深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #76


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風

 他





(ドタドタドタドタドタ・・・)


玄関の方から、数人の足早な足音が聞こえて来た。


(サッ!!)

(サッ!!)

(サッ!!)

 ・・・

皆、一斉に音のする方に振り返った。


(ドタドタドタドタドタ・・・)


10人程の屈強な男達が大食堂に入って来た。
今、大食堂にいる者達以外、他には誰も入って来るはずのない所へのこの男達の突然の乱入 否 来訪に驚いて、

「な、なんだ!? なんだなんだなんだ、オメェら!?」

尻餅が大声でほざいた。
それに対し、一番最初に入って来たその集団のリーダーと思(おぼ)しき年の頃なら30前後で中肉中背、長髪のチョビっとカッチョいいオスが、斜(はす)に構えたかと思うと徐(おもむろ)にワイシャツのポケットに手を入れ、手帳を取り出した。
それを尻餅に突き付けるようにして、こう言った。

「○○県警の古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう)です。 連絡を受けて来ました」

その男達は県警の刑事及び鑑識係達だった。

「ぉぉぉぉぉ!? そりゃ又、予定より随分はえぇじゃねぇか」

尻餅だ。

「貴方は?」

古畑が聞き返した。

その瞬間・・・

「ぉぉぉぉぉ、おぅ!? 良っく聞いたー!!」

 “ Now !? ”

と〜〜〜っても嬉しそうな尻餅だ。

当ったり前だ。
尻餅はこの手の質問が大好物なのだ。
ナゼか?
理由は次の尻餅の吐いたセリフでハッキリする。

「おぅ!? おぅおぅおぅおぅおぅ!? 耳の穴かっぽじって、良〜くっ聞きやがれー!! 遠くにあらば音にも聞けー!! ぁ、近くば寄って目にも見ょー!!

 真っ赤な太陽 ギュってしたら
 ジュって来ちゃって あっちっち

俺を・・俺様を・・この俺様を・・一体、ぁ、だ〜れだと思ってやがるーーー!!

警視庁にその人ありと謳(うた)われまくってゥン10年・・・。 尻餅 胃寒さまたぁ〜、ぁ、お〜れのこってぇーーー!!」

って。

この尻餅を軽〜くスルーして、少年が古畑に聞いた。
とっても普通に。

「早かったんですね?」

「ん!? 君は?」

「はい。 深大寺 少年です。 さっきお電話でお喋りした」

「あぁ、君が・・・」

そう言った次の瞬間、

『ん!?』

古畑が少年の眼(め)を 否 眼の奥を覗き込んだ。
一瞬ではあったが、二人は見つめ合った。
古畑は少年に、少なからず何かを感じたようだった。
その古畑の視線を受けたまま、少年が言った。

「てっきり、10時頃んなっちゃうかなって、思ってました」

「うむ。 天候の回復が思った以上に早かったんだ。 ところで・・・」

ここまで言った時、横から尻餅が突っ込んで来た。

「コ、コ、コ、コラ〜〜〜!! テ、テ、テ、テメェら、一体! な〜〜〜に無視こいてんじゃー!! コラーーー!!」

って。

少年と古畑が同時に尻餅を見た。
そして古畑が “ニカッ” ってして、

「貴方が有名な本庁の “あの” 尻餅さん? いゃぁ、ご苦労さまでした」

爽やか〜に、食って掛かって来た尻餅を軽〜くいなしちゃった。

「ぉ、ぉ、ぉ、おうょ。 俺様が有名な・・・。 ん!? 俺様ってそんな有名?」

「そりゃ〜、もう〜。 はい」

「そ、そ、そ、そうかそうかそうか!? 俺様ってそんな有名かぁ!? ウホッ!!」

有名といわれてシッカリ嬉しい尻餅であった。

 “ Now !? ”

と〜〜〜っても嬉しそうな尻餅だ。

ニッカニカしちゃってさ。
まぁ、とっても嬉しそうにしちゃってさ。
まぁ、とっても・・・

その間、尻餅に気付かれないように古畑が少年にソッと耳打ちしていた。

「ドジでね」

って。

それを聞き、

「クスッ」

かわゆ〜く笑っちゃう・・・










少年であった。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #77


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風

 古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう) : ○○県警関係者  超ハンサム

 他





「早速ですが、現場を見せて頂きましょう。 宜しいでしょうか? 尻餅さん」

古畑が尻餅に聞いた。

「オッシ、構わん!! こっちじゃ、こっち。 付いて参れ」

エッラそうに、そんな事をほざいちゃう尻餅であった。

古畑が、

「ニカッ」

ってして少年を見た。


(パチッ!!)


