深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #66


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





深大寺 少年が、緒方 拳代の眼(め)をジッと見つめながら静かに語り始めた。

「昨日、わたしは知ってるお友達全部にメールして協力してもらっちゃいました。 ここにいる全員の情報を、インターネットでお調べ出来るだけお調べしてね、って」

動詞 “調べる” に “お” を付け、 “お調べ” と体言化する、いつもの少年のしゃべり癖がここでも出た。

ここまで言ってから公園のいる方を向いた。

「おじちゃんがあんまり落ち込んでるから・・・。 何とかしなくっちゃ、って、思って・・・」

不意に少年の優しい言葉を聞き、

「うんうん、うんうん、うんうん、・・・」

何も言わず、でも、とても嬉しそうに何度も頷きながら公園が少年を見つめた。
再び、少年が拳代の顔を見た。

「すると、その中に幾つか吃驚(びっくり)しちゃうような情報がありました。 わたしも直ぐにネットでその情報をお調べしました。 そして確信したんです。 緒方センセ、センセがこの事件の真犯人だという事を・・・」

「あ〜ら。 どんな情報かしらぁ〜? フン」

拳代が軽〜く鼻で笑った。

「はい。 ホントに吃驚しちゃうような情報です。 緒方センセ、センセに関する情報ですょ」

「だから、どんな情報か聞いてるでしょ!! 一々もったい付けず、早く言ったらどうなの!? イッ、ライラする娘ね、ったく。 チッ」

マタ〜リした少年の話し方に少々、イラっと来た拳代だった。
その拳代の眼をジッと見つめ、チョビっとふくれっ面をして少年が言った。
相変わらずマタ〜リと。

「別にぃ、もったい付けてる分けじゃないヶど・・・。 でも、言っちゃいますね。 うん」

瞬間、


(ギラン!!)


少年の瞳が怪しく輝いた。
そして、確信を持って聞いた。

こぅ・・・

「緒方センセ、センセにはお子さんが一人いますょね」

この言葉を聞き、一気に拳代の顔が引き攣った。
驚愕の表情だ。
同時に、声を荒げていた。

「きゅ、急に何を言い出すかと思ったらこの娘(こ)は・・・!? 私はずっと独身ょ! ずっとシングルだったのょ!! こ、子供なんて! 子供なんている訳ないじゃない!! フン。 失礼しちゃうゎね、全く」

「そうでしょうか?」

「き、き、き、決まってるでしょ!! 何が 『そうでしょうか?』 ょ、涼しい顔して。 ホッ、ントにイライラする娘ね! ったくぅ!!」

「センセ、何そんなに慌ててるんですか? そんなに慌ててると返って認めてるようなもんですょ」

「ぅ、うるさい娘ねー、一々! 慌ててなんかいないゎょー!! だ、第一! 私に隠し子なんている訳ないでしょ!!」

ここで再び、


(ギラン!!)


少年の瞳が怪しく輝いた。
そして、徐(おもむろ)に言った。

「センセ。 語るに落ちちゃいましたね」

「ん!? 語るに落ちたぁ? ど、どういう意味ょ?」

「だって、あたしさっき、 『センセにはお子さんが一人いますょね』 とは言ったヶど、 “隠し子” だなんて一言も言ってませんょ」

「クッ!?」

拳代は、言葉に詰まった。
自爆を認めたのだ。

「だ、だから・・・。 そ、それは・・・」

「どしたんですか、センセ? お顔の色、お悪いですょ。 真っ青ですょ。 それに汗もイッパイかいちゃって。 それって、きっと、図星指されちゃったからですょね」

「ホッッッッッ、ントに貴女って娘ゎぁ・・・!?」

拳代が焦っている。
それ以上、二の句が継げない。
怒りで体がプルプルしている。
拳も固く握り締めている。
今にも殴り掛からんばかりに。

「センセ、続けてもいいですかぁ?」

「クッ!?  な、な、な、な〜にそんなに勝ち誇ってんのょ!? ぇー? ・・・。 まるで自分こそが、ファントムの書いた楽曲 『勝ち誇ったドン・ジョバンニ』 のモデルだとでも言いたそうに!? 第一、そんな事! 一々、あたしに断らなくったっていいじゃない!! いいから、さっさと続けなさい!! ったく、今日はとんだ厄日ね!! フン」

拳代が言葉を吐き捨てた。

しかし、拳代のこの焦り具合・・・やはり少年の言った通り、拳代は図星指されたのだろうか?

