深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #61


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





イチは黙っていた。

「・・・」

黙って何かを考えているようだった。
そのイチに有森が近寄った。
有森は疾(と)っくの昔に立ち上がっていた。

「な!? 金田一、ホントにゴキだったろ。 な!? 俺、ゴキ、超超超、超ーーー、苦手なんだ」

「ぁ、あぁ。 済まん、有森。 疑ったりして・・・」

「あぁ、ホントだぜ、ったく・・・。 って、文句の一つも言いたいとこだが、疑われるような真似した・・・ボーガンなんか持って来た俺も悪かったんだ。 許してやるょ。 それに月子との事、告白出来たし、結果オーライだったかもな」

背後から有森に早乙女が近付いて来た。
力なく有森に声を掛けた。

「有森君・・・」

「ん!?」

有森が振り返った。

「ごめんなさい、有森君。 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、・・・」

早乙女が有森に詫(わ)びた。
目に大粒の涙を湛(たた)え、『ごめんなさい』を繰り返した。
徐々に感情が高まって来た。
そして、

「ゎあーーー!!」

終に泣き出した。


(ドサッ!!)


床にへたり込んでしまった。
両手で顔を塞(ふさ)ぎ、頭(こうべ)を垂れ、泣きながら叫んだ。

「ゎあーーー!! ま、まさか。 まさかまさかまさか、ぁ、ぁ、ぁ、あんな事に、あんな事になるとは思わなかったのょーーー!! ゎあーーー!!」

その惨めな姿を有森が複雑な面持ちで眺めている。
拳を固く握り締めて、こう思いながら、

『クッ!? つ、月子はこんなヤツに・・・。 こんなヤツらに・・・。 こんな惨めなヤツらに・・・。 でも、懸命にコイツらを許そうとしてたんだ、こんなヤツらを・・・。 だが、俺は・・・。 俺は俺は俺は、コイツらを・・・。 く、くそっ』

と。

それを余所目(よそめ)に、

「先輩・・・」

美雪が早乙女の足元に歩み寄って声を掛けた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、・・・」

早乙女は再び、小声で『ごめんなさい』を繰り返していた。

そこへ、


(タタタタタ・・・)


少年が戻って来た。
きっと手を洗ったのだろう、掛けていたエプロンで手を拭っている。

「お待たせしちゃいましたぁ」

「おぅ!? おぅおぅおぅおぅおぅ!? 待ちかねたぜ〜。 あ〜ん、小娘〜〜〜」

透かさず尻餅登場。
勿論、いつも通り大見得切っての。

「済みませ〜ん」

少年が尻餅に “ニカッ” ってして謝った。
その “ニカッ” を見て、尻餅は思った。

『ぉ、おぅ・・・。 カ、カワユイじゃねぇか・・・』

って。

お顔をポッて・・・










赤らめて。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #62


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「おぅおぅおぅおぅおぅ〜、小娘〜。 オメェの言うこた〜、ぁ、良〜く分かったぁ」

尻餅がほざいた。
勿論、いつもの歌舞伎調なのは言うまでもない。
それから有森を指差した。

「こいつが死喪田 歌月 否 オメェ流に言ゃ、キラだったけか。 (ここまでは普通に、後は歌舞伎調で) そのキラじゃねぇーんなら〜、一体だ〜れが、ぁ、キラなんだーょ〜」

「はい。 それを言う前に、死喪田さ・・・ 否 死喪田 歌月という人物についてのわたしの考え聞いてもらえますか」

一瞬、死喪田を “様” 付けで呼びそうになった少年であった。
この少年の言葉を聞き、

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、オッチャン聞いちゃる」

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、アンチャン聞いちゃる」

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、オレらも聞いちゃる」

尻餅、イチ、御布施が、順にほざいた。
それを聞き、

「うん」

少年が軽く頷いた。
そして話し始めた。

「先ず、死喪田 歌月の人となりについてです。 えっとー、死喪田 歌月のお姿をご覧になった方に聞いちゃいますね。 死喪田 歌月は男でしょうか? それとも女でしょうか? どっちでしょうか?」

