深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #81


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : 緒方 拳代(おがた・けんよ)の作り出した架空の人物

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「さ、皆さん。 乗船して下さい。 出帆(しゅっぱん)の時間ですょ」

霊園だった。

「は〜い」

美雪が返事をした。
そして少年(すくね)を見た。

「じゃ、ね。 少年ちゃん。 又、会えるといいね」

「うん」

それを合図に演劇部員全員が少年達に別れを告げながら乗船した。

「じゃぁ。 皆さん、お送りして来るゎね」

深沙が部員達に手を振って別れの挨拶をしている公園、卒婆、少年に声を掛けた。

そして、


(ポンポンポンポンポン・・・)


イチ達を乗せたアズール415 コンバーチブルが本土を目指して出帆した。
それを少年達がジッと黙って見送っている。
船がどんどん小さくなって行く。
その小さくなって行く船を見つめたまま、

「演劇祭、どうなっちゃうんだろうね? やっぱあの人達の公演、ムリポかなぁ?」

ボソッと少年が呟(つぶや)いた。

「多分、ダメだろうね。 事件が大き過ぎるからね。 それに部員が二人もいなくなっちゃたしね」

やはり船を見つめたまま、公園が静かにそれに答えた。

「お気の毒ぅ」

と、少年。

「ホント、気の毒だね」

と、公園。

しか〜し、このマイナーな気分の二人とは対照的に、

「大丈夫ょ!! み〜んな若いんだから〜」

一人、卒婆だけはポジティブだった。

その時・・・

背後から声がした。

「おぅおぅおぅおぅおぅ!? 到頭(とうとう)行っちまいやがったか、アイツら」

いつの間にかその場に来ていた尻餅だった。
幽鬼夫婦も一緒だ。

「この後、尻餅様はいかがなさるおつもりですか?」

公園が聞いた。

「うむ。 先ずは、県警にチョッと顔を出してな。 事件の事も気になるしな。 後の事はそれから考える」

「そうでございますか。 大変でございますね」

「ま、これも性分(しょうぶん)てヤツかな。 仕方あんめぇ、事件にかかわっちまった以上・・・。 うむ」

「申し訳ございませんでした」

「うんにゃ、大将が謝るこっちゃねぇ。 災難だょ、災難。 大将の方こそとんだ災難だったじゃねぇか」

「はい」

「そうですょ、マスター」

幽鬼 英作が横から入って来た。

「マスターの方こそいい迷惑だったじゃありませんか」

「いゃぁ、幽鬼様ご夫妻にも今回の件では大変なご迷惑をお掛け致しまして、誠に面目次第もございません」

「いゃいゃ、そんな事はないですょ。 こんな経験はそうそう出来る事ではありません。 何せ、殺人事件の関係者になったんですからな。 そこの刑事さんなら兎も角、我々一般人がこのような経験・・・。 金を払ったって出来る事じゃ・・・」

ここで英作は鼻胃子を見た。

「な、お前」

「はい」

鼻胃子が頷いた。
英作が少年に近寄った。

「少年さん。 お見事でしたょ」

「テヘッ」

少年が照れ笑いをした。
そこへ尻餅が割り込んで来た。

「おぅおぅおぅおぅおぅ!? 小娘〜。 オメェ、やるじゃねぇか」

「そんな事ないですょ」

「うんにゃ、ある!! 良っくぞまぁ、あのクソ生意気なイチの野郎の鼻、明かしてくれた。 礼を言うぜ、ホ〜ント。 ったく、あのイチの野郎と来た日(ひ)にゃ・・・」

そこへ卒婆が入って来た。

「さぁさぁ、皆様。 次の便まで小1時間ほどお時間がございます。 食堂までご足労頂きまして、お茶などお召し上がり下さい。 摘み立ての花びらを浮かせたハーブティーなど、ご用意致しますので」

「お!? そいつぁ、いい。 ここのハーブティーは中々だからな」

尻餅だ。

「じゃ、わたし達も。 な?」

英作が鼻胃子に聞いた。

「えぇ」

鼻胃子が頷いた。
そして卒婆が先導する形で、みんな後に続いた。
途中、鼻胃子が卒婆に聞いた。

「ここのハーブティーは素晴らしいゎ。 なんの葉っぱでどうやって入れてるのかしら?」

「それは企業秘密・・・トップシークレットでございますゎ、奥様」

「そ。 じゃ、味わいたくなったら又、ここ来なきゃいけない訳ね」

「左様(さよう)でございます」

鼻胃子が並んで歩いている英作を見た。

「なら、近いうちに又、来なくちゃね・・・ここ」

「あぁ」

英作が頷いた。
それを聞き、横から公園が言った。

「そうして頂けると幸いでございます」










と。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #82


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 古畑 銀三郎(ふるはた・ぎんざぶろう) : ○○県警関係者 超ハンサム