そして、

この後も少年の謎解きは、まだまだ続くのであった。

そ、れ、も、・・・










情け容赦なく・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #67


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「金田一さん、刑事さん、皆さん、こっからはわたしの推測んなっちゃいますヶど、続けてもいいですか? 聞いてくれますか?」

少年(すくね)がその場の全員に問い掛けた。

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、オッチャン聞いちゃる」

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、アンチャン聞いちゃる」

「おぅおぅおぅおぅ、聞いちゃる聞いちゃる、オレラも聞いちゃる」

最早、恒例になった感のある反応だ。
当然、これをほざいたのは尻餅、イチ、御布施の順であるのは言うまでもない。

「ありがと、皆さん。 じゃ、遠慮なく続けちゃいますね。 うん」

一言、礼を言って少年が続けた。

「あのね・・・。 この事件は、遡(さかのぼ)る事、今から2ヶ月前。 ろくがつ・にじゅう・ろくんち(6月26日)の土曜日。 キラが死喪田 歌月として、初めてここ来た時から始まっちゃいます」

ここで少年はイチを見た。

「金田一さん。 6月って言えば、何か心当たりって、ありますか?」

「6月かぁ、6月と言えば・・・。 う〜む。 ・・・」

イチが考え込んだ。


(ピッ、コーーーン!!)


閃いた。

「あ!? 冬島 月子が自殺したのが確か6月」

そして美雪に確認した。

「だったょな、確か?」

「うん、6月19日だょ。 月子、死んだの・・・」

透かさず、少年が反応した。

「ピンポ〜ン! ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!! はい。 正解です。 そうです、冬島 月子さんは今年の・ろくがつ・じゅう・くんち(6月19日)の土曜日にお亡くなりです、自殺して。 勿論、皆さんご存知ですょね」

「あぁ、知っちょるで、勿論」

って、御布施。

「俺なんかその場面に遭遇したんだからな、あのショッキングな・・・」

亀谷がそこまで言って、

『ハッ!?』

直ぐに気付いた。
その軽率な発言が、冬島 月子の恋人だった有森の神経を逆撫(さかな)でする事を。

「す、済まん、有森」

亀谷が素直に詫びた。
有森はジッと俯(うつむ)いて床を見つめている。
冬島 月子の事を思い出しているのだろうか?
その有森が顔を上げた。
そして亀谷の眼(め)をジッと見つめた。

「あ!? ぁ、あぁ・・・。 いいんだ。 俺の方こそ、返ってみんなに気を使わせて申し訳ない」

もう、有森は完全に立ち直っていた。

「でも、なんで今更、冬島 月子の自殺なんかを持ち出すんだ? ん? なんで? 否、それより、どうして冬島の自殺の事、君が知ってんだ? 確か、学校が揉み消したっちゅお噂ゃで・・・」

イチが少年に聞いた。

「みたいですね。 でも、マスコミさん達には手を回せても・・・。 今はネットで・・・2chの書き込みからブログへ飛べば、なんでも分かっちゃう時代です。 はい」

「そうか!? ネットかぁ・・・」

「そうです。 ネットです。 冬島 月子さんみたいな不審死(ふしんし)は、必ず誰かがその情報を発信しちゃいます。 するとそれに呼応して、色んな人達が情報交換し始めます。 そこには・・・興味本位の人もいたり、あるいは関係者からコッソリ情報提供があったり・・・、色々です。 確かに冬島さんの件は情報統制がきつい所為(せい)か、あんましネットでも騒がれてはいないヶど、それでも結構色んな事、お調べ出来ちゃいました」

