深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #41


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「オメェらの言った通りになっちまったな」

尻餅がイチ達に言った。

「ん!?」

「ん!?」

「ん!?」

 ・・・

イチ達にはその言葉の意味が全く分からなかった。
その空気を読んで尻餅が続けた。

「水死だょ、水死。 オメェら言ってたじゃねぇか、3人目は水死だって」

「!?」

「!?」

「!?」

 ・・・

オペラ座の怪人の原作を知っている者達は皆、その事に気が付いた。
勿論、イチも。

『そ、そうかぁ!? そう言えばそうだった』

という感じで。

不意に公園の顔色が、


(パッ!!)


明るくなった。

「それならこれで・・・これで、もうこれ以上の殺人が起こる事はないんですね? 犯人が死んだ以上」

「あぁ、そういうこった」

尻餅が自信タップリに断言した。
イチに向かっても。

「な、金田一。 そういうこったょな?」

「・・・」

だが、イチは何も答えなかった。
イチにはしっくり来なかったのだ、この呆気(あっけ)ない幕切れが。
だから、ただ黙って考え込んでいた。
開けられていた窓のサンを右手人差し指でなぞり、そのなぞった指先をジッと見つめたまま。
イチはその時、死喪田 歌月の逃走経路に思いを馳せていたのだった。

こんな感じで・・・

『廊下の絨毯に油、それも揮発油と思われる物まで予(あらかじ)め仕込んでいた程、用意周到なあの死喪田 歌月が、簡単に窓からあの大荒れの海に飛び込んでアッサリ死んでしまうものなんだろうか? それにこの窓のサン。 ここには何も・・・。 それに・・・日高、桐生の二人を殺した時のあの手の込んだ仕込やトリック。 あれ程抜け目のない犯人が、こんなに簡単に・・・。 しかも・・・早乙女はまだ生きている。 なのに・・・。 う〜む』










と。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #42


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「な〜んだ、まだ誰も来てないのか?」

イチが、頭を掻(か)き掻きボソッと呟(つぶや)いた。
ここは、大食堂。
そこにイチがブラっと入って来たのだ、頭を掻きながら。

翌日、早朝6時の事である。

そこでは霊園、深沙、少年の3人が朝食の支度をしていた。
霊園がイチに気付いた。

「おはようございます、金田一様。 また、随分とお早いですね」

深沙、少年も振り返ってイチに挨拶した。

「おはようございます」

「おはようございます」

イチが少年達に言葉を返した。

「おはようさん」

それから霊園に聞いた。

「いやぁ、ゆんべは良く眠れなくって・・・。 すんません、コーヒーもらえますか?」

「ぁ、はい」

イチに返事をしてから、霊園が少年に頼んだ。

「少年ちゃん。 金田一様にコーヒーお願い」

「は〜い。 今、直ぐ」

少年が調理場に入って行き、入れたてのコーヒーの入ったポットと一組のカップとソーサをトレイに乗せて戻って来た。
既にイチはいつもの自分の席に着き、両手をテーブルの上に乗せ、ぼんやりと窓から見える外の景色を眺めている。
少年がイチに近付いた。
イチの直ぐ横まで来て、持って来たトレイをテーブルの上に置いた。


(ジュポ、ジュポ、ジュポ、・・・)


ポットのコーヒーをカップに注いだ。
注ぎ終えると直ぐに、手際良くコーヒーの入ったカップをソーサに乗せ、


(カチャ!!)


それをイチの前に差し出した。

「さ。 どうぞ」

「はい。 ありがとう」

一旦、一礼して、少年がテーブルを離れ掛けた。
が、思い止まった。
何かを思い出したようだった。
そしてそれをイチに告げた。

「あ!? そうそう。 お天気回復しそうなので、県警来れるそうですょ。 お天気の回復状況にもよるけど、10時頃にはダイジョブなんじゃないかって。 さっき連絡がありました」