一発ウインクを決めた。


(クスッ)


少年が微笑返した。

大食堂にいる者達全員、立ち上がってその後に続こうとした。
古畑がそれを制して言った。

「あ!? 皆さんはそのままそのまま。 ここにいて下さい。 後で色々、話を聞かせてもらいますから」

ここまでみんなに言ってから、再び少年を見た。
やはり、古畑は少年に少なからず何かを感じているようだった。

「君もここにいてくれるね?」

「はい」

愛くるしい少年であった。
少年も満更(まんざら)ではなさそうだ。


(クルッ)


踵(きびす)を返すと古畑は大食堂から出て行った。
先導するのは勿論、尻餅であるのは言うまでもない。
他の刑事や鑑識係達も二人の後に従った。

少年達はその後ろ姿を見送っていた。
少年に深沙(みさ)が近寄った。

「素敵な人ね」

「うん」

「脈あるゎょ、あの人、少年ちゃんに」

「テヘッ。 そんな事ないょ、深沙姉ちゃん」

「うぅん。 あるゎょ、間違いない。 貴女だって感じてたでしょ」

「・・・。 うん、チョッとね」

「貴女はどうなの?」

「え!?」

「あの刑事さん? どうなの?」

「うん。 素敵な人かも・・・。 でも、年齢差がね、チョッとね。 ・・・」

少年と深沙のそんなやり取りを尻目に、御布施がイチに近寄り、思いっきりイチをからかい始めた。

「おぃ! 金田一!! 大したやっちゃなぁ、おまいも」

「ん?」

「なーにがボーガンだ。 ボーガンな〜んて、どっからも飛んで来んかったゃんヶ」

「・・・」

「いい加減なやっちゃなぁ、ほ〜んにおまいというヤツは・・・」

ここぞとばかり御布施は言いたい放題だ。

イチはそれに反論出来ず、ただ黙って聞いている。
そのやり取りを小耳に挟んだ少年が、深沙との会話を途中で打ち切り、イチと御布施に近付いた。

「御布施さん。 誰にだって間違い位ありますょ」

「でもなぁ、少年ちゃんとやら」

御布施がイチを、


(クィッ!!)


顎を杓(しゃく)って指し示した。

「コイツの所為(せい)で人一人、殺人犯に仕立て上げられるトコだったんだぞ。 有森の人生、コイツに終わらせられるトコだったんだぞ」

ここで御布施のテンションが一気に上がった。
一言 『コイツ』 と言う度に、今度はイチを右手人差し指で強く指差した。

「コイツだ! コイツ!! コイツの所為でだ!!」

「うん。 それはそうだけどぉ」

そこに有森が割り込んで来た。

「先輩。 もういいんですょ。 さっきも言ったように俺、月子との事みんなにハッキリさせられて返って感謝してる位なんですから。 それに・・・」

有森が口ごもった。


(チラッ)


拳代を見た。
拳代は力なく俯き、ジッと床を見つめている。
有森が続けた。

「月子のお母さんの事も分ったし」

その言葉を聞き、

『ハッ!!』

拳代が顔を上げた。
有森の眼(め)を覗き込むようにして見つめた。

「有森君。 ・・・」

一言、有森の名を呼んだ。
何か言いた気(げ)ではあったが、言葉が出てこないのだろうそこで黙ってしまった。
そんな拳代に有森が語り掛けた。

「先生。 月子は 否 お嬢さんは気丈夫(きじょうぶ)で、素晴らしい女の子でしたょ。 あいつらにあんな事されたのに恨み言一つ言わなかった。 とっても素晴らしい女の子でしたょ。 ・・・」

有森もこれ以上言えなくなってしまった。
目に大粒の涙を浮かべている。

「ありがと、有森君。 月子を好きになってくれて・・・」

拳代もここまでだった。
やはり目に大粒の涙を浮かべている。


(シーン)