「な〜る(程)。 でも、なんで? なんで今、冬島 月子なんだ?」

イチが聞いた。

「それをお話する前に、確認して置きたい事があります」

ここまではイチに向かって話していた少年が、今度は有森の方に向きを変えた。

「有森さん」

「ん!? なんだ?」

「はい。 冬島さんの恋人だった有森さんなら、冬島さんのお父さんのお名前って、知ってますょね」

「え!? 月子のお父さん?」

有森が冬島 月子を単に “月子” とだけ言った。
それを受け、これ以後、少年も冬島 月子を単に “月子” と呼び始める事になる。

「はい。 月子さんのお父さんです」

「う〜む。 誰だっけ・・・。 済まん、聞いた事ない。 誰だか知ってない」

「そうですか、知ってませんか? でも、謝る必要ないですょ。 無理ないから・・・。 あのね、有森さん。 あ!? そうだ!! その前にもうイッコ確認しとかなくっちゃ」

ここで再び少年は拳代を見た。

「緒方センセ」

「あ〜ら、今度は私? 何かしら?」

「はい。 センセのホントのお名前・・・。 ってゆーかぁ、旧姓教えて下さい」

「え!?」

一瞬、拳代はギョッとした。
そして矢継ぎ早(やつ・ぎ・ばや)に、早口で喋った。

「な、な、な、何の話かしら!? きゅ、きゅ、きゅ、旧姓って・・・!?」

拳代が取り乱している。

「センセ、隠さずにチャ〜ンと言って下さい」

「・・・」

少年のこの突然のエグイ突込みに答えられず、拳代は黙ってしまった。
何も語ろうとはしなかった。

代わりに、


(ピクピクピク)


引き攣(つ)った顔が痙攣している。
その表情から拳代の心理状態を読み取り、少年が言った。

「言えないみたいですね。 代わりにあたしが言っても・・・。 ま、いっか。 それは後回しにしちゃいますね。 他に言う事いっぱいあるし・・・」

そしてイチを見た。

「あのね、金田一さん」

「ん?」

「キラが死喪田 歌月として初めてここ来たの、月子さんがお亡くなりになって一週間後の事です。 2泊3日してます。 2度目は3週間前、やっぱし2泊3日してます。 今回も2泊3日の予定で予約入ってます。 これは今回の殺人が実に綿密に、しかも2ヶ月も前から計画されていた事を意味しちゃってます。 その実行現場は、勿論、ここ。 でも、なんでここ選んだかは分かりません。 前に来た事、あったのも知れません。 あるいは、口コミかなんかで・・・。 で、ここ選んじゃった。 ホント迷惑なお話なんだヶど・・・。 しかし、ここです。 間違いなくここです。 そしてそのための事前調査と、あたかもここのお馴染になる振りするのと、死喪田 歌月が実在の人物である事をでっち上げるためと、そのでっち上げた死喪田 歌月が男であるという印象を与えるためと・・・。 そのために過去2回来たんです。 それも、態(わざ)といっつもおっきなトランク持って・・・それは多分、今回のフェイクため。 そして3回目の今回、終にその殺人計画、実行したんです。 そのためキラはここ来るたんび、いっつもご飯、お部屋で食べてたんです。 あたかも、それが習慣ででもあるかのように見せ掛けるために。 ・・・。 ホ〜ント用意周到ですょね、怖い位です。 そして・・・」

「あ!? チョっと待った」

イチが少年を遮った。

「じゃ、もし・・・。 もしもだょ。 そんな事信じたくないけど、もしも、緒方先生がキラなら、なんで酷いビッコの振りなんかしたんだ。 酷いビッコの振りした以上、その行動にはなんらかの理由があるはずだ」