「そんなもん、オメェ、言うまでもなく決まってるじゃねぇか。 男に・・・」

尻餅がエッラそうにほざいた。
それも珍しく普通に。

「勿論、あの姿、男に決まってるゎ。 ねぇ、先輩?」

美雪が早乙女に同意を求めながら言った。
既に、早乙女は落ち着きを取り戻していた。

「ぇ、えぇ。 美雪の言った通り、男だと思うゎ、あたしも」

イチは考え込んでいた。

「う〜む」

そして少年に聞いた。

「君はまさか死喪田 歌月が女だとでも・・・?」

「はい。 そのまさかです。 わたしは死喪田 歌月は女の人じゃないかなって、思ってます」

「ど〜いう事だか〜、詳しく〜、ぁ、話し〜やーがれ〜〜〜」

尻餅だ。

「はい。 こういう事です。 わたしが始めて死喪田 歌月に・・ぁ・・そうだ・・死喪田 歌月って、チョッと長すぎちゃうので、これからは単に “歌月” って呼ぶ事にしますね。 いいですか?」

「おぅおぅおぅおぅ、構わん構わん構わんでー」

これも尻餅だ。

「じゃ、 “歌月” って言っちゃいますね。 わたしが始めて歌月のお姿見た時、歌月は酷いビッコひいてました。 でも、そのお姿見て、わたし、チョッと変!? って、思っちゃいました。 だって、酷いビッコひいてる歌月がシークレットブーツ履いてたから」

「な、な〜にー? シークレット、ぁ、ブーツだってぇ〜〜〜」

尻餅だ。

「そうです、シークレットブーツです。 シークレットブーツ履いてたんです、歌月は。 それも高さが10cm近くもありそうなヤツ。 足がお悪いのにシークレットブーツ? って、思っちゃいました、その時」

「つー事は、歌月の身長は、あの感じじゃ、170cmない事になるな」

イチが言った。

「はい。 多分」

「でも、ナゼ、シークレットブーツなんか? う〜む」

イチが少年に聞くとでもなく、考え込みながら、独り言のように言った。

「それは歌月の正体が女の人だから。 だからシークレットブーツで背を高く見せて・・・ それにトランクもワザとおっきいのを・・・。。 男の人と思わせるために」

少年のこの言葉を聞き、イチが考え込んだ。

『歌月は、女・・・。 女女女女女・・・』

突然、


(ピッ、コーーーン!!)


