#86〜#88(最終回)
『神撃のタイタン』 #86
「おぃおぃ、チョッと待て。 お前の話の方が先だろ」
外道が不良と雪の間に割って入った。
外道はチョッと不機嫌だった。
不良と雪に完璧なまでに蚊帳の外にされたからだ。
「あぁ、そうだな。 物には順序ってヤツがあるな」
「当たり前だ!!」
「ウム。 実はな、破瑠魔、妖乃。 ・・・」
そう言ってから、不良が全てを語った。
グライアイとの出会いから始めて、オリンポスの神殿での出来事まで・・・その全てを。
否、
一つを除いた全てをだった。
不良は左腕の事は黙っていた。
つまりポセイドンのトライデントにもぎ取られた左腕、そこにヘパイストスの作り上げたオリハルコン製の新たな腕をアスクレピオスによって取り付けられた事は黙っていたのだ。
帰りが遅くなったのは、単にポセイドンのトライデントによって負傷したという事だけにして。
それは、左腕の事は敢(あ)えて言う必要なしと判断したからだった。
もっとも、雪にはシッカリとばれてはいたが。
そんな隠し事は外道には通用しても、雪には通じない。
半端じゃなく鋭い感性を持っている雪に、そんな隠し事は通じないのだ。
不良が戻って来た時、雪はすぐに気付いていた、不良の左腕の変化に。
だが、黙っていた。
雪も雪なりに不良同様、敢えて言う必要なしと思ったからだった。
その不良の話を、
「ウ〜ム。 そんな事が」
鈍感な外道が感心して聞き終えた。
「あぁ、そうだ。 今回は、正直俺もダメかと思った」
「相手が相手だったからな」
「その通りだ」
「だが、何(なん)でだ?」
「ん!? 何(なに)がだ?」
「何でお前は運命を変えられたんだ?」
「あぁ、その事か」
「あぁ、その事だ」
「分らん」
「『分らん』 って・・・」
「・・・」
「・・・」
ホンの一瞬、外道と不良は言葉に詰まった。
「ま。 これは俺の推測だが・・・」
不良が先に口を開いた。
そして続けた。
「恐らく、デス・スレート」 【この辺のお話は 『 THE DEATH SLATE ― 死の石盤 ― 』 http://ncode.syosetu.com/n3431bs/ を参照して下さい : 作者】
「ん!? デス・スレート!? あの石盤か? 死神の?」
「そうだ! 石盤だ!! あの死神の石盤だ!! そしてあの石盤との戦いの所為(せい)だと思う。 否、その副産物じゃないかと思う」
「副産物? どういう事だ?」
「つまり、あの時・・・。 あの瞬間・・・。 俺の名を杉上がデス・スレートに書き込んだあの瞬間、俺の命運は一度尽きたんだ。 だが、お前も知っての通り、俺は 否 俺達は力を合わせてそれを回避した。 だからだ。 だからその結果として俺の運命は、それまで決まっていたはずの物と微妙にズレが生じ、変わってしまったのではなかろうか。 そのためポセイドンのトライデントに射抜かれるはずだった俺の運命も、ヘラによって変えられた。 そう思えば合点が行く。 それと考えられる事が別にもう一つある」
「別にもう一つ?」
「あぁ」
「・・・」
外道は黙っていた。
次に不良が何を言うかを待ったのだ。
その外道の気持ちを察し、
「時空をジャンプしたため」
再び、不良が口を開いた。
「ん!? 時空をジャンプしたため?」
外道が復唱した。
「あぁ、そうだ。 時空をジャンプしたため・・・。 かもな」
「意味が見えん」
「つまり、俺はあの時代の人間じゃない。 だからだ。 だから俺の運命の予言も不確定だったのかも知れんという事だ。 あの時代の人間じゃない俺の運命の予言もな。 ま。 いずれにせよ、そのどちらかだと思う」
「な〜る(程)」
外道が納得した。
そぅ。
不良は正しかった。
あのデス・スレートとの戦いの結果、不良はそうとは知らずそれまでの自らの生死のサークルから微妙にズレ始めていたのである。
だがそれは、一人不良に限った事ではなかった。
実は、
外道と雪の運命にもそれは当てはまっていたのだ。
あの事件に巻き込まれていたこの二人も又、不良同様、そうとは知らず自らの運命に変化を来たしていたのである。
もっとも、それは・・・
大きな変化ではなく・・・
殆(ほとん)ど気付かれない程微妙に・・・
だったのだが。
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つづく
『神撃のタイタン』 #87
「実はな、コイツにも妙な事が起こっていたんだ」
雪を、
(クィッ)
顎で指し示しながら外道が言った。
そして、
「雪。 あの話をしてやれ」
雪に命じた。
「え!? あの話?」
意味が分からず、雪が聞き返した。
今度は、
(クィッ)
外道が不良を顎で指し示し、
「コイツの聴きたがってたさっきの話だ。 コイツを追って行った時、お前の経験した例のあれだ。 あれを話してやれ」
雪に言った。
「うん」
雪が頷いた。
そして、
(チラッ)
不良を見て言った。
「あのね、おじちゃん」
から初めて自分のした経験を、その全てを不良に。
つまり、闇の魔神(ましん)ヘカテとのやり取りを、その最初から最後まで事細(ことこま)かに・・・
思い出せる限り。
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つづく
『神撃のタイタン』 #88 (最終回)
「ヘカテが!? あのヘカテがお前をお嬢と呼んだのか?」
不良が驚いた様子で雪に聞いた。
あの感情をあまり表に出さない不良がだ。
これは、雪のした話を聞き終えた直後の事だった。