「はい。 勿論、あります。 でも、それはあとでキチンとお話します。 緒方センセがキラだって証明した後に」

少年がそう言った。

そして・・・

再び、謎解きを開始した。










エグイまでに鋭く・・・











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #68


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





少年が言った。

「3度目の今回、先ず、金田一さん達が来る前の日、死喪田 歌月としてキラはここ来ました。 そして、お部屋に誰も来させないように手を打ったその日の深夜か、翌日早朝、わたし達に気付かれないよう注意して、コッソリこの島を離れました。 恐らくドライスーツ着て、アクアラングして、泳いで。 そしてその朝・・・。 移動時間を考えたら、多分キラは使ったアクアラングとドライスーツ、本土のどっかに隠しちゃってからみなさんと約束の場所で合流。 何食わぬお顔してここ戻って来ました。 そして到着したその日、日高さん殺しちゃいました。 この辺は金田一さんの推理通りだと思ってます。 先ず、誰にも分かんないよう、日高さん一人をあのミニシアターのステージに呼び出して、不意打ち食らわせて、何か固い物で日高さんの後頭部を殴っちゃって・・・。 で!? この時点でまだ日高さんの意識があったかどうか分かんないヶど、ステージの上に仰向けに寝かせて、その上にシャンデリア落としちゃいました。 普段なら、そう簡単にあのシャンデリア吊ってあったトコ登れません。 でも、今回は演劇部の皆さんが来る事になってたんで、ウチ(オペラ座館)としても、もし必要なら照明を演劇用に替(か)えなくちゃなんないから・・それは皆さんが来てからのお話になっちゃうヶど・・そのための梯子なんかも用意してあったんで、誰でもその気になれば登れちゃいます」

ここで少年は公園に確認した。

「だょね、おじちゃん」

公園が答えた。

「あぁ、そうだょ。 その通りだょ」

そう言ってから、公園はイチ達の方を向いた。

「あの〜。 予(あらかじ)め照明、替えて置かなかったのは、このような事を申し上げるのは誠に心苦しいのですが・・・。 何分、照明を替えるとなりますとそれはそれは大変な時間と労力が必要でして。 皆様のご滞在期間を考えた時、そこまでするのは・・・。 などと思いまして。 はい。 でも、もし替えて欲しいとリクエストされた時のため、一応、準備だけはして置いた次第です。 はい」

それを聞き終り、少年が話し始めた。

「そうです。 だから用意してあった梯子使えば簡単です。 簡単にあのシャンデリア吊ってあったチェーンのとこまで行けちゃいます。 後は吊ってあったチェーンとコード切るための金鋏(かなばさみ)か金鋸(かなのこ)なんかがあればオヶです。 道具は切った後、海に捨てちゃえば証拠なんかなくなっちゃいますしね。 そうやって、キラは日高さん殺したんです。 そしてあの日・・・。 つまり、日高さんが殺されたあの日、あの時。 そう、あの日、あの時・・・。 一番最後に食堂入って来たの、誰だか覚えてますか?」

ここで少年は拳代を見た。

「センセ、覚えてますか?」

「さぁ、誰だったかしら・・・」

「惚(とぼ)けてもムダですょ、センセ。 あたしちゃんと覚えてますから。 最後に食堂入って来たの・・・。 緒方センセ、貴女ですょ」

「だ、だから何ょ!? ぇー? だから私がキラ? 最後に入って来たから私がキラだって言うの? まぁ、大した推理だ事。 フン。」

「そうですょ、センセ。 センセがキラですょ」

「ホ、ホ、ホ、ホ〜〜〜ントに・・・。 こ、こ、こ、この小娘は〜」


(プルプルプルプルプル・・・)


拳代が怒りで震えている。
構わず、少年が続けた。

「怒ったんですか、センセ? お顔、真っ赤ですょ」

「クッ!?」

怒りで言葉の出せない拳代であった。

「あのね、センセ。 センセの出勤簿見ちゃえばセンセが歌月としてここ来た事、直ぐ分っちゃうんですょ。 歌月ここ来た日とセンセがガッコお休みした日、見比べるだけでね」

そこまで拳代に言ってから、尻餅を見た。

「それって刑事さんのお役目ですょね。 分ってます?」

「ぉ、おぅ!? 分かっちょる分かっちょる、分かっちょるでぇ。 んなこたぁ当然、分かっちょるでぇ」

少年に急に話を振られ、チョビっとビックラこいた尻餅であった。

「では、又、お話続けちゃいますね」

少年が言った。

そして始めた・・・










次の推理を。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #69


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「次は、桐生さんです。 桐生さん、殺されたお話です。 繰り返しんなっちゃうヶど、いいですか?」