そのシーンを目(ま)の当たりにし、誰も何も喋れなくなってしまった。
長い沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは少年だった。

少年がイチに言った。

「金田一さん。 やっぱ、無理だと思いますょ」

「ん!? 何がだ?」

「撃鉄って言うんですかぁ、ボーガンの発射装置。 あれの引っ張り力ってかなり強力なんでしょ。 そんな強力な引っ張り力が必要なボーガンの撃鉄、それ固定するため引っ張ってる紐、置時計の針に付けたカミソリの刃位で切るの。 やっぱ、無理だと・・・。 それにそんな大掛かりなもん作るんだったら、わざわざウチの時計なんか使わないで事前にチャンと用意してたはずだし、もし、有森さん、犯人なら・・・。 それにココ(大食堂)、そんなボーガンみたいにオッキなの隠しとくトコないし・・・」

「ぅ、うむ。 かもな? 俺もそんな気がして来た」

やっとイチが口を開いた。
それに構わず、

「それにしても、時計は一体、誰が、どこに、なんの目的で持ってたんだ?」

御布施が誰に言うとはなしに、独り言のようにポツリと言った。

その時・・・


(ドタドタドタドタドタ・・・)


複数人の足音が聞こえて来た。
二つの殺人現場に夫々(それぞれ)何人かずつ残し、尻餅と古畑、それに古畑の部下と思われる刑事二人が帰って来たのだ。

「おぅおぅおぅおぅおぅ!? な〜んだオメェら、この辛気(しんき)くせぇ、ぁ、雰囲気はょ〜」

尻餅だ。

その尻餅に気付かれないように古畑が 『しょうのないヤッチャなぁ』 つー感じで、肩をすぼめて見せた。
見せた相手は勿論、少年だ。

「クスッ」

少年が笑った。
その笑顔を見て古畑も、

「ニカッ」

ってした。

尻餅に御布施が話し掛けた。

「いやね、刑事さん。 カウンターの上の置時計の話をしてたトコなんすょ」

「カウンターの上の置時計?」

「はい」

「あれがどうかしたのか?」

「ぃ、いや。 大した事じゃないんすけどね。 どこ行っちゃったのかな? って」

「あぁ、あれなら俺がゆんべ部屋に持ってたぞ。 いつの間にか俺の腕時計の目覚まし機能が壊れてたんでな。 代わりに使わせてもらったんだ。 だ〜れも居やがらねぇもんだから勝手に持ってたんだけんどな。 それがなんか問題でも?」

瞬間・・・

「け、け、け、刑事さん!?」

「け、け、け、刑事さん!?」

御布施と有森が同時に叫んでいた。
そして御布施がイチを指差して、尻餅に食って掛かった。

「そ、それをなんでさっき言わなかったんすかぁ!? コイツがボーガンと置時計の話、し始めた時ー!?」

「ん!? ボーガンと置時計?」

「そ、そ、そうっすょ。 置時計でボーガン発射するって話。 コイツがさっきしたじゃないっすかぁ」

「へ!? そんな事、コイツ、ほざいたんか? そりゃ聞いとらんかった。 この事件の所為(せい)でゆんべ、あんま、寝とらんかったもんでな。 つい、チョコっとな。 うん。 つい、チョコっと・・・。 ボンヤリしとった。 うん。 ボンヤリと・・・。 済まん」

