深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #21


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「ま、こんな野暮っちぃ事件は俺様が出るまでもないがな。 なにしろ古い建物だ。 シャンデリアを吊るしていたチェーンが老朽化して切れたんだろう」

と、尻餅がほざいた。
相変わらずエッラそうにだ。
ところがそのエッラそうな尻餅の背後から、

「違うぜ!!」

声がした。


(ガバッ!!)


尻餅が振り返った。

す、る、と・・・

お胸を張り、自信タ〜〜〜ップリにイチが尻餅を見つめていた。

“キリ!!”

ってして。。。

「な、な〜〜〜んだとーーー!? んパッ!!」

尻餅が言い返した。

「これは・・・事故なんかじゃない!! 殺人だ!! 日高 五里絵は殺されたんだ!!」

今度は、イチが言い返した。

「な、な、な、ぁ、な〜にー!? オ、オ、オ、オメェごときがな〜にを根拠に、そんな事を、ぁ、ほざきやがるー!?」

いきなり尻餅が切れた。
勧進帳張りでだ。
この尻餅というヤツはかなり切れやすい性質(たち)だった。

更に、イチと尻餅の会話は続く。

「見ろ、これを!? これはこのシャンデリアを天井から吊り下げていたチェーンと電源コードだ。 この両方の切り口を良っく見てみな、オッサン」

「オ、オッサン!? オッサンだぁ!? さ、さっきから聞いてりゃ、オッサンオッサンって・・・」

「あぁ、そうだ!? オッサンだ!!」

「こ、このガキャー言わせておけばいい気になりやがってー!!」

最早、尻餅、喧嘩腰。
それに構わず、平然とイチが続けた。

「これは老朽化して切れたもんなんかじゃない。 この切り口、これは刃物かなんかで切った痕だ、鋭利な、な。 でなきゃぁ、こんなに奇麗に切れる理由(わけ)がない」

そう言って、イチが手にしていた切れたシャンデリアのチェーンと電源コードを尻餅の鼻っ面に突き出した。

『ウッ!?』

尻餅の反応だ。

確かに、両方ともイチの言った通り、切り口が真っ平らに、そして奇麗に切れていた。
一目で人工的に切られた物だと分かる程に。

「なにぃ!? チョッと貸してみろ」

尻餅が電源コードの方をイチの手から右手で引(ひ)っ手繰(たく)った・・・はずだった。

が!?

シャンデリアの電源コードはそんなに長くはない。


(スポッ)


コードが手からすり抜けて床の上に落ちた。
尻餅は力加減が分からず、まさかコードが手から抜けるとは思ってもいなかったので、不意打ち食らった空振り状態、


(ズル)


バランス崩して危うくズッコケそうになった。

んでもって、怒りと恥ずかしさからか?
一声唸っちゃった。

「クッ!?」

って。
透かさずイチが追い討ちを掛けた。
尻餅の右手を指差して。

「オッサン!? その手の平、見してみ」

「な〜にー? その手の平だぁ」

「あぁ、そうだ」

尻餅が興奮気味に右手の平を、

『パッ!!』

ってした。
それを見て、透かさずイチが言った。

「な。 傷んなってないだろ」

「ん!? 傷? 傷たぁ、どういう意味だ?」

「チッ。 鈍いやっちゃなぁ。 コードが老朽化してか、あるいはチェーンが切れて支えのなくなったシャンデリアの重さに耐え切れず切れたんなら、その部分がバラけてるはずじゃん。 そうすりゃ、今ので手の平、傷だらけ。 で、血みどろのはずじゃん。 でも、オッサンの手の平は傷一つ付いてない。 コードがかすった跡が、ホンのチョッとあるだけだ」

「ん!? い、言われてみりゃ、そん通り」

イチの言う事には、一理あった。
これには、流石に短気な尻餅も、イチのこの言い分を認めない訳には行かなかった。
再び、イチがコードを拾い上げ、尻餅の目の前にそれを突き付けた。

「つまり、誰かが殺意を持ってこのチェーンとコードを切り、シャンデリアを落としたんだ。 日高 五里絵の上にな」

そして、


(キッ!!)