「10時頃?」

「はい。 多分その頃までにはって」

「そっか、それは良かった。 でも、チョッとややっこしい事になるかもね」

「はい。 そうですね。 面倒な事、やだけど・・・仕方ないですね」

「あぁ、そうだね。 ・・・」

そう言いながら、イチが少年の顔を繁々(しげしげ)と見た。
そのままチョッと見つめてから言った。

「ふ〜ん。 君、可愛いね」

意表をつかれ、少年が照れた。

「ァハッ。 そんな事ないですょ」

「いいゃ、あるょ。 名前聞いていいかなぁ?」

「はい。 深大寺 少年です」

「“じんだいじ・すくね”さん?」

「はい」

「どんな字書くの?」

「“じんだいじ”はトウキョの調布市にある深大寺の深大寺です。 “すくね”は、少年(しょうねん)って書きます。 少年って書いて・・す・・く・・ね・・って読みます」

「少年で“すくね”さん・・・かぁ。 ふ〜ん。 ありそうで、ない名前だね」

「はい。 だから気に入ってます。 で・・・お客様は? お客様のお名前、聞いてもいいですか?」

少年がイチの名前を聞いた。

しかし、実を言えば、イチの名前を少年はチャンと知っていた。
否、知らない訳がなかった。
ナゼなら、イチは今回の殺人劇において、際立って目立つ存在だったからだ。
本来なら、親戚の経営している民宿のバカンスを兼ねた単なるお手伝いという少年の立ち位置からすれば、名前まで覚える必要はなかったのだが、こんな事件が起こった以上、宿泊者全員の顔と名前と部屋番号はキチンと頭に入れて置く必要があった。
それでイチの顔、名前、宿泊部屋番号はチャンと頭の中に入っていた。
だが、その場の話のなりゆき上、少年は自己紹介という形でイチの名前を聞いた方がいいと判断したのだった。

「あ!? 俺!? 俺は、“きんだいち・イチ”」

「“きんだいち・イチ” 様?」

反射的に、少年は聞き返していた。
その時、少年はこう思ったのだ。

『あ!? アレは “イチ” って読むんだ!? “ハジメ” じゃなくって・・・。 やっぱ聞いて良かった』

と。

そぅ・・・

少年はイチの名前を宿泊者名簿で確認していた。
しかし、名簿に書き込まれてあった名前にはルビが振ってなかった。
そのため少年の中で、イチの名前は “きんだいち・ハジメ” だったのだ。
だから反射的に聞き返していたのだった。

「“きんだいち・イチ” 様?」

と。

それにイチが答えた。

「様って程のもんじゃないけど・・・。 “きんだいち” は、あの金田一ね。 「座敷わらし伝説」で有名な金田一温泉郷の金田一。 それとも金田一 耕助の金田一、って言った方が分かりいいかな? ま!? あの金田一・・・ね。 そして、イチは漢数字の一って書いて “イー、チー”」

「ァハッ。 『漢数字の一って書いて “イー、チー”』って・・・。 そのまんまですね」

「まぁね。 でも、嫌いじゃないょ」

「うん。 いいお名前です。 一番いいのイチですもんね」

「一番悪いのイチでもあるけどね」

「ァハハハハ。 金田一様、切り返しお上手ですね。 下手な事言えませんね。 ァハハハハ」

少年が愛らしく笑った。

「ま!? それが俺の取柄・・・かなっ? やっぱ。 ァハハハハ」

イチも釣られて笑った。
その時、


(チラッ!)


カウンターがイチの目に入った。

「ん!?」

なんか変な感じだった。
イチは良く目を凝らしてカウンターを見つめた。

「どうかなさいましたか?」

不思議そうな顔をして少年が聞いた。

「あぁ、あのカウンターなんだけどさ、な〜んか変なんだょな」

そこまで言った時、イチがある事に気が付いた。

「あ!? そっか。 時計だ、時計!? 時計がないんだ。 そっかそっか。 な〜んか変だと思ったら時計がないんだ」

イチがカウンターの上を指差して、少年に聞いた。

「昨日までさ、あっこに時計、あったょね」

「はい、ありました。 でも、今朝方見たらなくなっちゃってました。 みんなに聞いても、誰も知らないって。 だから、お話してたんです。 ひょっとしてファントムが取ってっちゃたんじゃないか? って」

「そう、ファントムがねぇ」

「はい」

ここでイチがコーヒーを一口すすった。
少年がその場を離れようとして、


(コクッ)


イチに一礼した。

イチも軽い会釈を返した。
そしてボンヤリと考えた。

『そういゃ、有森のヤツもボーガン取られたって言ってたょな・・・。 でもな。 有森のヤツ・・・。 なんでボーガンなんか? いくらアレがあると気分が落ち着くからったって、あんな荷物んなるもん、わざわざこんなトコまで・・・』

瞬間、


(ピッ、コーーーン!!)


イチが閃いた。

『ん!? ボーガン!? ボーガンボーガンボーガン・・・。 時計にボーガン・・・。 そ、そうか!? そうかそうかそうか!? そういう事だったのか!?』


(ガタッ!!)


突然、音を立ててイチが立ち上がった。
驚いて、少年が振り返った。
慌ててイチに近寄った。

「ど、どうかなさいましたか? 金田一様?」

イチが少年の顔を見た。


(パチッ!!)


