深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #36


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「先輩、心配しなくても大丈夫ですょ」

美雪が早乙女に言った。
ここは、109号室。
美雪のお部屋。
美雪が続けた。

「イッチャンって・・・パッと見、さえないけど。 いざとなったら、あれで結構頼もしいんですょ。 だって、イッチャンてば・・・あの超有名(?)な大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫なんですから」

その時、

それまで美雪の顔を黙って見つめて話を聞いていた早乙女の顔が、

『ハッ!?』

突然、引き攣った。

そ、れ、は・・・

ナゼか?

その答は美雪の背後にあった。

そぅ・・・

美雪の背後の窓の外にそれはあったのだ。

そこに、歌月・・・歌月だ、歌月!?
死喪田 歌月がいる!?

否、

死喪田 歌月と思(おぼ)しき人物が・・・

それまで行方を晦ましていた、あの死喪田 歌月と思われる人影が美雪の背後の窓の外に突然姿を現したのだ。
それもファントムの仮面を付け、ファントムの衣装を身に纏(まと)い、笑うセールスマンっぽいアストラカン・ファーの帽子を被って。
それは帽子を除けば、御布施の盗まれた物と全く同じ衣装。
恐らく盗まれた御布施の衣装だろう。
全身ずぶ濡れだ。
外はまだ、多少勢力は弱まったとはいえ、昨夜来の暴風雨が吹き荒れている。
その所為(せい)でだ。

そのファントム姿の死喪田 歌月らしいヤツが、


(ガッ、シャーーーン!!)


両手拳で外から窓ガラスを叩き割った。


(タン!!)


部屋の中に飛び込んだ。

狙いは早乙女 京子か?

「キャーーー!!!」

「キャーーー!!!」

美雪と早乙女が同時に悲鳴を上げた。

二人のその反応を全く意に介さずファントムが、


(ザクッ、ザクッ、ザクッ)


恐怖に顔を引き攣らせ、抱き合って震えている二人に3歩近付いた。


(ギロッ!!)


早乙女を睨みつけた。


(スゥ〜)


胸元に仕込んであった短剣・・・あるいは包丁か?
刃物を抜いた。


(ギラン!!)


怪しく光る短剣らしき刃物。


(サッ!!)


それを振りかざした。

美雪と早乙女・・・二人共微動だにしない 否 出来ない。
恐怖のあまり体が動かない。
まるで不動金縛りにでも掛かっているかのようだ。

だが、










その時・・・











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #37


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





(バタン!!)


ドアが開いた。

「み、美雪!? なんだなんだなんだ!? 何が起こった!?」

異変に気付いたイチが、部屋の中に飛び込んで来た。
尻餅も一緒だ。

ファントムが、

『ハッ!?』

っとして、振り返ってイチ達を見た。

瞬間、

『お!?』

『お!?』

イチと尻餅が同時に驚いた。

「た、助けてー!! ィ、イッチャーン!!」

美雪が叫んだ。
それとほぼ同時に、尻餅も叫んでいた。

「で、で、出たな死喪田 歌月!? つ、つ、終に出おったな!? ぉ、ぉ、ぉ、お前を・・・お前をお前をお前をーーー!! 殺人容疑及び殺人未遂の現行犯で逮捕しちゃうぞ!!」

って。

そしてファントムにつかみ掛かろうとした。

だが、その時、

「クッ!?」

一声呻いて、


(ダァーーー!!)


いきなりファントムが走り出した。

ドアだ!? ドアに向かってだ!?

イチ達がたった今入って来たばかりのドアに向かって走り出だしたのだ、ファントムが。
酷いビッコを引きながら。


(ドン!!)


ファントムが、突然の事にまだ心の準備が出来ていなかったイチを強烈に突き飛ばした。

「ぅお、ットー!?」

イチが吹っ飛んだ。


(ドン!!)


尻餅にぶつかった。

「ぅお、ッチー!?」


(ドカ、ドカ)


二人が床にこけちゃいました。

「ィ、イッチャン!?」

美雪がイチに駆け寄った。

「だ、大丈夫だ! 美雪!!」

イチはもう立ち上がり、ファントムの跡を追おうとしていた。

「く、くそー!!」

勿論、尻餅も。

そうこうしている間も、


(タタタタタ・・・)


ファントムが廊下を走って逃げている。
ビッコを引きながら。
靴跡を残して。

「ま、待てー!!」

「ま、待ちやがれー!!」

イチと尻餅がその後を追う。

突然、


(タッ!!)