尻餅に鋭い一瞥をくれて続けた。

「どうやらコイツは、オッサン、あんたの管轄のようだな。 え。 警視庁捜査一課の警部さんょ」

って、イヤミたっぷりに。

これには堪らず、

再び、

『ウッ!?』

って、なっちゃった・・・










尻餅であった。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #22


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「いいか〜、おまいらー。 こ〜れからー、ぁ、取調べじゃ―!!」

って、尻餅が大声でほざいた。
もち(勿論)、歌舞伎町 じゃなくって 歌舞伎調で・・・

“おまえら” じゃなくって “おまいら” だってさ。 へっ!? 2チャンみたく。。。

ここは、日高 五里絵の遺体が発見された直後の『オペラ座館』の大食堂である。
そこには、この島に今いる者達全員が集められていた。

「先程から降り出した雨と風の影響で、本日はチト、波が荒い。 従って、○○県警は天候が回復するまで来れんそうだ。 よって、その間、この俺様の指示に従うように。 いいな、おまいら」

尻餅がエッラそうにほざいた。
そして一度、全員の顔を見回した。
それから徐(おもむろ)に胸ポケットから警察手帳を取り出し、直ぐ横に座っていた御布施に命令した。

「おい!! おまいから順に名前を言え」

「え!? ぁ、はい。 御布施 光彦です」

「ぇ〜っと、なになに。 浅見 光彦な。 あさ・・み・・みつ・・ひこ・・っと」

「ち、違います違います。 御布施です。 お・・ふ・・せ・・御布施 光彦!!」

「おぅ、そうかそうか。 おふせ・・な、おふせ。 おふせ・みつひこ・・っと。 良し!! 次!!」

「早乙女 京子です」

「ぅん。 さ・・お・・と・・め・・き・・ょ・・う・・こ・・な。 さおとめ・きょうこ・・っと。 次!!」

「桐生 冬美です」

「き・・り・・ゅ・・う・・ふ・・ゆ・・み。 き・・りゅう・・ふゆ・・み・・っと。 良し!! 次!!」

 ・・・

 ・・・

暫(しば)し、このやり取りが続いた。
そしてその一番最後は・・・少年(すくね)だった。

「次!!」

「深大寺 少年です」

少年がカワユク名乗った。
それを見て、尻餅が思わずオモタ。

『お!? カ、カワユイじゃねぇか。 女子高生ぐらえか? ぇ。 チチのハレ具合なんかもなかなかどうして。 うん。 と、すりゃぁ、もち、パンツは白だょな』

って。

『じんだいじ・すくね』って、そう書きながら。

そしてユックリと一度、尻餅が少年の全身を舐め回すように見てから公園に聞いた。

「これで全部か?」

公園が答えた。

「はい。 左様(さよう)でございます」

ここで少年が公園に目配せしながら声を掛けた。

「おじちゃん」

一瞬、公園は少年の目配せの意味が分からなかった。

「ん!?」

が、直ぐに気付いた。

「あ!? そうそう、忘れてた忘れてた。 もう一人もう一人」

「もう一人?」

尻餅が聞き返した。

「はい。 今、ここにはおられませんが、もう一人、お泊りのお客様がいらっしゃいます。 男性です」

「ん!? 誰だ?」

「はい。 死喪田 歌月様です。 昨日からお泊まりで、恐らく、今はお部屋にいらっしゃるかと・・・」

「死喪田 歌月? 昨日から泊まってるだと? 俺はおとつぃから泊まってっけど、そんなヤツぁ、一度も見掛けてはおらんぞ」

「はい。 死喪田様は殆(ほと)んどお部屋をお出にはなられませんので、恐らくはその所為(せい)かと」

「部屋を出ないって? こんなトコ来といて? ・・・。 それも又、妙だな。 じゃぁ、一体、何しにここ来てるんだ?」

「お仕事だそうです」

「仕事? 何の仕事だ?」

「はい。 作家さんだそうです」

「作家? 死喪田 歌月? 知らねぇなぁ。 聞いた事もねぇ、そんなヤツ。 似たようなのは、いたような気もするが・・・。 ま、いいか。 なら、今直ぐソイツもここへ呼べ!!」