「オヶ」

「オヶ」

「オヶ」

 ・・・

みんなが同意した。

「ありがと、皆さん。 じゃ、わたしの推理続けちゃいますね。 先ず、あの日の深夜、緒方センセは・・・。 否、センセはまだ犯人だと決まった訳じゃないから、キラですね。 キラは108号室、つまり桐生さんの泊まってるお部屋に行きました。 ドアをノックしました。 当然、桐生さんは来たの誰だか確認したはずです。 で!? もしキラと桐生さんが知ってない人同士ならドアは開けなかったと思います。 でも、知ってる人が来たら、多分開けちゃいます。 それが男の人だったらチョッと躊躇(ためら)っちゃったかも知れないヶど・・・。 ま、いっか。 ここで桐生さんはドアを開けちゃったんだと思います。 そしてキラは言葉巧みに桐生さんを外へ連れ出しちゃいました」

「あの激しい雨ん中をか?」

イチが聞いた。
ここからは、暫しイチと少年の会話となる。

「はい。 そうです」

「あんな雨ん中、連れ出すって、チョッとムリポだろ。 その推理チョッと強引過ぎやしないか?」

「いいぇ、連れ出すのって、超簡単ですょ」

「超簡単?」

「はい」

「理由は?」

「だって、あの日は普通の日と違うから。 日高さん、殺された日だから。 だから、とっても簡単なんです。 わたしだって出来ちゃう位」

「言っている意味が、良ぅ見えん」

「あのね。 わたしがもしキラならきっとこう言ったと思いますょ。 『日高 五里絵殺しと理科準備室での冬島 月子の事でチョッと話があるゎ。 あの木の下でね』 これでオヶ。 桐生さんは必ず付いて来ちゃいます、例えどんな大雨の中だろうと。 自分の拘(かかわ)った事件に関する事なんですからね。 それも自殺だヶじゃなくって殺人事件まで起きちゃった。 しかも殺されたのが仲間の一人だったっていう、その直後ですから・・・。 その時の精神状態考えたら一発です」

「ふむふむ。 なるほどなるほど。 あ!? でも、それには無理が・・・。 緒方先生は、ぁ、否、キラは、理科準備室での事を知ってなきゃなんないだろ。 どうやってあの事件の事、キラは知ったんだ?」

「それも超簡単。 だって、あれはガッコが調査してるはず。 ですょね、センセ?」

ここで拳代に話を振った。

「当たり前でしょ」

拳代が吐き捨てるように言った。
それを平然と受け、

「ね」

少年が 『ね』 って、みんなに言った。

「『ね』 って? どういう意味?」

横から美雪が聞いて来た。
少年が美雪を見た。
そして、詮索するような目付きで言った。

「緒方センセはガッコ側の人ですょ。 事件の事、知ってないと思います?」

「あ!? そっか」

アッサリ美雪が納得した。
まだ、緒方 拳代がキラだと決まった訳でもないのに。
その反応を見て、少年が続けた。

「お話し戻しちゃいますね。 上手(うま)〜く桐生さんを呼び出せればあとは簡単、タイミングの問題だけです。 不意に、後ろから首にロープ巻き付けちゃうだけでいいんですからね。 そして絞め殺す」

「だが、待てょ。 もし仮にキラが少年ちゃんの言う通り女で・・・。 しかもそうやって、首にロープを巻き付けて冬美を絞め殺したとして、一体どうやって自殺に見せかける高さまで冬美の体を引っ張り上げたんだ。 普通、無理だろ、女の力じゃ」

イチが言った。
ここから再び、イチと少年の会話になる。

「はい。 無理です」

「へ!? じゃ、じゃぁ、君の推理はダメポになっちゃうじゃんか」

「でも、小道具使えばダイジョブです。 わたしにも出来ちゃいます」

「小道具?」

「はい。 そうです」

「小道具って?」

「脚立です」

「脚立?」

「そうです。 脚立使って、持ち上げたんです」

ここで少年が霊園に近寄り、


(ごにょごにょごにょごにょごにょ・・・)