「みんな帰っちゃったね、おじちゃん」

少年がポツリと言った。
少し寂しそうに。

その日の夕刻、6時の事だった。

場所は、民宿の玄関。
少年はその時、公園と一緒にそこのガラス拭きをしていた。
この民宿には今、客は一人もおらず、明日にならなければ誰も来ない。

公園がそれに答えた。

「なんか急に寂しくなっちゃったね」

「うん」

このやり取りを横目に、卒婆がカウンターの上の固定電話に出ている。

「・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 そうですか。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 承知致しました。 確かにそう伝えて置きます。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 はい。 ・・・。 それでは宜しくどうぞ」


(ガチャ!!)


電話を切った。
卒婆が声を上げて、少年と一緒にガラス拭きをしている公園に声を掛けた。
暫(しば)し、卒婆と公園の会話になる。

「あなたー!?」

「ん?」

「今、県警から電話で・・・。 犯行に使われたアクアラングとダイバースーツ見つかったって・・・。 海岸の岩陰に隠してあったそうょ。 それに脚立。 やっぱり少年ちゃんの読み通りだったみたい。 自分で用意してたの使ったらしいゎ、緒方先生。 で!? それは海に捨てた」

「フ〜ン。 そうか」

「えぇ。 それから、なくなったあのボーガン。 アレも海の中に捨てられちゃってたらしいゎょ、緒方先生に」

「え!? 緒方先生に?」

「えぇ。 何でも、緒方先生。 流石にボーガン見たら、それで殺意が沸いたんですって、あの娘に。 えぇーっと、なんていったかしら、あの娘・・・」

「早乙女さん?」

「そうそう、早乙女さん早乙女さん。 一瞬、あの早乙女さんをね、ボーガンで射殺そうと思ったんだそうょ、舞台の袖に置いてあったボーガン見た時にね。 それで一度はそれを自分の部屋まで運んだらしいんだけど、少しして冷静になったら、考えが変わったんですって。 それでコッソリ海に投げ込んだそうょ。 もう、有森さんが 『なくなった、なくなった』 って、騒ぎ出した後で、戻すに戻せない状態になってて・・・」

「そうかぁ。 あのボーガン、緒方先生が・・・。 しっかし、考えてみると緒方先生・・・。 チョッと可哀想な人だったな・・・」

それを聞き、

「ダメだょ、おじちゃん、同情しちゃ」

横から少年が嘴を入れて来た。

「ん?」

公園が振り返って少年を見た。
少年がガラスを拭く手を休め、公園を見つめていた。
そして続けた。

「やっぱさっ、悪い事は悪い事だし。 それに全然関係ないココ巻き込んで、スッゴイ迷惑掛けられちゃったんだし。 だからダメだょ、おじちゃん、同情しちゃ」

「あぁ、そうだな。 うん。 そうだな」

公園が自分に言い聞かせるように、頷いた。
一呼吸置いた。
そして溜息混じりに続けた。

「フゥー。 人殺しのあった民宿・・・か」

公園が現実を再認識して、肩を落とした。
その姿を見て、卒婆が言った。
相変わらずポジティブに。
と〜っても元気良く。
こんな感じの事を。
公園達にユックリと近寄りながら。

「大丈夫ょ、あなた、そんなに気を落とさなくっても。 話はまだ終わってないのょ」

「え!? まだ? まだ何かあるのか?」

「えぇ。 まだ・・・まだあるのょ。 あ、の、ね、今回の事件、厳しくマスコミに緘口令(かんこうれい)が敷かれたんですって」

「緘口令が?」

「そ。 でもね、それだけじゃないのょ。 他にもね、まだあるのょ」

「他にもまだ?」

「そうょ。 あるのょ、あ、る、の・・・。 ま、当たり前と言えば当たり前の事なんだけどね」

「なんだ? 何があるんだ? もったい付けずに早く言え」

「ウフ。 そ、れ、は・・・それはね、ウチが受けた被害の補償もチャ〜ンとしてくれるんですって、学校が全部。 あの御不動山学園がね、ゼ〜ンブ。 当然、絨毯も」

「ホントか、それ!? ホントか? 絨毯もか?」

公園が一瞬、非常に驚き、反射的に聞いていた。

だが、

同時に、相好(そうごう)も崩れていた。
実に嬉しそうだ。
ニコニコしている。
無理もない。
今回の事件で、精神的にも物質的にも一番被害を被ったのは、なんと言ってもこの公園だったのだから。
従って、その落ち込み方も半端じゃなかった。
だから、この朗報を聞いて相好が崩れない訳がなかったのだ。