「・・・」

公園は黙った。

「ん!? どうした? 早く呼んで来い!!」

「はい。 それがその〜」

「何だ? 早く呼んで来い!!」

「し、しかし・・・。 死喪田様から、余程緊急の用がない限り誰も部屋に近付けないようにと、きつく仰(おおせ)せつかっておりますので・・・」

「バ、バ、バ、バカやろー!! これが緊急の用でなくて何の用だー!! いいから早く呼んで来ーぃ!!」

「は、はい。 承知致しました」

公園は気が進まなかった。
だが、
渋々、承諾した。
そうせざるを得なかったのだ。
人が一人死んでいたからだった。
そして向かった。
死喪田 歌月の泊まっている部屋へと。

そぅ・・・










2階の5番ルームへと。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #23


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「おぅ、戻って来たか」

尻餅が言った。

ここは、まだ民宿の大食堂。
先程のエッラそうな尻餅の命令で死喪田 歌月を呼びに行った公園が、たった今、戻ってきた所だ。

尻餅が続けた。

「な〜んだ、大将。 あんた一人か? で、死喪田 歌月とやらはどこにいるんだ? ん?」

「そ、それがその〜。 お姿がどこにも見えません」

「ん? どういう意味だ?」

「はい。 今、申し上げました通り、死喪田様のお姿はどこにも・・・」

「な、な〜〜〜にーーー!? ぁ、姿が見えないだとーーー? んパッ!?」

「はい。 どこにも」

「う〜む。 そいつぁ、怪しい。 確かに怪しい。 良し! 今直ぐ俺をソイツの部屋に案内しろ!!」

そうほざいてから尻餅がイチ達に命令した。
相変わらず、すっげぇエッラそうに。

「おぃ!! いいか〜、おまいらー!! 俺様が戻って来るま〜で、一歩もここを出るんじゃ、ぁ、ね〜ぞー!! 分かったなーーー!! んパッ!?」

って。

そして足早に向かった。
死喪田 歌月の泊まっているはずの部屋へと。
205号室へと。

勿論・・・










公園の案内で。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #24


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「こ、これは・・・」

尻餅が絶句した。
死喪田 歌月の宿泊している部屋に入って直ぐの事だ。
205号室は既に蛻(もぬけ)の殻、歌月の姿はどこにも見当たらない。
しかし、そこにはまだ、歌月の物と思われる荷物は残されていた。
やたらと大きいローラー付きのトランクが目に入ったが、特にどうこう言う事もなさそうだった。
部屋に荒らされた様子はない。
勿論、人と争った様子など微塵(みじん)も。
だが、一つだけ・・そぅ・・一つだけ異常な光景があった。

あ!?

っと、驚く程の異常な光景が・・そこには・・あった。
上品なルイ・フィリップ様式の室内の淡いクリーム色の壁にそれは見られた。
真っ赤なペンキで刑事刑事(でかでか) 否 デカデカと文字が書かれてあったのだ、その壁に。
そしてそれを見て尻餅は絶句したのだった。
その尻餅の肩越しに声がした。

「えーっと、なになに。 『呪われろ!裏切り者のデリラ! 恩を仇で返す奴め! 二度と自由になどさせるものか!』だってぇ!!」

尻餅が振り返った。
イチがいた。
親指と人差し指を L 字型にした右手を顎に当て、眉間に皺を寄せ、鼻の穴を目一杯(めいっぱい)おっぴろげて、真剣にその意味を考え込んでるっぽい、イチが。
その横には美雪がいる。
御布施達も。
良っく見ると、その中には少年も交ざっていた。
みんなが集まって来ていたのだ、既にその場に。

