深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #26


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「う〜む。 冬島 月子の幻影に・・・か」

イチが独り言をほざいた。

時は、その日の夜・・・勿論、真夏の。
所は、イチの部屋・・・しかし、気温は然(さ)して高くはない、外が大嵐だから。

イチは、一人、ベッドに横たわり眠れぬ夜を過していた。
仰向けになり天井を見つめている。
両手を枕代わりにしながら考えていたのだ、先程、桐生 冬美の言った言葉の意味を、その真意を。

『・・・。 あの含み笑い。 冬美のヤツ、まるで何かを知っているような口ぶりだった。 それに五里絵のあの怯え切った姿・・・。 まさか五里絵を、冬美が・・・。 まさか・・・な。 それに消えた死喪田 歌月とかいう謎のオサーン(オッサン)。 その部屋の壁に残されたファントムの台詞。 しかもそれはあの自殺した冬島 月子が、その最後に口にした言葉。 う〜む。 一体、今、ここで何が起こっているんだ・・・。 分からん』

って。

一方、こちらは美雪のお部屋・・・1階の109号室だ。
美雪が一人で寝ている。
結局、予定通り一人一部屋に落ち着いていた。

「ウッ、ウ〜〜〜ン」

スッゲー、エロっぺぇ声を出して美雪が寝返りを打った。
美雪は美雪でやはり寝付けないのだ、神経が昂(たかぶ)って。
当然だ、あんな事があった直ぐ後なのだから。

その美雪が、

「ウッ、ウ〜〜〜ン」

再び寝返りを打った。
今回も又、スッゲー、エロっぽく。
先程は壁向きに寝返ったが、今度は窓側だった。

そして・・・

何か感じたのか?
あるいは、何か気になる事でもあったのか?
それとも、なんとはなしにか?

美雪が薄目を明けた。

その瞬間、

『ハッ!?』

として、


(ガバッ!!)


飛び起きた。
窓の外から誰かが部屋の中を覗きこんでいたからだ。
否、覗き込んでいたように思われたからだ。
それもファントムの仮面みたいなのを被って。
その時、美雪は半分眠気眼(はんぶん・ねむけまなこ)だった。
だから、

“キリ!!”

っと断言出来ない。

『ん!?』

美雪が目を凝らした。
だが、既にその覗き込んでいたように見えた誰かの姿はそこにはなかった。

「ぃ、今の・・・。 今のは一体、何!? 何だったの!?」

美雪がボソっと一言呟いた。
そして再び、ベッドに横になった。
普通なら今のでオメメぱっちりになってしまうはずだ。
しかし今回の件で、余程、精神的に参っていたのだろう、返ってこの刺激がいい気分転換になったに違いない。
終に、美雪が深い眠りに落ちた。

「フゴ〜〜〜!! フゴ〜〜〜!! フゴ〜〜〜!! ・・・」

って、大鼾(おおいびき)なんかかいちゃって。
おヨダもバッチリお垂らしあそばして。

女の子が・・・

そ、れ、も・・・










嫁入り前の。。。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #27


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





(ドンドンドン)


「起きろーーー!! 金田一ーーー!!」


(ドンドンドン)


「起きろ起きろ起きろーーー!!」


(ドンドンドン)


「大変だ大変だ大変だーーー!!」

イチの泊まっている部屋のドアを叩き壊さんばかりの激しさで、誰かがイチを起こそうとしていた。
その激しく叩く音と怒鳴り声でイチの目が覚めた。


(ドンドンドン)


「起きろーーー!! 金田一ーーー!!」

その声は有森だった。


(カチャ!!)