卒婆がそんな公園の直ぐ側まで来た。

「えぇ。 絨毯もょ。 なんでも、学校がマスコミに圧力掛けたらしいゎ、上から。 たぶん政治家かなんか使ったのね。 立場上あんまりハッキリした事は言えないんですって。 でも、心配してるだろうからって、内緒で教えてくれたのょ、あの刑事さん・・・。 エェーっと・・・」

「古畑さんか?」

「そうそうそう。 古畑さん古畑さん。 だからウチも余計な事は言わない方がいいんじゃないかって。 つまり事件を大っぴらにね、しない方が、って」

「あぁ、当然だ。 絶対内密にして置かなくっちゃな。 でも・・・。 そうかぁ、でも、それは良かったぁ。 何せあんな事件がマスコミに知られたりしたら、ウチとしても大事(おおごと)だったからなぁ。 殺人事件のあった民宿だなんて噂立てられた日にゃぁ、もう、お客様が寄り付かなくなって・・・。 場合によっちゃ、ここ閉めなきゃならない事だって・・・。 それにあの焦(こ)げた絨毯。 超高価過ぎて、どうしたもんかと思い悩んでいたんだが、あれの補償をしてくれるのは助かる。 掛けてた保険だけじゃ、とってもとっても無理だろう・・・だし」

少年が、我が事のように嬉しそうにニコニコしながら言った。

「良かったね、おじちゃん」

「あぁ、ありがと」

卒婆が、今度はその少年に声を掛けた。

「それからね、少年ちゃん」

「ん?」

「古畑さんがね、近い内、ここに今度はお客様として見えるそうょ。 貴女に会いたいんですって」

「え!?」

「お!? 少年ちゃん。 隅に置けないぞ〜、もうそんな。 いつの間に?」

「ゃ、やだ、おじちゃん。 そ、そんな事・・・」

「お!? 顔が赤くなったぞ。 大丈夫かぁ?」

「え!? え!? え!?」

「あなた、ダメょ。 そんなに苛めちゃぁ。 あの刑事さんが積極的なのょ。 傍目(はため)で見てても分ったものね、あの人、この子に好意持ってたの。 一目惚れされちゃったのょね、きっと」

「あぁ、ごめんごめん。 でも、少年ちゃんも満更(まんざら)でもないんだろ、あの刑事さんの事? ハンサムだし、カッコいいし。 えー? どうなんだ? それとも今、誰か付き合ってる人、いるの?」

ここから暫し、少年と公園の会話となる。

「え!? ぅ、うぅん。 付き合ってる人なんかいないょ」

「じゃ、いいんじゃないか、あの刑事さん? ん? どうなんだ?」

「ぅ、うん。 で、でも、年がぁ・・・。 あたしまだ16だし・・・」

「う〜む。 そうかぁ、そうだょな〜。 年の差がチョッとあり過ぎるかぁ。 ・・・。 あの刑事さん、どう見ても30前後だったょなぁ。 32、3ってとこか? どう思う?」

公園が卒婆に話を振った。

「そうねぇ、30位かしらねぇ。 チョッと離れてるゎねぇ。 ・・・。 でも、誠実そうな人だし、あの若さでもう部下持ってるし、きっとエリートなのね。 もしかしたら刑事さんじゃなくって、上級職のキャリアかも・・・。 だから、チョッと位いいかぁ? 年離れてても。 ね、少年ちゃん」

「え!? え!? え!? でも、まだ決まった訳じゃ・・・そんな事」

「うぅん。 あの刑事さんハッキリ言ったのょ。 『深大寺 少年さんに会いに行きます』 って。 でも、良〜く考えてみると随分大胆な話ね。 まぁ、男らしいと言えば男らしいんだけど。 どう?」