「す、済まん? 済まんじゃ済まん! 済まんじゃ済まんでしょ、刑事さん!! ったくぅ」

御布施が興奮している。

その時・・・










声がした。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #78


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風

 古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう) : ○○県警関係者 超ハンサム

 他





「はい! そこまでー!!」

古畑が両手を上に上げた万歳の格好で、興奮して尻餅に食って掛かっている御布施達を制止した。

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

全員が、一斉に古畑を見た。

チョッと間(ま)を取ってから、古畑が拳代に近寄った。

「緒方 拳代さんですね」

「はい」

拳代が頷いた。

「貴女にお聞きしたい事があります。 宜しいですか? もっとも、もう分ってるとは思いますが、何を聞くかは」

「はい」

「では、場所を変えて」

ここで古畑は公園(まさぞの)を見た。

「すいませんが、空いている部屋をお借りしたいのですが・・・」

「1階が宜しいでしょうか? それとも2階が・・・?」

公園が聞き返した。

「出来れば1階を」

「なら、1階の110号室をお使い下さい。 他には2階の204、206、208、それと209号室の4室も空いております」

「では、お言葉に甘えて110号室をお借りします」

『ぅむ』

無言で1回頷き、公園が少年に聞いた。

「わるいが少年ちゃん。 刑事さんを110号室に案内してくれる」

「うん」

公園に返事をしてから少年が古畑に言った。

「わたしがご案内しますね、刑事さん。 こっちです」

「ありがとう。 でも、チョッと待ってね」

一言、少年に礼を言ってから拳代を見た。

「では、一緒に来てもらいましょう」

それから一緒に来ていた二人の刑事達に呼び掛けた。

「おぃ!!」

古畑は一人を尋問係として、もう一人を書記官として連れて来ていたのだった。
最後に尻餅に聞いた。

「取調べは我々だけで行ないたいのですが、宜しいでしょうか?」

「ぉ、おぅ!? 構わんが。 県警の仕事に口出しするのもなんだしな」

「ありがとうございます。 もっとも尻餅さんも一応参考人なので、後程(のちほど)お話を伺う事になるとは思いますが、それも宜しいでしょうか?」

「あぁ、構わん」

「そうですか、ありがとうございます。 では、又・・・。 後程」

「ぁ、あぁ」

古畑が振り向いて少年を見た。

「じゃ、お願い」

「はい」

少年の先導で古畑、拳代、刑事二人が1階の110号室へと向かった。

斯(か)くして・・・

古畑 銀三郎による関係者全ての事情聴取が・・・

ここに・・・










開始される事になったのである。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #79


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風

 古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう) : ○○県警関係者 超ハンサム

 他





今・・・

時は、その日の夕方。
所は、その離島の埠頭(ふとう)。


(クルッ!!)


古畑 銀三郎が振り返って言った。

「色々、ありがとう」

と、深大寺 少年に。

「又、来て下さいね。 今度はバカンスで・・・ここ」

そう言って、少年がニッコリと微笑んだ。

「あぁ。 必ず・・・」

ここで古畑はチョッと間を取った。
少年の眼(め)を覗き込むようにして見つめた・・・一瞬ではあったが。
そして一言、こう付け加えた。

「君に会いにね」

と、ニッコリ微笑んで。

「ぅふっ」

少年が嬉しそうに笑った。
当然、古畑の眼を見つめて。
チョッといい感じの二人だ。
そのいい感じの二人の内のうちの一人、古畑が体の向きを変え、横にいる拳代に声を掛けた。

「じゃ、行こうか」

「・・・」

拳代が無言で頷いた。
体の前に組んだ拳代の両手には、ハンカチより少し大きめの白い布が被せられている。
掛けられている手錠が、生徒達に見えないようにとの配慮のようだった。

それから古畑の先導で、拳代の他、古畑と一緒に来ていた県警関係者全員が、来る時に乗って来た船に乗り込んだ。
この船は勿論、県警の手配した物だ。


(ポンポンポンポンポン・・・)


船が出帆(しゅっぱん)した。
それをその時、島にいた者達全員が無言で見送った。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 ・・・

船が見えなくなった。

「やれやれ、とんだ事になっちまったなぁ。 稽古のはずが、現実の事件に。 しかも原作通りのそのまんま」

イチがぼやいた。
それを聞き、尻餅がイチに向かって吠(ほ)えた。

「おぅおぅおぅおぅおぅ!? ぼやきてぇのは、ぁ、こっちだぜー!!」

って、いつもっぽく。
更に続けた。

「と〜んだバカンスにしてくれやがったなぁ、テメェら〜!! ア〜ン!?」

「そんな事、俺らに言われてもなぁ」

イチだ。

「そうょ、あたし達だって被害者なんだから」

今度は美雪だった。
が!?
美雪にしては珍しくブータレている。

「まぁまぁまぁ、皆様。 折角いらして頂いて、まだ、もう一晩残っておいでじゃないですか。 精一杯おもてなし致しますので、そのような事を仰(おっしゃ)らず、今夜一晩だけでもごゆっくりされて下さい」