ファントムが立ち止まった。


(サッ!!)


振り返った。


(シュポッ!!)


いつの間にか手に握り締めていたジッポ(ライター)に火を点けた。


(トン!!)


床に投げ捨てた。

すると、


(ボヮッ!!)


予(あらかじ)め床の絨毯に仕込んであったらしい油か揮発油のような物に、ジッポの火が点いた。
恐らくそれは、ビッコを引いているというハンディを事前に計算しての仕込みだったに違いない。
ファントムに化けた死喪田 歌月は、チャンと逃走経路を用意していたのだ。

「ウッ!?」

いきなり点った火に驚きイチが呻いた。

「ォワッチ!?」

尻餅も。

「クッ!? こ、こんな物まで」

と、イチが。

「んなろぉーーー!!」

尻餅も。
二人が上着を脱いで火を消し始めた。

だが、

「ここは俺に任せろ! お前はヤツを追え!!」

尻餅が叫んだ。

「ぁ、あぁ!? 分かったオッサン! 後は頼んだ!!」

「ぃ、いいから、は、早く! 早く行けー!!」


(ダァーーー!!)


イチが一人でファントムを追った。

廊下にはファントムの靴底の泥が靴跡となって残っていた。
降り続いている大雨で、屋敷の外の地面がグチャグチャだったからだ。
その上を歩いて美雪の部屋に侵入した以上、靴底が泥だらけなのは自明の理だった。










そして・・・











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #38


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「ま、待てー!!」

イチがファントムを追う。


(サッ!!)


既にファントムは、中庭の角を曲がっていた。
イチの泊まっている部屋の前をだ。
その反対側は有森の部屋。


(サッ!!)


少し遅れてイチも曲がった。
その途端、

「ゥォッチ!?」

イチが声を出した。
目の前に人がいたのだ。

「おっ、トー!?」

相手も声を出していた。
だが、イチも相手も体をかわせない。


(ドン!!)


ぶつかってしまった。


(ドタッ、ドタッ)


弾みでイチとイチのぶつかった相手が共に床に倒れて尻餅をついた。
イチが相手の顔を見た。

「ぁ、有森!?」

ぶつかった相手は有森だった。
イチは出会い頭、有森とぶつかっていたのだ。

「き、金田一!?」

目を真ん丸くして有森が言った。
突然の事にビックリして、有森は鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。

「ぃ、今、ここをファントムが・・・」

イチが言った。

「え!?」

その言葉の意味が理解出来ず、有森が声を上げた。

「ファントムだょ、ファントム!! 今ここをファントムが曲がったんだ!!」

「ファントム? ファントムって?」

「だからファントムの仮面を被った死喪田 歌月が今ここを曲がったんだょ!! ホンのチョッと前に!!」

「し、し、死喪田 歌月だってー!?」

「あぁ」

「で、でも、俺、な〜んも見てないぜ」

「そんなわきゃねぇ、確かにヤツは今ここを・・・」

その時、


(ガチャ!! ガチャ!!)


亀谷の部屋(103号室)と銭湯の部屋(102号室)のドアが開いた。
中から二人がほぼ同時に顔を出した。
ユックリと出て来た。
物音に気付いたからだろうか?
二人が中庭の角を曲がって、イチ達の所までやって来た。

「おぅ、どうした? なんかあったのか?」

亀谷が不思議そうな顔で聞いた。

「何だ? 今の物音は?」

こんどは銭湯だった。

「死喪田だ! 死喪田 歌月が現れたんだ!! ファントムの仮面に衣装を着けて・・・」

イチが有森、亀谷、銭湯の3人に事情を話し始めようとした。
そこへ、


(ドタドタドタドタドタ・・・)


遅ればせながら尻餅が追いついて来た。

「こらぁ! 金田一〜〜〜!! ファントムはどうした、ファントムは?」

「そ、それがどこにも・・・」

「な、な、な、なぁにぃ〜? 逃げられたんかぁ?」

「す、済まん」

「す、す、す、済まんで済むと思っとんのかぁ! ゴルァ!!」

「・・・」

イチは何も言えなかった。
ファントムが突然、忽然(こつぜん)と消えた理由が分からなかったからだ。

そこへ、


(ゾロ、ゾロ、ゾロ、怪傑ゾロ、ナンチャッテ・・・)