「ど、どうって言われても・・・。 ま、まだ、ハッキリ・・・」

「でも、チャンと考えて置かなきゃダメょ。 その時になってからじゃ遅いのょ。 先方は 『貴女がここにいる間に必ず』 って、言って来てるんだから」

「ぅ、うん」

恥ずかしそうに頷き、俯(うつむ)いて考え込む少年であった。
その姿を見て何かを察したのだろう、公園が優しく言葉を掛けた。

「親なら心配いらないょ、少年ちゃん。 兄貴達にはおじちゃんの方から上手く言っとくから。 な、お前」

「あ!?  そうょ、そうょね。 お義兄さん達にもね・・・。 何て言うかしらね、お義兄さん達? この子まだ16だし。 一応、結婚出来る年齢ではあるにはあるけど。 でも、知らせない訳には行かねいゎね、相手が相手なだけに・・・。 ま!? 今、考えても始まらないっかぁ。 その時になってからの話ね」

「そうそう。 その時その時。 でも、悪い話じゃないと思うょ、あの人なら・・・。 だから、少年ちゃん。 真剣に考えときな。 ね」

「うん」

口ごもる少年であった。


でも〜、

この時、少年は・・・










ホントはチョッピリ嬉しかったのである。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #83 最終回


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻





「あ!?」

少年が声を上げた。
何か閃いたようだ。

「ところで、おじちゃん」

横にいる公園に声を掛けた。

「ん? 何?」

「ここで人、死んだょね、二人も。 後始末どうするの? お祓いするの? それともお経? そういうのキチンとやっといた方が・・・」

「あぁ、その事か。 それなら心配いらないょ。 チャ〜ンと手配してあるから」

「チャ〜ンと手配?」

「そ」

「どうするの?」

「うん。 霊園(よしぞの)の知り合いの人に紹介してもらう事になってる、高名(こうみょう)な陰陽師(おんみょうじ)に頼む事にしたんだ」

「高名な陰陽師?」

「そ。 なんでも凄い法力の持ち主らしいんだ、その人」

「フ〜ン。 凄い法力?」

「うん。 聞く所によると、大魔王を封印してしまえる位の法力らしいょ」

「え!? す、凄いんだね、その人。 だ、大魔王を・・・」

「あぁ。 でもって、その奥さんていうのが更に凄くってね。 悪魔はおろか天使でさえ一睨みで、睨み殺せる位凄いらしいょ」

「そ、そんな凄い人って・・・。 ホ、ホントにいるの?」

「ま、話半分ね。 噂だから」

「そ、そうだょね。 話半分だょね。 チョ、チョッと驚いちゃった、あたし」

「だょね。 初めて聞いたら、み〜んなビックリしちゃうょね」

「うん」

ここで突然、

「あ!?」

公園も声を上げた。
先程の少年同様、何か閃いたようだ。

「そうだ!? その陰陽師の先生、占いもやるらしいょ」

「占いも?」

「そ。 だから少年ちゃんも見てもらうといいょ、古畑さんとの事」

「え!?」

予期せぬ展開に意表を突かれ、思わず一声上げて、

「・・・」

少年が黙った。
だが直ぐに、

「うん」

恥ずかしそうに俯(うつむ)き、顔を赤らめ、小声で頷いた。
やはり少年も古畑に気があるのだ。

「なんて言われるかな? いい事言われるといいね」

「うん」

「お!? 少年ちゃん。 素直に認めちゃったね」

「あ!?」

「いいっていいって。 女の子なんだから。 無理しなくていいのいいの。 素直が一番」

「うん」

少年が素直に頷いた。

だが・・・

その直後、

「あ!?」

少年が再び声を上げた。
又、何か閃いたようだ。

「でも、おじちゃん」

「ん?」

「その陰陽師のセンセって、お名前分かってる?」

「もち(勿論)、分ってるょ」

「なんていう、お名前?」

「あぁ。 エェーっと、確か・・・。 ん?」

一瞬、名前が思い出せず、側(そば)にいる卒婆(そば)に聞いた。

「なんて名前だったっけ? あの先生」

「エェーっと、確か・・・。 おく・・・」

ここまで卒婆が言った瞬間、


(ピッ、コーン!!)


公園が思い出した。

「奥村 玄龍斎(おくむら・げんりゅうさい)だ!? そうそうそう・・・。 奥村 玄龍斎先生だ!!」

「ふ〜ん。 おくむら・げんりゅうさいセンセ?」

少年がその名を復唱した。



そぅ・・・

その高名な陰陽師。

その人こそ・・・

我等が・・・

あの・・・

奥村 玄龍斎先生・・・  http://pocomaru.jugem.jp/?page=3&cid=8

その人・・・

だったのである。



時に、平成22年8月。

前々日までの大嵐が・・・

まるで嘘のように・・・

雲一つない晴天に恵まれた・・・

ある日の・・・

絶海の孤島での・・・

出来事で・・・










あった。











深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人殺人事件』 #83・・・おすまひ