公園が間に入ってとりなした。

「マスター、わたし達はもう二晩あるんだがねぇ」

幽鬼 英作が言った。
横に並んで立っていた妻の鼻胃子が静かに頷いた。
久しぶりの登場だ。

「しかし、わたし達も明日(あす)帰る事にするょ。 いいかね、マスター? こんな事があった後じゃぁね」

「はい。 致し方ございません。 一晩、キャンセルという事で宜しゅうございますか? 当たり前ですが、キャンセル料などは、当然、頂きません」

「あぁ。 それで結構。 そうしてくれたまい」

幽鬼が言った。
これに誘発されたのだろうか?
尻餅が突然、公園に向かってこんな事をほざいた。
イチ達を指差して。

「おぃ! 大将!! 俺はコイツらと一緒の船にな〜んか乗りたかぁねぇ。 だから・・・といって、もう一晩泊まってる時間的余裕もねぇ。 そこで頼みがある」

「なんでございましょうか?」

「コイツらが帰った後に帰りてぇ」

「宜しゅうございます。 尻餅様と幽鬼様には、御不動山学園の皆様方がお帰りになった後にもう一便(ひとびん)出して、お送り致します」

そう答えてから公園が、側にいた霊園に聞いた。

「構わんな?」

「あぁ。 夕方もう一便、出すさ」

それを受け、公園が尻餅に確認した。

「それで宜しゅうございますか」

「あぁ、構わん。 そうしてくれ」

このやり取りを小耳に挟んだイチが独り言をほざいた。

「ケッ!! やっな野郎!?」

って。

それから舌打ちなんかも、

「チッ」










って。。。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #80


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「色々ご面倒、お掛けしました」

美雪が公園(まさぞの)に詫びた。

時は、翌日午後2時。
所は、島の埠頭。

この民宿は基本的に 『チェックインは午前10時以降、チェックアウトは午前10時まで』 となっている。
だが、ここは本土から少し離れた孤島。
従って送り迎えの必要がある。
そのための便は原則・・・
送りは、午前10時00分に島の埠頭からこの民宿のプレジャーボートで。
迎えは、そのプレジャーボートが帰る時に本土の埠頭から。
というのが決まりなのだが、今回は色々あった事と他に予約がなかったため、公園が特別に昼食をサービスしていた。
又、美雪達も帰りの列車の切符を予め買ってあった訳ではなかったので、時間に縛られる心配は全くなかった。
それ故、公園の厚意を安心して受ける事が出来た。
だから現在の時刻は、原則通りなら午前10時00分でなければならないのだが、そうではない午後2時だったのだ。

そして島の埠頭でたった今、美雪が帰りの便に乗船する直前、自分達を見送りに来ていた公園、卒婆、少年に向かって詫びた所だった。

「色々ご面倒、お掛けしました」

と。

「なんの、なんの。 皆様にはなんの落ち度も・・・。 これに懲りずに、宜しかったら又お越し下さい」

公園がそれに答えた。
その公園に、今度は早乙女が詫びた。

「ごめんなさい。 ホントにごめなさい。 わたしの所為(せい)で、ご面倒お掛けして」

早乙女の眼(め)をジッと見つめて公園が優しく語り掛けた。

「発端(ほったん)は嫉妬からのイジメですか? 褒められた話ではありませんが、今回の事を良い教訓とされてこれからは逆に、イジメを受けている子達の良き理解者になって上げて下さい。 それが冬島 月子さんへの一番の償いになるのではないでしょうか?」