イチが欠伸(あくび)をしながら、眠い目を擦(こす)り擦りドアを開けた。

「ファ〜〜〜。 何だ有森、こんな朝っぱらから大騒ぎして・・・。 ファ〜〜〜。 眠てぇ・・・」

「い、い、い、いいからー!! は、は、は、早く服を着替えろ! 早くー!!」

「早く服を着替えろって・・・。 何の騒ぎだ、ったく」

「し、し、し、死んだんだょ、又一人!! 一人死んだんだょ! 又ー!!」

「え!?」

「だ、だ、だ、だから早くしろ! 早くー!!」

訳が分からぬまま、イチが有森の目を覗き込んだ。
血走った目で有森もイチを見つめた、と言うより睨んだ。
お互い言葉が出ないのだ。
イチは思いも掛けない言葉を耳にしたために。
有森は興奮のあまりに。

暫(しば)し睨み合った後、

「ぅ、うん!?」

イチが頷いた。
そして聞いた。

「ば、場所はどこだ?」

「に、に、に、庭だー!! 庭だ庭だ庭だー!!」

やっと有森の口からもキチンと言葉が出るようになった。

そして、それは朝早くの出来事だった。

日高 五里絵が死んだ・・・










次の日の。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #28


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





その朝・・・

雨の降りしきる中・・・



メガネを掛け・・・

右足は裸足(はだし)で・・・

左足にだけ靴を履き・・・

首に頑丈なロープを掛けられ・・・

木から吊るされて・・・

冷たくなった第二の犠牲者の体は・・・

首に掛けられているロープを・・・

風にギシギシ軋(きし)ませながら・・・

ユックリと揺れていたのだ・・・

そぅ・・・

ユックリと・・・

揺れていたのだ・・・

ノーブラで・・・



そ、れ、に・・・


パンツ丸出しで・・・

しかも・・・

マンスジくっきりで・・・



更に・・・


後ろから見ると・・・

その丸出しのパンツがケツに食い込み・・・

はみケツだった・・・

いやらしいまでに・・・



だが・・・


ノーブラなのに・・・

残念ながら・・・

チチは見えなかった・・・

ナゼか?・・・

そ、れ、は・・・

その第二の犠牲者が・・・

ワイシャツを着ていたからである・・・

純白で・・・










長袖の・・・











つづく

【おねがひ】 あの〜、この状態でオッチンでおれば・・・ウンチやオシッコ漏らしたりして悲惨な状況になっちゃうんじゃ? と思糞(おもふん) death が、その辺りは目を瞑ってオクンナまし : 作者







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #29


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 桐生 冬美(きりゅう・ふゆみ) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「この娘は確か・・・」

昨夜程ではないにしろまだ強く打ち付けて来る雨の中、傘を差し、高い木の枝に首を吊って死んでいる女の・・・その、雨でずぶ濡れになった遺体を舐め回すように眺めながら、尻餅が言った。

ここは、民宿の庭に植えられている大木の下。
建物からは10メートル程の距離。
日高 五里絵の死んだ翌日早朝の出来事だ。

それから尻餅は、自分の目線のチョッと下の位置にある被害者のマンスジ辺りに視線を移した。
ある一点をジッと見つめた。
勿論、食い入るように。(うん。気持ちは分からんでもない・・・うん。気持ちは・・・ : 作者)

「桐生 冬美」

背後から、美雪が尻餅に冬美の名を告げた。

「そうそう、そうだったそうだった」

尻餅が微動だにせず、目を全く動かす事なく、瞬(まばた)き一つしないで、視線をある一点にズ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと固定したまま、昨日の取調べの時の事を思い出して言った。
すると尻餅の横で、やはり死体を見ていた公園が興奮して叫んだ。

「な、何でこんな事が!? 何で何で何で!?」

それまで抑えていた感情が、一気に爆発したのだ。
そして頭を抱え込んでしまった。

暫(しば)し、その場に奇妙な緊張感が走った。
誰も何も言葉を出せなかった。
公園が少し冷静さを取り戻して、しかし頭を抱えたまま続けた。

「この民宿で、二人もの人が死ぬなんて・・・」

「おじちゃん」

左手で傘を差している少年が右手を公園の、傘を差していない方の左腕にソッと当て、優しく慰めるように声を掛けた。

「ぁ、あぁ。 うん」

公園が少年の気遣いに答えた。
少年の優しさが伝わったのだ。

すると、

「しかし、何で桐生 冬美が自殺なんて事を・・・」

ボソッと尻餅がほざいた。
即座に、

「バカ言え!!」

背後から今度はイチが言い返した。
その時既に、その場に有森と有森に呼ばれたイチは到着していたのだ。
尻餅が振り返った。
そして、


(ギロッ!!)