イチが何かを閃いた。
透(す)かさずほざいていた。

こぅ・・・










「チチは?」











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #63


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「え?」

少年にはイチの言った言葉の意味が分からなかった。
だから、思わず反復していた。

「チチ?」

それを受け、イチが真顔で大真面目に少年に言い切った。
キッパリと。

こぅ・・・

「そうだ! チチだ!! 歌月のチチはタップリ腫れていたか?」

って。

先程の “マンスジ” の時と違い、心の準備がないままいきなり H な事を聞かれたため、お顔を赤らめ、恐る恐る、恥ずかしそうに少年がイチに聞き返した。

「チチって、ぁ、ぁ、ぁ、あの〜、胸の事ですか?」

「えっへん! そうに決まっとる!!」

イチが鼻息荒く答えた。
このやり取りを見ていて、堪らず美雪が、横から慌ててイチを窘(たしな)めた。

「も、もうイッチャンたらぁ、変な事聞いて」

そして少年に視線を向けた。

「ごめんね、少年ちゃん。 変な事聞いちゃって。 この人ったら、いっつもこうなのょ。 ホントにごめんね」

「ぃ、いぇ、ダイジョブですょ。 ぃ、いきなりだったから、あたしチョッと吃驚(びっくり)しちゃって・・・。 だ、だからダイジョブですょ」

だが、イチは変わらない。
追い討ちを掛けた。

「で、どうなんだ、少年ちゃん。 歌月のチチは腫れていたのか、タップリと?」

「うぅん。 それは分かりませんでした」

最早、少年はたじろがない。
ガッツリこれを受け止めた。
ここが、女のツオイ所だ。

「ナゼ?」

イチが聞いた。

「はい。 この暑さなのに、ぶかぶかのロングコート着てたから」

「ロングコートを?」

「はい」

「そうかぁ。 そんなカッコしてまで・・・。 う〜む。 ヤツは、歌月は 否 キラはどこまでも用意周到なヤツ。 だが、ここまでの情報だけではキラを女と断定するのはまだ無理があるな。 性別に関しては取り敢えず、『保留』という事に・・・」

イチが考え込みながら言った。

だが・・・










これに対し・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #64


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「いいぇ、女です」

少年がキッパリと言い切った。

「でもね、少年ちゃん。 キラが女という事になると候補者は・・・。 ぇえーっと・・・。 イチ、ニー、サン、シー、ゴー、ロクっと。 6人しかいないのょ。 貴方達、この民宿の従業員さん3人と、あたしと緒方先生と幽鬼先生の奥さんの・・・合計6人しか、襲われ掛けた早乙女先輩除くと。 でも、ここの従業員さん達は関係ないでしょ? とすると3人。 たったの3人しか・・・」

美雪が、その場にいる自分を含めた早乙女を除く女達全員を、一人一人指差して数(かぞ)えて反論した。
少年がその美雪の目を覗き込むようにジッと見つめた。
そしてキッパリと断言した。

「間違いありません。 キラは女です」

「ほぅ、大層な自信だな。 その根拠は?」

尻餅登場。

「ありません」

「な〜にー? ありません〜。 ぁ、あ〜〜〜りません、だとーーー!!」

ま〜た始まった、いつもの尻餅だ。

「あくまでもわたしの推測です。 でも、間違いないと思ってます」

「なら、少年ちゃんにはもう、真犯人が誰だか分かってるってゆう訳?」

美雪が聞いた。

「はい。 分かってます。 もうズッと前から・・・」

「なら、早くソイツの名を言え!!」

尻餅だ。

「はい。 さっき、金田一さんが言ったように、歌月に化けたキラは・・移動時間を考えたら、多分、使ったアクアラングとドライスーツを本土のどっかに隠し・・何食わぬお顔して金田一さん達と一緒にこの島に上陸してます。 そして、今までわたしが話して来た全ての条件を満たしている人は、たったの一人・・・」

少年がユックリと体を回した。
ある人物と相対峙するために。

そして、


(スゥ〜)


静かに伸ばした右腕を上げ始めた。
右手は拳を握っている。


(ピタッ!!)


腕を止めた。
それからユックリと人差し指を・・・人差し指だけを伸ばし始めた。

最後に、その伸ばした人差し指で、


(ピッ!!)


ある人物を指差した。
そして、こう言い切った。

「死喪田 歌月は 否 キラは・・・貴女です!!」

と。










キッパリ・・・











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #65


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「死喪田 歌月は 否 キラは・・・貴女です!!」

深大寺 少年がキッパリと言い切った。
更に、もう一言だけ、付け加えた。

「緒方センセ!!」

と。

そぅ・・・

少年が対峙した相手は・・・緒方 拳代だった。
ここで少年は、体の向きをイチ達の方に変えた。

「だからさっき言い掛けて止めちゃったお話、ここでしちゃいますね。 あの時・・・つまりキラが有森さんと、亀谷さんと、銭湯さんのお部屋のドア叩いたあの時です。 あの後キラのお姿、消えちゃいました。 どこにでしょうか? どこだと思いますか? 名無さん」

