう言えば、俺の部屋のドアも誰かがノックしたぞ」

103号室の亀谷が言った。

「俺の部屋もだ」

102号室の銭湯も。

それを受け、少年が言った。

「それが真相です。 この事件の真犯人は、あの時自分のお部屋にいた3人の人達を巧みに利用して、トリックを仕掛けたんです」

「なんのために」

美雪が聞いた。

「恐らく挟み撃ちのフェイク」

「え!? 挟み撃ちのフェイク?」

「はい。 挟み撃ちになってるはずなのにキラは消えていた。 そうすれば誰もが、間違いなくキラは窓から海に、あの怒涛の海の中に窓から飛び込んだ。 きっとそう思うからです」

「う〜む。 でも、それは変だな」

今度は有森だった。

「どこがですか?」

少年が聞き返した。

「それなら俺達はキラの足音を聞いているはずだ。 でも、俺はノックの音以外、な〜んも聞いちゃいない」

「お、俺も何も・・・」

と、亀谷。

「そういゃ、俺も足音らしいのは聞かなかったなぁ」

と、銭湯。

突然・・・

「それはどう説明すんだ?」

と、


(ニュ〜)


いきなり少年の目の前に、大アップで尻餅登場。
その尻餅の突然の大アップの登場に、

「アハハハハ。 それはと〜っても簡単ですょ。 アハハハハ」

思わず少年は笑ってしまった。
無理もない、少年はまだ16。
『鉛筆が転がっただけでも、可笑しいお年頃』なんだから。

「簡単?」

『ん? な〜にがそんなに可笑しい』つー、お顔して尻餅が聞き返した。

「はい。 簡単です。 笑っちゃう位簡単です。 理由はこうです。 この建物、殆(ほとん)ど全部、廊下には絨毯(じゅうたん)敷いてます。 そしてキラは裸足です。 だからチョッとしか足音はしなかった。 裸足で絨毯だったからです」

素早く、素に返って少年が答えた。

「おっ!? な〜る(程)」

尻餅が納得して言った。

「ね。 簡単だったでしょ。 ここの絨毯は厚手のペルシャ織だから、余程、妙な走り方しない限り、裸足なら足音殆(ほと)んど無しです」

「な〜る(程)」

「な〜る(程)」

「な〜る(程)」

 ・・・

今度はみんなが納得した。

「あ!? なら、キラは? キラはどこに消えちゃったのかしら?」

不意に、美雪がそれに気付いた。

「そうだそうだ。 なら、キラはどこへ・・・?」

と、御布施。

「どこ行っちゃんたんだ?」

と、亀谷。

「ワープしちゃったのか? 異次元にでも・・・」

と、銭湯。


(ジー)


全員が少年の顔を覗き込んだ。
少年がなんと言うか興味津々なのだ。

少年が爽やか〜に、最後に言った銭湯の問い掛けを受けて答えた。

「うぅん。 違いますょ。 異次元なんか行ってませんょ」

って。

「じゃ、どこ?」

美雪が聞いた。

「はい。 あのね・・・」

一瞬、少年がキラの逃げ込んだ場所を言おうとした。
が、
躊躇(ためら)った。
まだ、先に言わなければならない事があったからだ。

「でも、それ言うの後回しです。 後回しにしちゃいますね。 その前に、まだ確認しなきゃなんない事、あるし・・・」

そして・・・










少年が続けた。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #60


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「ところで金田一さんは、気付いていますか?」

少年がイチに聞いた。

「何を?」

「時間です」

それを聞いた瞬間、

『ハッ!?』

イチは思い出した、自分が推理したボーガン発射予定時刻を。
そのイチの顔色をうかがって、少年が言った。

「そうです。 もう、時計は7時20分を大きく回っちゃってます。 つまり、ファントム最後のトリック遂行予定時刻の7時を、疾(と)っくに過ぎちゃってます。 でも・・・でも、なんにも起こりませんでした。 ボーガンの矢なんてどっからも・・・」

だが、少年がそう言ったまさにその瞬間・・・

突然、


(サッ!!)


有森が、再び後ろに飛んだ。
しかし、


(グラッ!!)


バランスを崩した。


(ドテッ!!)


床に倒れこんだ。

「ゴ、ゴキー!?」

と、叫びながら。

その時、


(ガサゴソ、ガサゴソ、ガサゴソ、・・・)


“何か” が有森の足元付近に姿を現した。


そぅ・・・


“何か” が・・・



ハイ!! ここで作者から読者の皆様に問題です。

【問題】上記の姿を現した “何か” とは、一体なんでしょうか?


正解・・・は?

懸命な読者の皆様なら・・・

ケッ!!

つー位、簡単ですょね。

そうです。

【正解】ゴキブリ

ですたぁ。



「ヒッ、ヒャ〜〜〜!!」

悲鳴を上げ、


(ゴロン!!)


有森がその場にでんぐり返った。

「ゴキゴキゴキゴキ、ゴキブリーーー!!」

つー悲鳴こいて。

だが・・・

その瞬間、


(プチッ!!)


少年が目にも留まらぬ 否 目に留まる速さでそのゴキブリを足で踏んだ。
素早く、掛けていたエプロンのポケットからティッシュを取り出した。
そのティッシュで床と、踏んだ上履きの底に付いた潰れたゴキの汁を拭き、踏みたてホヤホヤのゴキブリを摘(つま)み取った。
それから公園を見た。

「ダメだょ、おじちゃん。 ここゴキいるょ。 折角のこの民宿の格、落としちゃうょ、台無しだょ」

向きを変え、ティッシュを見せ、みんなに言った。

「チョッとこれ、捨てて来ちゃいますね」

って。

そして、


(タタタタタ・・・)


少年は走った。
調理場のゴミ捨て場まで。










ゴキを捨てるために・・・











つづく