イチを睨みつけた。
こう思いながら。

『まぁ〜たー、このガキかぁ』

って。
イチが続けた。

「桐生 冬美は自殺なんかじゃない! 殺されたんだ!!」

「ぁ〜ん? 殺されたー!? 殺されただと〜〜〜?」

「あぁ、そうだ、殺されたんだ。 考えてもみな、オッサン。 ここに足場んなるようなもん、どこにも見当たらないだろ。 なのに冬美は地面から足先まで50cmはあろうかという高さで吊るされている。 どうすれば台も使わずこんな風に首を吊って死ねる? え!? どうすれば・・・」

『ウッ!?』

尻餅が言葉に詰まった。
有森以下、その場にいた者達全員が『納得納得』といった感じで、

「うんうん」

頷いている。
当然、みんな傘を差している。
そんな中、イチが続けた。

「間違いない、冬美は殺されたんだ。 殺されて無理矢理この木に吊るされたんだ」

「ぅ、うん。 まぁ、確かにオメェの言う通り、首吊った害者が自分で足場んなる物を片付けたとは思えん。 うむ、確かに・・・そうは思えん。 つー事は、犯人は害者を強引に部屋から引っ張り出して、この木に吊るしたっちゅう事になる」

「いいゃ、それも違うね」

イチがキッパリと否定した。
再び、尻餅はムッとなった。

『ま、ま、ま、又ー! こ、こ、こ、このガキャー!!』

そしてプルプルしながら聞いた。

「ぁんだとー、違う? 違うだとー!?」

「あぁ、違うね」

「ど、どういう事だ? フン。 なら、説明してみろ」

「あぁ、してやるょ、オッサン。 耳の穴かっぽじって良っく聞けょ」

ここで堪らず美雪がイチを制した。

「ィ、イッチャン。 そ、そんなに喧嘩腰にならなくったって・・・」

「ぁ、あぁ。 うん。 分かった」

イチが美雪に頷いてから、尻餅に説明し始めた。
ここからはイチと尻餅の会話となる。

「あのな〜、オッサン。 確かに、桐生 冬美が何者かに絞殺された事は間違いない。 でも、生きたまま吊るされたんなら、冬美は必ず抵抗したはずだ。 と、すると・・・。 いかに女とはいえ、どうすれば、抵抗して暴れる女を簡単に吊るせると思う。 一人じゃ先ず無理な話だ」

「な、な〜るほど。 それもそうだ!? という事は犯人は複数か?」

「でも、一人で吊るす方法もある」

「え!?」

「殺した後、ここへ運ぶ」

「そ、そうか!? 死んだ人間は抵抗はしない。 うむ。 確かにそうだ。 殺してからなら一人でも出来そうだ。 うむ。 確かにそうだ」

「しかし、それには問題がある」

「ん? 問題?」

「そうだ!? 問題だ。 犯人は一体どこから冬美の部屋に侵入し、どこから冬美を運び出したのか?」

「そんな事は決まっとる、窓から入って窓から出た。 それっきゃない。 ドアには内側からカギとチェーンが掛かってたんだからな。 つまりあの部屋に出入(ではい)りできる所はたったの一つ。 窓だけだ。 現に、あの部屋の窓は開けっ放しになっている。 桐生 冬美は恐らく窓のカギを掛け忘れて、そのために犯人の侵入を許したんだ」

ここで尻餅が、ある事に気付いた。
そして、


(ニヤリ)


頬に勝ち笑いを浮かべた。

「チョ〜っと待ったれゃ、小僧!?」

「ん!?」

「フフン。 なら、アレ!! アレはナンゾ?」

「アレ?」

「そう、アレじゃアレ。 アレをどう説明するんじゃ、アレを? ん? 小僧」

そう言って尻餅は、冬美の部屋の窓の下から首吊りの木まで続いている靴跡を指差した。
昨夜来の大雨の影響で、地面がぬかるんでいたため地面にはクッキリと靴跡が付いていたのだ。
ただし、一人分。