「こ、こ、こらー!! お、お、おまいらー!! さっき、食堂を一歩も出るんじゃねぇ、つったの忘れたんかー!!」

尻餅が吠えた。

「そんな事言ったってなぁ。 なぁ、みんなー!!」

イチが口答えした。

「ぉ、おぅょ」

「うん」

「えぇ」

 ・・・

みんなが口々にイチに同意した。

「クッ!?」

ぐうの音も出ない尻餅であった。

「チッ。 ま、来ちまったもんは仕方ねぇ」

そう捨て台詞を吐いてから、こう口走った。

「ところで、何だ? これは? この意味は? 『呪われろ!裏切り者のデリラ! 恩を仇で返す奴め! 二度と自由になどさせるものか!』って、これは一体・・・?」

尻餅には書かれている言葉の意味が分からなかったのだ。
横から拳代が嘴を入れて来た。

「これは台詞。 そう、ファントム・・・エリックの台詞」

拳代も又、いつの間にかその場に来ていたのだった。

「ファントム? エリック? 何だそれは? 何の事だ?」

尻餅が聞いた。
拳代が答えた。

「ガストン・ルルー原作の『オペラ座の怪人』をアンドリュー・ロイド・ウェーバー( Andrew Lloyd Weber )が書き換えた歌劇『 THE PHANTOM OF THE OPERA (オペラ座の怪人)』の主役、怪人エリックの台詞。 生まれ付いての醜い素顔を隠していたマスクを最愛の人・・ヒロイン・・クリスティーヌに剥ぎ取られた直後、怒りを込めてそのクリスティーヌを呪ってエリックが吐く台詞」

それを受け、有森が、学校から緘口令を敷かれているのも忘れ、思わず口走った。

「月子だ!? 月子が言ったんだ、その台詞!? その台詞を言いながら月子は顔の傷を覆っていた包帯を解いたんだ。 そして・・・そして、その台詞を言い終えた直後・・・。 言い終えた直後に飛び降りたんだ。 そう、飛び降りたんだ、屋上から。 病院の屋上からコンクリートの上に・・・」

その言葉は、まるで自分に言い聞かせてでもいるかのようだった。
これに釣られ、やはり思わず、

「そうだ! 有森の言った通りだ!! 月子はその台詞を言って飛び降りたんだ、4階建ての病院の屋上から・・・。 だから台詞もハッキリ聞き取れたんだ。 もっと高かったらきっと何を言っていたか分らなかっただろうけど、4階建てだったからハッキリと聞き取れたんだ、月子の最後の台詞を・・・」

と、銭湯 浴衣が。

「そうだそうだ! 銭湯達の言った通りだ!! その台詞は・・・その台詞は、月子が月子が口にした最後の言葉だったんだ!!」

と、亀谷 修一郎も。

最後に、

「 THE PHANTOM OF THE OPERA ・・・か」

イチがポツリとそう言った。


その時・・・


(ゴー、ゴー、ゴー、ゴー、ゴー、・・・)


風雨が激しさを増す音が聞こえて来た。
建物の外は既に、暴風雨となっていた。
当然、海は大時化(おおしけ)。
最早、クルーザーは出せない。
つまり、全員が今、この絶海の孤島に取り残されているのだ。(“絶海”と言ふ程には離れてはおらんヶど・・・この言葉カッチョいいので使っちゃったでアリンス : 作者)

ここで、イチが

“キリ!!”

ってして、ほざいた。

「外は、テンペスト(大嵐)! 最早、誰もこの島を出ることは出来ない!!」

って。

こう思いながら・・・

『事件の発生と共に姿を消した謎のオサーン(オッサン)・・・死喪田 歌月。 その死喪田 歌月とかいうオサーンは一体何者なのか? この絶海の孤島を容赦なく打ち付けるこのテンペストの激しい唸りが・・俺には・・人知れずさ迷い歩くファントムの不吉な笑い声に・・聞こえる・・ハン!?』

って。

右目を吊り上げ、

“ビシッ!!”