不良を追ってジャンプしてすぐ、雪がヘカテと遭遇した例のあの話だ。
外道同様、不良も又、ここに引っ掛かったのだ。
「うん」
雪が頷いた。
このやり取りを見て外道が、
「お前はどう思う?」
不良に聞いた。
「分らん」
「分らん?」
「あぁ、分らん。 しかし、何かある。 俺達とオリンポスの間にはな。 実は、前にも一度こんな事が・・・」
ここまで言って不良が躊躇した。
「前にも一度?」
透かさず外道が聞き返した。
「否、・・・。 今はその話は止めて置こう。 時期が来たらキチンと話す」
そう言って、
「ウ〜ム」
不良が考え込んだ。
「そうか・・・」
外道もあえて突っ込もうとはしなかった。
聞いた所で不良が言うはずがないと分っていたからだ。
そして、
「俺達とオリンポスか・・・。 ウ〜ム」
外道も又、考え込んだ。
すると雪が全〜く意に介さず、そんな二人に明る〜く言った。
「センセもおじちゃんも、何、深刻ンなってんの? そんな事、いつか・・その内・・分るじゃん。 今考えてもしょうがないじゃん」
って。
これには流石の不良も、
「あ!? あぁ。 そうだな」
一本取られた。
「あぁ、そうだな」
勿論、外道も。
「うん。 そうだょ」
雪が言った。
「そうだった、そうだった。 アハハハハハ・・・」
外道が笑った。
誤魔化したのだ、笑って、バツの悪さを。
「アハ、アハ、アハハハハハ・・・」
暫し、不良の診察室の中に外道のワザト笑いが響いていた。
もっともこの笑いは、事が全て終わった安堵感からも来ていたのだが。
それを不良と雪が黙って見つめている。
緊張感から解放され、三人共軽い疲労感に満たされているのだ。
「アハ、アハ、アハハハハハ・・・」
外道のワザト笑いはまだまだ続いている。
止めようという様子は全く見せない。
それを不良と雪が黙って見つめている。
「アハ、アハ、アハハハハハ・・・」
一体いつまで続くのであろうか、外道のこのワザト笑いは?
だが・・・
その時・・・
これとほぼ同時に、
(パチリ)
暗燈篭 芽枝も目覚めていた。
そして、
(ニヤリ)
不気味に笑った。
否、
意味あり気にだ。
意味あり気に笑っていた。
しかし、その笑いを誰も気付く事はなかった。
外道も不良も、そして最も敏感な雪さえも・・・全く。
そして、この暗燈篭 芽枝の意味あり気な笑いは一体何を意味しているのであろうか?
それはまだ・・・
誰にも分からない。
時に、平成23年7月。
奇妙な進路を辿(たど)った超大型台風6号 「マーゴン」 に日本列島が見舞われた直後の、割りと過し易いある日の出来事であった。
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『神撃のタイタン』 #87 (最終回) お・す・ま・ひ
後書き編集
『神撃のタイタン』 もう一つの最終回
基本的に宗教(特に、日本のキリスト教とその教団。 世界のではない)大っ嫌いな有栖川呑屋コマルが途中まで書いて止めちゃった・・・
『もう一つの最終回』
これをうpしたらこのブログの top page が
『 google 検索』 から
消えるかどうかを見るテスト。。。
ダイジョブなら後日 “コレ・↓” に書き換える・・・・・・かも。。。
『神撃のタイタン』 #89 (もう一つの最終回・・・書き掛け)
「所で不良」
外道が話し始めた。
「何だ?」
「オリンポスのヤツラは知っているのか?」
「何をだ?」
「今、この世界にオリンポスはないという事を」
「あぁ、その事か」
「あぁ、その事だ」
「知らんと思うぞ。 多分な。 多分、知らんと思うぞ」
「言ってやらなかったのか?」
「あぁ」
「ナゼ?」
「言う必要もなかろう。 聞かれた訳でもないのに。 何でそんな事を聞く?」
「うん。 まぁ、な。 まぁ、チョッと気になったからな」
ここで、
「・・・」
不良が黙った。
感慨深そうに俯(うつむ)き加減で、一点をジッと見つめている。
「ヘラに親切にしてもらったんだろ?」
外道がその不良に問い掛けた。
「・・・」
「だからだ。 だから・・・。 もしかしたらと思ったんだ。 ま、気にせんでくれ」
「あぁ」
「・・・」
今度は外道が黙った。
それを見て、
「気の毒で言えなかった」
ポツリと不良が呟(つぶや)くように言った。
「え!?」
「気の毒で言えなかったんだ。 今から2000年前、人間に嫌気がさし、オリンポスの全ての神々が天空に登ってしまったなんて事はな。 夢魔(むま)にでも犯されたとしか言いようのない、明らかに自然の摂理に反する処女懐妊。 凡そ神を奉ずる者なら絶対に従わなければならないはずの精子と卵子の結合による妊娠という自然の摂理、それに反した処女懐妊。 そしてその処女から生まれた等という大嘘をつき、自らを 『飯屋(めしや)』 なんぞとほざいて民心を惑わし、最終的に磔獄門(はりつけ・ごくもん)の憂き目にあった馬小屋で生まれたあの大法螺(おおぼら)吹きと、それを逆手にとって復活なんぞという小賢(こざか)しい嘘話をでっち上げ、オツムの足りない下衆共を先導して世を狂わせている、あの悪魔の集団の所為(せい)で天空に登ってしまったなんて事はな。 言えなかったんだよ、気の毒で・・・。 良くしてもらったからな彼等には。 特にヘラには・・・な」
・・・
時に、平成23年・・・
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『神撃のタイタン』 お・す・ま・ひ