そぅ・・・

そこに残されていた靴跡は人一人分しかなかったのだ。
イチがその靴跡を見つめている。
その靴跡は昨夜来の強い雨の所為(せい)でだいぶ形は崩されてはいたが、それでも人一人分である事はハッキリと分かった。

すると、尻餅が勝ち誇り、大見得切って大声でほざいた。


 一度故郷を離れたからにゃぁ。
 負けねぇ、引かねぇ、悔やまねぇ。
 前しか向かねぇ、振り向かねぇ。
 ねぇねぇ尽くしの漢(おとこ)意地。

俺を・・俺様を・・この俺様を・・一体、誰だと思ってやがるーーー!!!


って。

「あぁ、その通りだ。 それが問題なんだ」

イチが軽〜くいなした。

「クッ!?」

尻餅が一言呻いて “カクッ” ってした。

そんな尻餅を余所目(よそめ)にイチが続けた。

「冬美の部屋に入るのも、吊るされている木に行くにも、このぬかるみを通らなきゃならない。 だが、残された靴跡はたったの一つ。 そしてその靴跡は真っ直ぐに吊るされた木へと向かっている。 ・・・。 ところで、この靴跡誰の物だと思う?」

「犯人の物に決まっとる!? どうやって部屋に入ったかは分からんが、犯人は害者を抱えるか背負うかしてあのぬかるみを通ってこの木の下まで来たんだ」

「さぁ、それはどうかな」

「ん!? どういう意味だ?」

イチが無造作に地面に転がっている冬美の右足用の靴を拾い上げた。
繁々とその靴を観察した。
そしてぬかるみに近付き、クッキリと残されている靴跡の一つの上にそれを乗せた。
幸いな事に 否 不幸中の幸いな事に、冬美が首を吊っていた木は大木で枝を四方に長く伸ばしている。
そのため、その木(き)の葉っぱが雨をブロックしてくれていたのだろう、その木の近くのぬかるみに残っていた幾つかの靴跡は形が殆(ほとん)ど崩れてはいなかった。

「ピッタリだ」

そう言ってイチが顔を上げた。
そして尻餅に言った。

「靴底の泥の具合といい、靴跡の大きさといい、靴底の模様といい、これはこの靴を履いていた者の靴跡だ」

「だが、その靴は害者のもんだ。 つー事は、害者はここまで一人で歩いて来て首を吊った事になる。 な、なら、やっぱ、害者は・・じ、さ、つ・・自殺したっちゅう事になる。 始めに戻っちまったじゃねぇか」

「いいゃ、自殺なんかじゃない。 冬美は間違いなく殺されてここに運ばれ、そしてその木に吊るされたんだ」

「なら、どこで誰に殺されたんだ? しかもこの服装。 どういう事だ? ちゃんと説明してみやがれ!!」

「このぬかるみ加減から判断すると、人を抱えてあるいは負ぶって歩くのは大変だ」

「大変?」

「あぁ、大変だ」

「ナゼだ?」

「滑る危険があるからだ。 こんなひどいぬかるみの中、いくらそれが女の子だとはいえ、そこそこ体重のある人間を抱えたり負ぶったりして全く滑らずに歩けるもんだろうか? しかし、この靴跡のどこにも滑った跡がない」