人が集まり始めた。
そこには公園や少年の姿もあった。
当然、美雪に拳代、幽鬼夫妻の姿も。

「な、何事ですか?」

公園が聞いた。
尻餅が振り返って公園を見て言った。

「いゃな、大将。 死喪田だ、死喪田 歌月が姿を現したんだ、ファントムの格好でな。 それもたった今。 それを俺達が追ってここまで来たんだが」

ここで既に立ち上がっていたイチを、

“ピッ”

って力強く指差した。

「このバカがここでそれを見失ったんだ! このバカが!!」

「し、死喪田様が・・・」

「そうだ!! ファントムのお面なんぞ、被りやがってな」

次に、早乙女を指差した。

「そんでソイツを殺そうとしやがったんだ」

最後は美雪を。

「ソイツの部屋で」

そして再びイチを、

“ピッ”

ってした。

「運良く近くにいた俺とコイツが、その場に入って行って未遂に終わらせてやったって訳ょ」

「そ、それは・・・それはご苦労さまでございました。 いやぁ、流石、警視庁の刑事さん。 ご立派でございます」


アッ、チャ〜〜〜!?


迂闊(うかつ)にも公園が尻餅を褒めてしまった。

と、すれば・・・

当然、ア、レ、が・・・

そぅ・・・

アレだ、アレ! アレが出る!!

待ってましたとばかりに、尻餅がいつものアレをやり始めた。

「ぉ、お〜ょ。

 無茶で無謀と笑われようと
 意地が支えの喧嘩道!!

 壁があったら殴って壊す!
 道がなければこの手で作る!!

俺を・・この俺を・・この俺様を・・一体・・誰だと思ってやがるー!!


って・・・ヤツを。

それを少年が軽〜く、いなした。

「刑事さん」

って。

「ヘッ!?」

その少年のリアクションで、“カクッ!!”って、なっちゃった尻餅であった。
そんでもって、興奮した尻餅が少年に食って掛かろうとした。

だが・・・










その時・・・











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #39


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「これ」

少年が右手人差し指で、床に敷いてある絨毯を指差した。
そこには、微(かす)かにではあったが靴跡らしい物が見られた。
イチがしゃがんでその靴跡を観察した。
それは美雪の部屋の方から続いていた。
ただし、美雪の部屋からここまで結構な距離があるため、始めは濃い靴跡だったが、その場所では誰かに指摘されなければ殆(ほと)んど気付かれない程度まで薄くなっていた。
そしてその靴跡は、イチの部屋と有森の部屋の間にある窓の所まで来て消えていた。
しかも、誰が開けたか知らないが、外は大雨だというのに窓が開いている。
その窓の形状は各室内の窓と異なり、建物の中から外に向かって開く観音開きになっていた。
もっとも、片側の扉1枚だけだったのだが、その時開いていたのは。
風向きの関係だろうか、大雨の割には廊下への吹き込みは少ない。
それでも、普通に降る雨と比べれば吹き込んで来る風雨はそれなりに強かった。
又、その窓はこの民宿の北側に位置している。
そしてこの民宿の北側は断崖絶壁になっていた。(← これ覚えてる・・・#1の『その島の北面は断崖絶壁であり、その際(きわ)に民宿は建っている。』ってトコ : 作者)