「え!? あたし・・・?」

「はい」

「ントー・・・。 分かんない」

「超簡単なんだヶどなー。 分かんない?」

「うん」

「有森さんはどうですか?」

「え!? 俺!?」

「うん」

「う〜む。 分らん!?」

「そうですかぁ、分りませんかぁ。 みなさんはどうですか?」

少年が全員に振った。
しかし、

「う〜む。 分らん!?」

「う〜む。 分らん!?」

「う〜む。 分らん!?」

 ・・・

分かる者は誰もいなかった。
イチもだ。

「じゃ、しゃーない。 あたしが言っちゃいますね。 銭湯さんのお部屋の隣のお部屋です。 隣のお部屋に入ったんです、銭湯さんの。 そん中、入っちゃえば分かんなくなっちゃうでしょ」 

「ぁ、そっかー」

美雪が納得した。
だが、直ぐに気付いた。

「あ!? で、でも、銭湯君の隣の部屋って言ったら・・・。 亀谷君と・・・」

一瞬、美雪はその先を言うのを躊躇(ためら)った。
みんなも、美雪が何を躊躇ったのかを瞬時に理解していた。
そして何も言わず、拳代の顔を見た。
美雪達が気付いたのを見て、代わりに少年が言った。

「そうです。 キラが逃げ込んだ銭湯さんの隣のお部屋、それは101号室です。 つまり、緒方センセのお部屋です。 そう・・・。 キラは緒方センセのお部屋に逃げ込んだんです。 そしてそこでお着替えして、何食わぬお顔してあそこに・・あの窓の側に・・お姿、現したんです。 そうだとすれば辻褄(つじつま)合っちゃうでしょ。 ね」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

 ・・・

みんなが頷いた。
皆、納得、得心しているのが良く分かった。

それを見て、


(スゥ〜)


少年は拳代のいる方に、再び向きを変えた。
ジッと拳代の眼(め)を見つめた。
そして再度、ダメを押した。

「じゃぁ、なんで101号室か? ・・・。 そ、れ、は・・・センセがキラだから」

その言葉を聴き、

「アッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ。 何を言い出すかと思えば、この娘(こ)は・・・。 何を根拠にそんな事? いい加減にしなさい! 子供のクセに探偵ごっこだなんて!! アッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ」

拳代が少年を嘲笑(あざわら)った。
態(わざ)とっぽく。
それから尻餅を見た。

「刑事さんも刑事さんです。 さっきから黙って見てれば、こんなオコチャマの言う事、真顔でお聞きになって。 恥ずかしくないんですか? ぇ? 大の大人が、こんな小娘の言う事・・・。 フン」

それまで自分を指差してキラだと言われた時でさえ、黙って少年達のやり取りを見ていた緒方 拳代がお冠(かんむり)だ。
無理もない、全員の目の前で自分が殺人犯呼ばわりされたのだから。

だが、

そんな拳代に御構いなし。
少年がキッパリと言い切った。

「はい。 センセの言う通り根拠はないですょ。 でも緒方センセ・・・。 やっぱりセンセがキラです。 キラはセンセです」

「チッ。 まだ言うの? しつっこい娘ねぇ。 ・・・。 あっ、そ。 じゃ、私がキラだという事を証明してみなさい!! その代わり、出来なかった時は酷いゎょ、いい事? 客を殺人犯呼ばわりしたんですからね」

拳代が少年を睨み付けた。

「はい。 覚悟は出来てます」

「なら、俺がその審判官を買ってやろう」

尻餅だった。
一歩前に出て、そう言っていた。
それも驚くなかれ、思わず、

「カッケー!!」

って、言いたくなっちゃう位・・・カッチョ良く。。。
右半身に構えちゃったりして。
勿論、斜め七三の角度に。

そ、れ、も・・・

少女マンガかなんかで良く見る、長髪・ハンサム・十頭身の超カッチョぇぇオスが、その自慢の長髪をキザ〜〜〜に下から上にかき上げながらほざく、

「ハン」

つー感じの二枚目ポーズみたいの取ったりなんかしちゃったりして。。。
全く、似合っとらんかったヶど・・・



そして今・・・

いよいよこのドラマのクライマックス・・・

深大寺 少年による・・・

この事件、最後の謎解きが・・・

終に・・・

開始されたのである。



・・・出るか?

・・・必殺!?










『深大寺 少年! 容赦なし!!』











つづく