「そりゃ、滑んないように慎重に歩いたからじゃねぇのか?」

「かも知れない」

「なら、それで説明が付くじゃねぇか」

「いいゃ、付かない」

「何でだ?」

「靴跡が浅過ぎる。 この靴跡の深さは人二人分(ひと・ふたりぶん)とはとても思えない」

「ん? 浅過ぎる? 浅過ぎるだと・・・」

尻餅がしゃがんだ。
イチの言う通りかどうか靴跡を観察するために。
暫し見つめた後、右手人差し指と親指を L 字型にして、その手を顎に当てて考え始めた。

「う〜む。 言われてみりゃ、そんな気もしないでもない」

「そんな気がするもしないもない。 間違いなく、靴跡は浅過ぎる。 それに全く滑ってもいない」

「う〜む。 確かに・・・。 この事件はナゾだらけだ」

「否、トリックだ。 この殺人には何らかのトリックが隠されているんだ。 それさえ分かれば・・・」

「そうか、トリックかぁ。 参ったなぁ、分からん事だらけだ」

尻餅が考え込んでしまった。
その尻餅をオチョクルでもなければ、慰めるでもなく、淡々とした調子でイチがほざいた。

「しかし、その服装の理由だけは分かっている」

「ん!? 服装の理由?」

尻餅が聞き返した。

「そうだ、服装の理由だ」

「?」

「それはサービスだ!! オッサンへのな」

「へ!? サービス?」

「そうだ、サービスだ。 だって、良っく見てみ。 マンスジがクッキリするように、ぱんてぃをキュってしてあるじゃん。 それはサービスなのさ。 オッサン、アンタへのな」

美雪が恥ずかしそうに言った。

「も、もぅ、イッチャンたらぁ・・・」

ここでイチの顔が、それはそれは凛々し〜いお顔になった。
そしてこう言い切った。

「ここまでで分かっている所を総括する。 つまりこういう事だ。 理由は分からないが、この桐生 冬美の死と昨日の日高 五里絵の死は無関係ではない。 又、冬美は何者かに部屋で殺された後、ここに運ばれた。 そしてその木に吊るされた。 自殺に見せ掛けるためにだ。 ナゼ自殺に見せ掛けたのか? その理由は分からない。 しかし言える事は犯人は恐らく一人。 単独犯だ。 それは靴跡が一つしかないという事で説明出来る。 だが、その靴跡は間違いなく冬美の靴によって付けられた物だ。 多少、付いている靴跡が浅すぎる嫌いはあるが・・・。 しかし、間違いなくそれは冬美の靴跡だ。 そしてその犯人に今、一番近いのは消えたとされる死喪田 歌月という人物。 最後に・・この殺人にはトリックの他に・・これは俺の直感なんだが・・何らかのメッセージが隠されている!?」

と。

“キリ!!”










ってして。。。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #30


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風




「何らかのメッセージ・・・?」

美雪がポツリと独り言を言った。

そして、

『ハッ!?』

直ぐに気付いた。
反射的に言葉が口を突いて出ていた。

「オペラ座の怪人!?」

と。

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 ・・・

全員が美雪を見た。
その視線を受け、周りを見回しながら、美雪が言った。

「『オペラ座の怪人』の中に出て来る殺人方法。 一人目がシャンデリア。 二人目が絞殺。 それが原作の中でファントムが人を殺した、殺し方」

それを聞き、

『同じだ!?』

『同じだ!?』

『同じだ!?』

 ・・・

『オペラ座の怪人』の原作を知っている者達みんながそう思った。

「なるほど、同じだ。 だったら、次があるな」

イチが呟いた。

「次?」

尻餅が聞き返した。

「あぁ、そうだ、次だ。 ガストン・ルルーの原作によれば、確かファントムは男を一人、パリ・オペラ座の地下にあるとされる湖の中に引きずり込んで殺したはずだ。 間違いなく原作ではそうなっていたはずだ」

『!?』

『!?』

『!?』

 ・・・

その場の全員が衝撃を受けた。
一瞬、誰も言葉を発する事が出来なかった。

当然だ!!

『今のイチの呟きは、 “新たな殺人予告” と同じ意味を持つ』

そう言っても過言でないからだ。
だから誰も何も言えなかったのだ。
もっとも、イチが殺人予告をしたのではないのだが。

そんな中、一人、公園がボソッと口走った。

「まだこんな事が続くんですか。 これが知れ渡ったら、もうこの民宿はやって行けなくなる。 殺人が行なわれた民宿だなんて・・・。 あぁ、なんて事だ。 折角、軌道に乗り掛けた所だというのに・・・」

「おじちゃん」

少年が心配そうに公園に声を掛けた。

それを聞き、

「災難だと思ってあきらめな」

って、プレデター2 否 イチが言った。










その時・・・











つづく