イチが急いで窓から外に首を出した。
激しい雨と風がモロにイチの顔面を直撃した。

「絶壁!?」

イチは驚いた。
尻餅も覗いていた。

「ぉ、おぃ!! 大将!! ライトだライト!! ライトを持って来い!!」

公園が、遅れてその場に駆け付けて来た霊園に、顎をしゃくってライトを持って来るよう指示した。

「ぅ、うん」

一言頷いて、霊園がミニシアター兼ホールに向かって走り出した。
取りに行ったのだ、ライトを。
勿論、ダッシュで、

「ダァーーーーー!!!」










って。。。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #40


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「あ!? あれはなんだ?」

尻餅が大声を出した。
霊園が持って来た、強力なスポットライトで海面を照らしての事だった。

「ファントムの仮面とマントだ!?」

イチも驚いた様子で叫んでいた。

そぅ・・・

民宿の窓の真下の波打ち際の海面には、崖に打ち寄せる激しい大波の上に浮いたまま、ファントムの物と思われる仮面とマントが行ったり来たりしていたのだ。

それを見つめながら尻餅がボソッと呟(つぶや)いた。

「ヤツは逃げられんと観念して、海に飛び込んだのか?」

「そ、そんなぁ。 そんな事をしたら、命の保障が・・・。 と、すれば・・・。 とうとう3人目の死者が・・・」

公園が落胆の声を上げた。
『これでもうこの民宿は終わりだ』とでも言わんばかりの表情だった。
尻餅が分かったようなお顔をしてその公園に言った。

「だが、そうとしか・・・」

しかし、ここまで言った所で言葉を切った。
公園の落胆した姿に、珍しくチョッと引いてそれ以上は言葉を慎んだのだ。
あの高ビーな尻餅がだ。
代わりに、イチに高圧的に確認した。

「俺らとこのガキ共とで挟み撃ちにしたんだ。 しかしここで見失った。 そうだな小僧」

「あぁ」

イチが同意した。
尻餅が窓から下の絶壁を指差した。

「見てみろ、この崖。 身を隠せるような所はどこにもない。 否、足場すらない。 こんな足場のない崖、どうやって伝って降りられる。 しかもこんな短い時間で、それもビッコを引いてたヤツが」 

イチが上を見上げた。
そして尻餅に聞いた。

「ロープで屋上ってのは?」

「否、そいつぁ、無理だろな、この風じゃ。 よっぽど体重のあるヤツか腕力がなきゃぁ、とてもとても体が安定せん。 やっぱ飛び込んだと見るべきだろうな」

「う〜む」

イチが唸った。
死喪田 歌月が海に飛び込んだかどうかまでは、まだ自信をもって判断出来なかったのだ。
その時のイチには、まだとても・・・そこまでは。

「しっかし、こっから飛び込んだ以上、大将の言った通り、ヤツはもう生きちゃいねぇだろうなぁ・・・」

尻餅が公園に話を振った。
公園が海面を指差して答えた。

「は、はい、確かに。 この下の海は、ゴツゴツの岩場。 満潮時でもここから飛び込むのは危険な上に、あの大波。 この酷い風雨で激しく打ち付けているあの大波に飲まれたら、先ず間違いなく命は・・・。 はい」

ここで、

「だが、まだ死体は上がってはいない」

やっとイチが口を開いた。

「バ、バッカかオメェは!? こっから飛び込んで、無事に済むわきゃねぇだろ。 それにこの断崖、この絶壁、この断崖絶壁の一体どこに死体の上がる場所があるってんだ!? えー、一体どこに?」

「うむうむ」

「うむうむ」

「うむうむ」

 ・・・

その場にいる者の殆(ほと)んど全員が納得したように首を縦に振った。
イチと少年を除いた全員が。
それを余所目(よそめ)に再び海面を見つめて、イチがポツリと独り言を言った。

「簡単過ぎる」

「ん!? 『簡単過ぎる』!? 簡単過ぎるたぁ、どういう意味だ?」

イチの独り言を小耳に挟んだ尻餅が聞き返した。

「俺の直感だが、この連続殺人のエンディング、つまり死喪田 歌月のこの死に方。 あまりにも簡単過ぎると思うんだ」

これを聞き、尻餅がイチを思いっきし小バカにしてほざいた。

「ケッ!? ま〜た直観か。 オメェの直感は外れてバッカじゃねぇか。 さっきも『最後に・・この殺人にはトリックの他に・・これは俺の直感なんだが・・何らかのメッセージが隠されている!?(#29)』とか何とかほざいてやがったがじゃねぇか。 ぁ〜ん、忘れたんか? ぁ〜ん。 フン。 だが、これの一体どこにオメェの直観とやらの『何らかのメッセージ』とやらがあるんじゃ。 えー、これの一体どこに?」

って。

そんな尻餅を、


(キッ!!)


イチが真正面から見据えた 否 睨んだ。
そしてキッパリとこう言い切った。

「否(いや)、俺の直観は外れない!!」

と・・・










自信タップリに。











つづく