何かを耳打ちした。
それを聞き、

「良し、分かった」

霊園が頷いた。
そして食堂から、足早に出て行った。
その後ろ姿を目で少し追ってから、少年が美雪に聞いた。

「名無さん、チョッとお手伝い頼んでもいいですか?」

「手伝い? うん。 いいけど、どんな?」

「チョッとこっち、来て下さい」

黙って美雪が、少年の直ぐ側まで来た。

「チョッと待ってて下さいね。 直ぐですから」

「うん。 いいけど」

少年がもう一度、霊園が出て行った大食堂の出入り口に視線を向けた。
丁度その時、霊園が早足で戻って来た。
両手で脚立を持っている。
その脚立は高さが2メートル位あったが、アルミ製らしく然程(さほど)重くはなさそうだった。
霊園が少年の脇の床の上に、脚立を横にして置いた。

「ほぃっ!? 持って来たょ。 これでいいのかな?」

「うん。 いいょ、これで。 ありがと、霊園兄(よしぞの・にい)ちゃん」

「あぁ」

少年がその脚立を、右手指先で引っ掛けるようにして持ち上げた。
流石に女の子にはチョッと重かった。
それでも何とか持ち上げる事が出来た。
そのまま2、3歩(ぽ)歩いて見せた。

「コレっ、チョッと重いヶど・・・。 ね。 あたしでもなんとか持てちゃいます」

そう言ってから、


(カタッ!!)


脚立を床の上に立てて、


(カチャ!! カチャ!! カチャ!! ・・・ カチャ!!)


組み立てた。
再び、美雪に視線を向けた。

「じゃ、名無さん。 お手伝いお願いしちゃいます」

そう言って、少年が床に片膝付いてしゃがんだ。
付けたのは右膝だった。
その少年を見下ろして、

「ん? あたし何すれば?」

美雪が聞いた。

「わたしに負ぶさって下さい」

「へ!? 負ぶさる?」

「はい」

「?」

訳分らんつー顔こいて、美雪が少年に負ぶさった。

すると、プルプル震えながらも、

「ントー!!」

一言、気合を入れ、少年が美雪を負ぶって立ち上がった。
そのままの状態で、今立てた脚立を両手でつかんだ。
ユックリと右足を一番下の段に乗せた。

それから、

「ファ、ファイト〜〜〜」

情けな〜〜〜い掛け声を出し、思いっきしリキを込めて左足を持ち上げ、右足の乗っている一番下の段に乗せた。
それから、一通り、グルーっと周りを見回して言った。

「ね。 こうやってキラは脚立の上に上(のぼ)り、桐生さんを木に吊ったんです」

次に、少年は今行なったのと逆の手順で脚立から下りた。
再び、床に片膝付いた。
先程同様、右膝を。

そして、

「ヨッコラショ!!」

美雪を下ろした。

「ふ〜。 重かったぁ〜。」

一息付いた。

それから、

「ありがと、名無さん」

美雪に礼を言った。

「ぉ、重かったぁ〜って、あたしってそんなに重い?」

少年の言葉にチョビっとショックを受けた美雪であった。

「うぅん。 あたし力ないから・・・それで」

と!?

少年がアッサリそれを否定した。










そして・・・











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #70


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





少年が続けた。

「今ので分ってもらえたと思うヶど、キラは脚立に乗る前、先ず桐生さんの着てた服と靴、脱がしちゃいました。 そして、予(あらかじ)め首絞めたロープの反対側の端を木の枝に投げ掛け、桐生さんを負ぶって脚立に乗って、その状態で枝に掛けたロープを引っ張って、ピーンと伸ばしてから、もう一度、枝に投げ掛けたんです。 つまりロープを木の枝に一巻きしちゃったって事です。 そして脚立から降りてロープきつく結んじゃえば全てオヶです。 わたしはそう思ってます」

イチが聞いた。

「なら地面に脚立の跡が残っていたはずだ。 だが、そんな物は何も、残ってはいなかった。 消した形跡さえ。 それはどう説明するんだ?」

ここからは暫し、イチと少年の会話になる。

「それも簡単です」

「簡単?」

「はい。 超〜〜〜簡単です。 地面にシート敷いちゃえばいいんです。 それが厚さが8ミリもあって、しかも超〜〜〜軽〜〜〜いアルミ製のキャンピングシートかなんかだったら、多分1枚でオヶです。 2枚以上あれば尚、可(か)です。 加えてその上に、桐生さんの着てた服載せれるでしょ、だから問題なしです。 使った後、今度はそのシートをぬかるみの上に敷いちゃえば、足跡消すのにも利用出来ちゃうし。 一石二鳥です」