右目でウインクした。
そしてこう言った。

「ナゾは解けたょ、ワトソン君!!」










って。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #43


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





(ドンドンドン)


「美雪!! 起きてるか、美雪!!」


(ドンドンドン)


「美雪!! 起きてるか、美雪!!」


(ドンドンドン)


「美雪!! 起きてるか、美雪!!」

109号室のドアを激しく叩く音と共に、名無 美雪の名前を呼ぶ声がした。
声の主は、金田一 一だった。


(ガチャ!!)


ドアが開いた。

「ふぁ〜、眠い〜」

中から眠気眼(ねむけ・まなこ)の美雪が顔を出した。
イチと目が合った。

「ィ、イッチャン!? な、なぁに、こんな朝早くから・・・」

「美雪!! 頼みがあるんだ!! 聞いてくれ!!」

「ん!? 頼み?」

「うん。 チョッと耳貸せ。 あのな・・・」


(ひそひそひそひそひそ・・・)










イチが何やら美雪に耳打ちをした。











つづく




 


深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #44


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「ふぁ〜。 あぁ、ねむ・・・」

有森が廊下を眠そうに歩いている、欠伸(あくび)をしながら。
向かうは大食堂。
自分の部屋、即ち、104号室からたった今、出たばかりだ。

そこへ・・・

突然、104号室前の中庭の角からイチが飛び出して来た。
二人共、避けきれず、

「オッとぉ!?」

「ォワっち!?」

イチと有森が共に声とも付かぬ声を上げて、


(ドシン!!)


ぶつかってしまった。
床に尻餅をついたまま、有森が顔を上げた。

「ぉ、おぅ!? 金田一か!?」

イチも同じだった。

「あ!?  おぅ、有森!?」

そして、二人とも立ち上がった。
立ち上がると同時に、イチが言った。

「丁度良かった。 今、お前を呼びに行こうとしてた所だ」

「ん!?」

「早くしろょ。 もう直ぐ7時んなっちまうぜ。 みんな食堂で待ってんだぞ」

「え!?」

まだ時間はタップリあると思って暢気(のんき)していた有森が、驚いて腕時計に目をやった。

が、

「あれぇ、変だな。 俺の腕時計がない」

「え!?」

「おっかしいなぁ、俺の腕時計がない。 さっき確か、腕に嵌めたと思ったんだがなぁ」

「ま、時計は後にして取りあえずは食堂だ。 みんなもう待ちくたびってんだからな」

「ぁ、あぁ。 そうか、そうだな」

首をひねりひねり有森はイチに従った。


そして二人は・・・










大食堂へと向かった。











つづく







深大寺 少年の事件簿 File No.1 『オペラ座の怪人・殺人事件』 #45


 【登場人物】

 深大寺 少年(じんだいじ・すくね) : 16歳 女子高生(1年) チェック柄のスッゲー短〜いスカート パンツは白

 金田一 一(きんだいち・イチ) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 知る人ぞ知るあの大天災・迷探偵・金田一 上野介(きんだいち・こうずけのすけ)の孫 IQ180の大天災 否 大天才

 深大寺 公園(じんだいじ・まさぞの) : 深大寺 少年の叔父 民宿『オペラ座館』のオーナー

 深大寺 卒婆(じんだいじ・そば) : 深大寺 公園の妻

 深大寺 霊園(じんだいじ・よしぞの) : 深大寺 公園の長男

 深大寺 深沙(じんだいじ・みさ) : 深大寺 霊園の妻

 死喪田 歌月(しもだ・かげつ) : オペラ座館の客

 名無 美雪(ななし・みゆき) : 17歳 私立御不動山学園高等部進学科2年生 金田一 一の幼馴染で花組演劇部員

 御布施 光彦(おふせみ・みつひこ) : 18歳 私立御不動山高校花組3年生 花組演劇部部長 怪人・エリック役

 有森 裕二郎(ありもり・ゆうじろう) :  17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 銭湯 浴衣(せんとう・ゆかた) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 緒方 拳代(おがた・けんよ) : 女教師 花組演劇部顧問 牛チチ

 亀谷 修一郎(かめや・しゅういちろう) : 17歳 私立御不動山学園高等部花組2年生 花組演劇部員

 早乙女 京子(さおとめ・きょうこ) : 18歳 私立御不動山学園高等部花組3年生 花組演劇部副部長 ヒロイン(クリスティーヌ・ダーエ)役

 尻餅 胃寒(しりもち・いさむ) : 警視庁捜査一課の刑事 身長180cm、体重0.1トンの西田 敏行(にしだ・としゆき)

 幽鬼 英作(ゆうき・えいさく) : 外科医 メガネを掛けた阿藤 快(あとう・かい)