「はい。 もう二度と誰も苛(いじ)めたりなんかしません」

「うむうむ」

公園が静かに頷いた。
次に早乙女は、少年に目を向けた。

「深大寺 少年(じんだいじ・すくね)さんでしたょね?」

「はい」

「ありがとう。 貴女のおかげでわたし・・・救われたし、目が覚めたゎ。 ホントにありがとう」

「うん」

言うべき事は既に公園が言っているので、少年は早乙女にこれ以上何も言う必要はないと思い、ただ黙って頷いた。

少年にイチが近寄り、声を掛けた。

「少年ちゃん」

『ん?』

少年がイチを見た。

「今回は俺の完敗だ。 でも、君は一体どんな娘(こ)なんだ? 推理小説マニア? それとも親が探偵とか?」

「うぅん。 違いますょ。 普通の女の子ですょ」

「でも、推理は普通じゃなかったぜ」

横から御布施が割り込んで来た。
御布施は少なからず少年に気があるのだ。
それから強引にイチをヘッドロックして、おどけて言った。

「ま。 こんなヤツが相手なら俺でもな。 カッ、カッ、カッ、カッ、カッ・・・」

せせら笑った。

「や、止めてくれょ、先輩」

イチが、もがきながら御布施のヘッドロックを外そうとしている。

すると、

「謙遜しなくたっていいんだょ、少年ちゃん。 大したモンだったょ、君の推理。 それにありがとな、月子の事、色々調べてくれて。 なんか俺、チョッと恥ずかしいょ。 付き合ってた俺よっか、ズッと詳しいんだもんな、君の方が」

有森だった。

「テヘッ」

少年が照れくさそうに笑った。
それから有森に優しく語り掛けた。

「でも、有森さん」

「ん? なに?」

「気を落とさないで下さいね」

「ぁ、あぁ。 ・・・。 うん」

少年の言葉がチョッと心に響いた有森だった。

「うむうむ」

「うむうむ」

銭湯と亀谷は黙って頷いてそのやり取りを見ていた。

「少年ちゃん」

最後に美雪が声を掛けた。

「はい」

「お世話んなっちゃったゎね」

「いいぇ。 ウチ(オペラ座館)として当然の事、したまでですょ」

「うぅん。 素晴らしかったゎ、少年ちゃん。 貴女の推理」

「テヘッ」

少年がチョッと照れた。

「お礼に一つ、いい事教えて上げるね」

「いい事?」

「そ」

「?」

「実はね、少年ちゃん」

ここで美雪がイチを指差した。
そして徐(おもむろ)に勿体(もったい)を付けて、こう言った。

「この金田一 一ったらね。 見掛けによらず IQ が180もあるのょ。 俗に言う大天才なのょ」

と。

だが・・・

美雪のこの言葉を聞いた瞬間、

「エェー!? ウッ、ソーーー!!」

「エェー!? ウッ、ソーーー!!」

「エェー!? ウッ、ソーーー!!」

 ・・・

美雪を除く演劇部員全員が、凄まじい形相で驚いた。
早乙女までもだ。
そして、
まるで驚天動地(きょうてんどうち)の大騒ぎが始まった。
否、
ちゃぶ台返しの大さわぎが始まった・・・と言った方がいいか?

御布施達が大はしゃぎだ。
まるで、今、世界中で話題沸騰中のあの “日本マクドナルドのCM http://www.youtube.com/watch?v=frl7jR_2hv8 ” に出て来るガキンチョ達と全く変わらぬテンションで。

そぅ・・・

あの殆(ほとん)ど病気としか思えないような、画面の中で “基地外” 起こしているあのガキンチョ達と全く変わらぬテンションで。

これには当の美雪も逆にビックラこいた。

「そ、そ、そ、そんなに驚かなくってもー!?」

一瞬、言葉に詰まった。
それから 『興奮冷めやらぬ』 といった状態でどもりどもり続けた。

「でっ、でっ、でも・・・。 そっ、そっ、それってホントなのょ。 ホッ、ホッ、ホントの話なのょ。 ね。 イッチャン」

「ぁ・・・あぁ。 まぁな」

イチが照れくさそうに口ごもりながらそれを認めた。

「そんなイッチャンに勝っちゃったのょ、貴女。 大したものなのょ、それって。 ・・・。 あ!?」

突然、美雪が何かを思い出したようだった。

「どうかしましたか?」

『不可解だ』 という表情を浮かべ少年が聞いた。

「もしかして・・・。 『オペラ座の怪人』 の仮装舞踏会のシーン。 そこでファントムが床に叩き付けるスコア・・・ファントム自身の手による 『ドンファンの勝利』 っていう名の付けられたスコアなんだけどね。 あれって、もしかして、貴女の勝利の予言かも・・・。 ナンチャッテね」

この言葉にどう反応して良いか分からず、

「あたしの勝利の予言だなんて・・・。 別にそんなぁ・・・」

少年が少し困惑気味に言った。

その時・・・










声がした。











つづく