「う〜む。 なるほどなるほど」

「後は、それらを海に投げ捨てちゃえば証拠はどこにも残りませんょね」

「うむうむ」

「うむうむ」

「うむうむ」

 ・・・

みんなが納得した様子を見せている。
だが、イチはそれを認めない。

「まぁ、それっぽい説明だが、やっぱり無理があるょな」

「どこがですか?」

「キャンピングシートは海に浮くんジャマイカ? だから海に投げ捨てたとして、そんなに簡単に波が攫(さら)って行くか、いくらこの大波でも? 捨てる場所にもよるが、この島に打ち付けて来る波の角度に寄っちゃ、一晩位なら一箇所に漂ったまんまジャマイカ? そんな証拠が残りそうな真似、こんなに用意周到なキラがするとも思えん。 それに脚立だが、女の力で果たしてそんなに上手く登れんのか、それも死人負(しにん・お)んぶした状態で? 今だって少年ちゃん、脚立の一段目がやっとっぽかったじゃん。 死人の負んぶって、生きてんの負んぶするよっか大変なんジャマイカ? 寝た子の負んぶと一緒で」

「全然、問題ないですょ。 上手く行っちゃいますょ。 キャンピングシートはそれになんか重い物くるんじゃえば、沈んじゃうし。 そうじゃなければ、チョッと時間掛かっちゃうヶど、探せば、この島に波が打ち寄せないトコだって見つかるし。 だから上手く行っちゃいますょ。 それにキャンピングシートじゃなかったかも知れないし、使ったの。 毛布みたいのだったかも知れないし、厚手のコートだったかも。 死喪田 歌月に変装してた時、着てたヤツだってあったはずだし。 それから脚立だって・・・。 脚立だってね、金田一さん。 この犯人は・・・キラはね、この日まで2ヶ月間も用意周到に準備、進めて来たんですょ。 それは分かってくれてます?」

「あぁ」

「人殺し決心するのって並大抵の事じゃないはずです。 そのキラの執念計算してみて下さい。 重たい物背負(しょ)って脚立登る訓練位しちゃうと思うし、その時間もタップリあったはずだし・・・」

「う〜む。 かもな・・・。 少年ちゃんの言う通りかもな」

「はい。 そうです。 わたしの言った通りです」

キッパリそう断言してから少年が続けた。

「そうやって一旦自分のお部屋に戻った・・多分、お部屋の窓からだと思うヶど・・キラはそこで足と体を奇麗にしてからもう一度、108号室に裸足で入り、今度は桐生さんの靴履いて、窓からあの木の下までワザと靴跡をしっかり残して歩き、靴片(くつ・かた)っぽ桐生さんに履かせ、もう片っぽ地面に置いて、前とおんなじ方法で自分のお部屋に戻ったんです。 緒方センセの足なら、多分問題なく桐生さんの靴履けちゃえそうだし。 後は自分のお部屋入る時、窓や床なんかに付いちゃった泥なんかも綺麗に拭き取って、自分はシャワーすれば完了です。 最後に使った脚立。 もし自分で持って来てたんなら、海に捨てちゃえばオヶ。 あのでっかいトランクなら、結構おっきいの入っちゃうし」

それから横にある、今使った脚立を指差した。

「もしウチの使ったんなら、これに付いちゃった泥や水滴、奇麗に拭いてから誰にも見られないように元に戻しちゃえばいいだけです。 これって、梯子と一緒で、照明替えたりするのに必要になるかも知れなかったので、用意しといたヤツです。 だから、みなさん来る前に一応、奇麗にしといたから、泥や雨水なんかを拭いた形跡、もしあっても、全く分(わ)かんないし。 だから・・・ね」

少年がかわゆ〜く小首を傾げた。

「な〜る(程)」

「な〜る(程)」

「な〜る(程)」

 ・・・

この説明に、皆、納得した。

だが、










その時・・・











つづく