 幽鬼 鼻胃子(ゆうき・びいこ) : 幽鬼 英作の妻 松坂 慶子(まつざか・けいこ)風





「あれぇ? おっかしいなぁ、俺の席がない」

有森が小首をかしげた。

「まぁ、なんだ。 空いてっとこにでも座っときゃいいじゃん」

イチが言った。

「あぁ。 そうだな。 しょうがない」

な〜んか解(げ)せないっつー顔こいて、有森が一つしかない空いている席に着いた。
その席は本来、早乙女 京子が座るはずだったのだが、どういう訳か今日に限って早乙女は別の席に着いていた。

イチが席に着くや否や、銭湯が聞いた。

「金田一、何だょ話って?」

吊られてその横に座っていた亀谷も。

「あぁ、俺らに何の話があんだょ? ん?」

残りの全員もそれに同意したように、

「うんうん」

「うんうん」

「うんうん」

 ・・・

頷いている。
その中には尻餅もいたが、珍しく黙っていた。
何か考えているのだろうか腕を組み、目は閉じたままだ。

公園、卒婆、霊園、深沙、それに少年の5人の深大寺ファミリーは奥の壁際に並んで立っている。
全員が、先程自分の部屋でイチに頼まれた美雪に呼び集められて、その場にいたのだった。

その全員を、


(グル〜ッ)


一わたり見回し、両手掌(りょうて・てのひら)をテーブルに着け、


(スッ)


イチが徐(おもむろ)に立ち上がった。
そして身を乗り出してこう言った。

「みんな聞いてくれ、これから俺が話すのは今回のこの事件の全貌だ。 もっとも全て俺の推測ではあるんだが」

ここでやっと目を明け、腕組みを解き、両手をグーにしてテーブルの上に置き、鼻先三寸でせせら笑いながら、いつものように尻餅がエッラそうにほざいた。

「フン。 なーにかと思ゃぁ、オメェの推測話か。 ケッ!! 期待はずれもいいとこだぜ、ったく。 あのなぁ、金田一。 死喪田 歌月が死んでもうこの事件の幕は下りたんだょ。 おー、りー、たー、のー、分かる? おー、りー、たー、のー。 だから後は、もう直ぐやって来る県警に任せりゃいんだ。 ったく、飯も食(く)わせねぇでょ。 変な期待持たせやがって。 結果がオメェの推測話か。 そんなもん聞きたくもねぇ。 さ! 飯だ飯だ!! 大将ー! 飯ー!!」

「いいゃ、オッサン! 幕はまだ下りてなんかいないぜ!!」

イチが本気で言い返した。

「へん。 な〜にをほざいてやがるー! ヤツは、死喪田 歌月は海に飛び込んで死んだんだょ。 オメェだって見たじゃねぇか、現場。 おっちんじまったヤツにな〜にが出来るってんだ、え? な〜にが?」

「いいゃ、オッサン。 死喪田 歌月は死んでなんかいない。 否!? そもそも、この死喪田 歌月なる人物の存在自体がこの事件の胆(きも)、今回の事件の核心部分なんだ!!」

イチが、

“キリ!!”

ってしてそうほざいた。

「あったりめーじゃねぇか、犯人なんだから。 なーにをほざくかと思ゃぁ、胆だの核心部分だのー、もったいつけやがって。 あったりめーの事じゃねぇか。フン」

ここでイチが、


(キッ!!)


尻餅の目を見据えた。
そしてユックリと、それこそもったいを付けてこう言った。

「おぃ! オッサン!!」

「何だ?」

「“もし、死喪田 歌月なる人物がこの世に存在しなかった”としたら・・・アンタどうする?」

「ん!? どういう意味だ? 言ってる事の意味が分かんねぇぞ」

「分かんねぇ?」

「あぁ」

「そうか、分かんねぇか。 ・・・。 なら言い方を変えてやろう。 “もし、真犯人が別にいて、ソイツが死喪田 歌月なる架空の人物を作り上げていた”としたら、アンタどうする?」

「またまた、な〜にをほざいてやがるー!! 俺もオメェもチャーンと見たじゃねぇか、ヤツを、死喪田 歌月を。 それにこの民宿の従業員だって」

ここまで言ってから尻餅は公園達、深大寺ファミリー5人のいる方に顔を向けた。
そして公園に言葉を投げ掛けた。

「なぁ、大将」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

「うんうんうん」

少年を除く4人が頷いた。
そして口々にこう言った。

先ず、公園が、

「はい。 確かに」

次に、卒婆が、

「わたくしも、お会い致しました」

霊園も、

「うん。 確かに、俺も」

最後に深沙が、

「はい。 わたしも」

と。

だが、少年だけはジッと押し黙っていた。
何か考えているようだった。

そぅ・・・

少年は少年なりに疑問をもっていたのだ。

死喪田 歌月という人物の存在に・・・










イチ同様。











つづく