って、左七三(ひだり・しちさん)に身構えて。

全然きまっとらん、決めポーズを・・・










取ったりなんかしちゃって。。。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #25


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「生まれながらのスター性があったゎ、月子には・・・」

桐生 冬美がポツリと言った。

ここは、冬美が泊まる部屋の前。
時は、その日の夜。

冬美、美雪、そしてイチの3人が立ち話をしている所だ。

「ん!?」

イチが冬美のその言葉に興味を持った。
それを感じ取り、冬美が続けた。

「舞台に立っているだけ。 ただそれだけで、自然と見ている者の眼(め)を引き付けてしまう。 そんな魅力があったのょ、彼女には・・月子には・・冬島 月子には」

ここで一旦、冬美は間(ま)を取った。
そして続けた。

「わたしには・・いいぇ・・わたし達にはない何かを月子は生まれながらにして身に具えていたのょ。 わたし達凡人にはない何かをね」

そこで冬美は話を終わらせた。

「・・・」

「・・・」

イチと美雪は黙っていた。
どこか感慨深げだった。


(ガチャ!!)


冬美が自分の泊まる部屋のドアノブを引いた。
部屋に入り掛けた。

が、

止まった。
ユックリと振り返った。
そしてイチと美雪に問い掛けるように聞いた。

「ねぇ、あなた達。 五里絵を殺した犯人は誰だと思う?」

「ん?」

「ん?」

冬美の不意の問い掛けに即座に反応出来ず、イチと美雪は黙っていた。
それを見て、冬美が続けた。
含み笑いを交えて。

「あたし思うの・・・。 この殺人は、冬島 月子の幻影に取り憑かれた誰かの仕業・・・だって。 フフフッ」

「!?」

「!?」

その最後の言葉に一瞬、イチと美雪はショックを受けた。
それまで考えた事もなかった事を、冬美がいとも簡単に言ってのけたからだった。
この IQ180 の大天才、金田一 一ですら思いも掛けなかった事を、いとも簡単に冬美が・・・

そぅ・・・

今回のこの殺人劇が冬島 月子の幻影に取り憑かれた誰かの仕業であるという。

「お休み・・・」

既に部屋に入っていた冬美が、そう言ってドアを閉めようとした。
慌てて美雪が声を掛けた。

「ま、待って冬美!? あたしも貴女と一緒に泊まるゎ。 一部屋二人ずつ泊まった方が安心ょ。 あんな事があった後なんですもの、その方がいいゎ。 予定変更ょ」

「うぅん。 あたしは一人。 一人の方がいいの。 その方が落ち付くゎ。 あなたの気持ちは嬉しいけど・・・。 じゃ、ね」


(バタン!!)


冬美がドアを閉めた。

「冬美!?」

閉められたドアに美雪が駆け寄った。
背後からイチが美雪に声を掛けた。

「そうなんだょな。 実は俺もその方がいいと思ったんだけどな。 二人一部屋の方が。 でも、緒方先生、何でそうしなかったんだろう? 気付かなかったんかな、その方がいいって。 平静を装ってはいたけど、あんな事件の後だから先生もやっぱ気が動転してたんかな? なんせ監督責任者だからな。 引率した生徒が一人死んだ以上、その責任を問われる訳だし」

「かもね」

美雪がポツリと言った。

「なら、美雪。 お前は俺と一緒の部屋で・・・」

そう言ってイチが美雪の腰に右手を回した。

その瞬間、

イチが大声を上げた。

「イッ、テェーーーーー!!!!!」

って。


(ギュッ!!)


その右手の甲を美雪が思いっきし抓(つね)っちゃってたのだ。

「ヤ〜ダょー。 イッチャンと一緒の部屋だと何されるかわかんないじゃん」

って、言って。

それを聞き、

「っクショー!! 何言ってやがる」

って、憮然としている・・・










イチであった。











つづく